農業向け農産物トレーサビリティシステム開発の発注/外注/依頼/委託方法について

農業向け農産物トレーサビリティシステムの発注・外注では、圃場から出荷先までの履歴をロット単位でつなぎ、事故時の遡及と追跡を短時間で行える範囲を先に定義することが重要です。機能を増やすことよりも、生産者が入力でき、選果や混載で変化するロットを正しく記録できる仕組みにすることが成功の条件です。

本記事では、農業法人、JA、卸売市場、食品加工会社、自治体などが農業向け農産物トレーサビリティシステムを発注・外注するときの進め方を解説します。発注形態の選び方、RFPと要件整理、契約形態、費用相場、委託先の見極め方、見積比較のチェックポイントまで、2026年時点の制度や公開事例を踏まえて整理します。

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農業向け農産物トレーサビリティシステムの全体像

農産物の生産から出荷までを管理するイメージ

農林水産省は食品トレーサビリティを、食品の移動を把握できる状態と説明しています。各事業者が取扱記録を作成・保存することで、問題のある食品がどこから来たかを調べる遡及と、どこへ行ったかを調べる追跡が可能になります(出典: 農林水産省「トレーサビリティ関係」、令和8年6月更新)。農業向けでは、この考え方を圃場、作付け、生産作業、収穫、選果、出荷、輸送、加工の流れに合わせて設計します。

圃場から販売まで何を記録するのですか

基本となる記録は、生産者、圃場、作付け、品種、作業日時、作業者、農薬・肥料などの資材、収穫ロット、数量、出荷先、移動日時です。さらに、選果や荷造りでロットを分割・統合した場合は、元の収穫ロットと新しい出荷ロットの関係を残します。例えば、複数圃場の野菜を一つの集荷ロットに混ぜた場合、集荷ロットから各圃場へ戻れるだけでなく、そのロットが出荷された店舗や加工会社まで進める必要があります。

消費者向けに公開する産地や栽培履歴は、社内用の詳細記録と分けて設計します。生産者個人の連絡先や圃場の正確な位置をそのまま公開すると、個人情報や防犯上の問題につながるためです。公開画面には市町村、品目、栽培期間、検査結果など必要な情報だけを表示し、内部画面では承認者、訂正履歴、証憑ファイルまで確認できる構成が実務的です。

農業特有の難しさはどこにありますか

工場の固定工程と異なり、農業では圃場ごとに作型、天候、作業者、収穫時期が変わります。通信環境が不安定な圃場でスマートフォン入力を行うこともあり、オフラインで一時保存して電波回復後に同期する機能が必要になる場合があります。生産者が高齢者や季節雇用者を含む場合は、入力項目を絞り、選択式やバーコード読取を中心にしなければ登録率が下がります。

発注前には、正常な出荷だけでなく、返品、廃棄、規格外品、ロットの分割・統合、入力訂正、通信断、端末紛失まで想定します。ブロックチェーンなどの技術名を先に決めるのではなく、誰が、いつ、どのロットを、何に変換したかを監査できるかを確認することが優先されます。

発注形態はどれを選べばよいですか?

発注形態を比較検討するイメージ

結論として、対象品目や拠点が少なく、業務を標準機能に合わせられるならSaaSやパッケージ導入が適しています。既存の営農管理、販売管理、WMS、選果機などをつなぎ、ロット変換や取引先別の帳票に対応するなら、クラウドを基盤にした個別開発が現実的です。複数地域・複数組織・消費者公開・IoT連携まで一つの基盤で管理する場合は、段階的な個別開発を前提にします。

SaaS・パッケージを導入するケース

SaaSやパッケージは、基本的な生産履歴、作業記録、ロット管理、帳票出力を早く使い始めたい場合に向きます。初期設定、マスタ登録、権限設定、QRコード発行などを含む導入であれば、個別開発より短期間で検証できます。農林水産省の令和7年度事例集では、加工品製造会社がタブレット20〜30台を使う工程管理アプリを導入し、導入・運用コストを数十万円程度とした事例が紹介されています(出典: 農林水産省「企業リスクから考えるトレーサビリティ 取組事例集」、令和7年度)。ただし、これは加工品の事例であり、農業の複数圃場や取引先APIまで含む費用ではありません。

