開発リソース不足の必要機能や標準機能の一覧について

開発リソース不足の解消で外部リソースに期待できる機能は、工数補強、人材アサイン、ナレッジ移管、育成の4つです。

各機能の役割は次のとおりです。自社で不足している機能に照らし合わせると、依頼範囲を定めやすくなります。

  • 工数補強:繁忙期や不足する工数を外部人材で補う
  • 人材アサイン:不足する職種やスキルを持つ人材を確保する
  • ナレッジ移管:外部人材と協働し、業務知識を内製チームへ引き継ぐ
  • 育成:協働を通じて内製メンバーが必要な知識やスキルを身につける

開発リソース不足への対処の全体像は、開発リソース不足の完全ガイドでも確認できます。

逼迫した工数を即時補強する機能

社内での採用に半年から一年、スポット外注やラボ型開発に数週間と示す比較図。
外部リソースは目の前の締め切りに合わせやすい時間軸です。

開発リソース不足の解消策が担う最も基本的な機能は、いま逼迫している工数を、待たずに補強することです。社内での採用は、求人から面接、内定、入社、立ち上がりまで半年から一年かかるのが一般的で、目の前のプロジェクトの締め切りには間に合いません。

一方、スポット外注やラボ型開発は、契約から数週間で実働できます。この時間軸の違いこそが、外部リソースを活用する意義です。

スポット外注・ラボ型・派遣で工数の山に即応する役割

即時補強の機能は、契約形態によって性格が異なります。繁忙期の一時的な山に応えるのか、継続する開発を支えるのかで、向いている形態が変わります。

  • スポット外注:仕様の明確な単発の開発タスクを、必要なときだけ切り出して任せる
  • ラボ型開発:固定のチームを一定期間専属で確保する形態
  • 派遣:自社の指揮命令下で社内メンバーと並んで働く、即時の増員

ラボ型開発は、継続的に発生する開発を腰を据えて任せたいときに向いています。派遣(準委任での常駐含む)は、既存チームへの即時の増員をしたいときに選びます。

これらは「伸び縮みできる」機能です。正社員を採用すると、繁忙期が過ぎても固定費として残り続けますが、外部リソースはピークに合わせて増やし、終了後に縮められます。特定プロジェクトの工数逼迫のような局所的で一時的な不足には、この弾力性がふさわしい解になります。

どの機能を選ぶかは、逼迫が単発か継続かによって変わります。自社の不足をその見極めから始めることが、即時補強機能を活かす前提です。必須とする役割の切り分けは、後の節でも扱います。

社内エンジニアをコア業務に解放する役割

即時補強には、頭数を増やすだけでなく、社内エンジニアを本来やるべき仕事に解放する側面もあります。

  • 周辺工程:仕様の明確な実装やテストを、外部へ切り出せる範囲
  • 社内人材:業務ロジックや顧客理解が必要なコア開発に集中する

多くの企業では、限られた社内エンジニアが既存システムの保守や日々の問い合わせ対応に追われ、新規開発に着手できずにいます。さらに、日本のIT予算の8〜9割がレガシーシステムの維持に費やされているという構造的な課題も、この背景にあります(出典:経済産業省)。

そこで、即時補強は、外部に周辺工程を任せて社内をコアに集中させる、再配分の機能です。この役割分担を設計できるかどうかが、即時補強を成果につなげる鍵になります。リソース不足は人数の問題に見えても、実際には「誰が何に時間を使うべきか」の設計問題です。

ポイント

工数の不足が単発の山か継続する需要かによって、スポット外注・ラボ型開発・派遣のどれを使うかが変わります。社内エンジニアをコア業務に戻せるかも、あわせて確かめておくとよいでしょう。

スキル標準に沿って的確に人材をアサインする機能

人材アサインで、類型には担う役割、レベルには設計から任せる範囲、必要量には必要な人月を対応させた図。
三つの軸をそろえると、提案内容を自社の不足と照らせます。

工数を即時に補強できても、投入された人材のスキルが求める役割と合わなければ、リソース不足は解消しません。なかでも、「人は来たが期待した働きをしない」というミスマッチは、外部活用の典型的な失敗です。

これを防ぐのが、スキル標準を物差しにした「的確な人材アサイン」という機能です。求めるスキルを共通の言葉で定義できれば、必要な人材を過不足なく確保できます。

デジタルスキル標準の人材5類型を物差しにする役割

経済産業省とIPAが整備したデジタルスキル標準(DSS)は、DXを推進する人材を5つの類型に整理しています。その類型には、ソフトウェアエンジニアやサイバーセキュリティも含まれます(出典:経済産業省)。

  • 役割の特定:5類型を物差しに、不足している役割を言語化する
  • 要件の具体化:必要な経験や期間まで整理し、求める人材像を明確にする

この類型を物差しにすると、自社に欠けているのはどの役割かを言葉にできます。たとえば、要件を業務に落とし込む人が足りない場合と、実装やセキュリティを担う人が足りない場合では、アサインすべき人材像が異なります。

開発リソース不足を「とにかくエンジニアが足りない」と漠然と捉えると、来た人材と必要な役割がずれやすくなります。一方で、スキル標準に照らして必要な経験や期間まで具体化すると、外部リソースの提供側も的確な人材を割り当てられます。

この機能は、不足の中身を診断する道具でもあります。必要な役割を洗い出すこの作業は、次の段階である要件定義やRFP作成にも直結します。詳しくは『開発リソース不足解消のRFP・要件定義書・提案依頼書について』もあわせてご覧ください。

レベル感のミスマッチを防ぐアサインの役割

類型を特定したうえで、さらに重要になるのが「レベル感」のすり合わせです。同じソフトウェアエンジニアでも、設計から任せられるシニアと、明確な指示のもとで実装するジュニアでは、アサインの意味が変わります。

