農業のシステムの必要機能や標準機能の一覧について

農業のシステムの機能は、大きく5つの群に分かれます。正しく理解しないまま導入を進めると、不要な高機能に振り回されたり、必要な機能が抜け落ちたりします。

  • 現場の課題:困っている作業と、システムで扱う範囲。
  • 機能選定:標準機能で足りるか、追加機能が要るか。
  • 外部連携:既存の業務やデータと、どこまでつなぐか。

各機能は、導入する農業経営体の視点から一覧で見ていきます。全体の進め方をまだ把握していない方は、まず農業のシステムの完全ガイドから読むことをおすすめします。

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・農業のシステムの完全ガイド

ほ場・水管理を担うセンサー・遠隔制御機能

ほ場や施設の計測・遠隔制御に関連する水位センサー、水門、環境データと普及率・水管理時間の数値を示した図。
環境の計測・制御と作物への適合性を合わせて検討できます。

農業のシステムの中核となるのが、ほ場の状態を計測し、遠隔から管理する機能です。水位・水温・気温・湿度・土壌水分といった環境データをセンサーで取得し、生産者はスマートフォンやパソコンから一覧で確認できます。これにより、現地に行かなくてもほ場の状態を把握でき、見回りの負担を大幅に減らせます。

水位監視と自動給排水の制御機能

稲作で特に重要なのが、水位監視と自動給排水の制御機能です。ほ場ごとに設置した水位センサーが現在の水深を測り、設定した範囲を外れると生産者に通知したり、水門を自動で開閉して給水・落水を行ったりします。この機能により、毎日の見回りと水門操作という反復作業を機械に任せられます。

この機能がもたらす効果は、数字でも裏づけられています。一次データでは、ほ場水管理システムの導入によって水管理にかかる時間を70%以上削減できたと報告されています。

機能を検討する際は、自社のほ場が点在しているか集約されているか、通信環境が整っているかといった前提条件によって、得られる効果が変わる点に注意が必要です。そこで、遠隔制御の対象は、まず見回りに最も時間がかかるほ場に絞るのが機能を生かす近道になります。

環境計測・アラート通知とハウス環境制御

露地だけでなく、施設園芸では温度・湿度・CO2濃度・日射量などを計測し、設定値を外れたときにアラートで通知する機能が標準的に求められます。さらに進んだシステムでは、計測値に応じて換気窓やカーテン、暖房、かん水を自動制御し、作物にとって最適な生育環境を維持します。これにより、夜間や不在時でも環境の急変による被害を防げます。

環境制御機能を検討する際は、自社の栽培品目がどの程度の環境管理を必要とするかを見極めることが大切です。果樹のように樹体ごとの個別性が高い品目では、画一的な環境制御がなじみにくい場合もあります。また、一次データの普及率では果樹が54.1%と他分野より低く、これは品目特性が機能の適合度に影響することを示唆しています。

計測・通知という基本機能から始め、自動制御は効果が見込める範囲に絞って段階的に広げるのが現実的です。なお、センサー・遠隔制御機能の前提となるほ場の通信環境は、山間部や電波の届きにくい地域では課題になります。通信が途切れるとセンサーの値も送れず、自動制御も働かないため、機能の検討と並行して、安定した通信が成立するかを確かめ、必要なら通信手段の整備まで計画しておく必要があります。

ポイント

判断の目安は、見回りの負担が大きいかどうかと、ほ場で安定した通信が取れるかどうかです。栽培品目に環境制御がなじむかも見極めたうえで、計測と通知の基本機能から始めるのが現実的です。

自動操縦・ドローンなど作業を担う機能

高性能コンバイン、ロボットトラクター、高性能の田植え機、農業用ドローンの価格目安を示す4つのパネル。
導入額には機材ごとの差があり、ドローンは比較的抑えやすい価格帯です。

ほ場の計測・監視に加えて、もう一つの大きな機能群が、実際の作業を機械に任せる自動化機能です。GPSや衛星測位を用いた自動操縦、ドローンによる空からの作業など、これまで人手と熟練に頼っていた作業を、システムが補助・代替します。ここが、スマート農業の労働力削減を直接実現する部分です。

