請求書システムの導入/開発事例や活用/成功事例について

請求書システムの導入事例は、自社に近い事例から効果とリスクを見極め、投資判断に役立てるための材料です。

発注側の視点から、請求書システムの導入・開発・活用の事例を、属人化の解消から移行まで順に取り上げます。全体像は完全ガイドもご覧ください。

▼全体ガイドの記事
・請求書システムの完全ガイド

Excel・手作業の属人化から脱却した事例

請求業務では、Excelへの金額入力とPDF化、個別メールでの送付が続いています。

入金は通帳で確認し、消込も手作業で行っています。

この一連の手作業は、人的コストがかかるうえ、ヒューマンエラーも起きやすい状態です。

導入事例では、Excel運用の属人化から脱却しています。

バージョン管理地獄と二重入力を解消した事例

Excel運用では、まずファイルのバージョン管理が問題になります。加えて、複数のシステムへ転記する作業は、特定の担当者への依存を生みます。

  • 版管理:「請求書_最新版_final2.xlsx」のようなファイルが乱立し、正しい版が分からなくなります。
  • 担当者依存:担当者が休むだけで請求が止まる事態。
  • 二重入力:受注、請求、会計へ、同じ内容を三度入力する手間が生じがちです。

導入事例では、取引先と単価のマスタを一か所で管理し、定例の請求もボタン一つで一括発行しています。そのため、版管理そのものが不要になりました。

販売管理や会計ソフトと連携すると、受注データから請求書を自動で作れます。

発行と同時に売上の仕訳が会計側へ流れるため、転記の手間とそのミスを減らせます。

属人化を解消するとは、特定の担当者しか分からない手順を、システムの標準の流れに置き換えることです。

経理工数の削減効果をROIで可視化した事例

属人化の脱却による効果は、感覚だけでなくROIで数字にできます。

一次データの試算では、請求関連業務を月20時間減らした場合、時給3,000円換算で年間約72万円の削減になります。

請求書システムの単体製品は、クラウド型であれば初期費用無料で、月額1万〜5万円程度から導入できます。費用が抑えられるため、この削減額だけでも、初年度から投資回収が視野に入ります。

自社の取引件数と人件費単価を当てはめると、削減効果を見積もれます。

  • 発行件数:月の請求書発行件数。
  • 作業時間:1件あたりの作成・送付・消込にかかる時間。
  • 人件費単価:自社の単価を掛けて、年間の削減額を概算します。

事例の削減時間をそのまま使わず、自社の数字で計算してください。

属人化の脱却は、稟議でも説明しやすいROIを持つ、デジタル化の第一歩です。

ポイント

自社の発行件数、作業時間、人件費単価を当てはめて年間の削減額を試算し、投資に見合うかを判断してください。版管理や二重入力の手間がどれだけあるかも洗い出すと、試算の精度が上がります。

月次決算が3週間から1週間に短縮された事例

売掛金のダッシュボードを中心に、発行済み、入金済み、未回収の状態を示す図解。
状態が共有されると、入金遅れへの対応を早めやすくなります。

導入効果のうち経営層に響きやすいのは、月次決算の早期化です。請求と入金消込のデータが会計へ連携すると、月末の締め作業を短縮できます。

一次データでは、従業員100名規模の製造業が請求と会計の連携を整えたことで、月次決算を3週間から1週間に短縮しました。さらに、決算が早まると、経営判断に使う材料も早く揃います。

売掛金のリアルタイム可視化で意思決定が速まった事例

決算の早期化の裏側には、売掛金をリアルタイムで把握できる仕組みがあります。売掛金の状況を追うには、複数のファイルを突き合わせる手間がかかります。そこで導入事例では、ダッシュボードで請求と入金の状況を確認できるようにしました。