選ぶときは、料金だけでなく、圃場や生産者の階層を持てるか、ロットを分割・統合できるか、通信断から同期できるか、データをCSVやAPIで取り出せるかを確認します。標準機能にない部分を無理に運用で補うと、現場のExcelが増えて二重入力になるため、Fit to Standardで許容する範囲を発注前に決めます。

クラウド上で個別開発するケース

クラウド上の個別開発は、標準機能を活用しながら自社固有の業務だけを追加したい場合に適しています。例えば、JAや集荷団体の受入ルール、選果機から出るデータ、取引先ごとの出荷フォーマット、温度センサーの記録を一つのロット履歴に結び付ける構成です。画面、API、データベース、認証、監査ログを分離しておけば、対象地域を増やすときも機能追加の影響を抑えられます。

発注時は「クラウドで作る」という表現だけでなく、データの保管場所、バックアップ、障害時の復旧目標、利用者数の課金方法、開発会社を変更するときのデータ移行方法まで明記します。将来のベンダーロックインを避けるには、データ辞書、API仕様、画面一覧、テスト結果、運用手順書を納品物に含めることが有効です。

スクラッチ開発を選ぶケース

スクラッチ開発は、既存製品では表現できない複雑なロット変換や、複数組織をまたぐ権限・精算・公開範囲を持つ場合に検討します。対象範囲が広いほど自由度は高まりますが、要件定義、データ移行、現場テスト、保守体制まで発注者側の判断が増えます。最初から全品目・全拠点を対象にすると、要件が固まらないまま開発が膨らむため、1品目・1拠点・1出荷経路でPoCを行います。

スクラッチを選ぶ場合でも、識別子やロット番号の設計は標準に寄せます。GS1 JapanはGTINに日付情報やロット番号を組み合わせたGS1標準バーコードを、入出荷、在庫管理、トレーサビリティに活用できると説明しています(出典: GS1 Japan「GS1二次元シンボルを活用した日付情報の管理」、2026年確認)。独自コードだけで閉じると、卸売市場や加工会社とのデータ連携時に作り直しが発生しやすくなります。

農業向け農産物トレーサビリティシステムの発注・外注の進め方

システム発注の進行手順を整理するイメージ

発注は「会社を探して見積をもらう」だけでは始まりません。目的、対象範囲、データの流れ、現場の制約、受入条件を整理してから候補会社に相談します。特にトレーサビリティは、画面の見た目よりも記録間の対応付けが重要になるため、業務イベントを言葉と図でそろえることが見積の精度を高めます。

目的と対象範囲を先に決める

最初に「何のために導入するのか」を一文で表します。食品事故の回収対象を早く特定したいのか、農薬や肥料の記録を監査できるようにしたいのか、ブランド価値として消費者に栽培履歴を見せたいのかで、必要なデータと公開範囲が変わります。目的を一つに絞れない場合は、法令・取引先対応、現場効率化、付加価値情報の三つに分け、優先順位を決めます。

対象範囲は、品目、圃場数、生産者数、集荷拠点、選果場、加工場、出荷先、利用者数、年間ロット数で記載します。例えば「農産物を管理する」ではなく、「県内2拠点、3品目、120圃場、年間8,000ロット、集荷後の選果と卸売市場への出荷まで」と書けば、候補会社が必要な工数を見積もりやすくなります。

RFPで業務と非機能要件を伝える

RFPには、背景、目的、対象範囲、現行業務、機能要件、連携要件、非機能要件、導入スケジュール、見積条件、評価基準を記載します。機能要件では、生産者・圃場・作付けのマスタ、作業履歴、資材ロット、収穫、選果、出荷、返品、廃棄、検索、帳票、公開ページを分けて書きます。ロットを分割・統合した履歴、入力訂正の承認、証憑の添付も必須要件に含めます。

