配送管理システム刷新で見直すべき機能・対象範囲の一覧について

配送管理システムの刷新で見直す対象は、配車・運行・出荷の中核機能を軸に、運賃・車両・労務の周辺機能と、他システムとのデータ連携まで広がります。

現行機能は「残す」「作り替える」「廃止する」「外部サービスに任せる」の4つに分けて、業務領域ごとに洗い出します。

手法や費用の全体像は配送管理システム刷新の完全ガイドをご覧ください。

刷新の成否を決める「対象範囲の見極め」

現行機能を残す、作り替える、廃止・統合する、外部サービスに任せるの4つに分けた図
機能ごとに扱いを選ぶと、刷新範囲を整理しやすくなります。

配送管理システムの刷新は、まっさらな状態から作る新規開発と違い、すでに稼働している機能のどこに手を入れ、どこを残すかを仕分けるところから始まります。この仕分けの精度が、刷新の費用・期間・リスクを大きく左右します。具体的には、範囲を広げすぎれば費用と期間が膨らみ、狭めすぎれば刷新後すぐに機能不足が露呈します。

従業員約1,200名の製造業が、COBOL基幹系を刷新した事例があります。業務ロジック全体を作り直さず、配送・出荷に直結するバッチ処理基盤に範囲を絞った結果、約16ヶ月で完了し、夜間バッチを8時間から90分へ約80%短縮しました。

この成果は、効果の高い領域に対象範囲を集中させた判断があってこそ得られたものです。範囲設計の基本的な考え方は、このあとの見出しで順に見ていきます。

機能を4つに仕分ける考え方

現行機能は、刷新後の扱いに応じて次の4つに仕分けます。

  • そのまま残す機能:刷新後も今の仕組みのまま使い続ける機能
  • 中身を作り替える機能:機能は残しつつ、処理の中身を新しく組み直す機能
  • 廃止・統合する機能:使われていない機能を止めたり、似た機能にまとめたりする対象
  • 自社で持たず外部サービスに任せる機能:自前で作り込まず、外部のサービスを使う機能

機能ごとに扱いを選べば、すべてを一律に作り替えるより費用対効果が高まります。

たとえば、改修頻度の低い帳票出力は残し、ボトルネックになっている配車処理は作り替えます。使われていない機能は廃止し、地図やルート最適化は外部サービスに任せる方法もあります。この分け方を使えば、このあとの機能一覧を自社の現行機能に当てはめて見られます。

効果と現場停止リスクから見る優先順位

優先順位は、刷新の効果と配送現場への影響の二つで判断します。

  • 刷新の効果:刷新後にどれだけ成果が得られるか
  • 現場停止リスク:機能が止まったときに配送現場が受ける影響

二つの基準で見ると、効果が大きく、現場の中核を担う機能ほど優先度が高くなります。

配送業務には、出荷指示や配車のように一日でも止まれば荷主に影響が及ぶ機能と、月次集計のように多少遅れても致命傷にならない機能が混在しています。この濃淡を意識して対象範囲を組み立てれば、限られた予算を効果の高い領域に集中させられます。このあとは、業務領域ごとに見直すべき機能を一覧で見ていきます。

ポイント

対象範囲で迷ったときは、刷新の効果と、機能が止まったときの現場への影響の二つを基準にします。残す・作り替える・廃止する・外部に任せるのどれに入るかも、同じ視点で決めます。

中核領域:配車・運行・出荷で見直すべき機能の一覧

配送管理システムの中核機能として配車計画、運行管理、出荷指示の3領域を並べた図
現場への影響が大きい3領域が、中核機能を構成します。

配送管理システムの心臓部にあたるのが、配車計画・運行管理・出荷指示の領域です。ここは刷新の効果が最も出やすい領域です。また、止まると現場がすぐに困るため、最優先で見直す必要があります。

物流2024年問題への対応も、この領域の刷新にかかっています。そのため、優先して見直すべき機能がここに集中しています。

配車計画・ルート最適化の機能

配車計画は、刷新で最も投資効果が見込める機能です。積載や時間の制約を守りながら、当日の変化にも応じられるかどうかが見直しの軸になります。

  • 自動配車:積載量・時間指定・車格・ドライバー資格を加味し、手作業の配車を置き換える
  • 混載の最適化:複数の荷物の積み合わせ(混載)を最適化する
  • ルートと渋滞:配送ルートの距離・時間を最適化し、渋滞予測を取り込む
  • 当日の再配車:急な変更や追加注文に応じて、配車し直す

ルート最適化のような高度なアルゴリズムを自社でゼロから開発すると、費用も期間も膨らみます。そこで、前の見出しで触れた「外部サービスに任せる」機能に分類し、専門のクラウドサービスやAPIを組み合わせる方法が現実的です。

