稟議システムの導入/開発事例や活用/成功事例について

稟議の電子化は、書類をPDFにするだけでなく、承認業務を見直して進めることで、コスト削減と意思決定の迅速化につながります。

発注企業の視点から見ると、事例はコスト、承認ルート、他システムとの連携、立て直しの4つに分けて読めます。稟議システムの全体像は、下記の完全ガイドにまとめています。

▼全体ガイドの記事
・稟議システムの完全ガイド

稟議の電子化でコストとリードタイムを削減した事例

印紙税、郵送資材費、事務人件費の年間削減額を3つのパネルで示した図
削減額は費目ごとに異なり、事務人件費には電子化後の費用も残ります。

導入事例で分かりやすい成果は、紙とハンコの稟議を電子化して得られる、コスト削減とリードタイムの短縮です。

紙の稟議では、申請書の印刷や押印、決裁者を待つ時間、ファイリングが発生します。こうした手作業が意思決定を遅らせ、間接コストを増やす要因になります。

月20件の電子化で年96万円を削減したROIの実例

電子化の効果を数字で確かめるには、コスト削減のシミュレーションが役立ちます。

月20件の契約・申請を電子化した試算では、年間約96万円の削減につながります。

  • 印紙税:年48万円から0円
  • 郵送資材費:年12万円から0円
  • 事務人件費:年48万円から12万円

この試算は、紙運用と比べた固定費の削減額です。

自社の削減額も、月の稟議・契約件数、1件あたりの処理時間、人件費単価から概算でき、社内の稟議を通すための材料になります。

印紙税については、契約金額が5,000万円超〜1億円以下なら、1件あたり6万円の印紙税がかからなくなります。たとえば、7,000万円規模の契約なら、1件あたり6万円の削減になります。

スマホ承認で意思決定リードタイムを短縮した事例

稟議システムは、コスト削減に加えて、意思決定のリードタイムも縮められます。現場で特に歓迎されるのは、この短縮です。

  • 外出先から承認:スマホやタブレットで承認・差し戻しできます。紙の稟議は決裁者不在で何日も止まることがあります。
  • 機会損失を抑制:仕入れの値決め、設備投資、人材採用では、承認の遅れで好機を逃す場合があります。
  • 停滞箇所を改善:申請から決裁までの日数を一覧にし、滞りやすい承認ステップを洗い出せます。
  • 業務時間の短縮:岡山県環境保全事業団は遠隔申請で1件あたり5分以上を短縮し、年間で推計150万円分の人件費削減につながったと報告しています。
  • 組織の意思決定を促進:スマホ承認は省力化に加え、承認全体のスピードを高める投資です。

ポイント

削減額は、印紙税・郵送費・事務人件費を項目ごとに分け、自社の月の件数を当てはめると見積もれます。契約金額によって印紙税の削減幅が変わる点も、判断材料として加えておくとよいでしょう。

複雑な承認ルートを再設計して定着させた事例

既存ルールの確認から条件整理、規程化、承認ルートの自動分岐へ進む4段階の図
規程に整理した条件が、分岐の土台になります。

一般的な申請ツールと異なり、稟議システムでは金額や部門、案件種別に応じて承認ルートが分岐します。そこで、成功事例では、既存の承認ルールを丁寧に洗い出し、組み直してから電子化しています。

金額条件で承認ルートを自動分岐させた事例

多くの企業では、稟議の決裁権限を金額によって細かく定めています。

  • 金額別の権限:10万円までは課長、100万円までは部長、それを超えると役員や社長が承認する例があります。
  • 紙運用の課題:申請者が承認順を覚える必要があり、ルート間違いや決裁者の飛ばし忘れが起きます。
  • 自動分岐:導入事例では、申請金額に応じた承認ルートを自動で組み立てています。

