旅行・観光業界のシステムの必要機能や標準機能の一覧について

旅行・観光業界のシステムの機能は、五つの機能群で整理できます。中核は予約・在庫管理とOTA連携で、残りの三つは日々の運営、顧客、省人化とデータ分析を支えます。必須機能は自社の業態と運用から見極め、標準機能と追加対応を分けて選びます。

全体の地図を先に見たい方は、旅行・観光業界のシステムの完全ガイドからご覧ください。

  • 予約・在庫管理:予約受付と在庫の一元管理
  • OTA連携:販売チャネルとの在庫・料金の連携
  • フロント・PMS:現場業務と宿泊情報の管理範囲
  • 顧客・決済:顧客情報と決済の連携方法
  • 省人化・分析:周辺連携とデータ活用の範囲

▼全体ガイドの記事
・旅行・観光業界のシステムの完全ガイド

予約・在庫管理機能

時間と結びついた在庫を中央に置き、客室・座席・ツアーの催行枠・体験の予約枠を注釈した図解
今日売れなかった客室は二度と売れないため、在庫管理には時間の視点が欠かせません。

旅行・観光業界のシステムの中核は、予約と在庫の管理機能です。流通・小売の在庫が「商品」を単位にするのに対し、観光業界では「客室」「座席」「ツアーの催行枠」「体験の予約枠」といった、時間と結びついた在庫を扱います。

なかでも大きな違いは、今日売れなかった客室は二度と売れないという点です。この性質が、在庫管理機能の設計を独特なものにしています。

客室・座席・催行枠の在庫を管理する機能

在庫管理機能には、客室タイプや座席種別ごとの残数管理、日付・期間ごとの在庫設定、予約に応じた自動引き当てが含まれます。たとえば宿泊なら部屋タイプごと、ツアーなら催行日ごと、体験プログラムなら時間枠ごとに在庫を持ち、予約が入るたびに残数を減らしていく仕組みです。この残数管理が正確でないと、流通・小売でいう売り越しにあたるダブルブッキングが発生します。

標準機能として備わっていることが多いのは、単純な残数管理までです。一方で、繁忙期に最低宿泊日数を設けることや、特定プランの販売を一部の日だけ止めること、催行人数の下限・上限を置くといった細かな在庫制御は、業態によって要否が分かれます。そのうえで、自社の販売ルールがどこまで複雑かを洗い出し、標準機能でカバーできる範囲と作り込みが必要な範囲を切り分けることが、機能選定の第一歩です。

とくに体験プログラムでは、ガイドやインストラクターといった人的リソースの予約枠と、用具や車両といった設備の在庫を同時に管理する必要があります。この要件は客室より一段複雑で、標準機能では収まりきらないことが多く、作り込みの対象になりがちです。自社の商品が「部屋」「座席」「枠」のどれに近いかを整理し、必要な在庫管理の粒度を見極めておくと、後の機能要件のずれを防げます。

料金プラン・需給連動価格を設定する機能

観光業界の予約機能では、素泊まりや朝食付き、連泊割引などのプランを管理し、需要に応じて日ごとに価格を変えるレベニューマネジメントの機能が欠かせません。流通・小売の価格マスタの出し分けと同じ発想ですが、観光業界は曜日や季節、イベント、残室数で価格が日々動きます。この料金設定は収益に直結するため、どこまで自動化するかで難易度が大きく変わります。

手動で料金を設定する基本機能はほとんどのシステムに備わっていますが、稼働率や競合価格から価格を自動で提案・調整する高度な機能は、専用ツールや作り込みの領域です。まずは手動でも全チャネルの料金を一括で変えられる機能を確保し、運用が回ってから自動化を検討する、という段階的な考え方が現実的です。

料金プランには、本体価格に加えて、オプションや付帯サービスの価格を組み合わせる機能も求められます。たとえば、送迎の有無や食事のグレード、体験のセット販売など、顧客が選んだ条件に応じて合計金額を算出する仕組みで、組み合わせが複雑になるほど作り込みが必要です。自社が提供したいプランの多様さを整理し、料金設定の柔軟性を見極めることが、機会損失を防ぐうえで役立ちます。

