旅行・観光業界では、OTA在庫管理、省人化、顧客データの統合を段階的に進め、現場の課題解消と投資回収につなげた事例があります。
事例は業務の場面ごとに、発注側の視点で並べています。全体像は旅行・観光業界のシステムの完全ガイドもご覧ください。
▼全体ガイドの記事
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OTA一元管理でダブルブッキングを防いだ事例

宿泊施設では、複数の予約サイト(OTA)の在庫を一元管理すると、分かりやすい成果が出ます。一方で、自社サイト、楽天トラベル、じゃらん、Booking.comに同じ客室を出す施設では、人手で在庫を更新すると売り越しやダブルブッキングが起きがちです。
売り越しは、旅行・観光業界の受発注ミスにあたり、得意客の信頼を失う大きなリスクです。そこで、在庫の更新を自動化した事例があります。
サイトコントローラー連携で在庫更新を自動化した事例
複数の予約チャネルを使う施設では、在庫更新の時間差が課題になります。
- 在庫連携:PMSとサイトコントローラーを連携し、1チャネルの予約時に全チャネルの在庫を自動で引き当てる仕組みです。
- 時間の試算:自社の予約チャネル数と更新頻度に当てはめ、削減時間を数字で示せます。
各OTAの管理画面を手動で更新していた頃は、この時間差がダブルブッキングの温床になっていました。在庫更新を自動化すると、時間差がなくなり、売り越しを仕組みの面から防げます。
また、この効果は、流通・小売のEC在庫一元化と同じ考え方で数字に置き換えられます。たとえば、在庫更新に1チャネルあたり1日10分かかる場合、5チャネルでは1日50分、年間で約300時間を費やす計算になります。
自動化でこの時間をほぼゼロにでき、浮いた時間をフロントの接客や宿泊プランの企画に回せる事例もあります。
需給に応じた料金変更で客室単価を上げた事例
OTA一元管理の効果は、ミス防止の先にも広がります。在庫と料金を一元管理すると、需要に応じて全チャネルの料金を一斉に変える、レベニューマネジメントが可能になります。
各OTAを手作業で更新していた施設では、需要が高まる週末や連休の直前に値上げできず、機会損失が生じていました。
- 稼働率の高い日:料金を上げ、平均客室単価(ADR)の向上を狙います。
- 閑散日:早期割引を使い、稼働率の確保に努めます。
この出し分けの考え方は、流通・小売の需給に応じた価格設定と同じです。
料金変更を、人手の都度作業からシステムによる一括反映に変えると、価格戦略を実行しやすくなります。OTA一元管理は省力化に加え、収益を得るための土台にもなります。
セルフチェックイン・省人化で人手不足を乗り切った事例
旅行・観光業界では、慢性的な人手不足が課題になっています。宿泊や飲食を伴う施設は繁忙期と閑散期の差が大きく、ピークに合わせて人員を組むと閑散期に余り、閑散期に合わせると繁忙期に運営が回らなくなります。この課題には、セルフチェックインやモバイルオーダーで対応する事例が増えています。また、セルフ端末の効果は、流通・小売のセルフレジ事例を参考にできます。
セルフ端末でフロント工数を削減した費用対効果
セルフ端末の費用対効果は、流通・小売のセルフレジ事例が参考になります。
- 人件費:有人レジ5台をセルフと監視2名に置き換え、3名分を削減しています。
- 処理能力:対応客数は、有人の53人/時からセルフ監視の120人/時へ向上しました。
金額で見ると、最低賃金1,055円、月約63万円で計算した場合、年約756万円の削減効果が見込まれます。
チェックインでも同じ考え方が当てはまります。繁忙期のフロントをセルフ端末と少数の案内スタッフで回せれば、同等規模の人件費圧縮が期待できます。
夕方のチェックインを並行して処理すれば、待ち時間を短縮できます。そのため、顧客満足や口コミ評価が高まり、次の予約につながります。省人化は、コストと顧客体験の両方の改善を狙えます。
モバイルオーダーで館内飲食を効率化した事例
宿泊施設のレストランや観光地の飲食店では、モバイルオーダーが省人化に役立ちます。客がスマートフォンで注文すると、注文を取りに行く工程がなくなります。
