運用保守の必要機能や標準機能の一覧について

運用保守の標準機能は、大きく4つの領域に分かれ、性質の異なる複数の機能で構成されます。そのため、契約前に範囲を確認しておかないと、「これは保守の範囲外です」と言われて追加費用が生じかねません。

運用保守全体の流れを知りたい方は、まず運用保守の完全ガイドをご覧ください。

監視機能:死活監視・リソース監視・ログ監視

システム監視を中央に置き、死活監視、リソース監視、ログ監視を注釈線で示した図。
三つの監視を組み合わせて稼働状況と異常の兆候を捉えます。

運用保守の基本となるのが監視機能です。システムが正常に動き続けているかを常時見張り、異常の兆候を早期に捉える役割を担います。

監視は保守費内訳のうち15〜25%程度を占める中核的な機能であり(出典:ripla)、ここが弱いと障害の発見が遅れ、被害が拡大します。監視はさらに、死活監視・リソース監視・ログ監視という性質の異なる三層に分かれます。

死活監視とリソース監視による異常の早期検知

死活監視は、サーバーやアプリケーションが生きているかどうかを一定間隔で確認する機能です。応答が返ってこなければ即座にアラートを出し、システムダウンを早期に検知します。一方でリソース監視は、CPU・メモリ・ディスク・ネットワークといった資源の使用率を継続的に計測し、逼迫の兆候を捉える機能です。

ディスクが満杯になる前、メモリが枯渇する前に手を打てれば、ダウンそのものを未然に防げます。さらに、この二つの監視が機能していると、稼働率99.9%(月間の停止許容は約43分)といった高いSLAを支える前提になります(出典:ripla)。

重要なのは、ただアラートを出すだけでなく、閾値をどう設定し、誰がどう受け取るかまで設計することです。たとえば、閾値が緩すぎれば異常を見逃し、厳しすぎればアラート疲れを起こして本当の異常が埋もれます。監視機能を評価するときは、計測項目の網羅性だけでなく、アラートの精度と運用設計まで含めて確認してください。

ログ監視による予兆と原因の追跡

ログ監視は、システムが出力するエラーログやアクセスログを継続的に解析し、異常の予兆や障害の原因を追跡する機能です。死活監視やリソース監視が「今ダウンしているか」を見るのに対し、ログ監視は「これからダウンしそうか」「なぜダウンしたか」を読み解きます。

特定のエラーが増え始めた、アクセスパターンが異常に変化した、といった兆候を捉えれば、障害が表面化する前に先回りで対処できます。クラウドやSaaSと連携する現代のシステムでは、ログ監視の重要性がさらに増しています。連携先のAPI仕様変更や外部サービスの不調が、自社システムのエラーログに最初に現れることが多いためです。

ログを丁寧に追える体制があれば、「自社の問題か、外部の問題か」を切り分けやすくなり、どこまでを誰が受け持つかの議論を客観的なデータで進められます。監視機能は運用保守の入り口でありながら、その後の障害対応や原因究明の質も左右する、極めて重要な標準機能だといえます。

ポイント

判断の目安は、死活・リソース・ログの三つがそろい、閾値とアラートの受け取り先まで決まっているかです。どれか一つでも欠けると、ダウン、予兆、原因のいずれかを見落とします。

バックアップ・障害対応・エスカレーション機能

初報応答、エスカレーション、復旧目安、恒久対応の4段階と、それぞれの時間目安を並べた図。
対応段階ごとに目標時間を分けて確認できます。

監視で異常を捉えたあと、実際にシステムを守るのがバックアップと障害対応の機能です。障害対応は保守費内訳のうち25〜35%と最も大きな割合を占める領域であり(出典:ripla)、ここの質が運用保守全体の評価を決めるといっても過言ではありません。万一に備える機能は、平時の準備と有事の対応の両面から押さえておく必要があります。

バックアップと復旧による事業継続

バックアップ機能は、データやシステム構成を定期的に保存し、障害や災害が起きてもデータを失わないようにする機能です。ただ取るだけでなく、いざというときに本当に復旧できるかを定期的に検証することが重要です。実際に、取得したバックアップが壊れていて復旧できなかった事態も珍しくなく、復旧テストまで含めて初めて、事業継続の保険として機能します。

