ATMシステムの発注・外注・委託では、端末だけでなく、取引中継、勘定系連携、監視、現金運用、障害対応までを一つのサービスとして設計することが成功の条件です。
本記事では、ATMシステムを開発会社へ依頼する前に決めるべき発注形態、RFPと要件の整理方法、契約形態、費用相場、委託先の選び方、見積比較のポイントを、金融機関や新規金融サービス事業者の実務に沿って解説します。正常な引き出し処理だけではなく、通信断、現金切れ、カード取り込み、二重取引、サイバー攻撃が起きたときの責任分界まで確認できる内容です。
▼全体ガイドの記事
・ATMシステム開発の完全ガイド
ATMシステムを発注するときの全体像

ATMシステムは、ATM本体に入る端末ソフトだけを指す言葉ではありません。利用者の操作を受け付け、本人認証を行い、勘定系やカード系のシステムへ取引を中継し、全国の端末を監視し、障害時の復旧や現金運用まで支えるチャネルシステム全体を指します。最初に発注範囲を分解しないと、見積金額と実際に必要な費用の差が大きくなります。
端末・中継・基幹系連携・監視に分けて考えます
発注範囲は、少なくとも四つの層に分けて整理します。第一はタッチパネル、カード・通帳・紙幣搬送、レシート、音声案内、カメラなどを制御するATM端末層です。第二は、取引を受け付けて認証し、勘定系、カード系、外部ATMネットワークへ振り分けるATMスイッチ・対外接続層です。第三は残高、口座、限度額、手数料を管理する勘定系・周辺システム連携です。第四は、稼働状態、紙幣残量、障害コード、通信状態を24時間365日監視する運用基盤です。
たとえばスマホATMを追加する場合でも、アプリ画面を作るだけでは完了しません。利用者認証、ワンタイム情報、取引限度額、ATM側の受付、勘定系の残高更新、取消処理、監査ログ、問い合わせ対応を一貫させる必要があります。端末メーカー、プライムSIer、ネットワーク事業者、運用会社を分けて発注する場合は、各社の境界にあるデータ項目と障害時の窓口をRFPに明記します。
発注前に事業目的と対象範囲を決めます
次に、自社ATMだけを対象にするのか、他行ATM、コンビニATM、提携先ATMまで接続するのかを決めます。金融機関であれば、現金の入出金に加えて振込、税公金・料金収納、通帳記帳、暗証番号変更、カードレス取引などを対象にするかで設計が変わります。小売事業者や新規金融サービス事業者であれば、キャッシュレス決済への現金チャージや本人確認など、ATMを顧客接点として活用する目的が中心になる場合もあります。
2025年9月、ファミリーマートはセブン銀行との提携による多機能ATMで、各種キャッシュレス決済の現金チャージ機能を提供する方針を公表しました(出典: 株式会社ファミリーマート「多機能ATMの導入について」、2025年)。これはATMが現金を引き出す機械から、現金とデジタル決済をつなぐサービス基盤へ広がっていることを示す事例です。発注時には「何を処理するか」だけでなく、「利用者にどんな価値を提供するか」まで定義します。
ATMシステムの発注・外注はどのように進めますか?

