物件管理システムの導入/開発事例や活用/成功事例について

物件管理システムの事例は、内見予約、鍵管理、報告・修繕、現場定着の4つの観点で読むと、自社がどこから着手すると効果が出やすいかが見えてきます。

この記事は発注企業の視点から、導入・開発・活用・成功の事例を取り上げます。全体像は物件管理システムの完全ガイドもご覧ください。

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内見予約の取りこぼしを削減した事例

Webでの24時間受付から、電話の取りこぼしと問い合わせ件数、成約率を経て月6件規模の成約を試算する流れ。
問い合わせ件数と成約率を当てはめると、取り戻せる成約数が見えてきます。

物件管理の現場には、Excel台帳や紙の契約書、電話・FAXによる入居者・オーナー対応が残っていることがあります。また、汎用のシステムが賃貸・売買・管理の商習慣に合わないと、現場で使われない例もあります。

自社の業態に近い導入事例や活用事例は、投資判断の精度を高める材料になります。中でも売上に直結しやすい効果の一つが、内見予約の取りこぼしを減らすことです。

営業時間外の問い合わせ20%を取り込んだ試算

ポータルサイトで物件を見た賃貸の見込み客は、営業時間外や混雑時に電話やメールで問い合わせることがあります。そのため、対応しきれない連絡は他社へ流れてしまいます。

取りこぼしの削減は、漠然とした話で終わらせず、自社の実数に当てはめて数字で見積もると説得力が増します。

  • 受付方法:物件情報と予約システムをつなぎ、Webで24時間受け付けることで、取りこぼしを構造的に減らします。
  • 取りこぼしの目安:小規模店では電話の5本に1本、約20%が取り逃がされているとの調査があります(bigdata-analytics.jp 2026)。
  • 売上試算:月の問い合わせ件数、成約率、1成約あたりの仲介手数料を掛け合わせて、増える売上を見積もります。

物件管理でもWeb予約で問い合わせを受け止めれば、成約機会が2割増える可能性があります。たとえば、月100件のうち20件を取りこぼし、成約率が3割なら、取り戻せる成約は月6件規模です。

仲介手数料を家賃1か月分として、売上増を概算できます。そのうえで、失っていた売上を数字で示せば、稟議の判断材料になります。

電話とWebの一元化でダブルブッキングを解消した事例

内見予約をWeb化しても、電話予約と台帳を別々に管理したままでは、同じ部屋に二組の内見が重なることがあります。ダブルブッキングは入居希望者の信頼を損なうため、予約枠を一つにまとめることが対策になります。

  • 予約枠:Webと電話の予約を、同じ物件管理システムで扱います。
  • 予約状況:物件、スタッフ、鍵の貸出状況をリアルタイムで突き合わせます。
  • リマインド:前日や当日に、SMSやメールで自動的に連絡します。

予約領域の一次データでは、リマインドの導入でノーショー率を30〜50%削減できるとする報告があります(SPRING 2025)。内見でも同じ仕組みが効き、営業担当の現地待機を減らせた事例もあります。

空振りの待機が減ると、営業担当は別の接客や物件提案に時間を回せます。さらに、予約を一つにまとめることは、省力化だけでなく売上機会の創出にもつながります。

ポイント

内見予約から手を付けるかは、月の問い合わせ件数と成約率を自社の数字に当てはめて、取りこぼしの規模を見積もれるかで判断します。見積もりの根拠があれば、稟議の場でも示せます。

入退室管理・スマートロック連携で無人内見を実現した事例

物件管理システムを中心にWeb予約、ワンタイム暗証番号、スマートロック、解錠ログがつながる図。
予約情報と解錠記録をつなぐことで、入室状況を後から確認できます。

人手が足りない管理会社では、無人内見が鍵管理の負担を減らします。Web予約とスマートロックを連動させると、鍵の貸出と回収をほぼ無人で行えます。その前提となるのが、物件・予約・電子錠を一つのシステムでつなぐことです。

