開発内製化の必要機能や標準機能の一覧について

開発内製化には、エンジニアの採用に加えて、開発基盤・標準化・品質担保・伴走支援の機能をそろえる必要があります。

内製化の全体像は、開発内製化の完全ガイドで詳しく確認できます。

ノーコード/ローコードによる開発基盤の機能

スモールスタートやExcel業務のWeb化と、複雑な業務ロジックや既存システムとの密な連携を並べた図。
小さく始める用途と、ツールの制約が現れる要件を見分けられます。

内製化で最初に備えたいのは、開発の土台となる基盤です。いきなりフルスクラッチで作らなくても、ノーコード/ローコードのツールを使えば、IT専任ではない部門でも内製の第一歩を踏み出せます。特に、スモールスタートの入り口となる開発基盤の選び方が、内製化の成否を左右します。

非IT部門でも使えるスモールスタート機能

内製化のもっとも現実的な入り口は、ノーコード/ローコードによるスモールスタートです。たとえば、kintoneは月1,000〜3,000円/ユーザー、Wagbyは月16,500円〜、Excel業務のWeb化は月1万円〜で導入できます(オンプレミス型なら初期180万円〜)。

これらを使えば、非IT部門でも日々のExcel業務をアプリ化するところから内製を始められます。さらに、プログラミングの専門知識がなくても、現場の担当者が自分の業務を自分で改善できる点が最大の利点です。

このスモールスタート機能の価値は、内製化を「IT部門だけの取り組み」から「全社の取り組み」に広げる点にあります。現場の課題を一番よく知る当事者が自らツールで解決策を作り、その体験が積み重なると、社内に「自分たちで作る」文化が育ちます。いきなり大規模なフルスクラッチ内製を目指すより、まず非IT部門がノーコードで小さな成功を重ねることが、現実的な第一歩です。

ノーコードの限界とフルスクラッチへの移行

一方で、ノーコード/ローコードには限界もあります。標準機能の範囲を超える複雑な業務ロジックや、既存システムとの密な連携、大規模なデータ処理が必要になると、ツールの制約に突き当たります。ツールに無理をさせると、かえって保守しにくいいびつな仕組みになりかねません。

逆に、ノーコードで十分なものをわざわざゼロから作るのも非効率です。本来Zapierのような既製ツールで3日で実現できたものを、内製にこだわって作り込み「車輪の再発明」に陥った失敗事例もあります。内製化で求められるのは、どこまでをノーコードで担い、どこからフルスクラッチや本格的な内製開発に移すかを見極めることです。

開発基盤の機能とは、適材適所でツールと自前開発を使い分ける判断力そのものです。スモールスタートはノーコードで、コア領域や複雑な要件はフルスクラッチで、という切り分けが、内製化体制の地力を決めます。なお、この切り分けを要件として整理する方法は、詳しくは『開発内製化のRFP・要件定義書・提案依頼書について』もあわせてご覧ください。

ポイント

迷ったときは、標準機能の範囲で業務が回るかを見て、ノーコードで続けるか、フルスクラッチや本格的な内製開発へ移すかを決めます。

ドキュメント文化と標準化の仕組み

内製化を中心に、仕様書、運用手順、コーディング規約、命名規則を配置した図。
知識を記録する項目と開発ルールが、組織に残す仕組みを形作ります。

続いて備えたいのは、内製化体制の2つ目の機能である、ドキュメント文化と標準化の仕組みです。地味に見えますが、内製化の最大の敵である「属人化」を防ぐために欠かせません。誰か一人の頭の中だけに知識がたまる状態を避け、組織として開発を続けられるようにします。

属人化を防ぐドキュメント化の役割

内製化で最も警戒すべきは、ブラックボックス化です。ある製造業N社では、担当者一人がGAS(Google Apps Script)で業務を自動化し、その人しか中身を理解できず、退職後に保守が立ち行かなくなりました。これは、ドキュメント文化が欠けたまま内製化を進めた典型的な失敗です。

