開発チームの導入/開発事例や活用/成功事例について

システム開発の成否を左右するのは、ツールや言語の選定ではなく、どんな開発チームを、どう組み、どう動かすかという体制づくりです。

新たに内製チームを作る担当者から、混乱期で停滞したチームを立て直したいマネージャーまで、多くの担当者がまず知りたいのは、同じ立場の企業の進め方です。非IT企業の立ち上げ、外部チームとの組み合わせ、ペアプロによる改善の事例を、発注側の目線で見ていきます。全体像は開発チームの完全ガイドでご確認ください。

非IT企業がゼロから内製開発チームを立ち上げた事例

内製開発チームの立ち上げに関するROIでの説明、コアの内製、社内PdM、ペアプログラミングを4項目で示す図。
投資の説明と役割の置き方が、チームづくりの軸になります。

大手IT企業の華やかな事例に目が行きがちですが、発注側がいちばん学べるのは、ITを本業としない中小・非IT企業が、ゼロから内製開発チームを立ち上げた等身大の事例です。社内にエンジニアが一人もいない状態から、どう最初の一歩を踏み出し、経営層の理解を得て、機能するチームへ育てたのか。そこには、規模を問わず再現できる原則が詰まっています。

経営層をROIで説得して稟議を通した事例

非IT企業でゼロから開発チームを立ち上げる際、最初にして最大の課題になるのが経営層の説得です。「なぜ高い人件費を払ってエンジニアを社内に抱えるのか、外注で十分ではないか」という問いに、感覚論ではなく数字で答えられた企業が、稟議を突破しています。

成功事例では、立ち上げにかかる人件費・採用コストと、内製化で削減できる外注費や得られるスピードアップの効果を、複数年のキャッシュフローで提示しています。

開発チームが事業の数字にどう貢献するかを可視化した点も、共通して見られます。

たとえば、「内製チームによってリリース頻度が上がり、機能改善のサイクルが短縮された。また、解約率が下がりLTVが改善した」といった形で、技術投資をビジネス成果に結びつけて説明しています。

経営層が判断するのは、技術の良し悪しよりも投資を回収できるかどうかです。そのため、事例から学べるのは、開発チームの立ち上げは「採用や技術の問題」である以前に「ROIを語れるかどうかの問題」だという原則です。

経営層への説明では、投資判断の指標と効果の測り方を数字で揃えておくことが要になります。

  • 投資判断:指標にIRR(内部収益率)を用いる
  • 効果の測定:KPIにROI(投資収益率)とCAC(顧客獲得コスト)を設定する

コアは内製・PdMは社内に置いて立ち上げた事例

ゼロから立ち上げに成功した企業に共通するのは、「コアは内製、手足は外注」という原則を守っている点です。

役割を分けておくことで、少人数でも事業の主導権を手放さずにチームを立ち上げられます。社内にエンジニアが一人もいない段階では、まずその役割を担う一人を採用または育成し、その人を中心に外部リソースを組み込むのが現実的です。

立ち上げ初期の3〜5人規模のチームは、一人が複数の役割を兼務するため、属人化のリスクを常に抱えます。そこで成功事例では、後述するペアプログラミングやモブプログラミングを早い段階から取り入れ、知識を一人に閉じ込めない工夫をしています。

あるインターン中心のチームでも、ペアプロを徹底したことでベロシティが向上した事例があります。また、少人数・経験不足という不利な条件でも、チームの組み方次第で成果は出せることが示されています。ゼロからの立ち上げでは、人数の多さよりも、役割の置き方と属人化を防ぐ仕組みが大事です。

内製チームを段階的に育てる過程で生じやすい失敗やリスクについては、関連記事『開発チーム開発/導入の失敗/課題/注意点/リスクについて』もあわせてご覧ください。

役割の切り分けは、社内に何を残すかを先に決めるところから始まります。

  • 社内に残す役割:事業の根幹に関わる設計判断、製品の方向性を決めるプロダクトマネージャー(PdM)、テックリード
  • 外部に任せる作業:実装の一部や定型的な開発