ポイント

残数管理と料金の一括変更が標準機能で足りるかを、自社の販売ルールに照らして見ると、作り込みが要るかどうかの目安になります。

OTA連携・サイトコントローラー機能

手動の在庫更新にかかる時間と、サイトコントローラーによる全チャネル自動反映を対比した図解
更新対象のチャネルが増えるほど、手作業の時間が積み上がります。

旅行・観光業界、とくに宿泊施設のシステムを特徴づけるのが、OTA連携とサイトコントローラーの機能です。複数の予約サイトに在庫を出しながら売り越しを防ぐには、各チャネルの在庫と料金を一元的に管理する仕組みが欠かせません。

流通・小売がEC・店舗・モールの在庫を束ねるのと同じ構造ですが、観光業界ではこの機能が事業の生命線になります。

在庫・料金を全チャネルへ自動反映する機能

サイトコントローラーは、自社サイトと各OTAの在庫・料金を一元管理し、予約が入れば全チャネルの在庫を即座に減らし、料金変更は全チャネルに一斉に反映する機能です。この自動反映があるため、フロント担当者が各OTAの管理画面を一つずつ開いて更新する手作業が不要になります。在庫更新が1チャネル1日10分かかっていた場合、5チャネルで年間約300時間に達する単純作業を、ほぼゼロにできる計算です。

機能選定で見るべきは、自社が出稿しているOTAに対応しているかと、予約情報の取り込み(予約が入ったことを自社システムに反映する)まで双方向でできるかです。在庫の押し出しだけで予約の取り込みが手動だと、結局は転記作業が残ってしまいます。

システムによって差が大きいのは、双方向連携を標準機能として備えているかと、対応OTAの追加に費用がかかるかです。ここは機能一覧で必ず確認すべき点です。

自社サイト予約エンジンと直販を支える機能

OTAへの依存を減らすには、自社サイトに組み込む予約エンジンが欠かせません。自社サイトから直接予約を受け付けられれば、OTA手数料を払わずに集客でき、利益率の改善につながります。予約エンジンには、空室・空席のリアルタイム表示やプラン選択、人数や日程の入力といった機能に加えて、決済までを完結させる機能が含まれます。

自社予約エンジンの機能で差が出るのは、操作性とスマートフォン対応です。観光客の多くはスマートフォンから予約するため、入力のしやすさや画面の見やすさが予約完了率を左右します。さらに、途中で離脱させない動線設計は、流通・小売のECにおけるカゴ落ち対策と同じ考え方です。

直販比率を高めたいなら、サイトコントローラーで在庫を守りつつ、使いやすい自社予約エンジンで顧客を自社チャネルに呼び込む、この両方をそろえた機能設計が求められます。

ポイント

複数チャネルを使うなら、在庫と料金の自動反映が双方向に対応しているか、対応OTAの追加に費用がかからないかを確かめることが、機能選定の目安になります。

フロント業務・PMS機能

PMSが扱うチェックイン・客室状況・宿泊者名簿・フロント会計を並べた図解
宿泊手続きと客室・会計の情報を一か所で扱います。

宿泊施設の運営を支えるのが、PMS(プロパティ・マネジメント・システム)と呼ばれるフロント業務の機能群です。チェックイン・チェックアウトや客室の清掃状況管理、宿泊者名簿の作成、フロント会計といった日々の運営業務を一元的に扱い、流通・小売でいうPOSや店舗運営システムに相当します。

チェックイン・客室管理・名簿作成の機能

フロント業務機能の基本は、予約情報をもとにしたチェックイン・チェックアウト処理、客室ごとの利用・清掃ステータスの管理、宿泊者名簿の作成です。宿泊者名簿は旅館業法上の義務にも関わるため、必要な記載項目を確実に記録できることが求められます。

これらは多くのPMSで標準機能として備わっていますが、自施設の客室構成や運営フローに合った形で使えるかは、導入前に確認が必要です。また近年は、セルフチェックイン端末やスマートフォンでの事前チェックインに対応する機能の需要が高まっています。

