海運業界のシステム開発で重要なのは、船上の通信が途切れても業務を止めず、陸上の管理部門と復旧後に正確なデータを同期できる仕組みを実現することです。
海運会社や港湾関連企業では、運航管理、用船契約、運賃計算、通関、船舶保守、荷役、会計まで多くの業務がつながっています。一方で、船舶は洋上を移動し、船員は多国籍で、荷主・フォワーダー・港湾・税関など社外の関係者も多いため、一般的な業務システムを導入するだけでは定着しません。本記事では、海運業界のシステム開発を依頼できる会社・ベンダーを6社紹介し、選定時に確認すべきポイントを解説します。
海運業界のシステム開発でパートナー選びが重要な理由

海運業界のシステムは、単一の社内業務を効率化するだけでなく、船上・陸上・港湾・荷主の情報を安全につなぐ基盤です。候補会社を比較するときは、開発言語や機能数だけでなく、通信制約、国際業務、データ標準、現場教育まで含めて評価する必要があります。
洋上と陸上のデータ連携を設計できるか
船上では常時高速通信できるとは限らないため、すべての処理をクラウドへ送る設計は危険です。航海日誌、機関データ、貨物情報などは船上のエッジ環境で一時保存し、通信回復後に差分同期する方式が現実的です。同期の重複や順序逆転を防ぐため、データの識別子、更新時刻、競合時の優先ルールまで要件定義に含めます。
複数の関係者と現場運用をまとめられるか
海運の現場では、船社の担当者、船長、外国人船員、港湾作業員、倉庫管理者、トラック事業者、フォワーダーが同じ案件に関わります。システムを先に作り込むと、入力責任が曖昧なまま二重管理が残ることがあります。海外から木質ペレットを船便輸入した港湾荷役の事例でも、入港時刻、サイロの空き状況、トラック計画を共有する定時連絡と安全チェックリストを先に整えたことが、事故防止と遅延抑制につながっています。高度なEDIの前に、業務ルールを標準化する視点が欠かせません。
株式会社ripla|コンサルから開発まで一気通貫で支援

riplaは、コンサルティングから開発まで一気通貫で支援できる企業です。IT事業会社として社内DXを推進してきた経験を活かし、ビジネスへの成果創出とシステムの定着支援に強みがあります。営業・顧客・生産・販売管理など、幅広い基幹システムの構築・導入実績があり、企業の業務要件に合わせて柔軟に対応できる体制を整えています。
特徴と強み
riplaの強みは、要件定義、業務整理、開発、導入後の定着までを分断せずに進められる点です。海運業界では、船上で入力する項目と陸上で承認する項目を分け、通信断が起きても現場を止めない運用にする必要があります。既存の電話や表計算をいきなり廃止するのではなく、重要な業務から段階的に置き換える計画を立てやすいパートナーです。
得意領域・実績
営業・顧客・生産・販売管理などの基幹業務を扱ってきたため、海運会社の業務を運航管理だけでなく、契約、請求、購買、保守まで一つの業務設計として整理したい企業に向いています。特定の海運パッケージへ無理に合わせるのではなく、航路マスタ、運賃、燃料油、為替、船舶・乗組員情報など、自社固有のマスタを洗い出してから開発範囲を決めたい場合に相談しやすい選択肢です。
NTTデータ|海貨・フォワーダー業務と通関連携に強い

NTTデータは、フォワーダーや海貨業者向けの「海貨業務システム」を提供しています。公式情報では、見積・料金表、輸出入、NVOCC、NACCSと連携した通関、保税倉庫の入出庫、債権・債務管理までを対象にしたWeb基幹システムと説明されています。
特徴と強み
業種テンプレートをベースにしながら、業務要件に合わせて機能を増減できる点が特徴です。輸出入書類のデジタル保管、貨物の輸送状況や関係者の作業ステータスの見える化、請求までの一元管理を重視する企業と相性があります。既存の通関・倉庫・請求データをつなぎ、部門間の二重入力を減らしたい場合に候補となります。
得意領域・実績
NTTデータの公式サービスページでは、NACCS連携による通関業務の効率化や、案件別採算管理にも触れています。船社そのものの航海計画を全面的に作り替えるというより、海貨・フォワーダー・通関・保税倉庫を含む物流業務の標準化から着手したい企業に向いています。船上データを扱う場合は、別途エッジ側の入力・同期方式と接続範囲を確認することが重要です。
NEC|港湾物流・通関のデータ連携とグローバルICT

