AI電話自動応答システムの導入/開発事例や活用/成功事例について

同じように電話対応の人手不足や入電過多に悩んでいた企業が、問い合わせや電話の削減、受注や督促で成果を上げています。成功事例に共通するのは、定型的な電話業務を見極め、明確なROIを起点に段階的に自動化を広げている点です。全体像はAI電話自動応答システムの完全ガイドで確認できます。

▼全体ガイドの記事
・AI電話自動応答システムの完全ガイド

問い合わせ削減・電話対応自動化に成功した事例

問い合わせ、電話、社内問い合わせの削減率を3つの導入事例で示した図
対象業務ごとの削減率を見比べられます。

AI電話自動応答システムの成果として、もっとも分かりやすいのは電話や問い合わせの件数そのものが減ることです。よくある質問への回答や定型的な手続きをAIが一次対応すると、有人オペレーターが扱う件数が減ります。削減率で効果を示した事例を、順に見ていきます。

事例の数字は、自社の入電件数に置き換えることで、稟議でのROI試算に使えます。

問い合わせ70%削減・ROI200%超を実現した事例

AIによる一次対応で問い合わせ件数を減らした代表例が、SmartHRの事例です。一次データでは、約500万円をかけてAIによる問い合わせ対応の自動化を進めた結果、問い合わせを約70%削減し、ROIは200%を超えたとされています。

高い削減率につながった背景には、問い合わせの大半が「使い方の確認」「定型的な手続き」といった、AIが得意とする反復的な内容だったことがあります。ROI200%超は、削減できた人件費が初期投資を上回ったことを意味します。

この事例から学べるのは、電話をすべてなくすことではなく、定型的な問い合わせをAIに振り分け、人が複雑な案件に集中するという業務の再設計だという点です。

  • 定型的な内容の割合:入電全体のうち、反復的な内容が占める比率
  • 見込み額:入電件数に削減率を当てはめて、自社で期待できる効果を見積もる

自社で試算するときは、入電のうち定型的な内容が何割かを洗い出します。その割合に削減率を掛け合わせると、現実的な効果額が見えてきます。

電話40%削減・社内問い合わせ50%削減の事例

顧客向けと社内向けの双方で効果が出た事例もあります。一次データでは、東急ハンズが約300万円の投資で電話を約40%削減し、ROI150%超を実現したとされています。

また、島村楽器が約200万円で社内問い合わせを約50%削減し、ROI180%超を達成したとされています。いずれも数百万円規模の投資で、明確な削減率とROIを示している点が特徴です。

これらの事例が示すのは、AI電話自動応答が「顧客対応コールセンター」だけでなく「社内ヘルプデスク」でも有効だということです。社内問い合わせには、人事・総務・情報システムへの定型的な質問が多く、AIが回答ナレッジを蓄積しやすいという特徴があります。

投資額が200万〜300万円と比較的小さいことから、まずは入電内容が定型化しやすい部署で小さく始め、効果を確認してから対象を広げる進め方が、堅実な成功パターンだと言えます。投資規模に対して効果が明確であるほど、次の予算も取りやすくなります。

  • 顧客向けの定型業務:電話で定型化できる業務の範囲
  • 社内問い合わせの対象:AIに任せる問い合わせの種類

ポイント

事例の削減率は、自社の入電件数と定型的な問い合わせの割合に当てはめて初めて判断材料になります。割合を先に把握しておくと、稟議の試算がずれにくくなります。

業種別の活用事例(受注・督促・予約)

AI電話自動応答の活用範囲は、問い合わせ対応にとどまりません。受注、督促、予約といった、成果が金額に直結する電話業務でも、AIによる自動化が進んでいます。

ここでは業種・業務別の活用事例を取り上げ、それぞれがどんな成果を生んだのかを見ていきます。自社の主要な電話業務に近い事例を探す参考にしてください。

宅配水の電話注文を80%自動化した受注事例

受注業務の自動化で象徴的なのが、中京医薬品の事例です。一次データでは、宅配水の電話注文の約80%をAIで自動化したとされています。

宅配水の注文は「いつもの商品を、いつもの数量だけ注文する」という反復的なパターンが多いため、AIが定型的に処理しやすい業務です。注文の8割をAIが受けることで、繁忙期でも電話がつながらず注文を取りこぼす機会損失を、構造的に減らせます。

この事例が示すのは、AI電話自動応答が「電話の自動応答」にとどまらず、受注からシステム登録までの一連の業務を自動化できる可能性だという点です。自社の受注が定型的であるほど、自動化の効果は大きくなります。

