基幹システム/ERPリニューアルの事例/成功事例について

ERPリニューアルの成功につながるのは、アドオンを仕分けて残すものを決めること、現場で使われる画面に作り替えること、段階的に移行することです。

事例を読むと、どの課題にどう対応し、どこで判断が分かれたかが見えてきます。全体像は基幹システム/ERPリニューアルの完全ガイドもご覧ください。

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・基幹システム/ERPリニューアルの完全ガイド

今ERPリニューアルの事例から学ぶ重要性

ERPリニューアル事例を課題の出発点、意思決定、取り組み後の効果から読む3視点の図解。
判断の分岐点を追うと、事例を自社の計画に結びつけやすくなります。

新規開発やハードウェア・OSだけの更改と違い、ERPリニューアルでは稼働中の基幹システムを止めずに、画面や業務フローも作り替える必要があります。

長年の運用では、追加開発(アドオン)が複雑に絡み合っているケースが大半です。そのため、計画段階で参考にできる先行事例の価値は、ほかのIT施策より高くなります。

他社がどの課題にどう対応し、意思決定の分岐点や成果が何だったかを知ることは、自社の計画の精度を左右します。さらに、事例は成功談として読むだけでなく、自社で再現できる判断や備えるべきリスクを見つける教材として使えます。

アドオン肥大化と使われないERPという共通の悩み

ERPでよく挙がる悩みは、アドオンの肥大化です。加えて、現場で使われないERPという根深い問題もあります。

  • アドオンの肥大化:業務に合わせた追加開発が積み重なった状態
  • 使いにくい画面:操作性や入力項目が、現場の運用に影響する

業務に合わせて導入時からアドオンを積み重ねる企業は少なくありません。そのため、改修のたびに影響範囲を調べる必要があります。

さらに、バージョンアップのたびにアドオンを作り直すため、保守費が膨らみます。中には、アドオンを維持するためにERPを使うような状態に陥る企業もあります。

画面が扱いにくく入力項目も多いと、現場はExcelやスプレッドシートで二重管理を始めがちです。その結果、ERPに正しいデータが集まらず、経営判断に使える情報も分散してしまいます。

この課題は、特定の業界に限った話ではありません。製造業の生産管理、卸売業の販売管理、サービス業の受発注管理など、基幹業務を担うERPほど長期にわたって使われます。

長期利用に伴い、アドオンの肥大化や画面の老朽化が進みやすくなります。そのため、業界をまたいで事例を見比べる価値があります。

事例から読み取るべき3つの視点

ERPリニューアル事例は、少なくとも3つの視点で読むと学びの質が高まります。その視点は、課題から効果までの判断の流れを順にたどるものです。

  • 出発点:リニューアル前に抱えていた課題
  • 意思決定:画面・アドオン・業務フローへの対応
  • 効果:取り組み後に得られた定量・定性の変化

3つのうち、特に見落とされがちなのは二つ目の意思決定です。同じ使いづらさでも、UI/UXだけを刷新するか、アドオンを削ってFit to Standard(標準機能への寄せ)にするかで、取るべき対応が変わります。また、業務プロセスごと見直す選択肢もあり、どれを選ぶかで必要な期間・費用・現場の負担は異なります。

成功企業は、自社の制約と目的に照らして、捨てるアドオンと残す独自要件を切り分けていました。効果は、定量・定性の両面で確認します。

定量面では、入力時間やアドオン本数、保守費の変化を見ます。一方で、定性面ではExcelの二重管理が解消され、データが一箇所に集まることで、経営判断がどう変わったかを捉えます。

ポイント

事例は、課題・意思決定の分岐点・効果の3点で読むと、自社の計画で同じ判断が必要かどうかを確かめやすくなります。アドオンが絡むERPでは、先行事例の価値がほかのIT施策より高いと考えてください。

画面刷新・アドオン整理で成果を出したERPリニューアル成功事例

製造業のアドオン整理、卸売業の受発注画面刷新、サービス業の段階的リニューアルを並べた図解。
業界ごとに、見直しの中心となる対象が異なります。

ここでは、ERPリニューアルで明確な成果を出した製造業・卸売業・サービス業の3つの事例を見ていきます。各事例は課題・アプローチ・効果の順に整理しているので、自社に置き換えながら読み進めてください。特に参考になるのは、数字の大きさだけでなく、どこまでアドオンを削り、どこを使いやすくしたかという判断です。