ポイント

ゼロから内製チームを立ち上げるなら、コアは社内に残し、経営層には投資回収の見通しを数字で示せるかを最初に確かめておくとよいでしょう。

外部開発チームを内製と組み合わせて活用した事例

外部開発チームの責任分担を中心に、契約形態、役割分担、契約書、RACIマトリクスを周囲に配置した図。
契約形態と役割を文書とマトリクスに反映します。

内製チームだけですべてを賄える企業は多くありません。採用が追いつかない、特定技術の知見が社内にない、繁忙期だけ開発力を増やしたい、といった場面で、外部開発チームの活用が役立ちます。

事例を見ると、成功している企業は外部開発チームを「単なる人手の補充」ではなく「自社の体制に組み込む一つのチーム」として扱っています。また、内製チームとの境界を丁寧に設計しています。

内製×外部のハイブリッド体制で開発力を補強した事例

ハイブリッド体制で成果を出した事例に共通するのは、「どこまでを社内が担い、どこからを外部開発チームに委ねるか」という責任の線引きを、プロジェクトの初期に明確にしている点です。

この線引きが曖昧なまま外部チームを増やすと、誰がどの判断に責任を持つのかが分からなくなり、かえって混乱を招きます。また、外部開発チームを活用する際は、業務委託契約の形態が準委任か請負かによって、責任の所在やコスト負担が変わる点にも注意が必要です。

成功事例では、契約形態と役割分担を契約書とRACIマトリクスの両方に落とし込んでいます。「設計のAccountable(最終責任)は社内、実装のResponsible(実行責任)は外部チーム」といった形で、後の認識ずれを防いでいます。

riplaも外部開発チーム/専属チームとして参画する際は、この責任分解を最初に決めることを重視しています。外部活用を成功させる鍵は、人数を増やすことではなく、誰が何に責任を持つかを先に決めておくことです。

社内と外部の分担は、判断の中心を社内に残すかどうかで考えます。

  • 社内が担う範囲:製品の意思決定とアーキテクチャの根幹を、社内のPdMとテックリードが握る
  • 外部に任せる範囲:機能単位の実装とテスト自動化の整備

専属開発チームで知識の蓄積を実現した事例

外部活用の中でも、案件ごとにメンバーが入れ替わる従来型の請負と一線を画すのが、固定メンバーで継続的に伴走する「専属開発チーム」の事例です。専属チームのメリットは、自社の事業ドメインや過去の経緯を理解したメンバーが継続して関わるため、毎回ゼロから説明し直す必要がないことです。さらに、知識がチーム内に蓄積されていきます。

事例では、半年から1年かけて専属チームが自社の業務を深く理解した結果、内製チームに近い当事者意識でプロダクトに向き合えるようになったケースが報告されています。

外部と内製の区別を越えて知識が流通し、チーム全体のベロシティが安定して向上していきます。専属開発チームは、外注の柔軟さと内製の継続性を兼ね備えた選択肢として、特に中長期のプロダクト開発で有効な体制だと言えます。

専属チームの運営では、振り返りの場や会議への参加を内製チームと揃えることが基本になります。

  • 振り返りの場:KPTなどを内製チームと共有する
  • 会議への参加:社内のスプリントレビューやデイリーに加わり、一体のチームとして運営する

ポイント

外部開発チームを組み合わせるなら、社内が判断する範囲と外部に任せる範囲を、契約書とRACIの両方に書いて揃えておくことが欠かせません。

ペアプロ・品質メトリクスで定量改善した事例

QMTXによる品質管理の改善として、年間バグ約40%削減、納期遅れ約30%改善、生産性約20%改善を示す図。
品質・納期・生産性の各指標に改善幅が示されています。

開発チームの良し悪しは、感覚ではなく数字で語れます。チームの取り組みを定量的に改善した事例は、自社のチームを評価し、投資対効果を経営に説明するうえで何よりの参考になります。

ここでは、品質とベロシティを数字で改善した代表的な一次データを取り上げます。これらのデータは、具体的な打ち手と結果がセットになっている点に価値があります。

ソニー・NEC・住友電工の品質定量改善事例

ソニー、NEC、住友電工では、チームの取り組みで品質を改善した代表例が報告されています。事例の数字は、品質と生産性のどちらを改善した取り組みかを分けて読むと整理しやすくなります。