復旧を語るうえで欠かせないのが、どこまでのデータを、どれだけの時間で戻せるかという目標値です。そこで、何時間前の時点まで戻せるか、復旧完了までにどれだけかかるかを事前に定義し、その水準を満たすバックアップ方式を選ぶ必要があります。

クラウド側の障害でデータが失われるリスクや、データ復旧そのものが追加費用になるケースもあります。そのため、バックアップの範囲と復旧時の費用負担は、契約段階で明確にしておく必要があります。そうしておけば、想定外の出費を防げます。

障害対応とエスカレーションの段階設計

障害対応機能の質は、対応のスピードと段階設計で決まります。一般的な運用保守では、初報応答を重大障害15分・通常2時間、エスカレーションを30分という段階で設計します(出典:ripla)。復旧目安は重大4時間・通常8時間、恒久対応は5営業日です。

エスカレーション機能は、一次対応で解決しない障害を、より専門性の高い担当者や開発元へ速やかに引き上げる仕組みです。これが整っていないと、一次対応者が抱え込んで時間を浪費し、復旧が大幅に遅れます。こうした事態を避けるには、障害の重大度に応じて誰がいつ動くかを定義しておくと、いざというときに迷わず対応できます。

良い障害対応機能は、その場しのぎの復旧(暫定対応)と、再発を防ぐ根本対策(恒久対応)を切り分け、両方をきちんと実施します。そこで、見積もりを見るときは、障害対応の応答・復旧時間が数値で定義されているか、エスカレーション経路が明確かを必ず確認してください。

ポイント

復旧の目標値と、応答・復旧時間やエスカレーション経路が明確かどうかが目安です。バックアップの範囲と復旧時の費用負担も、契約段階で決めておくと想定外の出費を防げます。

SLA管理・定期メンテナンス・問い合わせ対応機能

SLA管理、定期メンテナンス、問い合わせ対応を3枚のカードに並べた図。
平時の管理範囲を三つの機能に分けて見渡せます。

システムを安定させるには、障害が起きてからの対応だけでなく、平時の管理機能が欠かせません。SLA管理・定期メンテナンス・問い合わせ対応は、いずれも目立たないものの、運用品質を底上げする標準機能です。これらが揃って初めて、運用保守は「守りながら改善する」サイクルを回せます。

SLA管理と定期レポートによる品質の把握

SLA管理機能は、契約で定めた稼働率や応答・復旧時間を実際に達成できているかを継続的に計測し、報告する機能です。稼働率99.9%や99.5%、初報応答や復旧の目標値が守られているかを月次でレポートにまとめ、定例会で振り返ります(出典:ripla)。

この管理報告は保守費内訳の5〜10%を占めますが(出典:ripla)、ここを省くと運用品質が見えなくなり、改善のきっかけを失います。さらに、レポートを通じて障害の傾向や問い合わせの偏りが見え、次の改善テーマが浮かび上がります。

たとえば、未達が続く指標があれば、その原因を掘り下げて根本対策を打ちます。逆に、余裕がある指標は、過剰なコストがかかっていないか見直します。SLA管理は、運用を数字で経営に説明し、継続的に改善していくための機能です。

定期メンテナンスと問い合わせ対応の役割

定期メンテナンス機能は、計画的にシステムを止めて点検・調整を行い、不具合の芽を事前に摘む機能です。ディスクの整理や不要データの削除を行い、パフォーマンスの調整やセキュリティパッチの適用も定期的に実施します。これを怠ると、小さな劣化が積み重なり、ある日突然の大障害につながります。

保守費内訳では、定期保守が20〜30%、問い合わせ対応が10〜20%を占めます(出典:ripla)。問い合わせ対応機能は、「使い方が分からない」「この操作はどうするのか」といった利用者からの問いに答える機能です。地味ながら、現場の満足度を直接左右します。

問い合わせのログを蓄積すれば、よくある質問をマニュアル化したり、操作しづらい画面を改修の候補にしたりと、次の改善につなげられます。定期メンテナンスと問い合わせ対応は、システムを健全に保つことと、利用者の声を改善に生かすことを同時に担う機能です。

