開発リソース不足を外部の力で埋めようと決めたとき、次に立ちはだかるのが「何を、どう依頼すればよいのか」という壁です。手が足りない局所のプロジェクトをベンダーやフリーランスに任せたいのに、依頼内容を言葉にできず、結局「いい感じにお願いします」と曖昧なまま発注してしまう。これが、後の手戻りや費用超過、ミスマッチの最大の温床になります。だからこそ、要件定義書やRFP(提案依頼書)をどう書くかが、外部リソース活用の成否を分ける決定打になります。
本記事は、開発リソース不足の解消を外部に依頼する際の、要件定義書・RFP・提案依頼書の作り方を、発注企業の視点から実務レベルで掘り下げる解説です。非IT人材でも業務課題をRFPに落とし込めるフレーム、依頼すべき役割と工数の言語化、ベンダーを見極める目利き基準、そして生成AIを要件整理の壁打ちに使う具体的な進め方まで、一次データとあわせて解説します。読み終えるころには、自社の逼迫を「伝わる依頼文書」へ翻訳する道筋が描けるはずです。なお、開発リソース不足への対処の全体像をまだ把握していない方は、まず開発リソース不足の完全ガイドから読むことをおすすめします。
不足の所在を可視化する要件定義の起点

開発リソース不足の依頼における要件定義は、システム開発の要件定義とは少し性格が異なります。作りたい機能を細かく書き出す前に、まず「自社のどこに、どんな工数の穴が空いているのか」を可視化することが起点になります。この不足の所在が曖昧なまま依頼すると、ベンダーは何を埋めればよいか判断できず、見積りもアサインも的外れになります。
現状(AsIs)の工数逼迫を棚卸しする進め方
最初にやるべきは、現状(AsIs)の棚卸しです。社内のエンジニアが今どの業務にどれだけの時間を使っているか、どのプロジェクトの、どの工程で手が足りていないかを書き出します。たとえば「保守と問い合わせ対応で社内エンジニアの稼働の8割が埋まり、新規開発に着手できない」「リリースまで三か月だが、フロント実装に二人月分の工数が不足している」といった具合に、不足を時間と役割の単位で具体化します。日本ではIT予算の8〜9割がレガシー維持に費やされる構造があり(出典:経済産業省)、まさにこの保守負荷が新規開発のリソースを奪っている実態を、数字で見える化することが第一歩です。
この棚卸しを丁寧に行うと、自社の不足が「一時的な工数の山」なのか「恒常的な人員不足」なのかも見えてきます。特定プロジェクトの繁忙期だけ足りないのであればスポット外注やラボ型が適し、慢性的に足りないのであれば採用や育成も視野に入ります。RFPには、この不足の性質と、それに合った想定の解決手段まで書き込むと、ベンダーは前提を共有したうえで提案できます。不足の所在の可視化こそが、伝わるRFPの土台になります。
ToBeと目的を明確にして依頼の軸を定める
現状を棚卸ししたら、次に「あるべき姿(ToBe)」と依頼の目的を明確にします。外部リソースを入れて、最終的に何を実現したいのか。たとえば「三か月後の新サービスリリースを予定どおり完遂する」「社内エンジニアを保守から解放し、コア開発に集中させる」「外注終了後も社内だけで保守できる状態にする」といった到達点です。この目的が定まると、依頼内容に一本の軸が通り、ベンダーも「何をもって成功とするか」を理解したうえで提案できます。
目的を書くときに大切なのは、手段ではなくゴールを語ることです。「ラボ型で三人欲しい」という手段から入ると、より適した別の手段を提案してもらえる余地がなくなります。「この期間にこの成果を出したい」というゴールを示せば、ベンダーは最適な体制を逆算して提案できます。AsIs(現状の逼迫)とToBe(実現したい姿)、そして目的を明確にすることが、外部リソース活用の要件定義の骨格です。なお、どんな役割や機能を外部に求めるかの整理は『開発リソース不足の解消策が提供する機能・役割の一覧について』もあわせてご覧ください。
非IT人材でも書けるRFPの組み立て方

RFP(提案依頼書)という言葉に身構える必要はありません。要は「自社の困りごとと依頼条件を、提案する側が見積もれる形でまとめた文書」です。非IT人材であっても、決まった項目を順に埋めていけば、ベンダーが正しく提案できるRFPは作れます。専門用語を駆使する必要はなく、むしろ業務の言葉で正確に書くことのほうが大切です。
RFPに必ず盛り込むべき項目
開発リソース不足の依頼でRFPに盛り込むべき項目は、次のように整理できます。
・背景と目的:なぜ外部リソースが必要か、最終的に何を実現したいか
・依頼範囲:どの工程・どのタスクを任せたいか(コアと周辺の切り分け)
・想定スキルと体制:必要な役割(人材類型)、人数、レベル感
・期間とスケジュール:いつからいつまで、マイルストーンの有無
・契約形態の希望:スポット外注・ラボ型・準委任など
・成果物と引き継ぎ条件:ドキュメントやナレッジ移管の要否
・予算の目安:上限や概算レンジ
これらを埋めるだけで、ベンダーは前提を揃えたうえで的確な提案と見積りを返せます。
とくに「想定スキルと体制」は、開発リソース不足のRFPの肝です。ここで役立つのが、経済産業省のデジタルスキル標準が示すDX推進人材の5類型——ビジネスアーキテクト、デザイナー、データサイエンティスト、ソフトウェアエンジニア、サイバーセキュリティ——という共通言語です(出典:経済産業省)。「どの類型を、どのレベルで、何人月」という形で書けば、技術に詳しくなくても必要な役割を過不足なく伝えられます。この物差しがあるだけで、RFPの精度は大きく上がります。
非機能要件と引き継ぎ条件を明記する
機能面の依頼範囲だけでなく、非機能要件と引き継ぎ条件をRFPに明記することも欠かせません。非機能要件とは、セキュリティの遵守事項、対応すべき品質基準、ソースコードやドキュメントの管理ルールといった、目に見えにくいけれど重要な条件です。とくにリソース不足を急いで埋めようとすると、ここが抜け落ちて、後から「セキュリティ要件を満たしていない」「コードの品質がばらばら」というトラブルになりがちです。最初に基準を示しておくことが、品質を守る防衛策になります。
もう一つ、必ず書くべきなのが引き継ぎ条件です。外部リソースが去った後に社内へ何を残してほしいか——設計ドキュメント、運用手順書、社内エンジニアへのレクチャー期間など——を成果物として明記します。これを省くと、外注は終わったのに社内に何も残らず、次のプロジェクトでまた同じ不足に逆戻りします。多重下請けのなかでユーザー企業にノウハウが蓄積されてこなかった日本の課題(出典:経済産業省)を繰り返さないためにも、ナレッジ移管をRFPの要件として明示することが大切です。
ベンダー目利きと生成AIの壁打ち活用