特に、自社の業務ルールに合わせた配車制約の設定だけを作り込み、最適化エンジンそのものは外部に頼る範囲設計が、コストと品質の両立につながります。

運行管理・進捗把握の機能

運行管理では、走行中の車両を把握して遅延に備える機能と、運行の実績を分析する機能が中心になります。

  • 車両位置:GPSやデジタコ(デジタルタコグラフ)と連携し、走行中の車両の位置をリアルタイムに見られる
  • 配送ステータス:出発・到着・荷下ろし完了の状況が、自動で更新される
  • 遅延の早期検知:遅延をいち早く見つけてアラートを出し、荷主へ到着予定を通知する
  • 実績の分析:運行実績データを蓄積し、稼働率や遅延傾向を分析する

ユニリタの事例では、膨大な機器ログを整理して見られるようにしたことで保守費の高い機器を特定し、作業負担を5分の1に軽減して数億円規模の投資対効果を得ました。配送でも同様に、運行データを後から分析できる形で蓄積する設計を刷新時に織り込まないと、刷新後に「分析したいデータがない」という新たな負債を抱えることになります。

出荷指示・伝票・受領管理の機能

出荷指示や伝票発行は配送の起点で、指示の作成から受領確認までの各場面が見直しの対象になります。

  • 出荷指示の自動生成:受注データから出荷指示を作り、転記作業をなくす
  • 帳票の電子化:送り状・納品書・受領書を電子化して、ペーパーレスにする
  • 電子サイン:スマートフォンやハンディ端末で、受領確認を行う
  • 検品・照合:誤出荷・誤配を防ぐ仕組みを設ける

イオングループは、刷新の前に業務プロセスを徹底して分析し、月700時間を削減しました。この事例が示すとおり、出荷指示や伝票まわりには手作業の転記が大量に潜んでいます。

このため、機能を刷新する前に「そもそもこの転記は必要か」と問い直し、業務の流れを整えてから新機能に載せ替えると、単なる電子化以上の効果が得られます。

ポイント

中核領域は、効果が最も出やすく、止まると現場がすぐに困る機能です。まずこの領域から見直し、ルート最適化のように外部サービスに任せられる部分は、自社で作り込まない方を検討します。

周辺領域:運賃・車両・労務で見直すべき機能の一覧

中核領域の周りには、運賃計算、車両管理、労務管理といった周辺機能が広がっています。これらは中核ほど目立つ機能ではないものの、放置すると刷新後に「結局ここが手作業のまま残った」という事態を招きます。そのため、対象範囲に含めるかどうかを意識して判断すべき領域です。

運賃計算・請求・支払の機能

運賃計算は、荷主ごと・方面ごとのルールが複雑になりやすく、属人化しがちです。運賃マスタから請求・支払までの業務では、ルールの管理と突合、支払の自動化が見直しの柱になります。

  • 運賃マスタの整理:荷主別・距離別・重量別の運賃を、ひとつのマスタにまとめて管理する
  • 請求の突合:実運送と請求を自動で突き合わせ、過不足を検知
  • 支払計算の自動化:協力会社や傭車への支払額を、システムで自動的に算出
  • 割増の自動反映:燃料サーチャージや各種割増を、運賃に自動で反映

運賃ルールは長年の取引で例外が積み重なっていることが多いため、刷新の前に例外を洗い出すことが欠かせません。

すべての例外をシステムに作り込むと費用が膨らみます。そのため、標準化できるルールはこの機会に荷主と交渉して整理し、本当に必要な例外だけを残せば、メリハリの効いた設計になります。機能の作り込み量を減らすことは、それ自体がコスト削減につながります。

車両管理・労務管理の機能

車両・労務管理では、車両の状態や運転時間などの記録・確認機能を、次のとおり見直します。

  • 期限管理:車検・点検・保険の期限を管理し、アラートを出す
  • 車両の記録:燃費・走行距離・修理履歴を記録・分析する
  • 拘束時間のチェック:ドライバーの拘束時間・休憩・連続運転時間を自動でチェックする
  • 点呼のデジタル化:点呼記録やアルコールチェックを、デジタルで扱う

とくに労務管理は、改善基準告示への準拠が法的に求められる領域です。このため、刷新を機に拘束時間や運転時間を自動でチェックできる仕組みを組み込んでおけば、法令違反のリスクを下げつつ、管理者の負担も軽くできます。さらに、これらの周辺機能を中核機能とどう連携させるかが、刷新後の業務効率を大きく左右します。