- 注文受付:注文情報をキッチンプリンターへ直接送る仕組みです。
- スタッフ配置:聞き間違いや伝票ミスを減らし、配膳と会計に集中できます。
非接触決済と組み合わせた効果もあります。流通・小売の実証では、QUICPayなどの非接触決済は現金より会計が約20秒速く、ピーク時の回転率が約50%向上しました。特に、昼食時に客が集中する観光地では、回転率の向上が売上に直結します。
モバイルオーダーと非接触決済を導入した施設では、ピーク時の取りこぼしを減らし、少ない人員で多くの客に対応できた事例があります。
人手不足を前提に考えると、省人化と回転率の向上を同時に狙う設計が、これからの観光施設に欠かせません。
顧客データ統合でリピート率を高めた事例

OTA経由の予約に依存すると、顧客の連絡先や嗜好はOTA側に残り、自社にデータが蓄積されないことがあります。そのため、施設には、高い手数料のOTAに頼り続けるか、自社サイトのリピーターを育てて手数料を抑えるかという課題があります。
顧客データを統合して、この課題を乗り越えた事例があります。宿泊履歴を使った直販リピーターの育成と、紙台帳からのデータ移行の両方が要点です。
宿泊履歴を統合して直販リピーターを育てた事例
宿泊履歴を統合すると、顧客に合わせた再訪施策と直販リピーターの育成につながります。
- 顧客情報:PMSの宿泊履歴、自社サイトの会員情報、館内の飲食・物販履歴を、顧客マスタに一つにまとめます。
- 販路設計:初回はOTAで集客し、次回は自社サイトの直販へつなげる流れです。
統合した情報から、誰がいつ何回泊まり、どんなプランを好み、館内でいくら使ったかを把握できます。
たとえば、記念日に泊まった顧客へ翌年の同じ時期にメールを送るなど、顧客に合った施策を実施できます。データが分断されていると、こうした施策は実行できません。
OTAの手数料は予約額の一定割合が一般的で、直販比率を高めると利益率の改善につながります。また、OTA経由の顧客情報も顧客マスタに含め、継続的な関係を築く基盤を整えます。
紙台帳からのデータ移行を乗り越えた事例
データ統合の前には、紙台帳や古いExcelからの移行が課題になります。
常連客の情報が手書きの宿帳や担当者個人のメモに分散していると、移行とクレンジング(名寄せ・表記ゆれの統一)に工数がかかります。
- 工程を計画:担当者、期限、整備するデータの範囲を決めます。
- 表記を整理:「山田太郎」「ヤマダタロウ」「山田 太郎」を統合し、重複を除きます。
データ整備を後回しにした施設では、新システムが空のまま稼働し、活用が進まない事態も起きています。
この整理の質が、顧客分析の精度を左右します。移行とクレンジングは隠れコストになりやすく、丁寧に進めた施設ほどリピート施策で成果を出しています。
事例では、華やかな機能だけでなく、地道な土台づくりの巧拙にも注目します。
段階的なデジタル化で投資を回収した事例
旅行・観光業界では、すべてを一度に作り替えるより、効果の大きい領域から段階的に進めた事例が成果を上げています。限られた予算と繁忙期に止められない現場を踏まえると、着手順を見極めることが投資回収の鍵になります。
補助金を活用して回収期間を短縮した事例
流通・小売の試算では、小規模店が補助金を使い、実質負担を75万円程度に抑えた例があります。このケースで、月の純削減額が13万円なら、投資回収はおよそ6ヶ月です。
また、中規模店でも約7ヶ月での回収が見込まれています。観光施設でも、IT導入補助金などで初期負担を抑えれば、同様に半年前後の回収が視野に入ります。
回収期間を縮めるには、補助金を活用することと、効果を数字で示しやすい領域から選ぶことが欠かせません。
- 初期費用:補助金の有無を確認し、初期負担を抑えます。
- 効果の測定:OTA在庫管理やセルフチェックインは、削減工数や人件費を算出しやすく、稟議で回収を説明できます。
事例では、補助金の有無と、最初に着手した領域の効果の測りやすさを併せて見ると、自社の進め方の参考になります。
SaaSでスモールスタートし効果検証後に拡張した事例