  • 注文内容の聞き取り:音声から注文内容を正しく取得できるか
  • 基幹システムへの連携:受注データを連携する範囲

取得する項目は、商品名や数量、お届け先などです。これらを誤りなく受注データとして確定する必要があります。

督促電話の自動化で回収率を改善した事例

督促・回収業務でも、AI電話自動応答が成果を上げています。一次データでは、消費者金融の督促業務にAIを活用した結果、回収率が16.9%改善したとされています。

督促電話は心理的な負担が大きく、オペレーターの離職要因にもなりやすい業務です。こうした負担に対し、AIが一定のトーンで淡々と架電・案内を行うことで、対応の標準化と架電件数の最大化が両立し、回収率の改善につながりました。

督促のように架電数を増やすほど成果が上がる業務は、人手では物理的な上限がありますが、AIなら大量の架電を並行して処理できます。

この事例は、AIによる効率化と人によるきめ細かな対応を組み合わせることで、回収率という金額に直結する指標を改善できることを示しています。アウトバウンド(架電)業務も、AI電話自動応答の有力な活用領域です。

  • 引き継ぎの条件:感情への配慮や状況に応じた切り替えが求められ、AIだけで完結させられない場面
  • 役割の分担:AIに任せる架電・案内と、人が担う個別対応

ポイント

受注・督促・予約の電話は成果が金額に直結するため、AIに任せる範囲と人に引き継ぐ範囲を先に分けておくことが大切です。そうすると、取りこぼしや対応品質の低下を抑えやすくなります。

自治体・大規模受電の事例に学ぶ設計の勘所

神戸市調達事例の回答率目標を導入月、2か月後、最終の順に示した図
目標値が導入後の段階に沿って上がります。

大量の入電を扱う自治体や大規模コールセンターの事例は、AI電話自動応答を「どう設計し、どんな目標値を置くか」を学ぶ格好の教材です。

ここでは、調達仕様に具体的な数値目標が示された自治体の事例と、月数万件規模の大規模受電の費用感を取り上げます。これらは、自社が要件を組み立てる際の現実的な基準値になります。

稼働率99.9%・応答3秒を掲げた自治体調達の事例

自治体の調達事例は、目標数値が明文化されている点で参考になります。一次データでは、神戸市の調達において、年間稼働率99.9%を目標とし、応答は3秒以内(繋ぎ言葉があれば5秒以内)とされています。

回答率は導入月の50%から2か月後に60%とし、最終的に70%以上へ段階的に引き上げる目標が設定されていました。さらに、年間約7.5万件の受電のうち、流入率70%・解決率60%を想定し、約2.5万件をAIで対応する想定だったとされています。

この事例の優れている点は、「回答率を一気に100%にしない」という現実的な段階目標です。AI電話自動応答は、導入直後から完璧に答えられるわけではなく、運用しながら回答ナレッジを増やして精度を上げていくものです。そのため、導入月50%から最終70%という目標設定は、その学習過程を織り込んだ堅実な設計だと言えます。

自社で導入する際も、初月から高い回答率を求めるのではなく、段階的な改善計画を前提に置くことが、現場に無理なく定着させる鍵になります。

  • 稼働率と応答時間:年間の稼働率と、応答までの時間を数値で定める
  • 回答率の段階的な引き上げ:導入月50%から最終70%以上へ、段階的に高める計画

月2万通話規模の大規模受電を実装した費用事例

大規模な受電をAIで処理する場合の費用感も、事例として押さえておきたい数字です。一次データでは、月2万通話規模の大規模受電を想定したケースで、初期費用200万〜400万円、月額80万〜150万円が目安とされています。

riplaの外注相場としては、小規模300万〜600万円、中規模600万〜1,500万円、大規模1,500万〜5,000万円以上という幅があり、規模に応じて費用が変わることが分かります。

大規模受電の事例から学べるのは、「通話量が多いほど月額の運用コストが効いてくる」という点です。たとえば、従量課金型では1応答あたり約50〜200円、StepAIの『Reco』のように通話料10円/分という料金体系もあり、通話量が増えるほど月額が膨らみます。

そのため、大規模導入では、定型対応をAIに、複雑な案件を有人に振り分ける設計が、コストと品質の両立に直結します。事例の費用感を自社の通話量に当てはめて月額を試算し、そのうえで投資判断を行うことが大切です。