ATMシステムの発注は、要件整理、方式選定、RFP、提案比較、契約、設計・開発、試験、移行、運用開始の順に進めます。最初から開発会社に「ATMを作ってください」と依頼すると、各社が異なる前提で見積もるため、価格も納期も比較できません。発注者側で最低限の業務条件と責任範囲をそろえてから、提案を依頼することが重要です。
現行システムと業務を棚卸しします
最初に、現行のATM端末、設置拠点、通信回線、ATMスイッチ、認証基盤、勘定系、カード系、外部ネットワーク、監視センター、警備会社、コールセンターを一覧にします。端末台数だけでなく、拠点数、ピーク時の毎秒取引数、月間取引件数、対応取引、利用時間、現金補充の頻度、保守拠点も記録します。現行ベンダーとの契約期限、再委託先、ソースコードや設定情報の保有者も、後の移行計画に関わる重要な情報です。
機能一覧は正常系だけで作らないことが大切です。通信が途中で切れた場合、タイムアウト後に再送する場合、利用者が現金を受け取れなかった場合、紙幣が詰まった場合、カードが返却できない場合、勘定系と端末の結果が一致しない場合を業務フローにします。「取引は成立しているのか」「返金や再処理を誰が承認するのか」「顧客へ何分以内に案内するのか」を決めると、必要なログ、監視、運用体制が明確になります。
RFPには比較できる十項目を記載します
RFPには、(1)ATM台数と増設予定、(2)対応する取引、(3)ピーク取引量、(4)接続先とプロトコル、(5)目標稼働率・RTO・RPO、(6)監視時間と障害受付、(7)端末・現金・回線の責任分界、(8)移行と並行稼働、(9)保守SLA、(10)セキュリティ・監査要件を記載します。これらを共通条件にすると、A社は端末を含む価格、B社はソフトウェアだけの価格という比較ミスを防げます。
提案書には、前提条件、対象外、追加費用、必要な発注者作業、再委託先、導入後の月額費用を必ず分けて記載してもらいます。特に「標準機能」と「個別改修」を分けることが重要です。スマホATM、ICカード、生体認証、異常取引検知、キャッシュレスチャージなどは、画面改修だけに見えても、認証・取引上限・監査・障害対応まで含めると別の開発項目になります。
実機試験とパイロットを契約前から想定します
ATM開発では、画面やAPIの試験だけでは不十分です。実機を使って、カードの読み取り、通帳やレシートの排出、紙幣の取り込み、紙幣詰まり、現金切れ、通信断、停電、センター切替、操作途中の離脱を検証します。試験データには、残高不足、限度額超過、口座凍結、認証失敗、取消、二重送信などを含め、取引結果とジャーナルが一致することを確認します。
全国展開する場合は、すべての端末を一度に切り替えず、少数拠点でパイロットを実施します。切替判定のKPIには、取引成功率、障害検知時間、復旧時間、現金切れ時間、カード返却までの時間、問い合わせ件数を設定します。旧システムへのロールバック条件、残高・現金の突合、旧新ジャーナルの保管、現場掲示、顧客への返金・再処理手順を事前に決めておくと、リリース直後の混乱を抑えられます。
ATMシステムの発注形態はどれを選びますか?

発注形態は、パッケージ・共同利用型、クラウドサービス、既存ベンダーによる改修、スクラッチ開発の四つを軸に比較します。重要なのは、どれが最も新しいかではなく、標準化できる機能と自社の競争領域を切り分けることです。ATMの接続・監視を共同利用し、顧客体験や不正検知など差別化したい領域に個別開発を集中させる方法も有効です。
共同利用型は標準機能を早く導入したい場合に向きます
共同利用型やパッケージは、ATM接続、監視、認証、ログ管理など、複数社で共通化しやすい機能を早く導入しやすい方式です。金融分野で使われてきた運用手順やセキュリティ対策を活用できるため、自社だけで24時間365日の専門体制を構築する負担を抑えられます。接続先や端末機種が標準仕様に合うなら、開発期間を短くしやすい選択肢です。
一方で、独自の取引や画面、手数料計算、データ連携を追加するほど個別改修費が発生します。月額利用料、取引従量料、最低利用期間、バージョンアップ時の費用、サービス終了時の移行費も確認します。標準外の要望が何年後まで維持されるか、他社サービスとの接続を追加できるかを、提案依頼の段階で質問することが大切です。
クラウドは拡張性と責任分界を見て選びます
クラウドサービスは、監視基盤、ログ保管、分析、冗長構成、環境の増減をサービスとして利用しやすい方式です。新しい端末やスマホアプリとのAPI連携、障害データの集計、地域別の稼働状況の可視化にも適しています。取引データをどこに保管するか、暗号鍵を誰が管理するか、通信回線が切れたときに端末がどの範囲で動作するかを契約と設計の両方で確認します。
クラウド事業者が基盤を冗長化していても、ATM端末、専用回線、外部ネットワーク、勘定系が同じように冗長化されているとは限りません。サービス提供者、プライムSIer、回線事業者、金融機関のどこが障害を検知し、どこが復旧を指示し、どこが顧客へ告知するのかを整理します。月額費用の安さだけではなく、目標復旧時間、データ返却、監査ログの提供、終了時の移行支援を比較します。
スクラッチは独自性と長期保守まで引き受けます
スクラッチ開発は、特殊な端末制御、独自の取引、複雑な手数料計算、既存資産との細かな連携など、標準サービスでは対応しにくい要件に向きます。設計の自由度が高い反面、端末機種や外部接続の変更、規制・ガイドラインの更新、脆弱性対応、担当者の交代まで自社と開発会社が継続して管理しなければなりません。
スクラッチを選ぶ場合は、開発費だけで判断せず、5年から10年の保守、監視、ライセンス、実機試験、セキュリティ診断、後継端末への移行を含めて評価します。ソースコード、設計書、テスト仕様書、運用手順書、暗号鍵の管理方法を契約で明確にし、特定の担当者や1社の再委託先に知識が集中しない体制を作ります。
ATMシステムの契約形態と責任分界をどう決めますか?