観光事業者には、クラウド型(SaaS)の予約管理サービスで小さく始め、効果を確かめてから本格投資に進む例があります。サービスは月額数万円程度から利用でき、初期投資を抑えられます。
物流分野のクラウドサービスには月1万円台から利用できる例があり、観光分野の予約管理も同様に低コストで試せます。
ただし、すべての事業者が最初から大規模なスクラッチ開発に進めるわけではありません。導入は、検証から拡張へ段階的に進められます。自社の規模と繁忙期の負荷に応じて入口を選ぶと、投資を無駄にしにくくなります。
- 最初から全社最適のフルスクラッチを目指さず、パッケージやSaaSで現場が使うかを確かめて、運用ノウハウと現場の納得感を蓄積します。
- 取引量が増え、パッケージでは要件を満たせなくなった段階で、商習慣に合わせたスクラッチ開発へ移行します。
- 流通・小売の例では、小規模の構築費300万〜700万円から始め、必要に応じて中規模や大規模へ広げています。
失敗から軌道修正した観光システムの事例

成功談だけでなく、失敗の原因と立て直し方も発注側の学びになります。特に、なぜ失敗し、どう立て直したかが分かる実例は参考になります。
観光業界には、高額を投じたシステムが現場で使われず形骸化した例や、隠れコストで予算が大幅に超過した例があります。
発注側は、こうした失敗からの軌道修正を自社の投資に生かせます。論点は、現場を無視した開発と、ヒアリングやToBe設計による立て直しです。
現場を無視したシステムが形骸化した事例
現場とシステムのずれは、開発後の運用停止にも表れます。
- 要件把握の不足:現場ヒアリングをせずベンダー任せにすると、担当者の動きや繁忙期の特別運用に合いません。
- 利用の停滞:現場が電話・FAX・紙台帳に戻ってしまい、高価なシステムが使われずに残ります。
流通・小売でも、本部の理想と現場の判断がずれたことによる運用の破綻が報告されています。観光業界も、同じ構造を抱えています。
失敗の本質は、技術力や予算よりも、現場が予約をどう処理し、何に困っているかを起点に設計しなかった点にあります。観光現場には、慣行や繁閑差に応じた細かな取り決めがあります。
慣行や繁閑差を無視した理想論で作ると、投資が無駄になります。成否を分けるのは、投資額の大きさよりも、現場の業務に沿っているかどうかです。
現場ヒアリングとToBe設計で立て直した事例
立て直しでは、聞き取りから段階導入までを順番に進めます。
- フロント、予約、清掃、経理の担当者に、実際の業務と、無駄や手戻りを聞き取ります。
- 現状(AsIs)の業務フローを一覧にし、システムで改善した姿(ToBe)を設計します。
- OTA在庫の一元管理や受付から段階的に導入し、小さな成功を社内に定着させてから、CRMやデータ分析へ進みます。
この工程の進め方が、現場に使われるシステムと使われないシステムを分けます。
riplaは、フルスクラッチ受託と国内開発の立場から、現場の業務を起点にToBeを描き、段階的に定着させる進め方を重視しています。
事例を見るときは、華やかな成果よりも、なぜ現場で使われたかに注目すると、失敗を避ける参考になります。
まとめ
成功の鍵は、OTA在庫を一元化してダブルブッキングと機会損失を防ぐことにあります。そのうえで、セルフ化で人手不足に対応し、顧客データを統合して直販リピーターを育てます。補助金やSaaSを活用しながら、段階的に進めます。
在庫更新の自動化は年間数百時間、セルフ化はセルフレジの試算で年約756万円の人件費削減として、効果を数字で示せます。
非接触決済による回転率約50%向上も、観光地の飲食店では売上に直結する数字です。
最新機能よりも、現場と顧客に使われた理由を見て、自社の予約チャネル数、人手、顧客データの分散状況に合う施策から着手します。
riplaは、フルスクラッチ受託と国内開発を組み合わせ、観光現場の商習慣を踏まえた要件整理と、現場に定着するシステムづくりを支援します。全体像は完全ガイドもご覧ください。
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会社紹介
株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。