  • 設計段階の検証:ソニーと日立ハイテクで品質を改善
  • 生産性とコストの改善:NECシステムテクノロジーと住友電工の品質管理の取り組み

なお、ソニーのピアレビューでは、不具合検出が1時間あたり1.92件で、一般的な水準とされる0.29件/時を上回っています。品質は60%向上しています。これは、レビューという「チームで品質を作り込む活動」を仕組みとして回せば、属人的な能力に頼らずに品質を底上げできることを示しています。

F2Tでは、設計段階で漏れていた不具合が11件からゼロ件へ減ったと報告されています。

規模の大きな組織でも、チーム運営を標準化すると、その効果は数字に表れます。NECシステムテクノロジーは、品質管理の取り組み(QMTX)によって年間バグを約40%削減し、納期遅れを約30%、生産性を約20%改善したとされます。

また、住友電工の組立型開発では、開発コストを30%削減し、COBOL比で約3倍の生産性、欠陥を半減させた事例も報告されています。これらに共通するのは、個人の頑張りではなく「チームと開発プロセスの設計」によって品質とコストを改善している点です。

事例を自社に活かすには、まず自社の品質をバグ摘出率(件/KL や 件/H)などの品質会計の指標で測り、改善の前後を数字で追える状態にすることが出発点になります。

ペアプロでベロシティが117%に伸びた事例

ペアプロとモブプロの効果は、どの場面で何が変わったかを一つずつ確かめると分かりやすいです。

  • ペアプロ:導入によってベロシティが向上
  • モブプログラミング:職種を横断して「仕様書レス設計」を実現

具体的には、ある事例でチームのベロシティが18.8から22.0へ、約117%伸びています。

二人で一つの実装に取り組むため、一見すると非効率に見えます。しかし、レビューが進んで手戻りやバグが減ることで、結果としてチーム全体のアウトプットが増えています。

注目すべきは、この事例ではメンバーの半数がインターンだった点です。

より進んだ取り組みについても、一次情報が報告されています。

企画・設計・開発のメンバーが同じ画面を囲んでその場で意思決定することで、詳細な仕様書を介さずに認識を合わせ、設計漏れを防ぐという手法です。これらの事例が示すのは、ペアプロやモブプロは単なる流行のプラクティスではなく、「知識を一人に閉じ込めず、チームで品質を作り込む」ための具体的な仕組みだということです。

少人数チームほど属人化のリスクが高いため、こうした手法の費用対効果は高くなります。ベロシティ117%という数字は、チームの組み方ひとつで生産性が二桁パーセント変わることを示しています。

ポイント

チームの良し悪しは、品質とベロシティを自社の数字で測り、打ち手の前後で比べられる状態になっているかで見ると判断しやすくなります。

まとめ

開発チームの導入事例・組成事例・成功事例を振り返ると、成功も立ち上げも、結局は一点に集約されます。それは、役割をRACIで明確にし、タックマンモデルの混乱期を前提に振り返りでチームを育てることです。そのうえで、コアは内製・手足は外部開発チームで補うハイブリッド体制を、ROIで経営を説得しながら段階的に広げます。

チームの質は、ソニーの品質60%向上やペアプロのベロシティ117%のように数字で示せます。さらに、ペアプロ・モブプロ・品質メトリクスという具体的な打ち手で再現できます。

非IT企業のゼロからの立ち上げ事例は、人数の多さではなく役割の置き方と属人化を防ぐ仕組みが成否を分けることを教えています。事例を読むときに大切なのは、「どれだけ優秀な人を集めたか」ではなく「どう機能するチームに育てたか」という視点です。

自社の規模と事業フェーズに照らし、まずは役割の明確化とチームの定量化という、再現性の高い一歩から始めてください。

riplaはフルスクラッチ受託と国内開発を組み合わせ、外部開発チーム/専属チームとして内製を補強し、責任分解とROIの可視化を前提にしたチームづくりを一貫して支援します。

全体像の確認には、あらためて完全ガイドをご活用ください。

会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。