ATMシステムでは、要件が固まっていない段階からすべてを請負契約にすると、変更のたびに追加費用や納期延長が発生しやすくなります。反対に、すべてを準委任にすると、成果物や品質の基準が曖昧になりやすいです。企画・要件定義、設計・開発、保守・運用を分け、工程の性質に合う契約を組み合わせます。
請負契約は成果物と受入基準を明確にします
請負契約は、合意した成果物を完成させ、発注者が検査・受入する工程に適しています。基本設計書、詳細設計書、プログラム、インターフェース仕様、テスト結果、移行手順書など、納品物を列挙します。さらに、取引成功率、処理時間、障害検知、センター切替、ログ保存、セキュリティ試験などの受入基準を数値または判定条件で定義します。
ただし、外部ネットワークの仕様変更や既存勘定系の制約など、受注者だけでは制御できない条件があります。前提条件が変わった場合の変更管理、追加見積、納期調整、責任の切り分けを契約書と個別契約に記載します。受入を急ぐために未解決の障害を持ち越す場合は、暫定対応、解消期限、顧客影響の監視方法も合意します。
準委任契約は専門チームの稼働と協働を管理します
準委任契約は、PM、アーキテクト、セキュリティ担当、運用設計担当などの専門家が、発注者と一緒に調査や設計を進める場合に適しています。現行調査、要件定義、RFP作成支援、移行計画、運用改善など、成果の形を事前に固定しにくい業務で使いやすい契約です。月ごとの稼働時間、担当者のスキル、会議体、報告内容、作業場所、情報管理を明確にします。
準委任でも、品質を管理しなくてよいわけではありません。毎月の成果物、課題一覧、リスク、意思決定事項、次月計画を提出してもらい、要件の未決定事項を見える化します。ATMのように複数社が関わる案件では、発注者側の責任者が優先順位と受入判断を行い、ベンダー間の調整窓口を一本化します。
SLAと障害時の責任を業務単位で分けます
保守・運用契約では、稼働率だけをSLAにしないことがポイントです。障害の検知時間、一次切り分けの時間、復旧開始時間、暫定復旧の目標、完全復旧の目標、顧客への告知、カード返却、返金・再処理、原因分析報告までを分けて設定します。現金補充、警備会社の出動、端末の現地保守、専用回線、データセンター、クラウド、ATMスイッチの責任者も一覧化します。
委託先が再委託する場合は、再委託先の社名、担当範囲、監査権、事故報告、秘密保持、データ消去、サービス終了時の協力義務を確認します。暗号鍵や認証情報を開発会社が保管する場合は、権限分離、操作記録、緊急時のアクセス、退職者の権限削除まで契約と運用手順に落とし込みます。外部委託の契約条件と金融機関のリスク管理方針が整合するか、法務・リスク管理部門とも確認します。
ATMシステムの費用相場はいくらですか?