自動操縦・直進アシストによる作業支援機能

トラクターや田植え機、コンバインに搭載される自動操縦・直進アシスト機能は、熟練の操作技術がなくても均一で正確な作業を可能にします。衛星測位で機械の位置を把握し、設定した経路に沿って自動で走行することで、隣接作業の重複や隙間を防ぎ、資材の無駄も減らせます。これにより、経験の浅い作業員でも一定の品質で作業できるようになります。

一次データでは、自動操縦の導入で田植えの労働力を10人から5人へ半減させた事例が報告されています。さらに、機材の価格の目安は、高性能コンバインが約1,100万円、ロボットトラクターが約1,000万円、高性能の田植え機が約300万円です。

機能の選定では、作業ピークで最も人手を取られている工程を見極め、その工程の自動化を優先すると投資効率が高まります。自動操縦機能を検討する際は、次の3点を確認します。

  • ほ場の形状:区画の整った大区画では効果が出やすい一方で、変形した小さなほ場が点在すると、設定や旋回の手間が増えることもあります。
  • 作業精度の前提:求める作業精度に対応できるかを、導入前に確かめておく必要があります。
  • 基地局・補正サービス:別途必要になる場合もあり、機材以外の周辺要素まで含めて検討すると、「思ったほど自動化できない」を防げます。

ドローンによる防除・施肥・生育センシング機能

農業用ドローンは、農薬や肥料の空中散布、上空からの生育状況のセンシングといった機能を提供します。人力では数時間かかる広いほ場の防除を短時間で行え、作業者が農薬に触れる機会も減らせます。さらに、上空から撮影した画像を解析して、生育が遅れている場所や病害虫の発生箇所を特定し、必要な場所にだけ資材を投入する精密農業にもつながります。

農業用ドローンの価格は約100万〜130万円が目安とされ、自動操縦機械に比べて投資額を抑えやすいのが特徴です。そのため、スマート農業の入り口としてドローンから導入する経営体も少なくありません。

機能を選ぶ際は、散布用の機体と、センシング・解析用のソフトウェアが別であることが多い点に注意が必要です。そのうえで、散布の省力化を求めているのか、データに基づく精密管理を求めているのかを明確にして選ぶことが大切です。

ポイント

判断の目安は、作業ピークでどの工程に最も人手を取られているかです。その工程の自動化を優先しつつ、基地局や補正サービスなど機材の周辺要素も含めて検討することが欠かせません。

栽培記録・営農管理の標準機能

センサーや自動化機能を支えるのが、日々の作業や栽培の状況を記録・管理する機能です。誰が、いつ、どのほ場で何をしたかを記録し、作付計画や作業指示、収量・コストの管理までまとめて扱えます。

この機能は、高額な機材を持たない経営体でもスマートフォン一つで始められるため、農業デジタル化の入り口として最も普及しています。

作業記録・作業指示・栽培暦の管理機能

営農管理機能の基本は、作業を現場で記録できることです。スマートフォンやタブレットで、ほ場・作業内容・使用資材・写真を簡単に登録でき、後から作業履歴を振り返れます。あわせて、栽培暦に基づいて作業指示を出したり、作業の進捗を一覧で管理したりする機能を備えるものもあり、複数人や雇用労働で運営する経営体では、抜け漏れや二重作業の防止に効きます。

この機能を選ぶ際の最重要ポイントは、現場の生産者が無理なく使い続けられる操作性です。農業の現場は高齢化が進んでおり、多機能で入力項目が多いシステムは、かえって現場の反発を招き、使われなくなります。

たとえば、写真を撮って一言メモを残すだけで記録が完了するような、シンプルで直感的なUIを備えているかを必ず確認してください。また、標準機能の豊富さより、最も使う人にとっての使いやすさを優先することが、定着の鍵になります。

出荷・販売・在庫・コスト管理の機能

栽培の記録だけでなく、収穫物の出荷・販売・在庫・コストを管理する機能も、経営の見える化に欠かせません。出荷先ごとの数量や単価、農協(JA)への出荷と直販の使い分け、資材費や人件費といったコストを記録することで、ほ場や品目ごとの収益性が把握できるようになります。どこで利益が出ていて、どこが赤字なのかが数字で見えれば、次の作付計画や投資判断の精度が上がります。

販売面では、農協系統への出荷と商系(市場・直販・EC)への出荷が分断されがちです。双方の数量と在庫をまとめて管理できる機能があると、出荷調整や販売戦略の立案に役立ちます。

