開発内製化の導入/開発事例や活用/成功事例について

開発内製化の事例では、外注に頼っていた企業が、どの領域から内製を始め、どれだけの効果を出したかが分かります。成功例と失敗例の両方から、着手する領域を考える材料が得られます。ただし、内製化は、エンジニアの採用・育成、開発文化の醸成、ベンダーからのノウハウ移譲など、一朝一夕には進まない取り組みです。

なお、開発内製化の全体像をまだ把握していない方は、まず開発内製化の完全ガイドから読むことをおすすめします。

外注依存から内製化でV字回復した成功事例

中央の内製化から、星野リゾートとカインズのコスト削減、開発期間短縮、アクセス増加へスポークを伸ばした図。
成果の現れ方は、コスト・期間・アクセスの各面に広がっています。

開発内製化の成功事例でもっとも分かりやすいのは、外注依存によるコスト高とスピードの遅さを、内製化によって構造的に解消したケースです。

請負契約では平均して30%以上が中間マージンとして外部に流出するとされています。外注に依存した開発は、プロセス効率(PE)が数パーセントという低い水準にとどまることも珍しくありません。

内製化は、この構造そのものを変える打ち手です。

星野リゾート|AWS内製化でコスト29%削減

星野リゾートのクラウド内製化は、もっとも象徴的な成功事例です。

さらに注目したいのは、施設の混雑状況を可視化する仕組みを、わずか1〜3か月で内製開発した点です。外注に出していれば、要件定義・見積り・契約・開発の工程に数か月から半年かかったと考えられます。自社の内製チームは、その機能を現場のニーズに即して素早く形にしたのです。

この事例が示すのは、内製化の効果がコスト削減だけにとどまらないことです。現場の課題を自分たちで素早くシステムに落とし込める「スピード」と「柔軟性」こそ、内製化の真価といえます。

外注では、仕様変更のたびに追加の見積りと交渉が発生し、現場のスピード感が削がれがちです。一方で、内製チームなら、思いついた改善をその日のうちに試せます。

星野リゾートの混雑可視化のように、現場に密着した小さな機能を高速で回せることは、顧客体験や業務効率の継続的な向上につながります。星野リゾートの成果は、コストとスピードの両面で整理できます。

  • コスト:AWSの活用を内製で進め、29%を削減
  • スピード:混雑状況の可視化を1〜3か月で内製開発

カインズ|脆弱性診断内製でリードタイム4週短縮

ホームセンター大手カインズの内製化も、代表的な成功事例の一つです。

同社は、診断のリードタイムを最大4週間短縮し、外部委託していた数千万円のコストを削減しました。

脆弱性診断は、これまで外部のセキュリティ専門会社に依頼するのが一般的でした。

また、カインズはコンテンツ管理にmicroCMSを導入し、Webサイトのアクセスを30%増加させています。これらの取り組みに共通するのは、すべてを一度に内製化しようとせず、診断やCMSといった効果の見えやすい領域から始める段階主義です。

そのうえで、得たノウハウと成功体験を次の領域へ広げている点も見逃せません。内製化は、領域ごとに優先順位を付けて、少しずつ範囲を広げていく取り組みです。カインズの事例は、そのことを教えてくれます。

成功の裏返しとなる典型的な失敗については、『開発内製化の失敗・課題・注意点・リスクについて』もあわせてご覧ください。

カインズの事例では、脆弱性診断とコンテンツ管理のそれぞれで内製化の効果が出ています。

  • 脆弱性診断:開発サイクルに診断を組み込める体制
  • コンテンツ管理:microCMSの導入で、Webサイトのアクセスが30%増加

ポイント

外注費の流出や開発の遅さが自社のどの業務で目立つかを見ると、最初に内製化する領域を絞り込めます。効果を確かめたうえで、次の領域へ広げていく進め方が現実的です。

自社プロダクト・新規事業を内製化した事例

中央のLASHICから、月額、AI-OCR精度、業務時間削減、現場の要望反映へ注釈線を伸ばした図。
料金面と現場運用の両方に、内製の成果が表れています。

内製化は、既存業務の効率化だけでなく、自社プロダクトや新規事業の創出にも大きな力を発揮します。

プロダクトの根幹を外注に委ねると、改善のたびに外部とのやり取りが発生し、競争力の源泉が自社に蓄積されません。一方、コア領域を内製化すると、ノウハウが社内にたまり、事業そのものの強さにつながっていきます。

インフィック|介護IoT「LASHIC」を内製で展開

介護事業を手がけるインフィックは、見守りIoTサービス「LASHIC」を内製で展開し、自社のサービス競争力に直結させた事例です。

同サービスは月額980円/台という低価格を実現し、AI-OCRの活用では99.995%という極めて高い精度を達成しました。さらに、月8,400時間もの業務時間を削減しています。

月8,400時間もの業務時間の削減も、現場の運用を理解した内製チームだからこそ実現できた数字です。

介護という現場ニーズの深い領域では、外注では拾いきれない細かな要望が次々に出てきます。この事例の本質は、現場の課題を一番よく知る当事者が、自らシステムを作り込める点にあります。

外注で同じ精度のサービスを作るには、膨大な要件定義と何度もの仕様調整が必要になります。コア事業を内製化すると、単なるコスト削減にとどまらず、事業の競争優位そのものを社内に取り込めます。インフィックの成果は、サービスの磨き込みと数字の両面で確認できます。

  • 改善の速さ:現場の要望を素早くサービスに反映できる体制
  • 数字:月額980円/台、AI-OCRの精度99.995%、月8,400時間の業務時間削減

キリンHD・さくらインターネットの内製活用

大企業による内製活用の事例も増えています。

生成AIのような新しい技術は、外部に丸ごと委託するより、自社の業務に密着させながら内製で試行錯誤するほうが、自社ならではの使いどころを見つけやすいといえます。こうした成果は、継続的な改善を内製で積み重ねた結果です。

