配送管理システム刷新の事例/成功事例について

配送管理システムの刷新は、サポート終了などのきっかけを捉え、業務改革とデータ活用を設計に含めると、現場に合った成果につながります。

刷新のきっかけ、3つの事例、判断の要点を、完全ガイドでは触れきれない数字とともに紹介します。手法や費用の全体像は配送管理システム刷新の完全ガイドもご覧ください。

▼全体ガイドの記事
・配送管理システム刷新の完全ガイド

配送管理システムの刷新が動き出す典型的なきっかけ

刷新のきっかけを言葉にしておくと、自社の状況を他社の事例と照らし合わせやすくなります。経済産業省のDXレポートは、老朽化・ブラックボックス化したシステムの放置を「2025年の崖」と指摘しています。2025年以降、年間最大12兆円の経済損失が生じうるとされます。

また、配送・物流分野でも、システム刷新は待ったなしの経営課題です。配送現場では、メーカーのサポートが終わるオンプレミスのTMSや、表計算ソフトで属人的に作られた配車表の限界も、刷新のきっかけになります。

社内の合意を得るには、「なんとなく古い」という印象より、具体的なきっかけを示すことが欠かせません。

現場のきっかけは大きく2つに分けられます。1つは放置できないリスクが表面化した外的要因で、もう1つは競争力を高めるために自ら踏み込む経営判断です。

やむを得ず刷新に踏み切る外的要因

外的要因は、保守期限や担い手の不在、法規制への対応など、期限や運用上の制約として現れます。

  • 保守サポート終了:故障や脆弱性への対応が難しくなる
  • 担当者・ベンダーの撤退:保守や改修を続けられなくなる
  • 物流2024年問題:限られた人員と時間で配送を維持する必要がある

ハードウェアは保守期限を過ぎると、故障時に部品を入手できず、配送が止まるリスクがあります。OSやミドルウェアのサポートが終わると脆弱性が残り、荷主の取引基準を満たせない事態も起きます。期限が明確なぶん、サポート終了は刷新の意思決定を後押ししやすいきっかけです。

配送管理システムは改修を重ねるうちに複雑化し、特定の技術者しか理解できない状態に陥りがちです。担当者の退職やベンダーの事業撤退があると、誰も手を入れられなくなり、刷新に至る場合があります。

日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)の調査では、約7割の企業が既存システムの老朽化を経営課題と認識しています。

物流2024年問題では、ドライバーの時間外労働に上限が設けられ、輸送力不足が懸念されています。このため、限られた人員と労働時間で従来どおりの配送を続けるには、配車を最適化し、運行の状況を把握することが欠かせません。

手作業や老朽化したシステムでは対応しきれず、法令順守と業務効率化の両面で刷新が迫られるケースもあります。

競争力強化のために自ら踏み込む経営判断

外的要因とは別に、攻めの経営判断からシステムを刷新する企業もあります。

  • 合併・買収(M&A)・拠点統合:乱立した配送システムとデータを統合する
  • 新しいビジネスモデル:複雑化する配送要件に対応する

複数のシステムが並び立つと、配車ルールや運賃計算がばらばらになり、全社で最適な配送を組みにくくなります。基盤を一本化すると、全社の配送状況を横断して把握できます。

EC配送が急拡大し、当日配送や時間帯指定の高度化、定期配送などが加わって、求められる配送要件は複雑になっています。古いシステムでは施策のたびに改修費が膨らみ、対応のスピードも出にくくなります。そのため、新規施策にすばやく対応できる土台を持つことを目的に、刷新を戦略的な投資として判断するケースがあります。

刷新を進めた3つの事例の判断を、きっかけと照らして見ていきます。

ポイント

社内の合意を得るには、外的要因か経営判断か、どちらのきっかけに当たるかを示すことが大切です。なぜ今なのかを具体的に説明できるかで、稟議の進みやすさが変わります。

事例1:サポート終了を機にCOBOL基幹系を刷新したケース

COBOL基幹システム刷新による夜間バッチ、処理時間、サーバー保守費の改善を3つのパネルで示した図。
処理の短縮と保守費の低下が、同じ刷新で並んでいます。

従業員約1,200名の製造業が、COBOLで構築した基幹システムを刷新した事例です。この企業は受注から出荷指示、配送手配までを一つの基幹系で処理していました。

夜間バッチには8時間かかり、翌朝の出荷準備や配車計画の確定が遅れていました。さらに、稼働基盤のサポート終了とCOBOL技術者の高齢化が、刷新の引き金になりました。

同社はすぐに開発せず、まず資産を棚卸しする判断をしました。具体的には、現行システムの機能やデータ、依存関係を丁寧に洗い出しました。

同社が選んだのは、配送・出荷に直結する処理基盤を現代的な構成へ作り替えるリビルド型です。そのうえで、棚卸しによって不要な機能を削り、本当に必要な処理だけを新基盤へ移せました。

刷新は約16ヶ月で完了し、夜間バッチは8時間から90分へ短縮されました。また、処理時間は約80%減り、早朝に出荷指示データが確定するようになりました。その結果、配車担当者は余裕を持って、当日の積み合わせや配送ルートを組めます。

サーバー保守費は年2,400万円から850万円へ下がり、約65%削減されました。費用面の効果がはっきり表れたことで、サポート終了を業務改善の好機に変えた好例といえます。

この事例から学べる判断の要点

この事例では、刷新の範囲を処理性能のボトルネックに絞り込みました。

  • 投資範囲:配送・出荷のバッチ処理に絞り、業務ロジック全体の再構築を避ける
  • 適用の目安:多くの企業で、自社の配送業務を止める処理から範囲を定める
  • 期限下の優先順位:サポート終了でも全面刷新を急がず、効果箇所を選ぶ判断が成功を支える