ATM専用システムの契約価格を横断した公的な相場表は確認できないため、以下は公開されている一般的なシステム開発費、金融系連携案件の目安、NotebookLMリサーチで整理した条件を組み合わせた企画初期の概算です。ATM台数、取引量、接続先、既存勘定系、可用性、端末ハード、24時間運用の有無で大きく変わるため、正式な見積金額として扱わないでください。
初期費用は一千万円台から数億円超まで広がります
既存ATMへの小規模な機能追加や監視連携であれば、初期費用は1,000万円から5,000万円程度、期間は3か月から9か月程度が一つの目安です。スマホATM、画面改修、API連携、監視項目の追加などを想定したレンジで、外部接続や端末交換を含むと上振れします。共同利用パッケージやクラウドの導入は、初期費用3,000万円から1.5億円程度、期間は6か月から12か月程度が目安です。
ATM接続・制御システムの新規開発では5,000万円から1.5億円超、大規模な自行ATM網やスイッチ更改では1.5億円から3億円超となることがあります。高可用性、複数センター、複数の外部ネットワーク、全面的な勘定系連携、並行稼働、災害訓練を含めるほど、開発・試験・移行の工数が増えます。これはATM固有の公的統計ではなく、企画段階で予算の桁を検討するための推定です。
端末費・接続費・運用費を別々に積み上げます
見積の内訳は、要件定義・PM、アプリケーション開発、端末機器の購入またはリース、設置工事、専用回線、ATMスイッチ、外部ネットワーク接続、認証・暗号鍵管理、監視基盤、データセンター、テスト環境、移行、セキュリティ診断、教育、保守に分けます。端末1台の価格だけでなく、店舗や拠点の工事、予備機、現地交換、紙幣搬送部品の保守まで確認します。
運用費には、クラウドまたはデータセンターの月額、監視センターの人件費、専用回線、ライセンス、セキュリティ監視、脆弱性診断、警備会社への出動依頼、現金補充・回収、問い合わせ対応が含まれます。見積書で「保守費一式」となっている場合は、何時間の監視、何回の現地対応、何種類の障害、何時間の復旧が含まれるかを質問します。安い初期費用が、月額利用料や従量課金の高さで逆転することもあります。
5年から10年のTCOで方式を比較します
発注形態を比較するときは、初期費用と1年目の運用費だけでなく、5年から10年の総保有コストで計算します。初期費用に、端末の更新、回線増強、外部接続料、取引従量料、月額利用料、監視・警備、現金運用、保守、規制対応、セキュリティ診断、障害復旧、追加開発、サービス終了時の移行費を加えます。端末台数や取引量が増えるシナリオと、減少するシナリオの両方を作ると、固定費と変動費の違いが見えます。
費用だけでなく、稼働率、復旧時間、顧客影響、ベンダーロックイン、社内に残る専門知識も評価します。たとえば共同利用型の月額が高くても、監視人材と障害対応の固定費を外部化でき、リリース期間を短縮できる場合があります。反対に、スクラッチの初期費用が予算内でも、運用要員の採用や夜間対応ができなければ、事業開始後のリスクが大きくなります。
委託先の選定と見積比較で何を確認しますか?

委託先は、会社の知名度や見積の安さだけでなく、ATMのどのレイヤーを担えるかで評価します。端末制御、ATMスイッチ、MICS・CAFISなどの外部接続、勘定系連携、監視、クラウド、現地保守、セキュリティ、24時間運用を一社ですべて担えるとは限りません。複数社の提案を組み合わせる場合は、プライム契約者が全体の障害と納期を管理できるかを確認します。
接続実績と24時間運用の証拠を確認します
提案会社には、ATMの導入台数、対応する端末メーカー、接続した外部ネットワーク、勘定系との連携方式、監視センターの場所、障害時の平均復旧時間、直近の類似事例を質問します。実績は社名や案件名だけでなく、自社案件と同じ条件かを見ます。自行ATMか提携ATMか、現金取引かキャッシュレスチャージか、夜間無停止かで必要な経験は変わります。
金融機関向けの安全対策では、FISCの基準や金融庁のサイバーセキュリティに関するガイドラインとの対応を、どの証跡で示せるか確認します。FISCは2026年3月に「金融機関等コンピュータシステムの安全対策基準・解説書」第14版などを収録し、同年5月にはサイバーセキュリティFAQを更新しています(出典: 金融情報システムセンター、2026年)。FISC基準は法律そのものではありませんが、適用範囲と自社のリスク管理方針を確認し、要件・試験・監査記録に落とし込みます。
見積比較表は金額ではなく前提と除外をそろえます
見積比較では、各社の総額を並べる前に、同じ条件へそろえます。端末台数、拠点数、ピーク取引量、対応取引、接続先、目標稼働率、RTO・RPO、監視時間、保守時間、移行対象、試験範囲、セキュリティ診断、教育、消費税の扱いを同じシートで確認します。初期費用、月額費用、従量費、オプション、追加改修、現地対応、終了時費用を別の列に分けます。
価格差が大きい項目は、安い提案の対象外を確認します。たとえば、外部接続の疎通試験、ピーク性能試験、障害・災害訓練、端末の現地展開、監視ルールの設定、脆弱性診断、移行リハーサルが別料金になっている可能性があります。見積比較会議では「この金額で本番稼働に必要な作業がすべて完了するか」「障害時に誰が顧客対応まで担うか」を提案責任者に説明してもらいます。
制度対応と撤退時のリスクも評価します
大規模な金融機関では、経済安全保障推進法の基幹インフラ制度が関係する場合があります。内閣府は2026年7月1日時点の指定を反映し、特定重要設備の導入や重要維持管理等の委託に関する資料を更新しています。銀行業では、預金残高10兆円以上、口座数1,000万口座以上、ATM台数1万台以上などの指定基準が示されています(出典: 内閣府「基幹インフラ役務の安定的な提供の確保に関する制度」、2026年7月)。自社が対象か、委託する設備や業務が対象かは、所管省庁や法務・リスク管理部門と確認します。
また、委託先が事業撤退した場合、買収された場合、サービスを終了した場合に、どの期間でデータ・設定・設計書を返却できるかを確認します。代替ベンダーへ移行できる形式、ソースコードの利用権、暗号鍵の返却・廃棄、移行支援の単価、契約終了後の問い合わせ窓口を定義します。開始時のセキュリティだけでなく、終了時に安全に切り替えられることも、ATMの発注先を選ぶ重要な基準です。
よくある質問