NECは、物流・モビリティ領域のシステム開発や、グローバル企業向けのICT基盤を提供する総合ICT企業です。海運に近い領域では、Cyber Portと連携できる関税計算書システムを公開しており、Cyber PortのI/Vデータを取り込み、HSコード判定、関税計算、NACCSへの申告につなげる構成を示しています。
特徴と強み
複数企業のデータを連携するプラットフォーム、認証・セキュリティ、クラウド、AIなどを組み合わせられることが強みです。港湾内の貨物・車両・作業情報をまとめ、社内だけでなく外部関係者との情報共有を進めたい企業では、データ連携基盤から相談しやすいでしょう。海外拠点を含む運用では、日本側のガバナンスと現地事情を組み合わせる支援体制も確認できます。
得意領域・実績
通関、港湾、倉庫、輸配送など、陸上側の物流業務をつなげたい場合に適しています。Cyber PortやNACCSとの連携を要件に含める場合は、既存システムの接続方式とデータ項目の対応表を作成してから相談すると、開発範囲を具体化しやすくなります。船舶の運航管理や船上のオフライン処理まで一括で求める場合は、NECの基盤に加えて海事専門ベンダーとの役割分担も比較します。
SAP|海上貨物プロセスと基幹業務を統合

SAPは、海上貨物を扱う企業向けに、見積、書類、精算、輸送実行などのプロセスを統合するOcean Freight Softwareを提供しています。公式情報では、コンテナ輸送プロセスを一貫して管理し、例外対応に集中できるよう業務を整理する考え方が示されています。
特徴と強み
会計、購買、販売、在庫、サプライチェーンなどの基幹データと、海上貨物の業務を統合しやすい点が特徴です。複数国・複数法人をまたいで、運賃、契約、請求、支払を共通ルールで管理したい企業では、汎用ERPと海運向け機能を組み合わせる選択肢になります。標準機能を活かせる範囲を見極め、独自のVoyage採算ロジックをどこまで追加するかが費用と納期を左右します。
得意領域・実績
グループ経営や国際会計、取引先との業務プロセスを含む大規模な基幹刷新を検討する企業に向いています。ただし、SAP単体で洋上の通信断や船員向けUIを解決できるわけではありません。船上のデータ収集、オフライン蓄積、陸上ERPとの同期は、周辺システムや導入パートナーの設計力を含めて評価します。導入前に、現場業務を標準化する範囲と、海運固有の差別化領域を分けておくことが大切です。
Kongsberg Maritime|船隊管理と航海業務を海事専門ソフトで支援

Kongsberg Maritimeは、船舶・船隊の運用を対象とする海事テクノロジー企業です。K-Fleet Managementでは、計画保全、在庫、購買、品質・安全・環境、文書・証書、航海報告、船隊運用、ドック計画などを扱うソフトウェア群を提供しています。
特徴と強み
船舶管理の専門知識を前提に、陸上の管理部門と本船の作業を結び付けられることが強みです。保守部品の購買や証書管理、航海報告など、船舶ごとに分散しやすい情報を船隊単位で把握したい場合に適しています。2026年には、K-IMS、Vessel Insight、K-Fleetなど既存のソフトウェアを共通データ基盤のもとで統合するデジタルポートフォリオを発表しており、海事データの統合を進めています。
得意領域・実績
船舶の保守、証書、購買、航海報告を中心に、海事特有の業務を標準化したい船主・船舶管理会社に適しています。船上データを扱う場合は、通信量、保存期間、同期失敗時の再送、現場端末の言語対応を具体的に確認します。会計や顧客管理まで含む全社ERPを必要とするなら、SAPや国内SIerとの連携を前提に、どのシステムを正とするかを決めておきます。
Wärtsilä|船陸連携と航海最適化・脱炭素データに強い

Wärtsiläは、船舶・エネルギー分野の技術とライフサイクルサービスを提供する企業です。Fleet Optimisation Solutionでは、船上と陸上の間をつなぎ、航海計画や船隊の性能管理に、航海・技術・運航データを活用する構成を示しています。
特徴と強み
航路計画、気象・海況、燃料消費、船隊の稼働状況などを組み合わせ、運航の安全性と効率を高めたい企業に向いています。公式資料では、ルート計画を短時間で作成する機能や、燃料コスト削減を含む効果が紹介されていますが、効果は船種、航路、運用条件によって変わるため、自社船隊での試算が必要です。IMOやEU-MRVなどの規制対応データを、運航改善にも使いたい場合に検討価値があります。
得意領域・実績
運航部門が航海ごとの収支や燃料実績を把握し、陸上と船上で同じデータを参照したい場合に適しています。データを集めるだけでなく、Voyage単位で運賃、燃料油、為替、港費などを計算する場合は、会計・ERPとどの項目を連携するかを設計します。現場の入力負担を増やさないため、既存の航海機器や報告業務との重複も確認してください。
海運業界のシステム開発会社を選ぶポイント