ワンタイム暗証番号の自動発行で鍵管理を省力化した事例

無人内見の要は、Web予約に紐づくワンタイム暗証番号の自動発行です。まず、予約が確定すると、内見時間だけ有効な番号をスマートロックへ発行します。

  • 解錠と安全性:希望者はスマホに届いた番号で解錠し、時間経過後に番号が失効するため、又貸しや無断侵入を抑えられます。
  • 現地対応:担当者の同行が要らなくなり、1件ごとの人件費と移動時間を大幅に減らせます。
  • 入室記録:物件管理システムの予約データと、入退室管理システムの解錠ログを結びつけ、誰がいつ入室したかを確認できます。
  • 鍵の管理:「鍵が閉まっていない」「想定外の人物が入った」といった場合も責任を切り分けやすく、紙の貸出簿も要りません。

特に、内見数が増えても管理の工数が増えない点は、現場で評価されています。

電子錠の設置工事費まで含めて投資判断した事例

電子錠の投資額は、ソフトウェア以外の設備や工事にも左右されます。だからこそ、比べるときは機器と工事の費用も含めて見る必要があります。

  • 電子錠の費用:物件ごとの本体代に加えて、取り付け、配線、常時給電の工事費がかかります。
  • 導入範囲:一斉に導入する場合は、機器と工事の総額がシステム本体を上回ることもあります。
  • 追加設備:タブレットの盗難防止や常時給電にも、設備投資が必要になります。

競合の解説では、クラウド型予約システムの「初期0円・月額数千円」という安さが強調されがちです。

不動産の現場では、ハードや物理工事費を含めた総コスト(TCO:総所有コスト)で見ないと、投資判断を誤ります。そのため、システムはソフト、ハード、工事費の三点で捉えます。

なお、事例では内見数の多い人気物件から電子錠を設置し、効果を確かめたうえで対象を広げています。物件数と内見の頻度から設置範囲を見極めることが、成功の鍵です。

ポイント

無人内見を導入するかは、鍵の受け渡しにかかる人手と移動時間を、物件の内見頻度と照らして判断します。電子錠の工事費まで含めて総額で比べると、投資額の見誤りを減らせます。

オーナー報告と修繕ワークフローを自動化した事例

賃貸管理会社では、毎月のオーナー報告や入居者からの修繕依頼への対応に、多くの工数がかかります。そこで、自動化やワークフロー化により、間接部門の人件費を構造的に圧縮します。

その前提として、物件、契約、収支、修繕履歴を一つのデータベースにまとめておきます。そうすると、報告と修繕の業務をシステム上でつなげられます。

オーナー専用ポータルで月次報告を自動生成した事例

専用ポータルを使うと、オーナーは収支や空室状況を自分で確認できるようになります。担当者は、毎月の報告作業を帳票の自動生成に任せられます。

  • 確認できる情報:家賃の入金状況、空室状況、修繕履歴、収支を、オーナーがいつでも閲覧できます。
  • 報告作業:毎月のExcel作成と郵送・メール送付を、システム上の帳票の自動生成に置き換えます。
  • 担当者の時間:月末の作成負担が減り、その時間を空室対策やオーナー提案に充てられます。
  • 管理戸数の増加:管理戸数に比例して報告業務の人手が増えないことが、事例で最も評価された点です。

受付・予約の分野の一次データでは、業務時間の削減で月約98,200円相当の効果が出た試算があります。同じ考え方を報告業務に当てはめると、1棟あたりの作成時間に管理棟数を掛けて、削減できる人件費を見積もれます。

オーナーが最新の収支をいつでも確認できる透明性は、管理会社を乗り換えない理由にもなります。

修繕・原状回復をワークフロー化した事例

修繕依頼は、受付から完了報告まで、複数の工程を順に経ていきます。途中では業者手配や見積が続き、オーナー承認を経て施工へ進みます。電話やメールで都度処理すると、対応漏れや二重手配が起き、入居者の不満にもつながります。

  • 依頼管理:修繕依頼をシステム上でチケット化します。
  • 進捗共有:受付、手配中、施工中、完了の状態を、関係者が同じ画面で確認できます。
  • 原状回復:過去の修繕履歴や入居時の状態を、写真付きで記録します。

退去時に状態の記録があると、敷金精算の根拠が明確になり、入居者とオーナーの双方とのトラブルを減らせます。さらに、修繕履歴が蓄積すれば、設備の交換時期を見越した提案もできます。