ATMシステムの発注では、端末を買うだけで運用を開始できるのか、どこまで外注すべきか、費用をどう比較するかという質問が多くあります。ここでは、発注前に特に判断しにくいポイントをまとめます。
ATMシステムの開発費用は最低いくらかかりますか?
既存ATMへの小規模な機能追加や監視連携なら、企画初期の目安として1,000万円から5,000万円程度が考えられます。ただし、端末費、外部接続、勘定系改修、セキュリティ試験、移行、24時間運用を含むかで変わります。ATM専用の公的な一律相場ではないため、台数、取引量、接続先、可用性をそろえたRFPで複数社から見積を取ります。
ATMシステムはすべて外注しても問題ありませんか?
すべてを外注することは可能ですが、事業目的、リスク許容度、要件の優先順位、受入判断、障害時の顧客対応までを委託先に任せると、自社の判断力が弱くなります。外注する場合も、発注者側にプロダクト責任者、セキュリティ責任者、運用責任者を置き、重要な意思決定とデータ・鍵の管理方針は自社で持ちます。標準機能は共同利用し、差別化機能だけを個別開発する分担も現実的です。
委託先を選ぶときに最も重要な実績は何ですか?
自社と同じ規模のATM台数、同じ外部接続、同じ勘定系連携、同じ稼働時間を経験しているかが重要です。さらに、障害時のカード取り込み、二重取引、通信断、現金不整合、災害時のセンター切替を、試験と本番運用で扱った実績を確認します。公開事例だけで判断せず、監視体制、復旧実績、再委託先、担当チームの継続性を提案時に質問します。
スマホATMやキャッシュレスチャージも同じ発注で対応できますか?
対応できる場合がありますが、スマホアプリの改修だけでなく、本人認証、ワンタイム情報、取引限度額、ATMとの一時コード連携、勘定系の残高更新、取消、監査ログ、問い合わせ対応まで設計する必要があります。セブン銀行は2025年1月から福岡銀行、熊本銀行、十八親和銀行のアプリを通じたスマホATMを開始した事例を公表しています(出典: 株式会社セブン銀行「通帳やカードを使わない日常へ。『スマホATM』が提案する新しいライフスタイル」、2025年)。発注時は、既存ATMの機能追加で済む範囲と、認証・基幹系を改修する範囲を分けて見積もります。
まとめ

ATMシステムの発注・外注・委託では、端末の購入費だけでなく、取引中継、勘定系連携、外部ネットワーク、監視、現金運用、保守、セキュリティ、移行までを発注範囲として整理します。要件定義では、端末台数、取引量、接続先、対応取引、目標稼働率、RTO・RPO、監視時間、障害時の顧客対応、ログ・監査、現金運用を具体化します。
標準化する範囲と差別化する範囲を分けます
発注形態は、共同利用型、クラウド、既存ベンダー改修、スクラッチを、機能の適合度、TCO、変更自由度、ロックイン、障害対応、長期保守で比較します。契約は、要件定義を準委任、仕様が固まった開発を請負、稼働後の監視・保守をSLA付きの運用契約に分けると、工程ごとの責任を管理しやすくなります。会社の規模ではなく、MICS・CAFIS等の接続、端末・監視、基幹系連携、24時間運用をどこまで担えるかで委託先を選びます。
まずRFPの前提条件と責任分界を書き出します
最初の一歩は、正常系の機能一覧ではなく、障害・災害・不正・移行時の業務フローを含むRFPを作ることです。見積書は初期費用の順位で決めず、端末、回線、接続、試験、診断、監視、警備、現金、保守、移行を含む5年から10年のTCOで比べます。複数社から同じ前提で提案を受け、発注者側の責任者と委託先の障害対応窓口を明確にすれば、安全性と費用の納得感を両立しやすくなります。
▼全体ガイドの記事
・ATMシステム開発の完全ガイド
会社紹介
株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

もし、システム開発やプロダクト開発に関するご要望がございましたら、お気軽にお問い合わせください。
・サービス概要資料のURLはこちら >>>
・お問合せページのURLはこちら >>>
・お役立ち資料のURLはこちら >>>


株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。