同社は、最小限の改修で効果を得られました。

ポイント

サポート終了が迫るときは、全面刷新を急ぐより、配送・出荷に直結する処理から範囲を絞れるかを先に確かめるのが目安です。範囲を絞る判断は、限られた予算でも効果を得る近道になります。

事例2:刷新を業務改革の機会に変え月700時間を削減したケース

業務フローの把握から作業の重複確認、自動化に向く作業の見極め、業務の整流化と刷新へ進む流れ図。
先に業務を見直すと、古い手順をそのまま移さずに済みます。

イオングループは、システム刷新やRPA導入の前段で業務プロセスを分析しました。その結果、月間700時間の業務削減を実現しました。

イオングループの事例は「攻めの経営判断」に近く、刷新を単なる置き換えではなく、業務そのものを変える機会と捉えた点が特徴です。

同社はツールを先に導入せず、まず現状の業務フローを書き出して把握しました。そのうえで、作業の重複や、自動化に向く作業を見極めてから、刷新に進みました。

配送の現場では、出荷指示の転記や配送伝票の手入力が定型業務として積み重なります。このほか、運賃計算の手作業やドライバーへの連絡も、配送現場にある定型業務です。

月700時間の削減は、配送現場の残業削減や物流2024年問題への対応に直結します。

古い手順をそのまま新しいシステムへ移すと、速くなっただけの旧来業務で終わりかねません。そこで同社は、業務の必要性を問い直し、整流化とセットで刷新しました。その結果、大きな成果につながりました。

この事例から学べる判断の要点

配送業務は地域・荷主・商品特性ごとのルールが積み上がり、属人化しやすい領域です。

  • 手順の棚卸し:理由を確認し、標準化できる業務を見極める
  • 刷新前の整流化:古い非効率な流れを、そのまま新システムへ持ち込まない
  • 刷新の位置づけ:IT更新にとどめず、業務改革の機会として捉えた刷新

業務を整える作業への投資は目に見えにくいものの、後工程の費用とリスクを左右します。先に業務を整流化しておくと、新システムがシンプルになり、開発費用や運用負荷を抑えられます。

ポイント

刷新に入る前に、業務の流れを見直し、標準化できる作業と残す作業を分けられるかを確かめておくと、後工程の費用とリスクを抑えられます。

事例3:通信ログ分析で数億円規模の効果を得たケース

GPSとデジタコから得る運行データを横断分析し、配車計画やコスト構造の改善につなげる4層図。
データの蓄積から改善までを、刷新の構成に含めます。

ユニリタは、機器やサーバーの通信ログを分析し、保守費の高い機器を見つけ出しました。対象は200種類・約30,000台のネットワーク機器と、10,000台のサーバーです。

分析した通信ログは1日10億件にのぼり、作業負担を5分の1に軽減しました。さらに、数億円規模の投資対効果を生み出しました。

成果の源泉は、膨大なデータを蓄積するにとどまらず、意思決定に使える形で示したことです。この考え方は、配送管理システムの刷新にも応用できます。

GPSやデジタコ(デジタルタコグラフ)から、運行データを得られます。車両ごとの稼働率やルートごとの遅延傾向、燃料消費も分析対象です。

多くの企業は、データを蓄積しながらも十分に活用できていません。刷新のタイミングでデータを見える形にすれば、非効率なルートや稼働の低い車両を見つけられます。分析結果は、配車計画やコスト構造の改善につなげられます。

この事例では、刷新後に活用するデータ基盤を設計段階から組み込みました。反対に、目先の機能だけを移してデータ活用の設計を後回しにすると、後年に分析用データが取れない負債を生みます。そのため、データを刷新の副産物ではなく、刷新で得る資産として捉える発想が、長期的な効果の差を生みます。

この事例から学べる判断の要点

刷新では、今の業務をそのまま動かすだけで終わらせず、次の改善まで見据えることが求められます。

  • 継続改善:設計段階で運行データを活用できる形で蓄積し、改善の土台にする
  • 対応策の根拠:データ活用を刷新後の効果や2024年問題への対応に結びつける
  • 統合後の活用:統合データを資産化して横断分析する基盤は、刷新が生む大きな副次効果の一つ

ポイント

運行データを、刷新の時点で改善に使える形で蓄積できるかどうかが、後の効果の差に響きます。設計段階で、データ活用を組み込めるかを判断の目安にするとよいでしょう。

まとめ

配送管理システム刷新の事例を、きっかけと意思決定の観点から見てきました。

サポート終了を機にCOBOL基幹系を刷新した事例では、夜間バッチが8時間から90分へ短縮し、保守費も約65%削減されました。業務改革を進めた事例では月700時間の削減が実現し、運行データを設計に織り込んだ事例では数億円規模の効果が得られました。

刷新のきっかけには、サポート終了や2024年問題などの外的要因があります。一方で、合併・統合や新しい施策への対応といった経営判断も、きっかけになります。

各事例では、刷新を単なる置き換えで終わらせず、前向きな判断につなげていました。範囲を絞る、業務を整える、データを資産として扱うという三つの進め方が、判断の基準になります。

企業は自社のきっかけを見極め、効果の高い領域へ投資を集中させると、限られた予算でも成果を目指せます。

手法や費用感は配送管理システム刷新の完全ガイドで確認し、ここで見た判断の基準を自社の計画に生かしてください。

会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。