  • 初期費用と月額:規模ごとに示された、初期と月額の費用の幅
  • 課金の方式:月額と通話量の関係を決める料金の仕組み

ポイント

初月から高い回答率を求めず、段階的な目標を置くことが大切です。大規模受電では通話量に応じて月額が膨らむため、自社の通話量で試算してから予算を決めます。

事例を自社に活かす進め方とリカバリーの教訓

入電内容の整理から小規模な開始、効果確認、継続的な運用改善までを4項目で示した図
開始前の整理と稼働後の改善が並ぶ構成です。

ここまで見てきた成功事例は、そのまま真似をしても再現できるものではありません。事例を自社の成果につなげるには、「なぜその企業はうまくいったのか」を構造として読み解き、自社の業務に置き換える作業が必要です。

うまくいかなかった事例からの立て直しにも、学ぶべき教訓があります。自社に活かす進め方は、定型的な業務を見極めることから始まります。

定型業務の棚卸しから始めるスモールスタート

成功事例に共通するのは、いきなり全件をAIに任せるのではなく、定型化した業務から段階的に自動化を進めている点です。SmartHRの問い合わせ70%削減も、東急ハンズの電話40%削減も、まず「人が対応しなくてよい定型問い合わせ」を切り分けたうえで成立しています。

自社で事例を活かす第一歩は、入電内容を一覧にすることです。この一覧があると、投資規模の見立ても現実的になります。

一次データのチャットボット相場では、定型対応が中心であればSaaS型で初期0〜30万円・月額5千〜15万円程度から始められるとされています。一方で、複雑な生成AI・RAG・基幹連携を伴えば、初期200〜800万円規模へと跳ね上がります。

島村楽器が約200万円、東急ハンズが約300万円という比較的小さな投資で成果を出したように、まずは効果が見えやすい一部業務から小さく始めることが現実的です。そのうえで、ROIを確認してから対象を広げる進め方が、失敗の少ない王道です。事例の投資額は、自社の対象業務の規模に合わせて読み替えることが大切です。

  • 定型化している業務:入電内容のうち、反復的でAIに任せられる問い合わせ
  • 対象を広げる範囲:効果を確かめてから、次に任せる業務の範囲

稼働しなかった失敗からの立て直し事例

事例の価値は、成功談だけにあるのではありません。AI電話自動応答にも、数千万円を投じたのに稼働せず形骸化した失敗が存在します。

一次データでは、AI導入の32%が期待した効果に届いていないとされています(IDC Japan 2024)。これらの失敗の多くは、技術力よりも、現場の業務や顧客の実際の問い合わせから設計しなかったことや、運用体制を用意しなかったことに起因しています。

riplaは、フルスクラッチ受託と運用伴走の立場から、現場と顧客の実態から逆算し、運用で育てる進め方を一貫して重視しています。事例は華やかな数字だけでなく、「なぜ現場と顧客に使われたのか」という視点で読むことが、失敗を避ける近道です。

  • 質問ログの分析:答えられなかった質問のログを地道に分析する
  • ナレッジの継続更新:回答ナレッジを継続的に育てる運用体制

一次データでは、回答率を導入月50%から最終70%以上へ段階的に引き上げる運用が前提とされており、立て直しのプロセスそのものを示しています。

ポイント

まずは定型化している一部の業務から小さく始め、効果を確かめてから対象を広げるのが基本です。投資額は事例の金額をそのまま当てはめず、自社の業務規模に合わせて読み替えます。

まとめ

AI電話自動応答システムの事例を振り返ると、成功の共通点は「定型的な電話業務を見極め、明確なROIを起点に段階的に自動化を広げる」という一点に集約されます。問い合わせ対応では、SmartHRが約500万円で70%削減・ROI200%超、東急ハンズが約300万円で電話40%削減を実現しました。また、島村楽器は約200万円で社内問い合わせを50%削減しています。

受注では中京医薬品が宅配水の注文の80%を自動化し、督促では回収率が16.9%改善しました。神戸市の調達事例は、稼働率99.9%・応答3秒・回答率を段階的に70%へ引き上げるという、現実的な目標設計の手本になります。

事例を読むときに大切なのは、「どれだけ高機能か」ではなく「どの電話業務が定型化していて、AIに任せられるか」という視点です。自社の入電内容を一覧にし、削減率とコストを自社の数字に置き換えて試算することが、投資判断の第一歩になります。

riplaは、フルスクラッチ受託と運用伴走の立場から、業務の洗い出しから要件整理、現場に定着するAI電話自動応答の構築までを一貫して支援します。全体像の確認には、あらためて完全ガイドをご活用ください。

会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。