生産管理システムのモダナイゼーションの事例/成功事例について

生産管理システムの刷新は、現行業務の分析、重要領域からの段階的な移行、効果の数値化の順に進めると、現場を止めずに成果へつなげられます。

他社の刷新方法や無停止の更改、成果への相談に加え、現場の壁や解決過程へのニーズも高まっています。全体像は生産管理システムのモダナイゼーションの完全ガイドもご覧ください。

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・生産管理システムのモダナイゼーションの完全ガイド

生産管理システムの刷新が求められる背景

生産管理システムを中心に、業務変更、障害原因、新設備導入、生産計画への4つの影響を注釈線で示した図。
影響はシステム内部にとどまらず、工場の運用へ広がります。

刷新事例を読む前に、多くの製造業が更改に向かう背景を押さえておきます。生産管理システムは、10年、20年と稼働や改修を重ねるうちに老朽化し、ブラックボックス化することがあります。

経済産業省は、老朽化してブラックボックス化したレガシーシステムを放置すると、2025年以降に年間最大12兆円の経済損失が生じるリスクがあると指摘しています(出典:経済産業省)。この問題は「2025年の崖」と呼ばれ、生産管理も例外ではありません。

JUASでは約7割の企業が既存システムのレガシー化を課題視しています(出典:JUAS)。たとえば製造現場では、古い言語の工程実績・原価ロジックを改修し、設計の意図を知る担当者が退職した例もあります。

レガシー化の課題と経済損失のリスクを踏まえて、刷新事例を読み解いていきます。

生産管理特有のレガシー化リスク

生産管理のレガシー化には、一般的な業務システムとは異なるリスクがあります。工程実績、品質記録、原価計算のルールが工場の業務と深く結びついているためです。具体的には、次のような影響が生じます。

  • 業務変更が難しい:ロジックがブラックボックス化し、仕様変更に手を入れにくい状態です。
  • 障害原因を追いにくい:処理内容を把握できず、原因究明に時間がかかります。
  • 新設備を導入しにくい:古いMES(製造実行システム)やIoT機器との連携を妨げます。
  • 生産計画に影響する:夜間バッチが長時間化し、翌朝の計画に間に合わない場合があります。

安易に置き換えると、工程実績や品質トレーサビリティ、原価計算の按分ルールが変わり、現場が回らなくなる恐れがあります。さらに、保守できる技術者が市場から減りつつあることも、製造業のレガシー生産管理における問題です。

生産管理特有のリスクが表面化する前に刷新した企業の事例を、次の成功事例で紹介します。

「いつかやる」が許されなくなった理由

かつては、稼働中のシステムには触らない判断が一般的でした。しかし、保守人材の不足と機器の保守期限切れが重なると、先送りそのものがリスクになります。さらに、刷新には移行準備の時間もかかります。

  • 保守人材が減る:古い言語を扱う技術者が定年を迎えています。
  • 機器の保守が終わる:サーバーのサポート終了後は、障害を修理できない恐れがあります。
  • 早めに着手する:成功事例の企業は問題が迫る前に動き、慌ただしい移行で計画に不備が出るのを避けました。
  • 段階的に進める:時間と費用はかかりますが、計画的に区切って進めることが成果につながります。

ポイント

刷新を先送りにするか迷うときは、工程実績や原価計算への影響と、保守人材や機器の保守期限が重なっていないかを、あわせて見て判断します。

製造業の生産管理システム刷新の成功事例

COBOL基幹系刷新の約16ヶ月の期間と、夜間バッチ処理時間80%削減、サーバー保守費約65%削減の成果を示す3パネルの図。
処理性能と運用コストの両面に成果が表れています。

中心となるのは、従業員約1,200名の製造業がCOBOL基幹系を刷新したケースです。このケースでは、夜間処理の高速化と保守費の削減を実現し、進め方にも参考になる点があります。

COBOL基幹系を16ヶ月で刷新したプロセス

同社のCOBOL基幹系は、工程実績の収集、在庫・原価管理、夜間バッチによる日次集計を担っていました。改修を重ねた結果、処理ロジックがブラックボックス化し、保守できる技術者の確保も難しくなっていました。