さらに、経営規模が大きくなるほど、栽培記録と販売・コスト管理が連携していることの価値が高まります。ただし、機能を選ぶ際は、現時点で必要な管理項目と将来的に経営判断に使いたいデータを切り分け、過剰な機能で現場の入力負担を増やさないことが大切です。

ポイント

判断の目安は、最も使う生産者が毎日無理なく使い続けられるかどうかです。入力項目が多いシステムは現場の反発を招くため、機能の数より操作の軽さで選ぶのが現実的です。

IoT・外部データ連携と機能の切り分け

個々の機能を最大限に生かすのが、IoT機器や外部データとの連携機能です。センサーや機械、気象データがバラバラに存在すると、データが分断され、せっかくの計測値や記録が経営判断に結びつきません。さらに、農協の出荷システムなどと切り離されている場合も、データは同じように分断されます。

連携機能は、これらをつないで、データをまとめて活用できる状態にします。

気象データ・機器・農協系統との連携機能

連携機能の代表が、気象データの取り込みです。気温・降水・日照といった予報や実績を栽培記録と重ねることで、防除や水管理のタイミング判断を支援できます。また、トラクターやドローンが取得した作業ログ、センサーの計測値を営農管理に自動で集約できれば、手入力の負担を減らせます。

さらに、農協(JA)系統の物流・出荷システムと商系の販売チャネルが分断されている課題に対し、双方の出荷データを連携できる機能があると、出荷調整の精度が上がります。連携機能は便利な一方で、つなぐ相手が増えるほど構築・保守の複雑さも増します。そのため、本当に経営判断に効く連携に絞ることが、過剰な作り込みを避ける鍵になります。

外部連携を要件に含める場合は、連携先の仕様変更に備えた事前協議が欠かせません。特に、物流・出荷系のデータ連携は仕様変更の影響が大きいため、関係者との調整を早めに始めてください。

必須機能と「あれば便利」を切り分ける考え方

ここまで挙げた機能をすべて備えれば理想的に見えますが、現実には機能が増えるほど費用も操作の複雑さも増し、現場の定着を妨げます。だからこそ、機能を「必須」「あれば便利」「将来必要」に切り分けることが欠かせません。切り分けの基準は、自社の最も大きな課題を直接解決するかどうかです。

見回りに時間を奪われているなら水管理機能が必須であり、繁忙期の人手不足が課題なら自動操縦機能が必須になります。そこで、普及率を踏まえると、まずは作業記録・水管理といった基礎機能から導入し、効果を確認してから自動化や連携といった上位機能を加える段階的なアプローチが現実的です。

riplaはフルスクラッチ受託と国内開発の立場から、業務をシステムに合わせる過剰カスタマイズを避け、現場の課題に直結する機能だけを過不足なく実装することを重視しています。機能一覧はチェックリストとして使い、自社にとっての優先順位を必ず付けてから選定に臨んでください。

機能の多さより現場の操作性を優先する理由

機能を切り分けるうえで最後に強調しておきたいのは、機能の多さそのものが価値になるわけではない、という点です。どれだけ高機能でも、現場の生産者が使いこなせなければ、その機能は存在しないのと同じです。むしろ、機能が多いほど操作は複雑になり、入力項目も増えて、高齢化した現場の負担とストレスが増します。

また、リサーチでも、多機能すぎるシステムはかえって混乱を招き、現場の反発につながると繰り返し指摘されています。そこで、機能を選ぶ最終の基準は「最も使う人が、毎日ストレスなく使い続けられるか」に置くべきです。

そのためには、スマートフォンやタブレットで数タップ作業を記録でき、必要な情報がひと目で分かることが条件になります。こうしたシンプルさを備えた機能こそが、結果として現場に定着し、データの蓄積と活用につながります。機能比較表で項目の多さを競うより、現場が使う場面を思い浮かべて、本当に効く機能を選ぶことが、機能選定の本質です。

ポイント

判断の目安は、連携先の仕様変更に備えて関係者と早めに協議できるかどうかと、経営判断に効く相手に連携を絞れるかどうかです。つなぐ相手が増えるほど、構築と保守の負担も増えます。