製造業:アドオン9割削減でFit to Standardに寄せた基幹刷新

従業員約800名規模の製造業が、十数年前に導入したERPをリニューアルした事例です。

業務に合わせて追加開発を重ねた結果、アドオンは数百本規模になりました。バージョンアップのたびに改修費が数千万円かかり、改修中は業務改善も止まっていました。

刷新では、アドオンを、競争力に直結する独自要件か、慣習で残っているものかに分類しました。

  • 棚卸しから着手:新ERPの選定を先に行わず、既存アドオンを洗い出す
  • 不要分を削減:標準機能で代替できるものなどを整理
  • 標準機能を活用:独自性が競争力につながる部分は残す

棚卸しの結果、アドオンの9割近くは、標準機能で代替できるか、そもそも不要だと分かりました。残した1割は、製造工程に固有で、競争力の源泉となる部分です。

刷新後は、パッケージの標準機能を最大限に活かすFit to Standard型になり、バージョンアップに追従しやすくなりました。また、保守費も大幅に削減しました。

アドオン改修に使っていた予算と人員は、新しい業務改善に振り向けられました。業務をシステムに合わせる発想への転換が、成功の決め手でした。

卸売業:受発注画面のUI/UX刷新でExcel二重管理を解消

卸売業の販売管理ERPをリニューアルした事例です。受発注機能はあったものの、操作性が悪く、受注1件の入力に多くのクリックと項目入力が必要でした。

営業現場はERPを敬遠し、受注をいったんExcelにまとめてから転記していました。こうした二重管理によって、データの鮮度が落ち、転記ミスも頻発していました。

同社が焦点を当てたのは、機能追加よりも画面のUI/UXでした。改善では、画面の操作を現場の動きに合わせて変えました。

  • 入力動線を観察:よく使う項目を前面に配置
  • 入力を簡略化:過去の取引から入力候補を自動で補う
  • 営業先にも対応:スマートフォンやタブレットで、その場で受注登録

これらの変更で、入力ステップを大幅に減らしました。刷新の核心は、「使われない原因は機能ではなく画面」という見立てにありました。

その結果、Excelでの二重管理が解消され、受注データがリアルタイムでERPに集まりました。さらに、入力時間は従来の半分以下になりました。

転記ミスに起因する出荷トラブルも、大きく減りました。このように、大がかりな刷新でなくても、使う人の動線に合わせた画面づくりで業務は変わります。

サービス業:段階的リニューアルで現場を止めずに移行

複数拠点を持つサービス業の基幹システムの事例です。ERPの画面が拠点ごとに異なる形でカスタマイズされ、本社は全社の状況を一元的に把握できませんでした。

全拠点を一度に切り替えるビッグバン型は、トラブル時に全社が止まるリスクが高いうえ、現場の抵抗も強い状況でした。

そこで、同社が選んだのは、機能と拠点を区切って段階的にリニューアルする方法でした。移行は、次の順で進めました。

  1. 影響範囲の小さい一部の拠点や業務から移行する
  2. 新しい画面と統一したデータ構造へ移し、現場の声を反映する
  3. 旧・新システムを一定期間並行稼働させ、移行できた範囲から順次切り替える

段階移行では、現場の声を取り入れながら移行の確実性を高められます。この進め方で業務停止のリスクを抑え、大きな停止なく全拠点を統一された画面とデータ基盤へ移行できました。

拠点ごとの運用が標準化され、本社は全社の状況をリアルタイムで把握できるようになりました。さらに、この方法は現場の納得を得るうえで、業界を問わず有効です。

ポイント

自社に当てはめるときは、成果の大きさよりも、どの課題に対してどの対応を選んだかに注目すると、自社の状況に合った手を選びやすくなります。

業界横断で見るERPリニューアル成功のパターン

ERPリニューアルに共通するアドオン整理、画面改善、段階移行の3パターンを示す図解。
現状の把握から画面づくり、移行方法まで、見直す対象が広がります。

製造業・卸売業・サービス業の事例には、共通する成功パターンがあります。業界や業務が違っても、成否を分ける判断の観点は似ています。

アドオンの棚卸しと仕分けからの着手

成功事例に共通するのは、いきなり新しい画面や機能を作らないことです。まず問題を正確に把握してから、手を入れる範囲を決めていました。

  • 現状を把握:アドオン、入力動線、拠点別の設定を確認
  • アドオンを分類:独自要件と慣習で残ったものを見分ける
  • 残す範囲を決定:標準機能と独自性の境界