刷新前には、次のような課題を抱えていました。

  • 夜間処理の長時間化:バッチ処理の所要時間は約8時間でした。
  • 朝の計画への影響:翌朝の生産計画の立案に支障をきたしかけていました。
  • 保守人材の不足:COBOL技術者の確保が、年々難しくなっていました。

同社は現行業務を新基盤へ移した後、段階的に作り替える方法を選びました。まず、リホストに近い形で新しいインフラへ載せ替え、土台を整えています。

その後、業務上重要な夜間バッチや原価計算から再構築しました。稼働中のシステムと並走させ、リスクの高い領域を優先することで、現場を止めずに移行しました。

プロジェクトは約16ヶ月で完了しました。期間内に収まった要因は、現行ロジックを洗い出して優先順位を付け、置き換える範囲を段階的に区切ったことです。また、全面同時刷新を避けたことが、事故のない切り替えにつながりました。

夜間バッチ80%短縮・保守費65%削減という成果

刷新後の成果は、処理時間と保守費の数値に表れています。

  • 夜間バッチ:約8時間から90分に縮まり、80%削減しました。
  • サーバー保守費:年間2,400万円から850万円へ下がり、約65%の削減です。

処理時間が短くなったことで、翌朝の生産計画や工程指示の立案に余裕が生まれ、現場の意思決定も早まりました。夜間バッチの遅延は翌日の操業に直結するため、この改善の影響は小さくありません。

老朽機器や保守の難しいソフトウェアは、大きな固定費を生みますが、削減した保守費はIoT連携や品質トレーサビリティの高度化に回せます。刷新は、老朽化への対策にとどまらず、処理性能と運用コストの両面で投資対効果を生む経営課題です。

効果を測れる形にしたことが、社内の合意形成と成功の鍵になりました。

ポイント

段階的な刷新で現場を止めずに進められるか迷うときは、重要領域から移し、稼働中のシステムと並走させる計画になっているかを見てください。

業務分析と可視化で成果を出した周辺事例

生産管理システムは、入れ替えだけで進めると効果が半減します。中心事例でも、現行業務を洗い出した進め方が成功を支えていました。

周辺事例からは、刷新前の業務分析と、刷新後の運用を支える可視化を確認できます。自社の刷新を検討する際の参考にもなります。

業務プロセス分析を先行させたイオングループの事例

イオングループは、RPA導入に先立って業務プロセスの分析を徹底しました。その結果、月間700時間の業務削減を実現したと報告されています(出典:イオングループ)。重要なのは、ツールを導入したことよりも、事前の分析で何を自動化するかを見極めた点です。

  • 現行業務を洗い出す:工程実績の収集や原価計算のロジックが、確認の対象です。
  • 見直す対象を決める:何を残し、何を作り替えるかを判断します。

古いシステムをそのまま新基盤へ写すと、非効率な業務も持ち込んでしまいます。一方で、刷新を機に業務を見直せば、投資効果を高められます。

着手前の業務分析は、システム刷新の成否を大きく左右します。生産管理では工程や原価が絡み合うため、現行業務を見える形にして、ムダや属人化を見つけ出すことが欠かせません。

運用基盤を可視化したユニリタの事例

ユニリタの事例は、刷新後のシステム運用を効率化する方法を考える参考になります。ユニリタは、ネットワーク機器約200種・30,000台と、10,000台規模のサーバーから通信ログを集計する仕組みを構築しました。

ログは1日あたり約10億件にのぼります(出典:ユニリタ)。この仕組みで保守費の高い機器を特定し、運用作業の負担を従来の5分の1に圧縮しました。さらに、数億円規模の投資対効果も生み出したと報告されています。

可視化によって、見えにくかったコストや非効率がデータで明らかになり、改善策を講じられるようになりました。生産管理の刷新後も、工程や設備のデータを把握する基盤が役立ちます。