非機能要件では、圃場の通信断、スマートフォン対応、同時利用者数、応答時間、バックアップ、障害復旧、監査ログ、暗号化、アクセス権限、脆弱性対応、データ移行、保守窓口を定義します。農業機械やセンサーを接続する場合は、装置が止まったときに手入力へ切り替える方法まで確認します。IPAの「制御システムのセキュリティリスク分析ガイド 第2版」は2026年4月版で、資産ベースと事業被害ベースの分析手法を示しています。センサーや選果設備を外部サービスにつなぐ案件では、資産一覧と事業影響をRFP段階から整理します(出典: IPA、2026年4月版)。

PoCと受入条件を契約前に設計する

候補会社の提案を比較するときは、実際の圃場や出荷現場で小さなPoCを行います。確認する流れは、作業者がスマートフォンで作業を登録し、収穫ロットを発行し、選果で分割または統合し、出荷先からロットを検索するところまでです。通信を切った状態、数量を訂正した状態、権限のない利用者が操作した状態もテストします。

受入条件は、機能が存在することではなく、業務結果で決めます。例えば、トレースバック検索が指定ロットから5分以内に完了すること、トレースフォワードで対象出荷先を漏れなく表示すること、圃場での1件の登録が1分以内で完了すること、同期失敗時に再送できることなどです。数値は自社の現場で測定し、契約書や仕様書の受入基準に落とし込みます。

農業向け農産物トレーサビリティシステムの費用相場とコスト内訳

システム開発費用を検討するイメージ

農産物専用システムの公表価格は、対象範囲や連携先が案件ごとに異なるため一律ではありません。以下は、リサーチノートに整理した生産・製造系システムの相場と、農林水産省の公開事例を組み合わせた発注前の目安です。実際の見積では、生産者数、圃場数、ロット粒度、端末台数、センサー、既存システム連携、公開サイト、セキュリティ要件によって変動します。

発注形態ごとの費用レンジ

小規模なクラウド導入・設定は、1品目、少数拠点、スマートフォン入力、基本帳票を前提にすると、初期20万〜100万円程度が目安です。月額は1ユーザーあたり数百円〜数千円、または組織単位の定額となるサービスがあります。導入期間は数日〜1か月程度が想定されますが、マスタ整備や利用者研修が多い場合は延びます。

既存の営農・生産履歴パッケージを導入し、マスタ整備、QRコードやバーコード、権限、帳票、簡易APIを設定する場合は、初期100万〜500万円程度、期間1〜3か月が目安です。標準機能に業務を合わせられるほど、安く早く始めやすくなります。

複数生産者・複数圃場、選果・出荷、JA・卸売・加工会社との連携、ロット分割・統合、管理画面を含む中規模の個別開発は、500万〜2,000万円程度、期間3〜9か月が一つの目安です。複数地域やIoT、温度履歴、消費者公開、24時間運用、ERP・WMS・販売・物流との大規模連携まで含む場合は、2,000万〜1億円以上、期間9〜18か月以上になる可能性があります。いずれも農産物専用案件の公表定価ではなく、生産・製造系業務システムからの推定レンジです。

見積に含める費用と別途費用

初期費用には、要件定義、画面設計、データモデル設計、開発、テスト、環境構築、データ移行、端末設定、研修が含まれます。製造系業務システムの構成比の目安として、要件定義10〜12%、設計・環境構築22〜24%、実装48〜50%、テスト15〜17%程度で考える方法があります。ただし、農業案件では現場調査、オフライン同期、ロット変換、連携テストの比重が大きくなるため、内訳の説明を求める必要があります(出典: 生産・製造系システム相場を整理した本リサーチの推定値)。

別途になりやすい費用は、クラウド利用料、保守運用費、端末・通信費、バーコードプリンターやハンディスキャナ、センサー、バックアップ、脆弱性診断、OS更新、API利用料、データ移行、現地出張、追加研修です。保守運用費は初期開発費の年15〜25%程度を目安に置けますが、24時間監視や現地駆け付けを付ける場合は上振れします。月額が安く見えても、利用者追加、データ容量、API、問い合わせ対応が従量課金か確認します。

