追加開発の導入/開発事例や活用/成功事例について

追加開発の事例は、補助金を使う中小企業、データ移行を伴うリプレイス型、大企業の実例、炎上からの立て直しの4つに分けられます。

担当者がまず知りたいのは、自社と似た状況の企業が稼働中のシステムにどう機能を足したかです。既存の処理を壊さない難しさがあるため、近い事例が投資判断に役立ちます。全体像は追加開発の完全ガイドをご覧ください。

補助金を活用した中小企業の追加開発事例

補助金の対象機能、申請スケジュール、利用できる制度、要件整理を並べた計画図
機能の範囲と制度側の条件を並べて確認できます。

追加開発の事例というと、大企業の華やかなプロジェクトを思い浮かべがちです。しかし、発注側がもっとも参考にできるのは、自社と規模感の近い中小企業の等身大の事例です。

すでに導入済みの業務システムやECサイトに、補助金を使って機能を足し、限られた予算で着実に成果を出している中小企業は数多くあります。その堅実な進め方を、ここから具体的に見ていきます。

IT導入補助金で自己負担を抑えた機能追加事例

中小企業が追加開発を進めるうえで、まず注目したいのが補助金の活用です。IT導入補助金は5万円から450万円までを対象とし、採択率は45〜55%とされています。

この補助金を使えば、既存システムへの機能追加でも実質的な自己負担を抑えられます。

たとえば、300万円の機能追加に対して採択されれば、自己負担が半分以下になる場合もあります。この差が、投資に踏み切る決め手になっています。

補助金を使った事例から学べるのは、補助金の対象になる機能追加を、申請スケジュールに合わせて計画的に進めるという発想です。

小規模事業者持続化補助金(採択率60〜65%)など、自社が使える制度を事前に把握し、それに合わせて要件をまとめておくと、採択の可能性が高まります。

追加開発は新規開発より費用が安く収まりやすく、補助金の上限内に収まる規模で計画できることが多いため、中小企業との相性が良いといえます。

事例を読むときは、「補助金を前提に追加開発の範囲を設計する」という視点で見ると、自社でも再現しやすくなります。

補助金を使う追加開発では、足す機能の範囲と、制度に合わせた要件の整理が判断の軸になります。

  • 足す機能の範囲:在庫連携や顧客向け機能など、既存の販売管理・予約システムに足す機能
  • 制度に合わせた要件:事前に把握した制度に合わせて、要件をまとめておくこと

小さく足して成果を積み上げた段階的追加事例

中小企業の成功事例に共通するのが、一度に作り変えるのではなく、効果の大きい機能から小さく足していく段階主義です。

既存の業務システムに、まず手作業の多い帳票出力を自動化する機能を足します。その効果を確かめてから、次に在庫連携、その次に取引先向けのWeb画面を加えていきます。

一度に全部を作り変えるリプレイスと違い、各段階で投資対効果を確かめながら進められる点が、追加開発の大きな利点です。

この積み上げ型の進め方は、予算が限られる中小企業にとって特に有効です。最初の機能追加で現場が「これは楽になる」と実感できれば、社内の理解が得られ、次の投資の稟議にもつながります。

費用の約8割は人件費が占めるため、追加する機能の規模を管理すると、予算の見通しが立ちます。

なお、段階的に進める場合でも、既存システムへの影響範囲を見誤ると思わぬトラブルにつながります。リスクの詳細は『追加開発の失敗・課題・注意点・リスクについて』もあわせてご覧ください。

段階的に足す進め方では、最初に足す機能の選び方と、次へ進む区切りの置き方が要になります。

  • 最初に足す機能:手作業の多い業務から選ぶ
  • 段階ごとの区切り:次の機能へ進むかどうかを決める節目

ポイント

自社が使える補助金を先に確かめ、その対象に収まるよう機能の範囲を絞れるかが、費用を判断する目安になります。段階的に足す進め方も、この考え方と組み合わせると現実的です。

データ移行・並行稼働を伴うリプレイス型追加事例

並行稼働、段階移行、データクレンジング、移行リハーサルを示す4つのパネル図
切り替え前に確認する作業が4つの視点に分かれています。

追加開発の中でも難易度が高いのが、老朽化した既存システムの一部を新しい仕組みに置き換えながら、機能も追加していくリプレイス型のプロジェクトです。

長年使ってきたシステムには大量のデータが蓄積されており、それを新しい基盤に移しつつ、業務を止めずに切り替える必要があります。データ移行と並行稼働を伴う事例から、成功のポイントを読み解きます。

業務を止めずに並行稼働で切り替えた事例

リプレイス型の追加開発で最大の山場となるのが、新旧システムの並行稼働です。

発注側と開発会社は、既存システムを動かしたまま新しい機能を別の環境で構築します。一定期間は両方を動かし、新システムが正しく動くことを確かめてから、完全に切り替えます。

成功事例では、いきなり全部を切り替える一斉移行ではなく、機能や拠点を区切って少しずつ移す段階移行を選んでいます。これにより、万一新システムに問題が起きても、既存システムに戻せる安全策を確保しています。