さくらインターネットは、マーケティングオートメーション(MA)の内製活用により、年間210万円のコスト削減を実現しています。これらの事例が示すのは、内製化が大企業から中堅企業まで、幅広い業種で現実的な成果を生んでいることです。先進的なIT企業だけに限られた取り組みではありません。

生成AIやMA、IoTといった領域は、内製で素早く回すことで投資対効果が出やすい分野だといえます。自社の業務のなかで、効果の大きい領域がどこにあるかを見極めることが、事例から学ぶ第一歩です。

キリンHDとさくらインターネットの事例は、生成AIとMAの領域で内製活用が進んだことを示しています。

  • 生成AI:社内で活用する仕組みを内製で整え、年39,000時間を創出
  • MA:内製活用による年間210万円のコスト削減

ポイント

競争力の源泉になる領域を社内に残すかどうかで、内製化する範囲を判断できます。事業に直結しない部分は、外部に任せる選択肢も残しておくとよいでしょう。

巨額外部委託の頓挫が示す内製化の必要性

NHKと日本IBMの委託開発について、約89.5億円の委託、16か月の納期延伸、約55億円の返還請求を3枚のパネルで示す図。
委託額に加え、納期延伸と返還請求まで事態が広がりました。

成功事例の価値は、その裏返しにある失敗事例と並べると、いっそうはっきりします。外部への巨額委託がどれほど大きなリスクを抱えるかを知ることは、なぜ内製化が必要なのかを理解する近道です。ここでは、外注依存の構造的な危うさを示す事例を取り上げます。

NHK×日本IBM|約89.5億円委託の頓挫

外部委託の巨大リスクを象徴するのが、NHKと日本IBMの事例です。

さらに、最終的にNHK側が約55億円の返還を求めて提訴する事態に発展しました。これは内製化の失敗というより、外部委託に依存した開発が抱える構造的なリスクを示す事例です。巨額を投じても、自社にコントロール権限とノウハウがなければ、プロジェクトの行方を握れません。

この事例が内製化の文脈で重要なのは、「すべてを外部に委ねる開発は、規模が大きくなるほどコントロールが効かなくなる」という教訓を含むからです。

仕様や進捗を外部任せにすると、問題の発覚が遅れ、軌道修正も難しくなります。その点、内製のチームや自社に寄り添う伴走型パートナーが間に入れば、進捗とリスクを自分たちの目で確認でき、早期に手を打てます。

巨額委託の頓挫は、内製化が「コスト削減」だけでなく「リスクの内製化(自社で握る)」でもあることを教えています。

NHKと日本IBMの事例は、委託の規模と経緯に分けて確認できます。

  • 委託の規模:約89.5億円で委託されたシステム開発
  • 経緯:16か月の納期延伸を経た頓挫と、約55億円の返還を求める提訴

内製化でも起きるブラックボックス化の失敗

一方で、内製化にも固有の失敗があります。たとえば、ある製造業N社では、特定の担当者が一人でGAS(Google Apps Script)による業務自動化を組み上げた結果、その人しか中身を理解できないブラックボックスになりました。

内製化の最大の落とし穴である「属人化」を象徴する事例です。

また、飲食業のS社では、本来Zapierのような既製ツールを使えば3日で実現できたはずの仕組みを、内製にこだわるあまりゼロから作り込みました。このほか、「車輪の再発明」に陥ったケースもあります。

内製化の成功事例から学ぶ際は、こうした失敗事例も合わせて知っておくことが大切です。成功事例の共通点は「段階的・仕組み化・適材適所」ですが、失敗事例の共通点は「属人化・自前主義の行きすぎ」です。事例は成功の面だけでなく失敗の面まで読み解くことで、自社の進め方への教訓になります。

内製化で起きた失敗は、型ごとに見ると教訓が取り出しやすくなります。

  • 属人化:担当者の退職で保守が立ち行かなくなった業務自動化
  • 自前主義の行きすぎ:既製ツールなら3日で済んだはずの仕組みをゼロから作り込んだケース

ポイント

外部委託では、仕様と進捗を自社の目で確認できるかどうかが分かれ目になります。内製でも、特定の担当者に知識が閉じないよう、仕組みを共有しておく必要があります。

まとめ

開発内製化の事例を振り返ると、成功の共通点は、効果の見えやすい領域から段階的に始め、コアとノンコアを切り分けながら、ROIを定量的に示している点に集約されます。

星野リゾートはコストを29%削減し、混雑可視化を1〜3か月で内製しました。カインズは脆弱性診断のリードタイムを最大4週間短縮し、数千万円のコストを削減しています。

インフィックはLASHICで月8,400時間の削減、キリンHDは年39,000時間の創出、さくらインターネットは年210万円の削減を示しています。いずれも、内製化の現実的な効果を物語っています。

NHKと日本IBMの約89.5億円委託の頓挫は、外部依存のリスクと内製化の必要性を、逆の側面から示しています。

事例を読むときは、どれだけ始めたかより、どの領域から、どう内製化の範囲を広げたかに目を向けると役立ちます。製造業N社のブラックボックス化や飲食S社の車輪の再発明のように、属人化と自前主義の行きすぎという失敗も忘れてはいけません。

riplaはフルスクラッチ受託と伴走型パートナーを組み合わせ、開発を担いながらノウハウ移譲を進める形で、現実的な内製化を支援します。全体像の確認には、完全ガイドもあわせてご活用ください。

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株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。