ポイント

SLAの達成状況を定期的に報告する仕組みと、定期保守・問い合わせ対応の範囲が明示されているかが目安です。報告がなければ、運用品質が見えず改善のきっかけを失います。

アップデート・リリース管理とAIOpsによる自動検知

運用保守は、システムを時代に合わせて進化させる役割も担います。アップデート・リリース管理と、運用を効率化する新しいAIOpsは、これからの運用保守を語るうえで欠かせない機能です。守りの機能群に加えて、改善と自動化の機能も押さえておく必要があります。

アップデート対応とリリース管理の機能

アップデート対応機能は、OSやミドルウェア、ライブラリのバージョンアップ、セキュリティパッチの適用を計画的に行う機能です。サポートが切れたソフトウェアを放置すると、脆弱性が残り、攻撃の標的になります。そのため、新しいバージョンへの追従は、システムの安全性と寿命を保つために不可欠です。

リリース管理機能は、軽微改修や仕様変更を本番環境へ安全に反映させる機能です。その範囲には、テスト環境での検証、リリース手順の管理、問題発生時の切り戻しまでが含まれます。これが弱いと、アップデートのたびに障害が起きたり、リリース作業が特定の人にしかできなくなったりします。

手順を標準化し、検証から本番反映、切り戻しまでを仕組み化しておけば、アップデートやリリースを安全な日常業務に変えられます。軽微改修は保守費内訳の10〜15%を占めますが(出典:ripla)、この枠を計画的に使って、システムを少しずつ良くしていくのが健全な運用保守の姿です。

AIOpsによる自動検知と運用の効率化

近年注目されているのが、AIを活用した運用(AIOps)による自動検知機能です。大量の監視データやログをAIが解析し、人では気づきにくい異常の予兆を自動で検知したり、過去のパターンから障害を予測したりします。大量に出るアラートを機械的に振り分け、本当に重要な兆候だけを担当者に通知することで、運用の効率と精度を同時に高められます。

一方で、AIを組み込んだ運用には注意点もあります。AIが誤った判断(ハルシネーション等)をした場合の責任や、AI関連の保守費が通常より高くなる傾向(MLOps保守は月50〜200万円という目安)も押さえておく必要があります(出典:ripla)。AIOpsは万能ではありませんが、監視や障害対応を底上げする有力な選択肢として理解しておく価値があります。

国内のマネージドサービス市場は2024年に4兆1,380億円規模(前年比5.2%増)へと拡大しており(出典:IDC)、運用の自動化・高度化への投資は今後も伸びる見通しです。riplaは、フルスクラッチ受託と国内運用保守の立場から、機能群を自社の状況に合わせて組み合わせる支援を重視しています。

ポイント

アップデートとリリースを安全に回す手順が決まっているかが目安です。AIOpsを使う場合は、AI関連の保守費と誤判断時の責任も示されているかを見ます。

まとめ

運用保守の標準機能は、役割ごとに次の4領域に分けると、見積もりの範囲を比べやすくなります。

  • 監視:死活・リソース・ログの三層による、稼働状況と異常の兆候の早期把握
  • バックアップ・障害対応:データの復旧、応答・復旧時間、エスカレーションの設計
  • SLA・定期保守・問い合わせ対応:SLAの達成状況の報告、点検・調整、利用者からの問い合わせへの回答
  • 更新・自動化:アップデートとリリースの安全な反映、AIOpsによる異常の自動検知

保守費内訳の目安は、監視15〜25%、障害対応25〜35%、定期保守20〜30%などです(出典:ripla)。各機能の役割をこの配分と照らし合わせれば、見積もりに並ぶ項目の過不足を判断できます。

機能一覧を確認するときに大切なのは、自社のシステムにとってどの機能が重要かという優先順位づけです。すべてを最高水準で揃える必要はありません。たとえば、止まると困るシステムなら監視と障害対応を厚くし、変化の多いシステムならアップデート・リリース管理を厚くするといった重み付けが現実的です。

riplaは、フルスクラッチ受託と国内運用保守を組み合わせ、これらの機能を自社の状況に合わせて過不足なく設計し、作った後も継続して伴走する支援を一貫して提供します。

会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。