データ移行も、リプレイス型の成否を分ける重要な工程です。長年蓄積されたデータには、表記ゆれや重複、古い形式のデータが混在しており、そのまま移すと新システムで不整合を起こします。

成功事例では、移行前にデータを洗い出して丁寧に整理(クレンジング)し、移行のリハーサルを複数回繰り返してから本番移行に臨んでいます。

改修は新規開発より安く収まりやすいとされますが、データ移行の工数を甘く見積もると、予算は膨らみます。そのため、要件定義の段階で移行対象データの量と品質を把握しておく必要があります。

段階移行では、切り替えの単位と、本番の前に移行リハーサルを何回行うかを見ておく必要があります。

  • 段階移行の単位:機能や拠点ごとに区切る
  • 移行リハーサルの回数:本番の前に繰り返す回数

既存ベンダー以外に発注して刷新した事例

追加開発で意外と多いのが、これまで開発を任せてきたベンダーとは別の会社に、追加開発を発注するケースです。

既存ベンダーの対応が遅い、見積りが不透明、新しい技術に対応できない、といった理由で、別のパートナーに乗り換える企業は少なくありません。

成功事例では、新しいベンダーがまず既存システムのソースコードや仕様書を読み解き、影響範囲を把握する「現状調査」に十分な時間をかけています。

既存ベンダー以外に発注するときに大切なのは、引き継ぎの設計です。既存システムの仕様が文書化されていない、いわゆる属人化した状態だと、新しいベンダーは手探りで進めることになり、追加開発のリスクが跳ね上がります。

この丁寧な引き継ぎがあれば、別会社への発注でも安全に機能追加を進められます。乗り換えを成功させるかどうかは、既存システムの情報を新ベンダーにどれだけ正確に渡せるかで決まります。

別のベンダーに替えるときは、新ベンダーに渡す情報の整理と、旧ベンダーとの協力体制が鍵になります。

  • 仕様と改修履歴:新ベンダーが読み解けるように整理する
  • 旧ベンダーとの協力体制:不明点を埋めるための連携

ポイント

並行稼働の期間を確保し、データの洗い出しと移行リハーサルを本番前に済ませられるかを、着手前の判断の目安にしてください。旧ベンダーからの引き継ぎ状況も、同じ基準で確かめるとよいでしょう。

大企業のモダナイズ・機能追加の実例

大企業の事例は規模こそ違いますが、「既存資産を活かしながら段階的にモダナイズする」という発想は、中小企業にも応用できます。

公表されている代表的な実例を取り上げ、追加開発をどう設計し、どんな成果を出したのかを見ていきます。具体的な数値とともに読むと、自社の計画に生かせるヒントが見つかります。

ANAのAPIゲートウェイ化(約5か月)の事例

大企業の追加開発で参考になるのが、ANAが既存システムをAPIゲートウェイ化したプロジェクトです。

約5か月という比較的短い期間で、既存の仕組みを外部や他システムから呼び出しやすいAPIとして整備しました。

既存システムをまるごと作り直すのではなく、外部との接点となるAPI層を追加することで、既存資産を活かしながら拡張性を高めたのが特徴です。これは追加開発の理想形のひとつと言えます。

この事例から学べるのは、「既存システムを土台として残し、その上に新しい接続層や機能層を足す」という発想です。古い基幹システムでも、いきなり全面刷新するとリスクとコストが大きくなりすぎます。

約5か月という期間も、全面刷新と比べれば短く、投資対効果を早く検証できます。中小企業でも、既存システムに連携用の窓口を足すという発想は十分に応用できます。

自社の計画に置き換える場合は、既存の仕組みを壊さずに外部とつなぐ範囲をどこまでにするかを決めることになります。

  • APIとして足す部分:既存の安定稼働を守りながら、外部連携に必要な部分を選ぶ
  • 連携用の窓口:既存システムに追加する範囲

デンソーの社内アプリ(5か月で1,700ユーザー)の事例

もうひとつの参考事例が、デンソーの社内向けアプリ「yuriCargo」です。約5か月の開発で1,700ユーザーが利用する規模にまで広がりました。

この事例の本質は、開発のスピードと現場密着にあります。既存の業務や仕組みを踏まえ、現場が本当に必要とする機能を素早く形にして、短期間で多くの利用者に届けた点が成功要因です。5か月という期間で1,700ユーザーに浸透したのも、その表れといえます。

大塚商会のフィッティングコンサルの事例でも、約5.5か月で40回弱の打ち合わせを重ね、開発費の5〜6%をコンサルに充てて要件を磨き込んでいます。

追加開発を成功させるには、技術力に加えて、現場と密に対話しながら必要な機能を見極める力が不可欠です。大企業の事例は、そのことを教えてくれます。

大企業であっても、最初から完璧な大規模システムを目指すのではなく、必要な機能から素早く追加し、利用者の反応を見ながら育てるアプローチが有効だと示しています。この事例では、現場のニーズから機能を足す順番と、運用後に改善を重ねる進め方を押さえておきたいところです。