費用を抑えるための段階導入

費用を抑えるには、機能を一律に削るのではなく、リスクの高い業務から順に導入します。第1段階は1品目・1拠点で生産履歴と出荷ロットを記録し、第2段階で選果・加工のロット変換と取引先連携を加え、第3段階でIoTや消費者公開を追加します。各段階で登録率、入力時間、検索時間、回収対象の特定時間を測れば、次の投資判断ができます。

PoCの費用を本番開発に含めるか、別契約にするかも発注時に決めます。PoCで使ったデータモデルや画面を本番へ引き継ぐ条件、PoCで中止した場合の成果物、追加開発の単価を契約書に書いておくと、検証後の予算が不透明になりにくいです。

RFP・要件整理で決めておくべき項目

要件定義書とRFPを確認するイメージ

RFPの品質は、見積の比較可能性に直結します。候補会社ごとに前提が違うと、片方は端末費込み、もう片方は開発費だけという状態になり、安さの比較ができません。共通の前提資料と回答様式を用意し、提案会社が前提を変えた場合は変更点を明示してもらいます。

ロットとイベントのデータモデルを定義する

要件書には、ロットを単なる番号としてではなく、イベントのつながりとして記載します。最低限、生産者ID、圃場ID、作付けID、作業日時、資材ロット、収穫ロット、選果ロット、出荷ロット、出荷先、数量、担当者、承認日時を持たせます。選果で一つの収穫ロットが複数の出荷ロットになった場合と、複数の収穫ロットが一つの加工ロットになった場合を図にし、検索の起点と終点を確認します。

農林水産省の食品トレーサビリティ資料では、入出荷先の特定、食品の識別、入荷ロットと製造ロットの対応付けという段階で考えます(出典: 農林水産省「食品トレーサビリティについて」、令和8年更新資料)。農産物でも、圃場・収穫・選果・出荷をこの三つの視点に置き換えると、RFPに漏れが出にくくなります。

現場入力と例外処理を要件に含める

現場入力では、ログイン、作業選択、圃場選択、数量入力、写真添付、保存、承認までの操作数を確認します。毎回長い自由記述を求めると登録率が落ちるため、選択式、前回値の再利用、QRコード読取、音声入力などを組み合わせます。オフライン時は、端末に保存するデータの暗号化、同期時の重複登録防止、競合した場合の優先ルールを定義します。

例外処理では、ロット番号の付け間違い、数量の修正、返品、廃棄、規格外品、出荷先変更、端末紛失、退職者のアカウント停止を想定します。訂正後の値だけを残すのではなく、訂正前の値、訂正者、訂正日時、理由を監査ログに残します。承認権限と現場入力権限を分離し、季節雇用者が過去データを閲覧できないようにする設計が必要です。

連携・公開・セキュリティの境界を決める

既存の営農管理、販売管理、会計、WMS、選果機、JAや卸売市場のシステムと連携する場合は、どのシステムを正とするかを決めます。生産者マスタや品目コードがシステムごとに違うと、同じ圃場やロットが別物として登録されます。API、CSV、EDIのどれを使うか、連携頻度、エラー時の再送、手動修正の責任者をRFPに含めます。

消費者公開では、内部用の詳細履歴と公開用の要約履歴を別の権限で扱います。公開画面に表示する品目、産地、栽培期間、検査結果、写真、事業者名を決め、公開停止の手順も用意します。セキュリティでは、MFA、最小権限、端末管理、暗号化、脆弱性パッチ、バックアップ、ログ保全、委託先の再委託管理を確認します。システムが止まったときの紙記録と復旧後の再入力手順も、機能要件と同じレベルで定めます。

委託先選定と見積比較のポイント

開発会社の提案と見積を比較するイメージ

委託先は、知名度や見積総額だけで決めません。農業または食品の業務理解、複数圃場・複数生産者のデータモデル、ロット混合、現場入力、既存システム連携、保守体制を確認します。公開実績が食品工場中心の会社でも、農業現場の制約を理解していれば候補になりますが、圃場での通信や生産者の利用実績を具体的に質問します。