流通・小売のセルフレジ事例では、有人53人/時に対しセルフ監視で120人/時まで処理能力が向上したというデータがあり、チェックインのピーク処理にも同様の効果が期待できます。人手不足が深刻な観光業界では、こうした省人化機能を標準で持つか後付けできるかが、システム選びで欠かせない判断材料になります。

館内売上・物販・オプションを管理する機能

宿泊施設や観光施設では、宿泊・入場以外にも、館内レストラン、売店での物販、各種オプション体験など、さまざまな売上が発生します。これらを宿泊代金とまとめて管理し、チェックアウト時に一括精算できる機能があると、フロントの会計業務が大幅に効率化されます。

流通・小売でいうPOSの売上管理と物販在庫管理を、宿泊の枠組みに組み込んだものと考えると分かりやすいでしょう。館内売上の機能を充実させれば、顧客一人あたりの単価(客単価)を高める施策を打てます。さらに、後述のモバイルオーダーと組み合わせれば、宿泊客が滞在中に追加注文でき、館内消費が増えます。

観光施設のシステムでは、宿泊や入場という主たる収益に加え、こうした付帯売上をいかに取りこぼさず管理するかが、収益性を左右します。そのため、機能一覧を見るときは、付帯売上やオプションの管理がどこまでできるかにも目を向けるべきです。

ポイント

チェックイン、名簿、館内売上までを一つのPMSで扱えるか、そして省人化の機能が標準で備わるか後付けになるかが、導入後の運用の差を左右します。

顧客管理・CRM・決済連携機能

リピートと利益率を高めるには、顧客管理(CRM)と決済・会計連携の機能が欠かせません。予約や宿泊の履歴を顧客ごとに蓄積して再訪の施策につなげる機能と、決済から会計への流れを自動化する機能が、観光ビジネスの収益基盤を支えます。

宿泊履歴・嗜好を蓄積し再訪を促す機能

CRM機能の核は、顧客ごとの宿泊・利用履歴や嗜好、館内消費の記録を一元的に蓄積し、再訪の促進に活用することです。記念日に泊まった顧客への翌年の案内、特定プランを好む顧客へのおすすめ提案、しばらく来ていない顧客への再来訪の呼びかけなど、データに基づくアプローチを可能にします。

OTA経由の予約でも顧客情報を自社マスタにまとめられる機能があると、直販リピーターの育成につながります。ただし、CRM機能の効果は、導入後に既存データを整えてこそ表れます。前提として、紙台帳や複数システムに分散した顧客データを統合し、表記ゆれを整理するクレンジングが必要になります。

その移行作業を軽視すると、CRMが空っぽのまま使われなくなります。機能の有無だけでなく、既存データをどう取り込むかまで含めて、運用に乗る設計かを見極めておくことが大切です。

オンライン決済・会計連携を担う機能

決済機能では、クレジットカードの事前決済、現地でのキャッシュレス決済、各種QRコード決済への対応が求められます。とくに観光業界はインバウンド需要も大きいため、海外発行カードや海外のキャッシュレス手段に対応できるかが、機会損失を防ぐうえで欠かせません。

流通・小売の実証では、非接触決済は現金より会計が約20秒速く、ピーク時の回転率が約50%向上したというデータがあり、観光地の混雑時には決済の速さが売上に直結します。会計連携機能では、システム上の売上データを会計ソフトに連携させ、二重入力をなくします。日々の宿泊・物販・オプションの売上が自動で会計に流れれば、経理の締め作業が大幅に軽くなります。

ただし、決済手数料は売上の2.9〜3.5%程度かかるのが一般的で、これは見えにくいランニングコストとして利益を圧迫します。そのため、機能の便利さと、決済手数料を含む継続コストの両面を見て、自社の取引規模に見合った決済・会計連携の機能を選ぶことが、長期的な収益性につながります。