  • データを集める:IoTやMESから、工程や設備の情報を集めます。
  • 状態を見える化する:ボトルネック工程や保守コストを継続して把握できます。

刷新時にデータを集めて見える化する仕組みを組み込めば、刷新後の改善を続けられます。刷新そのものを、データ活用の出発点と位置づけられます。

ポイント

刷新前に業務分析と可視化をどこまで行うか迷うときは、ムダや属人化を洗い出せているかを基準にすると、判断の見通しが立ちます。

成功事例から学ぶ生産管理刷新の教訓

生産管理刷新の成功要因として、段階的な移行、業務分析と可視化、効果の数値化を並べたチェックリスト図。
移行・準備・評価の観点がそろうと、計画を見通しやすくなります。

成功事例では、段階的な移行、事前の業務分析と可視化、効果の数値化が共通していました。最後に、移行計画の不備が招くリスクも見ておきます。成功事例の裏側にある落とし穴を知ることも、刷新を進めるうえで欠かせません。

成功事例に共通する3つの要因

生産管理の刷新で成果につながった要因は、移行方法、着手前の準備、実施後の評価に整理できます。

  • 段階的に置き換える:重要領域から移し、稼働中のシステムと並走させる進め方です。
  • 業務を分析・可視化する:残す処理と作り替える処理の見極めが、刷新の成否を分けます。
  • 効果を数値で測る:刷新前に指標を定め、刷新後の変化を確認します。

中心事例では、夜間バッチや原価計算から優先して置き換え、現場を止めずにリスクを抑えました。生産管理は稼働を止められないため、全面同時刷新を避ける進め方が有効です。

イオングループは業務分析を先行させて月間700時間を削減し、ユニリタは運用基盤を可視化して作業負担を5分の1にしました。分析と可視化の質が、刷新の効果を左右します。

中心事例の成果を見ると、夜間バッチを80%短縮し、保守費を65%削減しました。効果を数値で示すと、社内合意や投資判断を進めやすくなります。また、評価指標と、刷新後に変化を測る仕組みをあらかじめ用意しておくと、投資回収や次の改善に結び付けられます。

移行計画の不備が招くリスクという反面教師

移行計画の不備が招いた事例から、刷新時に注意したい点を整理します。

  • 移行計画を詰める:計画の甘さが刷新の成否を左右します。
  • 全面切り替えを避ける:想定外の障害で業務全体が止まり、出荷や生産ラインに影響する恐れがあります。
  • 段階的に移行する:成功事例は全面切り替えのリスクを避けるため、稼働中のシステムと並走し、効果を測りました。

江崎グリコでは、基幹システムの切り替え時に障害が発生し、チルド商品の全品出荷が止まりました(出典:江崎グリコ)。原因は、移行準備の不十分さにあるとされています。

この事例は、刷新の成否が移行の設計によって左右されることを示しています。また、移行事故を防ぐ設計を考えるうえでも参考になります。

ポイント

刷新計画を見直すときは、段階的な移行と事前の分析、効果の数値化が入っているか、全面切り替えに頼る計画になっていないかを見てください。

まとめ

生産管理システムのモダナイゼーションを、成功事例の数字とともに振り返ります。

従業員約1,200名の製造業は、COBOL基幹系を約16ヶ月で刷新しました。夜間バッチは約8時間から90分へ短縮し、サーバー保守費は年間2,400万円から850万円になりました。

イオングループは業務分析を先行して月間700時間を削減し、ユニリタは運用基盤の可視化で作業負担を5分の1にしました。江崎グリコの事例では、移行時の障害でチルド商品の全品出荷が停止しました。

背景には、「2025年の崖」と呼ばれる問題があります。経済産業省は、レガシーシステムを放置すると2025年以降に年間最大12兆円の経済損失が生じるリスクがあると指摘しています(出典:経済産業省)。さらに、約7割の企業がレガシー化を課題視しています(出典:JUAS)。

刷新では、現場を止めない段階移行、業務分析と可視化、効果の数値化が大切です。工程実績や品質トレーサビリティ、原価計算が複雑に絡みます。さらに、IoT・MES連携も加わるため、進め方を誤ると重大事故につながりかねません。

自社で刷新を検討する場合は、まず現行業務を見える形にして、重要領域を特定します。そのうえで、稼働中のシステムと並走しながら、段階的に置き換える計画を立てるとよいでしょう。

先行事例の堅実な進め方から学ぶことは、自社の刷新にも役立ちます。加えて、自社ならではの成功事例を、少しずつ築いていけます。

会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。