周辺領域の機能は、すべてを一度に刷新しなくてもかまいません。たとえば、配車や運行といった中核を先に刷新し、運賃計算や労務管理は次のフェーズで手をつける進め方も有効です。

大切なのは、後から連携できる形で中核を設計しておくことです。中核と周辺を一体で作り込みすぎると費用が膨らむため、領域ごとに優先度を付けて段階的に範囲を広げるのが、無理のない進め方です。

ポイント

周辺機能は、放置すると刷新後も手作業が残りやすい領域です。対象に含めるかは、中核機能とどう連携させるかを基準に判断し、中核を先に刷新して段階的に広げる進め方も検討します。

連携領域:データ連携・I/Fで見落としやすい対象範囲

配送管理システムと受注・在庫、会計、荷主とのEDI、倉庫などの連携先を結んだ図
配送管理システムは複数の業務システムや取引先とつながります。

刷新の範囲設計で最も見落とされやすいのは、他システムとのデータ連携・インターフェース(I/F)の領域です。配送管理システムは単独で完結せず、受注・在庫・会計・荷主や倉庫のシステムと数多くつながっています。この連携を軽視すると、刷新後に「データがつながらない」という致命的なトラブルを招きます。

受注・在庫・会計・EDI連携の洗い出し

連携先ごとに、受け渡すデータと方式を洗い出すことが出発点です。

  • 出荷データの連携:受注システムや在庫管理(WMS)との間で、出荷データを受け渡す
  • 売上・運賃の連携:会計システムへ、売上と運賃のデータを渡す
  • EDIの方式:荷主とのEDI(電子データ交換)で、方式とフォーマットを決める
  • 倉庫・プラットフォーマー連携:倉庫やプラットフォーマーのシステムと、APIで接続する

古いシステムでは、CSVファイルの手動受け渡しや、夜間バッチでの一括連携に依存しているケースが少なくありません。このため、刷新の際は、こうした連携をリアルタイムのAPI連携へ切り替えられるかを検討する価値があります。

ただし、荷主側のシステムの都合で、連携方式を変えられない場合もあります。相手先が関わるI/Fは早めに洗い出し、刷新の範囲に含めるか、現状のまま残すかを判断します。

マスタ・履歴データの移行範囲

データ移行では、基礎データと業務履歴を分けて、移行の対象範囲を決めます。

  • マスタデータ:荷主・車両・運賃の各マスタ
  • 業務履歴:過去の配送履歴と請求履歴のうち、業務上必要な期間や参照頻度の高いデータ

マスタデータは、長年の運用で重複や表記ゆれが溜まっていることが多いため、移行の前にクレンジング(整理・整備)することが欠かせません。

汚れたデータをそのまま新システムへ移すと、せっかくの刷新が「ゴミの引っ越し」で終わってしまいます。移行するデータの範囲と品質を、機能と同じ精度で洗い出すことが、刷新全体の品質を底上げします。

連携領域で忘れてはならないのは、ドライバーや荷主が使う「画面・端末」の見直しです。ドライバー向けのスマートフォンアプリ、荷主向けの配送状況照会画面、配車担当者の管理画面など、人が触れる接点も刷新の対象範囲に含めるかを判断します。

画面は業務効率と満足度に直結します。「誰がどの画面で何をするか」も範囲に含めて整理しておけば、刷新後の定着が進みやすくなります。連携と接点を含めて初めて、対象範囲の全体像が描けます。

ポイント

連携先と受け渡すデータは、刷新の前に一覧にしておくと見落としが減ります。相手先の都合で変えられないI/Fは、刷新の範囲に含めるか現状のまま残すかを早めに決めます。

まとめ

ここまで、配送管理システム刷新で見直すべき機能・対象範囲を、中核・周辺・連携の3つの領域に分けて一覧にしてきました。

配車・運行・出荷の中核機能は効果が大きく、優先度も高い領域です。また、運賃・車両・労務は2024年問題への対応で重要性が増しています。さらに、データ連携やマスタ移行は見落とされやすい領域です。

いずれも、「残す・作り替える・廃止する・外部に任せる」の4つに仕分け、効果と現場停止リスクで優先順位を付けます。これが、範囲設計の基本になります。

製造業のCOBOL刷新では、対象範囲を絞って成果を上げました。配送管理システムでも、すべてを一度に作り替えず、効果の高い機能から順に着手することが成功の鍵です。そのうえで、この一覧を自社の現行システムに当てはめて洗い出せば、刷新の対象範囲が具体的に見えてきます。

手法選定や費用感まで含めた全体像を確認したい場合は、完全ガイドもあわせて活用し、自社にとって最適な刷新範囲を設計してください。

会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。