動いているうちは問題が表面化しませんが、担当者が抜けた瞬間に組織の弱点が露呈します。これを防ぐのが、何を、なぜ、どう作ったのかを記録に残すドキュメント化の仕組みです。記録があれば、第三者でも読んで理解し、引き継げる状態を保てます。仕様書や運用手順を残す作業を、開発のルーティンに組み込むことが、内製化体制の重要な機能になります。

さらに、設計の意図や変更履歴も書き留めておきます。ドキュメントは「面倒な作業」ではなく、内製化を組織の資産に変える投資です。担当者が変わっても開発が止まらない体制こそ、外注にはない内製化の本来の強みなのです。

標準化ルールによる開発品質の統一

ドキュメントと並ぶのが、標準化の仕組みです。コーディング規約や命名規則、フォルダ構成を統一するルールを定めれば、誰が書いても一定の品質と読みやすさが保たれます。使用するライブラリやフレームワークを統一することも、そのルールに含まれます。

標準化がないと、人によって作り方がバラバラになり、他の人が手を入れにくいコードが量産されて、属人化の温床にもなります。一方で、標準化は、新しくチームに加わったメンバーの立ち上がりも速くします。ルールが明文化されていれば、過去の経緯を知らない人でも、それに従って開発に参加できます。

内製化体制を「個人の集まり」から「チームの仕組み」へと進化させるのが、この標準化機能の役割です。ただし、最初に厳密なルールを全部整える必要はなく、開発を進めながら少しずつ標準を育てていく姿勢が、長期的に内製化の質を底上げします。標準化とドキュメントの2つがそろってはじめて、内製化は属人化のリスクから解放されます。

ポイント

担当者が変わっても開発が続くかを基準に、何を記録に残し、どのルールを統一するかを決めます。最初から厳密なルールを整える必要はなく、開発を進めながら標準を育てていく形でも構いません。

コードレビューと複数人保守による品質担保

品質担保と属人化防止に関わるコードレビュー、品質の向上、知識の共有、複数人での保守を示す図。
品質と知識共有を支える仕組みが、複数人保守と組み合わさります。

さらに備えたいのは、品質を担保する仕組みです。外注では受託側が品質の責任を負いますが、内製化すると最終責任は自社に移ります。

その品質を組織として保証する機能が、コードレビューと複数人での保守体制です。これがあるかないかで、内製化したシステムの信頼性は大きく変わります。

コードレビューによる品質と知識共有

コードレビューとは、ある人が書いたコードを別のメンバーが確認し、品質や設計をチェックする仕組みです。この仕組みには2つの効果があります。1つは品質の向上で、バグや設計上の問題を早期に発見できます。

もう1つは知識の共有で、レビューを通じてコードの中身が複数人の目に触れ、「一人しか分からない」状態を自然に防げます。コードレビューは、品質担保と属人化防止を同時に実現する機能なのです。

カインズが脆弱性診断を内製化し、診断のリードタイムを最大4週間短縮した事例も、品質を内製で担保する取り組みの一つと言えます。外部に依頼していた品質チェックを内製のサイクルに組み込むことで、スピードと品質を両立させたのです。コードレビューを取り入れれば、外注に頼らず自社で品質を守れ、レビュー文化が内製化を「速いだけ」でなく「堅い」体制にします。

複数人保守によるブラックボックス化の防止

品質を担保する仕組みとして、もう一つ挙げられるのが複数人での保守体制です。一つのシステムを一人だけが見ている状態では、その人が休んだり辞めたりした瞬間に保守が止まるおそれがあります。前述の製造業N社のGASブラックボックス化も、印刷業K社で保守が属人化した事例も、根本原因は「一人に依存した保守」でした。

これを避けるには、最低でも二人以上がシステムの中身を理解している状態を保つことが必要です。複数人保守は、ドキュメント化・標準化・コードレビューと組み合わせることで実効性が高まります。たとえば、ドキュメントがあるから引き継げ、標準化されているから他の人も読め、レビューで常に複数の目が入ります。

これらが連動して、はじめて「誰が抜けても回る」体制になります。内製化の真価は、開発のスピードと柔軟性にありますが、それを支えるのは地道な品質担保の仕組みです。華やかな内製化の裏で、この品質機能を怠ると、いずれ属人化のツケが回ってきます。