台帳としてだけでなく、修繕という継続業務を回すワークフロー基盤として使ったことが、事例の成果につながりました。

ポイント

報告と修繕の自動化は、オーナー報告の作成時間と、修繕の対応漏れや二重手配の多さを比べて判断します。台帳としてだけでなく、修繕を回す基盤として使えるかも目安になります。

失敗から軌道修正した物件管理システム事例

現場ヒアリングから現状の業務フロー整理、あるべき姿の設計、効果の大きい業務からの段階的なデジタル化へ進む確認項目。
先に現場の業務を描き直すと、導入範囲を効果に合わせて広げられます。

事例の価値は、成功談だけでなく失敗談からも得られます。特に、発注側は、失敗の理由や立て直し方という実体験から多くを学べます。

物件管理システムの導入でも、相応の費用をかけたのに現場に定着せず、Excel台帳に戻った事例があります。

高機能すぎて現場が使わずExcelに逆戻りした失敗

高機能なパッケージは、自社の業務に合わないと定着しないことがあります。失敗した管理会社では、次のような経緯をたどりました。

  • 選定:他社の成功例を聞いて、高機能なパッケージを契約しました。
  • 入力負担:自社の業務に合わない項目が多く、従来より入力の手間が増えました。
  • 現場の反応:二重入力を嫌い、Excelの方が早いと感じて、システムを使わなくなりました。
  • 結果:高価なライセンスが活用されず、Excel台帳に戻りました。

失敗の原因は、現場の物件管理や契約、入居者対応を起点に設計しなかったことにあります。技術力や予算の問題ではありませんでした。さらに、賃貸・売買・管理の違いや会社ごとの運用ルールも無視していました。

成否を分けるのは機能数より現場業務への適合です。機能の多さだけで選ぶと、システムが使われないこともあります。

現場ヒアリングと段階移行で立て直した事例

立て直しでは、現場の実態を踏まえて業務の姿を描き直し、効果を確かめながら導入範囲を広げます。

  1. 開発や選定の前に、賃貸営業や管理、経理、修繕窓口の担当者へ聞き取り、物件と契約の管理の実態や無駄、手戻りを洗い出します。
  2. 現状(AsIs)の業務フローを一覧にし、あるべき姿(ToBeモデル)と、システムでの改善方法を設計します。
  3. すべてを一度に作り変えず、効果の大きい内見予約やオーナー報告から、段階的にデジタル化します。
  4. 現場が楽になったという小さな成功を浸透させてから、入退室連携や修繕ワークフローへ広げます。

現場ヒアリングと業務フローの一覧づくりが、使われるシステムと使われないシステムを分けます。

riplaは、フルスクラッチ受託と国内開発の立場から、業務を起点にした進め方と、段階を踏んだ定着を重視しています。

事例を読むときは、華やかな成果よりも、なぜ現場に使われたのかに目を向けることが、失敗を避ける近道です。

ポイント

システム選定で機能の多さより現場業務への適合を重視するかは、導入前に現場ヒアリングと業務フローの一覧づくりを済ませているかで判断します。済んでいなければ、段階的な移行から始めるとよいでしょう。

まとめ

成功した事例にも立て直した事例にも、現場業務から逆算した設計と、明確なROIに基づく段階的な投資という共通点があります。内見予約では約20%の問い合わせを取り込んだ試算があり、スマートロック連携は鍵管理の省力化につながります。

オーナー報告や修繕の自動化は、間接部門の人件費を圧縮します。一方で、現場ヒアリングを怠って高機能パッケージを導入すると、Excelに戻ることもあります。成否は、機能の多さよりも現場に合っているかどうかで決まります。

事例は機能の多さより、現場で使われた理由に注目して読みます。物件数と業態に照らし、効果の大きい内見予約やオーナー報告から、現場で使える一歩を始めましょう。

riplaは、フルスクラッチ受託と国内開発を組み合わせ、賃貸・売買・管理の商習慣に沿った要件整理と、現場に定着するシステムづくりを支援します。全体像は完全ガイドで確認できます。

会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。