実績と担当体制を確認する

実績確認では、会社名や導入件数だけでなく、対象品目、圃場数、生産者数、ロット数、導入範囲、連携先、現場端末、運用年数を聞きます。可能なら、似た規模の利用者に対する入力率、問い合わせ件数、障害対応、追加開発の履歴を確認します。守秘義務で顧客名を出せない場合も、匿名化した業務フローや画面デモで要件との適合性を見極めます。

体制では、営業担当だけでなく、要件定義の責任者、データモデルを設計する担当者、現場導入担当、保守責任者を確認します。再委託先がいる場合は会社名、担当範囲、情報アクセス、障害時の連絡経路を明示してもらいます。農業案件は繁忙期に現場テストができないことがあるため、作付け・収穫の時期を踏まえたスケジュールを提案できる会社が適しています。

見積書は同じ条件で比較する

見積比較では、まず対象範囲、利用者数、端末数、ロット数、連携数、環境数、テスト回数、研修回数が同じかをそろえます。そのうえで、要件定義、設計、実装、テスト、移行、研修、保守、クラウド、端末、センサー、出張を分けて比較します。総額が安くても、要件定義や受入テストが別途になっていれば、本番までの費用は高くなる可能性があります。

各項目は一式ではなく、数量、単価、工数、前提、除外事項を記載してもらいます。特に「API連携一式」「データ移行一式」「保守一式」は、対象項目や回数が曖昧になりやすい項目です。見積の前提を変えた提案には、変更理由と増減額を付けてもらい、価格だけでなく要件に対する理解の深さも評価します。

評価表で価格以外の差を可視化する

評価表には、業務適合性、現場操作性、ロット追跡の正確性、連携方式、セキュリティ、保守、導入スケジュール、拡張性、費用を入れます。例えば業務適合性30点、現場操作性20点、技術・連携20点、保守・体制15点、費用15点のように重みを付けると、安価だが現場で使えない提案を選びにくくなります。点数の配分は自社のリスクに合わせて決めます。

最終候補には、同じシナリオでデモを依頼します。圃場でオフライン登録を行い、収穫ロットを分割し、複数ロットを統合して出荷し、出荷先から遡及検索する一連の操作を見せてもらいます。デモで使ったデータが本番の設計に反映されるか、提案時の制約が契約後に変わらないかを議事録に残します。

契約形態と契約時のチェックポイント

システム開発契約を確認するイメージ

契約形態は、要件の確定度と発注者が負担できるリスクで選びます。全体仕様が固まっている標準導入や明確な開発範囲は請負契約と相性がよく、要件を検証しながら進めるPoCやアジャイル開発は準委任契約が使われることがあります。契約名だけで判断せず、成果物、検収、変更管理、責任分界を具体化します。

請負・準委任・SaaS契約を使い分ける

請負契約では、完成させるシステムの範囲、仕様書、納期、検収条件、瑕疵対応を明確にします。仕様変更が発生した場合の追加見積と承認手順も必要です。準委任契約では、一定期間の作業内容、稼働時間、会議体、成果物の扱い、品質確認の方法を決めます。要件定義を準委任で行い、開発以降を請負または段階契約にする進め方もあります。

SaaSでは、利用規約、サービスレベル、障害通知、データ返却、解約後の削除、料金改定、第三者サービスの変更を確認します。自社データの所有権、バックアップからの復元、CSVやAPIによるエクスポートを契約上の権利として確保します。農繁期にサービスが止まった場合の連絡先と復旧目標が、営業資料だけでなく契約書やSLAに書かれているかも重要です。

納品物・知的財産・運用責任を決める

納品物には、要件定義書、業務フロー、画面一覧、データ辞書、API仕様、テスト仕様書、テスト結果、移行手順、操作マニュアル、障害対応手順、バックアップ・復旧手順を含めます。ソースコード、設定ファイル、インフラ定義、管理者アカウントの扱いも確認します。納品後に別会社へ保守を移せるかは、契約前に質問しておくべき項目です。