  • 足す順番:現場のニーズを起点に、必要な機能から決める
  • 運用後の改善:利用者の反応を見ながら、改善を重ねる進め方

ポイント

既存システムを残しながら必要な部分だけを足せるか、また現場のニーズを起点に機能を選べるかが、大企業の事例から見た判断の目安になります。

炎上プロジェクトを火消しして立て直した事例

開発を止めて既存仕様と影響範囲を調べ、回帰テストを整える流れ図
先に影響を洗い出す順序が、その後の安全策につながります。

事例の価値は成功談だけにとどまりません。むしろ、発注側が最も学べるのは、「炎上したプロジェクトを、どう立て直したのか」というリアルな経験です。

追加開発は既存システムに手を入れる分、思わぬ不具合や仕様の食い違いから、炎上に至るケースがあります。

そこから火消しして立て直した事例には、これから投資する企業にとって何よりの保険になる教訓が詰まっています。

影響範囲調査からやり直して立て直した事例

炎上した追加開発の多くは、既存システムへの影響範囲を正しく調べないまま機能を足していました。その結果、リリース後に既存の処理が動かなくなる不具合(デグレード)が多発したことが原因です。

立て直しに成功した事例では、いったん開発を止めて、既存システムのソースコードと仕様を改めて精査しています。そのうえで、追加する機能がどこに影響するかを徹底的に洗い出すところからやり直しています。

この影響範囲の調査こそが、安全な追加開発の出発点です。

火消しに入ったチームは、既存の処理を壊していないかを確かめる回帰テスト(リグレッションテスト)を整えました。さらに、機能を追加するたびに既存機能が正常に動くかを自動でチェックできる仕組みも作りました。

同じテストを3〜5回繰り返すなら自動化が採算に合うとされています。炎上案件の立て直しでは、この自動テストへの投資が再発防止の決め手になります。

立て直しで大切なのは、新しい機能を急いで足すことよりも、既存システムへの影響を見える形にし、安全に足せる土台を作り直すことです。

立て直しでは、既存機能を守るテストをどこまで自動化するかと、同じテストを何回繰り返すかが判断の材料になります。

  • テストの自動化:既存機能の動作を守るための判断
  • テストの繰り返し回数:3〜5回が目安

スコープ合意を再設計して泥沼を脱した事例

炎上のもうひとつの典型は、追加する機能の範囲(スコープ)が曖昧なまま開発を始めることです。「これも追加で」「あれも直して」と仕様変更が際限なく膨らみ、工数と予算が破綻するパターンです。

立て直しに成功した事例では、いったん仕切り直して、スコープを明確に合意し直しています。このスコープ管理の徹底が、泥沼を脱する鍵になります。

仕様変更をめぐる対立は、ときに訴訟にまで発展します。

スルガ銀行と日本IBMの事件では、初期見積り約95億円に対し追加で127億円が要求され、最終的に高裁が約41.7億円の支払いを命じる事態となりました。

訴訟記録は72冊に及び、打ち合わせの「箸袋」のメモまで証拠として扱われたと言われます。この極端な事例は、仕様変更の合意と記録の大切さを物語っています。

立て直しに成功した企業は、議事録を丁寧に残し、追加要望が出るたびに費用と納期への影響を明示して合意を取り直すことで、泥沼を回避しています。

スコープを決めるときは、今回と次回の線引きをどこに置くかと、追加要望のたびに費用と納期への影響を示すことが鍵になります。

  • 今回と次回の線引き:今回実現する機能と次回に回す機能を分ける
  • 費用と納期への影響:追加要望ごとに提示する

ポイント

追加機能を急ぐ前に、影響範囲とスコープを合意し直せるかが、炎上を防ぐ分かれ目になります。回帰テストの整備も、その合意とあわせて進めると安全です。

まとめ

追加開発の事例を振り返ると、成功も炎上からの回復も、結局は「既存システムへの影響範囲を正確に把握し、効果の大きい機能から段階的に足していく」という一点にまとまります。

中小企業は、IT導入補助金(採択率45〜55%)を活用して自己負担を抑えられます。

ANAのAPIゲートウェイ化やデンソーの社内アプリのように、大企業も既存資産を活かした段階的なモダナイズで成果を出しています。

影響範囲の調査やスコープの合意を怠ると炎上に至り、スルガ銀行と日本IBMの事件のように訴訟にまで発展するリスクもあります。

事例を読むときは、「どれだけ大規模に作ったか」よりも「なぜ既存を壊さずに足せたか」に目を向けると役立ちます。

自社の既存システムと予算に照らし、まずは効果の大きい機能の追加から、安全な一歩を踏み出してください。

riplaはフルスクラッチ受託と国内開発を組み合わせ、既存システムの影響範囲調査から、現場に定着する安全な機能追加までを一貫して支援します。全体像の確認には、あらためて完全ガイドをご活用ください。

会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。