生成AIシステム開発の導入/開発事例や活用/成功事例について

生成AIシステム開発の事例は、業務への定着、反復改善、データ品質という観点で読むと、自社での応用を判断できます。

ここでは、事例を評価する視点、大企業と行政・公共分野の取り組み、事例に共通する成功要因を順に見ていきます。各テーマの詳細は関連記事もご覧ください。

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生成AIシステム開発の事例で見るべき視点

生成AI事例を読む際の、現場での継続利用、効果の計測、作業時間、担当者と手順の4つの評価視点を示す図解。
技術の精度とあわせて、運用や業務の変化にも目を向けます。

生成AIの事例では、使われたツールそのものより、本番運用に至るまでの過程を読み解くことが大切です。

多くの企業は、華々しいPoCの成果を発表しても、本格展開の段階でつまずいています。

Canon ITソリューションズが228件のRAG事例を分析した調査では、成功(Good)は33%でした。

成功と評価されなかった事例の多くは、回答品質やデータ連携の課題が残ったまま、実用化に至っていません。

そこで、後続の事例を読む共通の視点を、2つに分けて整理します。

再現できるプロセスの型をつかむと、各社の取り組みを自社に応用できるか判断しやすくなります。

PoCの壁を越えたかどうかによる事例の評価

事例を評価するときは、デモの精度より、本番で使われ続けているかを見ます。

  • 現場での継続利用:日常的に使われているか
  • 効果の計測:定量的な効果を継続して確認しているか

PoCは限られたデータと理想的な条件で動くため、本番では多様な質問や不完全なデータに直面し、大きな隔たりが生じます。

この隔たりは「PoCの壁」や「PoC死」と呼ばれ、生成AI導入における最大の難所です。

東京ガスは、初期PoCの精度がほぼゼロでしたが、検索を反復改善して実用化しました。壁を越えた典型例として、改善を続ける価値を示しています。

業務プロセスの変革への踏み込み

生成AIを導入するだけでは、現場の業務効率が思うように上がるとは限りません。そのため、成功事例は技術の導入にとどまらず、現場での運用方法まで再設計しています。

  • 作業時間:導入後にどの業務がどれだけ短縮されたか
  • 担当者と手順:誰がいつ使い、従来の作業をどう置き換えたか

住友商事はMicrosoft 365 Copilotを全社で使い、文書作成や会議準備、情報検索などの業務を変えました。その結果、月間約1万時間を削減し、年間約12億円のコストも減らしました。

実益を得るうえでは、技術そのものより、業務がどう変わったかを見ることが鍵になります。

ポイント

自社で応用できそうかは、デモの精度より、本番で使われ続けているかと、業務の進め方がどう変わったかで判断するとよいでしょう。

大企業における生成AI活用の成功事例

大企業の事例は、投資規模に応じた効果を数値で示すものが多く、成果試算の参考になります。

住友商事は全社展開でROIを生み、東京ガスは技術課題を改善で乗り越えました。

両社の事例からは、異なる成功要因が見えてきます。

住友商事:全社導入で年間約12億円のコスト削減

この事例の成果は、利用範囲と対象業務の2つの観点から見ていきます。

  • 全社規模の導入:一部部署の実験にとどめない
  • 反復作業への活用:メール、議事録、資料作成を支援する

導入により、月間約1万時間の削減と、年間約12億円相当のコスト削減を実現しました。全社員の日々の小さな時短が積み重なり、大きな総量になったためです。一部の高度な業務を変えるより、全員の日常業務を軽くする方が、総量として大きくなる場合があります。

社内教育や利用ガイドラインの整備も、利用が定着して効果を最大にするためには必要です。

難しい課題に絞り込む前に、全社員に共通する反復作業を洗い出して生成AIを当てはめることが、成果への近道です。

東京ガス:初期精度ほぼゼロから実用化へ至った反復改善

東京ガスの事例は、初期精度が低くても改善を続けて実用化できることを示しています。

  • チャンキングの見直し:文書を区切る単位の調整
  • 検索手法の改善:キーワード検索とベクトル検索の組み合わせ

同社は、社内文書を検索して回答するRAG(検索拡張生成)を構築しました。当初のPoCでは回答精度がほぼゼロでしたが、原因を特定しながら技術改善を反復しました。その結果、回答精度は実用レベルに上がり、本番運用に至りました。

初期精度が低い段階は、改善を始める出発点になります。また、実用化の分かれ目は、モデルの優劣に加えて、社内データの前処理と検索設計に工数をかけられるかどうかにあります。PoCで精度が出なくても、原因を分析して改善を重ねれば、実用化を目指せます。

ポイント

大企業の事例は、全社に広げた取り組みと、技術課題を改善で乗り越えた取り組みに分けて見ると、自社の状況に近いものを選びやすくなります。

行政・公共分野におけるAIエージェント活用事例

札幌市の旅費事務における規程や書類の確認と、日本銀行の金融市場モニタリングにおける情報収集や一次分析を対比する図解。
定型事務の確認から市場情報の整理まで、補助する作業が広がっています。