6社は得意領域が異なります。海貨・通関が中心ならNTTデータやNEC、全社基幹刷新ならSAP、船隊・航海データならKongsberg MaritimeやWärtsilä、業務整理から自社仕様に合わせたい場合はriplaというように、解決したい業務から候補を絞り込みます。
実績と経験の確認方法
「物流に強い」という説明だけで判断せず、船社、海貨、港湾、倉庫など自社に近い業務の導入事例を確認します。特に、NACCSやCyber Portなど外部システムとの連携、船上と陸上の同期、外国人船員を含む教育の実績を質問してください。事例が守秘義務で公開できない場合でも、課題、対象業務、利用者数、移行方法、導入後の運用体制を匿名で説明できるかが判断材料になります。
技術力と専門性の評価
要件一覧には、オフライン動作、差分同期、端末の多言語化、権限管理、監査ログ、EDI・API連携、バックアップ、サイバーセキュリティを入れます。船舶のデータは安全運航に関係するため、単なる業務アプリよりも、通信断、機器障害、不正アクセスを想定した設計が必要です。ClassNKが紹介する海事サイバーセキュリティの考え方でも、デジタル接続が進んだ船舶システムはサイバー空間にさらされると説明されています。機能デモでは通信を切断した状態や、復旧後の同期を実演してもらいます。
プロジェクト管理体制の確認
海運業界では、現場の要望をすべて機能化するとカスタマイズが膨らみます。まず港湾荷役の定時連絡、安全チェック、入力責任、承認ルールを標準化し、次にシステム化する順序を提案できる会社を選びます。要件定義の責任者、データ移行担当、船上テストの方法、外国人船員への研修、障害時の連絡窓口、保守費用の計算方法を契約前に明確にします。大規模ERPでは、マスタ整備の責任分界が曖昧だと、移行遅延や業務停止のリスクが高まります。
よくある質問

海運業界のシステム開発では、費用だけでなく、船上の通信、業務標準化、データ連携、現場定着を一体で確認します。ここでは、発注前によく寄せられる質問に回答します。
海運業界のシステム開発会社はどう選べばよいですか?
最初に、対象業務を運航、船舶管理、海貨・通関、港湾荷役、会計・採算管理に分け、船上と陸上のどちらで使うかを整理します。そのうえで、同じ業務領域の実績、外部連携、通信断への対応、導入後の教育体制を比較します。すべてを一社で賄う必要はなく、海事パッケージとSIerを組み合わせる方法もあります。
洋上で通信が切れた場合もシステムは使えますか?
使えるようにするには、船上側に必要な機能とデータを持たせ、通信回復後に差分同期する設計が必要です。常時オンラインを前提にしたクラウド画面だけでは、航海中の入力や参照が止まる可能性があります。候補会社には、通信断、端末故障、同じデータを船上と陸上で更新した場合の競合処理を、画面やテスト結果で説明してもらいます。
海運システムの費用を抑えるにはどうすればよいですか?
まず、全業務を一度に置き換えず、遅延や安全上のリスクが高い業務から段階導入します。次に、標準機能へ合わせる業務と、競争力に直結するVoyage採算や独自の契約管理などをカスタマイズする業務を分けます。航路・船舶・運賃・取引先のマスタを発注者側で整理し、入力責任と更新ルールを決めておくと、後からの追加工数を抑えやすくなります。
まとめ

海運業界のシステム開発では、業務機能を増やすことよりも、洋上と陸上のデータを止めずに扱い、船員・港湾・荷主・通関などの関係者が同じルールで運用できることが重要です。株式会社ripla、NTTデータ、NEC、SAP、Kongsberg Maritime、Wärtsiläは、それぞれ業務整理・物流連携・基幹ERP・船隊管理・航海最適化という異なる強みを持っています。
自社の最初の一歩を決める
発注前には、現場の電話・FAX・表計算を業務フローに書き出し、どの情報を誰がいつ更新するかを決めます。次に、通信断でも必要な業務、多言語化が必要な画面、EDI・APIで連携する相手、Voyage単位で見たい採算項目を一覧にします。この準備ができていれば、各社から同じ条件で提案を受けられ、過剰カスタマイズや導入後の混乱を避けやすくなります。
参考にした公式情報
本記事の会社情報・サービス内容は、各社の公式情報を2026年8月時点で確認しています。参照先は、NTTデータ「海貨業務システム」、NEC「Cyber Port連携:通関デジタル化ソリューション」、SAP「Transportation Management / Ocean Freight Software」、Kongsberg Maritime「K-Fleet Management」、Wärtsilä「Fleet Optimisation Solution」、一般財団法人日本海事協会「ClassNK MRV Portal」、ClassNK「サイバーセキュリティ」です。
会社紹介
株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。