自動分岐を実現するには、導入前に条件と承認者を徹底して洗い出し、決裁権限規程に整理しておくことが欠かせません。そうしておくと、後の手戻りを防げます。

分岐の条件には、金額、部門、勘定科目などがあります。

規程が曖昧なままだと、リリース後に必要な役員承認が漏れるおそれがあります。

必要な承認者が抜けたルートは、ガバナンス上の問題を招きます。

事前の整理は、不適切な決裁を防ぎ、内部統制の強化にもつながります。

申請処理を約4割削減した団体のBefore/After

承認ルートの再設計と電子化を組み合わせたKEC関西電子工業振興センターは、申請処理業務全体を約4割削減したと報告しています。

  • 導入前:申請書の作成、回付、押印、転記、保管が個別の手作業でした。
  • 導入後:作業が一つのワークフローにまとまり、承認後のデータが次の処理へ引き継がれます。

転記やダブルチェックが減ったことに加え、入力したデータを会計や帳票に流用できた点も、削減に寄与しました。

成果が出たのは、業務フローを見直してからシステムを導入したためです。そのため、ツールの機能だけでなく、業務そのものをどう設計し直したかに注目すると、自社への応用が見えてきます。

ポイント

承認ルートは、既存のルールを洗い出して決裁権限規程に整理してから電子化すると、分岐条件のずれを防ぎやすくなります。規程が曖昧なままだと、必要な承認者が抜けるおそれがあります。

稟議から契約・会計までつなげた事例

承認済みの内容を中心に、契約締結、支払処理、予実管理、証跡の追跡がつながる図
承認時の記録を引き継ぐことで、後続業務も追いやすくなります。

投資の効果を最も大きくするのは、契約管理や会計・経費精算といった周辺システムとの連携です。承認内容を契約締結、支払処理、予実管理へ引き継げば、一連の流れを自動化できます。二重入力やデータの不整合を減らせる点が、大規模企業が投資する最大の理由です。

稟議承認から電子契約へ自動連携した事例

取引先や契約条件の承認後に、その内容を電子契約システムへ引き継ぐ連携の事例があります。

  • 従来の手続き:担当者が契約書を作成・送付し、相手方の押印を待っていました。
  • 連携後の手続き:承認済みの内容から契約へ移行でき、未承認の契約を誤って送るミスも防げます。
  • 導入状況:2025年の調査では電子契約の導入率は78.3%でした。
  • 送信料:1件あたり税込110〜220円程度が相場です。月50件の場合、基本料を含めて月額2万円前後の製品もあります。
  • 証跡の追跡:稟議と契約の記録がつながり、承認者や契約内容を後から確認できます。

一気通貫で扱うと、いつ誰が何を承認し、どの契約を結んだかを証跡から追えます。また、稟議と契約の記録は、監査対応やガバナンスの強化にも役立ちます。

低コストのSaaSでスモールスタートした事例

低コストのワークフローSaaSを入口に導入した事例もあります。

  • 初期費用:無料で始められる製品があります。
  • 月額料金:月額300〜800円/ユーザー程度から使える製品が多くあります。
  • 試行範囲:一部の稟議種別や部門で効果と利用状況を確かめてから、連携投資へ進みます。
  • 拡張:取引量が増え、標準機能で要件を満たせなくなれば、契約・会計連携や独自の承認ロジックを含むフルスクラッチへ移行できます。

riplaはフルスクラッチ受託と業務伴走の立場から、段階的に拡大する進め方を重視しています。

最初の導入範囲は、発注側が自社の規模と稟議件数に合わせて決めます。

他社システムから乗り換えた移行事例

既存の稟議・契約システムから別の製品へ乗り換える事例もあります。新規導入と違って、過去データの引き継ぎが最大の論点になります。

  • 乗り換えの理由:従量課金で総額が膨らむ、他システムと連携できない、現場で使われず形骸化するなどがあります。
  • データの引き継ぎ:契約日、当事者、金額などのメタデータを保つと、過去案件の検索性を維持できます。
  • 切り替え時期:旧契約期間中に新システムを並行稼働し、移行後に旧システムを解約する進め方が一般的です。
  • 紙契約の移行:すべてをスキャンするのは現実的でないため、有効期限が残る契約や更新が近い案件からデジタル化します。