RFPを送って提案が集まったら、次はベンダーを見極める段階です。リソース不足という切迫した状況では、つい最初に「すぐ出せます」と言ってきた相手に飛びつきがちですが、ここで目利きを誤ると、後の炎上につながります。また、RFP作成そのものを楽にする道具として、生成AIを壁打ち相手に使う方法も近年は有効です。
提案を評価するベンダー目利きの基準
ベンダー目利きの基準は、価格の安さだけで判断しないことが大前提です。第一に、自社の不足の性質を正しく理解し、それに合った契約形態と体制を提案してきているか。一時的な山に常駐の固定契約を勧めてくる相手は、自社都合の提案かもしれません。第二に、提案された体制図と、実際に稼働するメンバーが一致しているか。営業段階ではエースを出し、実開発は別の手薄なチームが担う、というギャップは典型的な落とし穴です。実際に担当するメンバーとの面談を求め、見極めることが重要です。
第三に、ナレッジ移管や引き継ぎまで責任を持つ姿勢があるか。外注が終わった後を見据えた提案ができるベンダーは、長期的な信頼に値します。これらの目利き基準は、RFPの段階で評価項目として明示しておくと、提案の比較がしやすくなります。見積りの妥当性も、安いか高いかではなく「想定した役割・人月・期間に対して妥当か」という観点で評価することが、リソース不足の依頼では欠かせません。安さに飛びついた結果の失敗については、関連記事もあわせてご確認ください。
生成AIを要件整理の壁打ちに使う方法
RFP作成の負荷を下げる道具として、生成AIの壁打ち活用が近年広がっています。使い方はシンプルで、自社の曖昧な困りごと——「保守に追われて新規開発が進まない、外部に何をどう頼めばいいかわからない」といった生の悩み——をそのまま投げ、構造化を手伝ってもらいます。生成AIは、AsIs/ToBeの整理、RFPに盛り込むべき項目の洗い出し、抜けている観点の指摘などを瞬時に返してくれるため、白紙からRFPを書き起こす負担を大きく減らせます。リソース不足で要件整理に割く時間すら惜しい現場ほど、この壁打ちは効果的です。
ただし、生成AIの活用には注意点もあります。出力をうのみにせず、最終的な判断は人が行うこと。そして、自社の機密情報や個人情報を不用意に入力しないことです。シャドーITや生成AIの不適切な利用がインシデントにつながる事例も指摘されており、利用ルールを定めたうえで使うことが前提になります。生成AIはあくまで「要件整理を加速する壁打ち相手」であり、依頼内容の責任を肩代わりしてくれるわけではありません。この線引きを守れば、生成AIは非IT人材のRFP作成を強力に後押しします。
まとめ

開発リソース不足を外部に依頼する要件定義・RFPの要点は、「足りない工数の中身と解決したい業務課題を、ベンダーが正しく見積もれる粒度で書く」ことに集約されます。まず現状(AsIs)の逼迫を時間と役割の単位で棚卸しし、あるべき姿(ToBe)と目的を明確にする。次にデジタルスキル標準の5類型を物差しに必要な役割を言語化し、引き継ぎ条件まで含めてRFPの項目を埋める。そして価格でなく体制と実稼働メンバーでベンダーを目利きし、生成AIは壁打ちに使いつつ最終判断は人が担う。この流れを踏めば、非IT人材でも伝わるRFPが作れます。
要件定義で大切なのは、機能を細かく書くことよりも、不足の所在と目的を正確に伝えることです。曖昧な困りごとを「伝わる依頼文書」へ翻訳できれば、外部リソースはミスマッチなく機能します。独力で難しければ、要件定義の工程から協働できるパートナーと進めるのも有効な選択です。riplaはフルスクラッチ受託と国内伴走を組み合わせ、発注側の困りごとを要件へ翻訳する工程に伴走します。全体像の確認には、あらためて完全ガイドをご活用ください。
株式会社riplaでは、IT事業会社出身のプロフェッショナルが「Impact-Driven型支援」を通じて、プロダクトやシステムの納品・提供を目的とせず、お客様と同じ目線で、事業成果の達成をゴールとして、高品質なDX/開発支援をいたします。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。IT事業会社出身のプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、「Impact-Driven型支援」を掲げ、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の実現に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。