  • 類型:どの役割を担う人材かを、共通の尺度で確認する
  • レベル:設計から任せるのか、指示のもとで実装させるのかを揃える
  • 必要量:類型とレベルに加えて、必要な人月を言語化する

デジタルスキル標準には、共通リテラシーを示すDSS-Lと専門性を示すDSS-Pの2つの層があり、求める専門性の高さを段階で表せます。そのため、提案を受ける人材が自社の求めるレベルに本当に合っているかを、この共通の尺度で確認することが、ミスマッチを防ぎます。

的確なアサインを活かすには、提供側に任せきりにせず、自社側でも「どの類型を、どのレベルで、何人月」必要かを言葉にしておくことが欠かせません。この準備があると、外部リソースの提案が自社の不足に合っているかを客観的に評価でき、価格交渉の根拠にもなります。スキル標準は、発注側にとっても、不足を診断し的確な役割を求めるための共通言語です。

ポイント

求める役割をデジタルスキル標準の類型で言葉にし、類型・レベル・必要量を揃えて伝えると、提案が自社の不足に合っているかを比べやすくなります。

ナレッジ移管と育成で内製力を残す機能

社内に内製力を残すため、文書化・同席・リスキリング・経験設計を結び付けた図。
知識を残す取り組みと人を育てる取り組みを並行できます。

即時補強と的確なアサインで目の前の逼迫を乗り切っても、外部リソースが去った後に社内へ何も残らなければ、次のプロジェクトでまた同じ不足に陥ります。この悪循環を断ち切るのが、見落とされがちですが本質的に重要な「ナレッジ移管」と「育成」です。この二つは、外部リソースを社内の内製力を底上げするために使う役割です。

ドキュメント整備と同席でナレッジを残す役割

ナレッジ移管は、外部リソースが持つ知見を社内に形として残す役割です。

  • 文書化:判断理由やレビュー基準、運用手順を文書として残す
  • 同席:社内エンジニアが、設計判断や技術選定を現場で学ぶ機会

これらが揃っていれば、外部リソースが去った後も、社内のエンジニアだけで保守や小さな改修を回せます。こうした移管は、多重下請け構造のなかでユーザー企業にノウハウが蓄積されてこなかった日本の課題(出典:経済産業省)を、自社のプロジェクト単位で克服する役割でもあります。

同席による移管は、人を介して知見を伝える形です。社内エンジニアを外部チームの開発に同席させ、判断の背景を直接共有してもらいます。OJTに近いこの関わり方は、ドキュメントには残らない暗黙知まで社内に移すことができます。

ナレッジ移管は、あったほうがよい付帯サービスではなく、外部活用の必須機能です。最初から契約や進め方に組み込むことが、次の不足を防ぐ最大の打ち手になります。

育成プログラムで継続的に戦力を育てる役割

外部リソースには、社内人材の育成を支援する役割もあります。即戦力の投入を続けながら社内メンバーを底上げできれば、外部への依存を徐々に減らせます。

  • 即戦力:局所的な不足を、外部リソースですぐに補強する
  • リスキリング:社内メンバーの学び直しを、並行して進める
  • 経験設計:若手が実装経験を積む範囲を、意図的に確保する

国の施策として、デジタル人材の学習プラットフォーム「マナビDX」などのリスキリング支援が整備されています。外部リソースの伴走と組み合わせると、現場で学んだ知識を体系的に補えます。

手が足りない局所は即時に補強し、中長期では自前の戦力を育てます。この二段構えが、リソース不足の根本解決に近づきます。

ただし、育成には「教育パラドックス」と呼ばれる注意点もあります。生成AIが定型業務を肩代わりすると、若手が試行錯誤を通じて経験を積む機会が減り、かえって育ちにくくなるという懸念があります。

また、外部リソースに任せきりにすると、社内の若手が実装の経験を積めず、いつまでも自前で回せない事態にもなりかねません。そのため、育成機能を活かすには、外部に任せる範囲と、あえて社内に経験を積ませる範囲を意図的に設計することが大切です。

即時補強・的確なアサイン・ナレッジ移管・育成の4機能を、自社の状況に応じてバランスよく組み合わせることが、開発リソース不足の本質的な解消につながります。

ポイント

外部に任せる範囲と社内に経験を積ませる範囲を分け、文書化や同席による引き継ぎ、育成を契約や進め方に最初から含めておくと、次の不足を防ぎやすくなります。

まとめ

開発リソース不足の解消策が提供する機能は、「逼迫した工数の即時補強」「スキル標準に沿った的確なアサイン」「ナレッジ移管」「育成」の4つに整理できます。採用に半年から一年かかる一方、スポット外注やラボ型開発は数週間で即戦力を投入でき、社内エンジニアをコア業務へ解放します。

デジタルスキル標準の5類型を物差しにすれば、必要な役割を言語化でき、ミスマッチを防げます。そして、ドキュメント整備や同席によるナレッジ移管と、リスキリングを通じた育成を組み込むことで、外部活用を一時しのぎで終わらせず、次の不足を防げます。

機能を見極めるうえで特に大切なのは、「いま必要な即時補強・的確なアサイン」と「次の不足を防ぐナレッジ移管・育成」を、予算の範囲でバランスよく組み合わせる発想です。まず必要な工数と役割を洗い出し、逼迫の性質に合った契約形態を選び、終了後に内製力が残る進め方を設計してください。

riplaはフルスクラッチ受託と国内伴走を組み合わせ、現場のリソース逼迫への即応と、社内に定着する内製力づくりを一貫して支援します。全体像の確認には、あらためて完全ガイドをご活用ください。

会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。