  • 発行済み:発行した請求の状況を一覧で確認。
  • 入金済み:入金を確認できた請求の把握。
  • 未回収:未回収額を確認し、月末前から資金繰りを見通せる。

こうして状況が見えると、入金の遅れへ早めに対応でき、与信の見直しにもつながります。

この効果は経理部門だけにとどまりません。

たとえば、営業が担当顧客の入金状況を確認できれば、回収が滞る取引先へ自分で対応できます。

請求と回収の情報を経理だけが持つ状態から、関係者が共有する状態に変わったことで、組織全体の資金に対する感覚が高まった事例もあります。

月次決算の早期化は、こうしたデータ共有の基盤を整えることと合わせて実現します。

ペーパーレス化と電子帳簿保存法対応を両立した事例

月次決算の早期化と並んで定着しやすい成果が、ペーパーレス化です。紙の請求書では、印刷と封入、郵送に加えて控えのファイリングにも人手がかかり、保管場所も要ります。

  • 電子発行・送付:印刷・封入・郵送の工数の削減。
  • テレワーク対応:在宅勤務中も、請求業務を止めずに進められます。
  • 法対応:電子帳簿保存法やインボイス制度への対応負担の軽減。

さらに、郵送料や紙代といった直接費も減らせます。受領した請求書や発行控えを要件に沿って電子保存し、検索要件を満たす形で保存できれば、法対応の負担を抑えられます。

クラウド型やサブスク型では、法改正への対応を定額保守の範囲で無償提供するケースが多くあります。また、オンプレミス型のように、都度高額な追加開発を迫られない点も評価されています。

ペーパーレス化は法対応とセットで進めると、導入効果を最大化する近道になります。

ポイント

月次決算の早期化は、請求と入金消込のデータを会計へ連携できるかが前提になります。連携の範囲と、売掛金の情報を誰に見せるかを、導入前に決めておいてください。

債権消込の自動化で経理工数を削減した事例

入金消込で起きる、名義相違、手数料差引、複数請求の合算入金を並べた図解。
入金明細と請求データのずれ方は、名義・金額・合算に分けて整理できます。

入金消込では、ネットバンキングの明細と請求データを突き合わせ、入金と請求の対応を一件ずつ確認します。消込は、請求書システムの真価が問われる領域です。

件数が増えるほど作業は膨大になります。だからこそ、事例では消込を自動化し、経理担当者が本来の分析業務に時間を使えるようになりました。

名義相違・手数料差引のイレギュラーを吸収した事例

消込でつまずきやすいのは、請求データと入金明細が一致しないイレギュラーです。

  • 名義相違:請求先の会社名と振込名義が異なる。
  • 手数料差引:差し引き後の入金額が請求額と合わない。
  • 合算入金:複数の請求が一度にまとめて入金される。

Excel運用では人の目と勘で処理するため、ベテラン経理への依存が起きがちです。

事例では、過去の振込名義と請求先の対応を、システムに学習させました。さらに、手数料差引のパターンを許容範囲に設定し、イレギュラーの大半を自動マッチングで吸収しています。

イレギュラーを吸収する精度が、消込自動化の成否を分けます。自動マッチングの率が低いままだと、人の確認作業が残り、導入効果も限られます。

成功事例では、導入初期に過去データでマッチングのルールを丁寧に調整し、運用中も例外パターンを学習させています。

自動化は稼働を始めただけでは完成せず、自社の入金パターンに合わせて育てていく必要があります。そのため、導入時は現実的な期待値を持つことが大切です。

未回収アラートと督促自動化で回収を改善した事例

消込が終わっていない請求を検知できれば、未回収への対応も早められます。

  • 期日超過の検知:未消込の請求を自動でアラート表示する。
  • 督促の準備:督促メールの下書きまでシステムが用意する。

回収漏れの発見が遅れることによる貸し倒れリスクを、仕組みで減らせます。回収は早く動くほど成功率が高まるため、督促の自動化は資金繰りにも直結します。

督促は相手との関係に配慮する必要があるため、心理的な負担から後回しになりがちです。そこで、期日管理と督促の起点をシステムが用意すれば、ルールに沿って回収を進められます。