ポイント

どの開発にレビューを入れ、どの保守を複数人にするかは、誰が抜けたら止まるかを基準に決めます。品質と知識共有の両方に効くかも、あわせて見ておきます。

伴走支援によるナレッジ移譲の機能

最後に備えたいのは、外部からノウハウを受け継ぐ仕組み、すなわち伴走支援によるナレッジ移譲です。社内にIT人材が十分にいない状態から、ゼロで内製化を立ち上げるのは現実的ではありません。そのため、外部パートナーの力を借りながら自社にノウハウを蓄積していくことが、内製化を加速させます。

外注から内製へノウハウを移す伴走の役割

伴走支援とは、外部のパートナーが開発を担いながら、同時に自社チームへ技術や進め方を移譲していく支援の形です。単なる外注では、開発が終わるとノウハウも外部に残ったままになります。一方で、伴走型では「一緒に作りながら、自分たちでできるようにする」ことを目的にします。

これにより、最初は外部の比率が高くても、プロジェクトが進むにつれて自社の内製比率が高まっていく、という移行が可能になります。このナレッジ移譲機能を、取引コスト理論で捉えると分かりやすくなります。内製化の総コストは「直接開発コスト+外部調達コスト+調整コスト+移行コスト」で構成されます。

完全に外注すれば調整コストが膨らみ、いきなり全部を自前でやろうとすれば直接開発コストとリスクが膨らみます。そこで、移行コスト(伴走費)を計画的に払うことで、調整コストを抑えつつ着実に内製の地力を育てるのが、もっとも合理的な進め方になります。伴走支援は、この移行を機能として提供する仕組みなのです。

内製化体制の月額コストの目安

内製化体制を整えるには、当然コストがかかります。一次データによれば、内製化体制の月額の目安は、人件費が20〜50万円、ツール費が1〜10万円、教育費が初期に5〜20万円とされています。これに加え、伴走型の支援を受ける場合は、限定的な支援で月額100万円〜数百万円、全社的なDXの伴走となると数千万円〜億単位という相場感があります。

そのうえで、自社の内製化の範囲と段階に応じて、どこまでの支援を受けるかを設計します。重要なのは、これらのコストを「内製化体制という機能をそろえるための投資」として捉えることです。人件費・ツール・教育・伴走費は、開発基盤やドキュメント・標準化、品質担保といった機能を支えます。

どれか一つでも欠けると、内製化体制は脆くなります。riplaはフルスクラッチ受託と伴走型パートナーの立場から、開発を担いながら自社チームへノウハウを移譲し、これら4つの機能を段階的にそろえる支援を行っています。内製化は人を採るだけでなく、機能をそろえてはじめて回り始めるのです。

ポイント

伴走の範囲は、最初は外部の比率が高くても、進むにつれて自社の内製比率が高まる形で決めます。費用は月額の目安を確認したうえで、内製化の範囲と段階に応じて設計します。

まとめ

ここまで見た機能は、次の4つの軸で整理できます。

  • 開発基盤:ノーコード/ローコードによる小さな開始
  • ドキュメント・標準化:知識とルールを組織に残す仕組み
  • 品質担保:コードレビューと複数人保守の組み合わせ
  • 伴走支援:開発と並行したナレッジ移譲

内製化は、エンジニアの頭数よりも機能がそろっているかどうかで決まります。機能がそろってはじめて、属人化を防ぎながら内製の力を組織に根づかせられます。

各機能は、内製化の弱点を互いに補い合う関係にあります。内製化体制の月額の目安は、人件費20〜50万円、ツール1〜10万円、教育費は初期に5〜20万円で、これは機能をそろえるための投資です。

すべてを一度にそろえる必要はなく、自社の段階に応じて優先順位を付けて整えていくのが現実的です。

riplaはフルスクラッチ受託と伴走型パートナーを組み合わせ、開発を担いながらノウハウを移譲し、これらの機能を段階的にそろえる支援を行います。全体像の確認には、あらためて完全ガイドをご活用ください。

会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。