個人情報、圃場情報、取引先情報、写真、センサー情報に誰がアクセスできるかを定め、再委託時の承認、事故時の報告期限、ログの保存期間、データ削除の方法を契約に反映します。法令対応では、農産物すべてに同じシステム義務があると決めつけず、対象品目や取引形態を確認します。例えば米トレーサビリティ法は、対象となる米・米加工品について、生産から販売・提供までの取引記録や産地情報の伝達を求めています(出典: 農林水産省「米トレーサビリティ法の概要」)。

よくある質問

トレーサビリティシステムの疑問を確認するイメージ

発注前に多く寄せられる質問を、費用、技術、導入方法の順に回答します。自社の品目、拠点、取引先、現場の通信環境に当てはめて確認してください。

農業向け農産物トレーサビリティシステムの発注費用はいくらですか?

小規模なクラウド導入・設定は初期20万〜100万円程度、パッケージ導入は100万〜500万円程度、中規模の個別開発は500万〜2,000万円程度が目安です。複数地域、IoT、消費者公開、大規模な外部連携まで含む場合は2,000万〜1億円以上になる可能性があります。これらは公表定価ではなく、機能、拠点、端末、連携、保守の前提で変わる推定レンジです。

QRコードだけで農産物のトレーサビリティは実現できますか?

QRコードはロット番号や商品識別子を現物とデータに結び付ける手段であり、コードだけで履歴が正しくなるわけではありません。誰がいつ何を入力したか、選果でどのロットを分けたか、出荷先へ何個移動したかをシステムに記録する必要があります。取引先との将来連携を考える場合は、GTINやロット番号を含むGS1標準の利用可否を委託先に確認します。

パッケージと個別開発はどちらを選べばよいですか?

対象品目や拠点が少なく、標準機能で生産履歴と出荷を管理できるならパッケージが適しています。複数圃場の混合、特殊なロット変換、取引先ごとの連携、現場のオフライン要件が強い場合は、クラウド上の個別開発やアドオンを検討します。まず標準機能のデモとFit/Gapを行い、業務を変えられる部分と変えられない部分を分けてから決めます。

農産物を扱う会社は必ずシステム導入が必要ですか?

対象品目や事業者に一律のシステム導入義務があるとは限りません。ただし、米・米加工品のように取引記録や産地情報の伝達が求められる品目があり、取引先から記録提出を求められることもあります。法令上の義務、取引先要件、事故対応、ブランド情報公開を分けて整理し、必要な記録を継続できる方法としてシステム導入を判断します。

発注前に最初に準備する資料は何ですか?

現行の帳票、Excel、営農アプリ、出荷伝票、取引先から受け取るデータ、圃場・生産者・品目のマスタを集めます。次に、通常の生産から出荷までの流れと、返品・廃棄・ロット混合・通信断・訂正の例外フローを図にします。対象範囲、利用者数、拠点数、年間ロット数、既存連携、希望時期、予算の上限を添えれば、候補会社が比較可能な提案を出しやすくなります。

まとめ

農業向けトレーサビリティシステム導入をまとめるイメージ

農業向け農産物トレーサビリティシステムの発注では、最初から大規模な機能を作るより、目的と対象範囲を定め、圃場から出荷先までのロットのつながりを要件化することが重要です。SaaSやパッケージ、クラウド個別開発、スクラッチ開発を、現場入力、ロット変換、既存連携、保守体制の観点で比較します。

発注前に実行する三つの準備

発注前は、第一に事故対応・法令・取引先・現場効率化などの目的を分け、第二に現行帳票とロットの流れを棚卸しし、第三にPoCの対象と受入条件を決めます。見積は初期費用だけでなく、クラウド、端末、通信、センサー、保守、データ移行、現地研修を含めて比較します。

システム導入を定着させる視点

成功を左右するのは、最新技術の採用よりも、入力する人が迷わず、訂正や例外も含めて記録が残り、必要なときにロットをたどれる運用です。生産者、集荷担当、選果担当、加工会社、出荷先、管理者の役割を明確にし、1拠点から段階導入して登録率や検索時間を測定します。農業の業務理解とシステム開発力を兼ね備えた委託先と、前提がそろったRFPを用意することが、納期と費用のぶれを抑える近道です。

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会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。