畜産・施設園芸など作物別に異なる機能

畜産、野菜、果樹の普及率と、健康モニタリング、環境制御、個別の生育記録を対応させた図。
普及率の差と管理機能の違いから、作物に合うシステムの方向性が見えてきます。

これまで挙げた機能は、稲作を念頭に置いた水管理や自動操縦が中心でした。しかし農業のシステムは、作物や経営形態によって求められる機能が大きく異なります。畜産、施設園芸、果樹といった分野ごとに、課題と必要な機能を把握することが、自社に合ったシステム選びの前提になります。

畜産の飼養管理・健康モニタリング機能

畜産分野では、ほ場の水管理とは異なり、家畜の飼養管理や健康状態のモニタリングが機能の中心になります。個体ごとの給餌量や体重、繁殖状況を記録し、センサーやカメラで活動量や体調の変化を検知して、異常を早期に通知する機能が求められます。これにより、病気や発情の見逃しを減らし、飼養管理の精度を高められます。

一次データの普及率でも、畜産は73.3%と高く、こうした機能の導入が進んでいることがうかがえます。畜産システムの機能を選ぶ際は、24時間体制の見守りをどこまで自動化したいかが判断の基準になります。

特に、深夜の分娩や急な体調不良への対応は、人手だけでは限界があるため、自動検知と通知の機能が経営の継続性を支えます。一方で、個体管理の項目を増やしすぎると入力負担が重くなります。そこで、繁殖や健康に直結する項目に絞ることが、現場で使い続けられる機能設計の鍵になります。

施設園芸の環境制御と果樹の個別管理機能

施設園芸では、ハウス内の温度・湿度・CO2・日射量を計測し、換気・暖房・かん水・遮光を自動制御する環境制御機能が中核になります。作物にとって最適な環境を24時間維持することで、収量と品質の安定につながります。また、野菜の普及率は68.1%で、環境制御によるデータ駆動型の栽培が広がりつつあることを示しています。

一方、果樹分野は普及率が54.1%と相対的に低く、樹体ごとに状態が異なり、画一的なシステム化がなじみにくいという特性が背景にあります。そのため、果樹では、ほ場全体の一律制御よりも、樹体や区画ごとの生育記録、収穫予測、病害虫の発生記録といった個別管理機能が重視されます。

機能を選ぶ際は、自分の作物が一律制御に向くのか、個別管理が必要なのかを見極めることが大切です。その特性に合った機能を備えたシステムを選ぶことが、機能を生かすうえで欠かせません。

ポイント

判断の目安は、作物が一律の環境制御になじむか、個別の管理が必要かです。畜産では、24時間の見守りをどこまで自動化したいかが判断の基準になります。

まとめ

農業のシステムの機能は、ほ場や作業を機械に任せる群と、データを記録・管理・連携する群に分けられます。前者にあたるほ場・水管理の遠隔制御と作業の自動化は、見回りや作業そのものを機械に任せる機能です。後者は、下の3つの群で整理します。

  • 栽培記録・営農管理:作業や栽培の状況を記録し、作付計画や収量・コストの管理までまとめて扱う機能。
  • 出荷・販売・コスト管理:収穫物の出荷・販売・在庫と、資材費や人件費などのコストを管理する機能。
  • IoT・外部データ連携:センサーや機械、気象データ、農協の出荷システムなどをつないで活用する機能。

水管理の遠隔制御では水管理時間の70%以上の削減、自動操縦では田植えの労働力の半減(10人から5人)が報告されており、機能ごとに効果が数字で示されています。機材価格の目安は、高性能コンバインが約1,100万円、ロボットトラクターが約1,000万円、ドローンが約100万〜130万円、高性能の田植え機が約300万円です。

機能を選ぶうえで最も大切なのは、自社の課題に直結する機能を「必須」とし、それ以外を「あれば便利」「将来必要」に切り分けることです。また、普及率は稲作82.3%・野菜68.1%・畜産73.3%・果樹54.1%と分野差があり、品目特性が機能の適合度を左右します。

多機能を追い求めず、現場が使い続けられる操作性と、課題解決に直結する機能を優先してください。riplaはフルスクラッチ受託と国内開発を組み合わせ、過不足のない機能設計を一貫して支援します。全体像の確認には、あらためて完全ガイドをご活用ください。

会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。