生成AIの活用は行政・公共分野にも広がり、複数の作業を自律的に進めるAIエージェントの実証や導入が進んでいます。

ここでは、定型業務を自動化した札幌市と、金融市場の監視に応用する日本銀行の取り組みを取り上げます。

札幌市:旅費事務のAIエージェントで処理時間27.2%短縮

札幌市は両備システムズと連携し、旅費事務にAIエージェントを活用しています。

  • 規程の確認:旅費精算の金額を規程に照らす
  • 書類の確認:ルールに沿った書類の処理

旅費精算は、ルールが明確な一方で手作業が多い定型業務です。そのため、AIが確認と処理を担い、職員は例外対応や最終判断に集中できます。

この取り組みで処理時間は27.2%短縮しました。また、規程やマニュアルが整った業務は、効果を短期間で測りやすい対象です。

27.2%は慎重な行政組織で得られた実績ですが、民間企業にも現実的な目標値として参考になります。

日本銀行:金融市場モニタリングへのAIエージェント実証

日本銀行は、金融市場のモニタリングにAIエージェントを使う概念実証・実装を公募しました。

  • 情報収集:ニュースや市場データを集める
  • 一次分析:異常や兆候を把握する作業を補助する

市場監視では膨大な情報を常に確認する必要があります。人手だけでは網羅性と速度を両立しにくく、専門人材の判断にも負荷がかかります。

AIが収集と一次分析を担えば、専門人材は高度な判断に注力できます。また、専門業務でも情報収集や一次整理から自動化できる可能性があります。

この取り組みは、生成AIが文章生成だけでなく、専門性の高い分析も補助しうることを示しています。さらに、公的機関が慎重に実証を進めていることも、専門領域で現実的な選択肢になりつつある裏付けです。

ポイント

規程やマニュアルが整った定型業務は、短期間で効果を測りやすいため、行政・公共分野の事例を自社に当てはめるときの出発点になります。

事例に共通する成功要因と自社への応用

生成AI導入における小規模な試行、段階的な展開、文書の整理、資料の整備という4つの確認項目を示す図解。
進め方とデータの準備を並行して整える構成です。

事例を横断して見ると、生成AIシステム開発を成功させた組織には共通点があります。自社に応用できる要因を、実践に結びつける視点で整理します。

小さく始めて改善を繰り返す姿勢

最初から完璧を目指すより、対象を絞って始め、効果を測りながら改善していく進め方です。

  • 小規模な試行:効果が測りやすい一つの業務で運用する
  • 段階的な展開:成果を示してから対象を広げる

東京ガスは初期精度がほぼゼロの段階から改善を重ね、住友商事は日常業務から展開を広げました。

生成AIは、現場の声を取り込みながら育てていくものです。導入直後に最大の効果が出るとは限らないため、現場のフィードバックを計画に反映していく前提で進めます。

この進め方はPoCの壁を越える助けとなり、投資対効果を説明する材料にもなります。

データ品質への投資

AIに読み込ませるデータの品質も、成功事例に共通する要因です。

  • 文書の整理:社内資料やマニュアルを最新の状態に保つ
  • 資料の整備:古い規程や重複資料を点検する

東京ガスは精度改善のため、社内文書のチャンキングを見直しました。

Gartnerは、AIプロジェクトの60%が2026年までにデータ不足や品質の問題で失敗すると予測しています。

生成AIツールを選ぶ前に、参照する文書やマニュアルが整理されているかを確かめておきます。高性能なモデルであっても、古い規程や重複資料が残っていると、期待した精度を得られない場合があります。

データを丁寧に整えることは、成功事例を再現するうえで重要です。また、品質を重視した組織の取り組みも、成功事例として残っています。

ポイント

自社での応用では、小さく始めて改善を続けられる体制と、参照する文書の整備を導入計画の初めに組み込めるかが判断の目安になります。

まとめ

導入と成功事例を、PoCの壁の越え方と業務プロセスの変革という視点から見てきました。

住友商事は全社の日常業務への展開で、年間約12億円のコストを削減しました。東京ガスは初期精度ほぼゼロから反復改善し、本番運用に至りました。

札幌市は旅費事務のAIエージェント化で、処理時間を27.2%短縮しました。日本銀行は金融市場モニタリングへの活用を進めています。

事例に共通するのは、小さく始めて改善を続ける姿勢と、データ品質への投資です。加えて、PoCの壁の越え方と業務プロセスの変化も、事例を読む視点になります。

生成AIの成果は、現場に定着し、作業をどれだけ変えたかで捉えます。効果を測りやすい定型業務から始め、データを整えたうえで、現場の声を取り入れて対象を広げます。

導入や開発を検討する際は、PoC後の改善設計まで見据え、信頼できる開発パートナーへの相談から始めてみてください。

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株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。