製造業ではアドオン、卸売業では入力動線、サービス業では拠点ごとのカスタマイズ状況を調べていました。ERPでは特にアドオンの仕分けが重要です。

慣習で残ったアドオンをFit to Standardに寄せられるかが、保守性とコストを左右します。一方で、すべて残して画面だけ新しくしても、従来の複雑さを引き継ぎます。

アドオンを整理した企業は、身軽で長持ちするERPを実現しています。ただし、競争力を支える業務まで標準化すると、現場の強みを失うおそれがあります。

そのため、標準に寄せる部分と独自性を守る部分の線引きに、アドオンの棚卸しで時間をかけています。

使われる画面への作り替え

リニューアルの目的を、機能追加ではなく現場で使われる画面づくりに置きます。ERPが使われない原因は、機能の不足より操作性にある場合があります。成功企業は、現場の実際の操作動線を観察し、その実態を踏まえて画面を改善していました。

  • 入力しやすさ:入力手順や分かりにくい項目の改善
  • 利用環境:スマートフォンでも使える画面づくり
  • 現場の動線:よく使う機能を前面に出して、手間を減らす

卸売業の事例では、操作性の問題がExcelでの二重管理につながっていました。つまり、現場がERPを使わなければ、正しいデータは集まりません。

使う人の動線に寄り添ったUI/UXが、ERPの現場定着を左右します。使いやすい画面は、データが一箇所に集まるかどうかや、経営判断の速さにも影響します。UI/UX刷新は見た目の改善にとどまらず、データを活用するための取り組みです。

現場で使われることを重視する考え方は、効果測定にも直結します。画面そのものを成果とみなさず、入力時間やExcel二重管理、ERPのデータ鮮度を指標にします。

こうした使われ方の変化を捉えることが欠かせません。現場で活用されてこそ、ERPリニューアルの投資を回収できます。

段階的な移行という進め方

機能や拠点を区切る方法が有効です。一方、サービス業の事例のように、全システムを一度に切り替えるビッグバン型は、速く見えても、トラブル時の影響範囲が極めて大きくなります。段階移行は、次の流れで進めます。

  1. 影響範囲の小さい業務や拠点から、新しい仕組みに置き換える
  2. 旧システムと並行稼働し、移行できた範囲から切り替える
  3. 現場の声を次の移行範囲に反映する

基幹システムが止まると事業そのものが止まりかねず、移行方法は成否を大きく左右します。段階移行なら、不具合の影響を一部に抑えられます。急ぎつつも一気には進めないことが、成功事例に共通しています。

一部で成功体験を積むと、次の対象となる現場も前向きに受け止めやすくなります。また、段階移行は現場の納得を得るうえでも有効です。

説明や準備が足りないまま全社一斉に新画面を導入すると、現場の抵抗を招き、定着しないおそれがあります。技術的な移行設計と現場の心理への配慮、この二つがそろって成功の条件です。

ポイント

3つのパターンは、まず現状を把握し、手を入れる範囲を決めてから進めると判断がぶれにくくなります。どれを優先するかは、自社でいちばん困っている課題に照らして決めてください。

まとめ

ERPリニューアルの事例を、画面刷新やアドオン整理、Fit to Standardの視点から見てきました。

製造業ではアドオンを9割近く削減し、Fit to Standardに寄せて保守費を大幅に減らしました。改修に使っていた予算と人員は、業務改善に回りました。

卸売業では画面刷新でExcel二重管理を解消し、入力時間を従来の半分以下にしました。一方、サービス業は段階移行で業務を止めず、全拠点を統一しました。

成功パターンは、(1)アドオンの棚卸しと仕分け、(2)使われる画面への刷新、(3)段階的な移行の3点です。目指すのは、新しいシステムを入れることより、現場で使われて正しいデータが集まり、保守しやすい仕組みを作ることです。

手法の派手さよりも、進め方の丁寧さが成否を分けます。自社で検討するときは、事例を自社の状況に置き換えて読み返してください。進め方や費用感、要件定義を整理する際は、完全ガイドも活用できます。

事例から得た判断の観点を自社の計画に落とし込むことが、リニューアル成功への一歩になります。

会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。