ポイント

予約や宿泊の履歴を顧客情報に統合でき、決済から会計まで手作業を挟まずにつながるかが、リピートと収益の両方を左右します。

省人化・データ分析・周辺連携の機能

予約・OTA連携・PMS・CRMという四つの機能群を支えるのが、省人化を担う機能と、蓄積データを経営に活かす分析機能、そして周辺システムとの連携機能です。これらは主役の陰に隠れがちですが、観光業界の人手不足と利益率の改善に直結するため、見逃せません。

セルフチェックイン・モバイルオーダーの省人化機能

省人化機能の中心は、セルフチェックイン端末やスマートフォンでの事前チェックイン、館内飲食のモバイルオーダーです。宿泊客が端末で事前にチェックイン手続きを終え、現地ではキーを受け取るだけになれば、フロントの対応工数が大幅に減ります。また、モバイルオーダーは注文を取りに行く工程をなくし、注文情報を直接キッチンプリンターへ流すことで、配膳と会計に人員を集中できます。

これらの機能の費用対効果は、流通・小売のセルフレジ事例が参考になります。たとえば、有人レジ5台をセルフ+監視2名に置き換えれば3名分の人件費が削減でき、最低賃金1,055円・月約63万円で年約756万円の削減になるとされています。

さらに非接触決済は現金より会計が約20秒速く、ピーク回転率が約50%向上するというデータもあります。省人化機能は、単なるコスト削減にとどまらず、人手不足の中で多くの顧客をさばく処理能力を高める機能だと言えます。

稼働率分析・レポートと周辺システム連携の機能

分析・レポート機能は、蓄積したデータを経営判断に活かすための機能です。稼働率や平均客室単価(ADR)、チャネル別の予約構成、客単価を一覧で見られると、伸びしろのある曜日や季節と、手数料が利益を圧迫するチャネルがわかってきます。そのため、流通・小売の売上分析と同じく、感覚ではなくデータで料金戦略やチャネル戦略を立てられます。

この機能の有無で、システムが業務処理の道具にとどまるか、経営の武器になるかが分かれます。また、周辺システム連携の機能も、業務全体の効率を左右します。決済代行サービスや会計ソフトのほか、メール配信ツール、館内のPOSや鍵管理システムなど、つなぐべき周辺システムは多岐にわたります。

これらと標準で連携できるか、APIが公開されているかは、将来の拡張性を大きく左右します。連携が弱いシステムを選ぶと、データが分断され、二重入力や転記作業が残ります。そのため、機能一覧を見るときは、単体の機能の充実だけでなく、周辺とつながる連携機能の広さにも目を向けることが、長く使えるシステム選びにつながります。

ポイント

省人化、分析、周辺連携の三つを、標準機能で足りるか、後から追加できるかの両面で見ると、長く使えるシステムかどうかの目安になります。

まとめ

旅行・観光業界のシステムの機能は、五つの機能群に集約されます。予約・在庫管理は時間と結びついた在庫を扱い、OTA連携・サイトコントローラーは複数チャネルを束ねる役割を担います。

フロント業務・PMSは日々の運営を支え、顧客管理・CRM・決済連携はリピートと利益率を高めます。省人化・データ分析・周辺連携は、人手不足への備えと経営への活用に役立ちます。

それぞれの機能は、在庫更新の自動化で年間数百時間の削減、非接触決済で回転率約50%向上、セルフ化でピーク処理能力の倍増といった数字で示せる効果につながります。

機能選びで見たいのは、多機能かどうかよりも、自社の業態と運営フローに必要な機能が過不足なく備わっているかです。そのうえで、どこまでが標準機能で、どこからが自社固有の作り込みかを見極めます。

宿泊・旅行会社・観光施設・体験提供事業者では必要機能が異なるため、自社の販売ルールと運営の実態から逆算して、標準機能で足りる範囲と作り込みが要る範囲を切り分けてください。

riplaはフルスクラッチ受託と国内開発を組み合わせ、観光現場の機能要件の整理から、現場に定着するシステムづくりまでを一貫して支援します。全体像を改めて確かめたいときは、完全ガイドをご覧ください。

会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。