消込の自動化は手間を減らすだけでなく、債権管理全体のガバナンスも高めます。請求から回収までを一つの流れとして捉えると、投資効果も高まります。

ポイント

消込の自動化は、名義相違や手数料差引など自社の入金パターンを洗い出し、過去データで自動マッチングの率を確かめて判断します。運用後も例外を学習させる前提で計画してください。

データ移行に4ヶ月かかった反面教師の事例

マスタデータのクレンジングから段階移行、並行稼働、請求結果の照合、切り替えへ進む図解。
切り替え前に請求結果を照合する段取りが、業務継続を支えます。

つまずいた事例からも、発注側は多くを学べます。なぜつまずいたのかを知れば、自社で同じ落とし穴を避けられます。

請求書システムの導入では、機能の優劣より既存データの移行工数が想定を超え、稼働が遅れることもあります。

データ移行に4ヶ月を要した事例では、避けたい落とし穴と、そこからの立て直し方が分かります。

分散した取引先データの統合・クレンジングで難航した事例

反面教師となったのは、従業員200名規模の商社の事例です。20年分の取引データが分散していたことが、移行を難しくしました。

  • 分散先:取引データが3つの異なるシステムに残っていた。
  • 移行期間:データの統合に4ヶ月を要した。
  • 移行費用:数百万円規模に膨らんだ。

長く使ってきた業務ほど、データは部署や時期ごとに異なる形で蓄積されていきます。そのため、統合には想像以上の作業がかかります。

移行が難航する本質は、移行するデータそのものの品質にあります。

同じ取引先の表記の揺れや、システムごとに異なる勘定科目と単価コード、登録後に使われていないデータが、難航の原因です。

これらを放置して機械的に移すと、新システムにも不備が引き継がれます。重複や誤りを整えるクレンジングも、移行作業に含まれます。

軽視すると、稼働後に請求先が二重に表示されるといったトラブルが続きます。

段階移行と並行稼働で立て直した事例

難航から立て直した事例に共通するのは、移行を一度で終わらせないことです。

  1. 取引先と単価のマスタデータを、クレンジングしてから移行します。
  2. 過去の請求明細は、必要な期間分に絞って段階的に移します。
  3. 旧システムと新システムを、しばらく並行して稼働させます。
  4. 双方の請求結果が一致したことを確かめてから、切り替えます。

この進め方によって、業務を止めずに移行を完了させています。

成功した企業は、移行を独立した重要な工程として扱い、計画の段階から工数と日程を確保しています。

riplaは、フルスクラッチの受託と業務への伴走という立場から、移行後のトラブルを防ぐため、クレンジングとデータ品質の担保を重視しています。

事例は成果だけでなく、つまずいた理由と段取りの工夫に注目すると、自社で失敗を防ぐ参考になります。

ポイント

移行の工数と日程は、機能の比較より先に見積もる項目です。表記の揺れや不要データの量を確かめ、段階移行と並行稼働を組み込むかを判断してください。

まとめ

成功した事例も、失敗から立て直した事例も、現場の請求業務から逆算した設計、経理工数削減の明確なROI、丁寧なデータ移行に集約されます。

Excelの属人化を脱却した場合、月20時間の削減が年72万円に相当します。請求と会計を連携させた事例では、月次決算が3週間から1週間になりました。

消込の自動化は、名義相違や手数料差引のイレギュラーを吸収し、回収の改善につながります。一方で、20年分のデータを放置した商社は、移行に4ヶ月と数百万円を要しました。移行の軽視が稼働の遅れに直結することを、この事例は示しています。

製品の機能だけでなく、自社業務への定着とデータ移行の方法にも目を向けてください。取引件数や業務フローに照らして、発行と消込のデジタル化から着手します。

riplaは、フルスクラッチ受託と業務伴走を組み合わせ、業務から逆算した要件整理や、データ移行を含む定着の支援を行います。全体像は完全ガイドをご覧ください。

会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。