乗り換えを考える企業が事例から学ぶべき核心は、解約と新規契約の時期調整など、比較記事では語られにくい移行の実務です。

ポイント

連携は、承認後の契約・支払・予実管理へどうつなぐかを先に決めておくと、二重入力を減らす効果を得やすくなります。連携の規模は、一部の稟議種別から試して、取引量に合わせて広げる進め方が現実的です。

形骸化から立て直した稟議システム事例

導入事例からは、成功の話だけでなく、失敗から学べることもあります。たとえば、システムが使われず、紙の稟議に戻ってしまう形骸化の事例があります。

発注側は、なぜ現場で使われなくなったのか、どう立て直したのかを学べます。こうした失敗の経験は、これから投資する企業の判断材料になります。

使われず放置された形骸化の教訓

形骸化の事例では、導入後に現場が紙の稟議へ戻り、システムが使われなくなりました。

  • 設計のずれ:例外処理や部門独自のルールを無視して標準フローを当てはめた結果、現場は手間が増えたと感じて紙の稟議を続けました。
  • 課題の見落とし:導入後の調査では約8割の企業が課題感を持ち、情報を一か所で管理できないことや、システム同士が分断されていることが挙がりました。
  • 目的の形骸化:日々の業務や困りごとを起点にせず、ツール導入が目的になると、現場の実態とずれて使われない場合があります。

失敗やリスクを検討するときは、関連する切り口の記事もあわせてご覧ください。

現場ヒアリングと運用ルールで定着させた事例

立て直しの事例では、開発や導入の前に現場へ聞き取りを行い、あるべき稟議業務を描き直してから、運用の定着へ進みます。

  1. 申請者、各階層の承認者、経理、内部監査への聞き取り(起案の方法、停滞箇所、例外)
  2. 現状の承認フローの書き出しと、システムで改善する方法の設計
  3. 件数や効果の大きい申請から始める段階的な電子化
  4. 権限設定と運用ルールの文書化、社内マニュアルの整備

riplaはフルスクラッチ受託と業務伴走の立場から、業務起点の設計と運用定着を重視しています。

事例は成果だけでなく、現場で使われ続けた理由に注目して読むと、形骸化を避けるうえで参考になります。

IT導入補助金を活用して初期費用を抑えた事例

補助金を活用し、稟議や電子契約システムの初期費用を抑えた事例もあります。

  • ソフトウェア費用:インボイス枠やセキュリティ対策推進枠で、一部が対象になるケースがあります。
  • 端末費用:申請に必要なPCやタブレットも対象になる場合があり、スマホ承認用端末を整備した企業もあります。
  • 活用の順序:まず導入の必要性とROIを判断し、時期が合えば補助金を使う進め方です。
  • 申請準備:申請期間と採択プロセスを踏まえ、導入計画と申請予定を並行して整えます。

riplaは補助金活用も含めた導入計画の整理を支援しています。

事例では導入効果やコストに加え、初期投資を軽くする工夫も参考になります。

ポイント

導入後に現場が紙へ戻るのを防ぐには、開発や導入の前に現場へ聞き取りを行い、業務の実態に合った設計にすることが欠かせません。運用ルールと社内マニュアルを整えることも、定着を支えます。

まとめ

稟議システムは、現場の承認業務から逆算して設計し、段階的に投資を広げることが大切です。実際に、月20件の電子化は、印紙税、郵送費、人件費を減らすことで、年約96万円の削減につながります。

金額条件によるルートの分岐は、定着とガバナンスに関わります。また、契約・会計との連携は、一連の業務をつなぎます。

現場への聞き取りを怠ると、形骸化するおそれがあります。そのため、業務の実態に合わせた設計が欠かせません。

導入事例は、使うツールだけでなく、現場で使われ続けた理由に注目して読みます。自社の稟議件数と承認ルールを踏まえ、効果の大きい申請の電子化から始めましょう。

riplaは、業務から逆算して要件を整理し、現場に定着する稟議システムづくりを支援します。

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会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。