勤怠管理システム開発の進め方/やり方/流れや方法/手法/工程/手順

勤怠管理システムの開発は、労働基準法・働き方改革関連法への対応から多様な勤務形態の管理まで、企業の人事・労務管理の根幹を支える重要なプロジェクトです。しかし要件定義が不十分なまま開発を進めると、現場に使われないシステムや法改正への対応漏れ、給与計算システムとの連携不備といった深刻な問題に陥るケースが後を絶ちません。

本記事では、勤怠管理システム開発の全体像から各フェーズの進め方・開発方式の選択基準・失敗を防ぐための注意点まで、実務で活用できる情報をまとめて解説します。ICカード打刻・スマートフォン打刻・生体認証など多様な打刻方式への対応や、フレックスタイム制・シフト制・裁量労働制・テレワークといった多様な勤務形態への対応についても詳しく説明します。

本テーマに関する全体ガイドは、以下の記事をご覧ください。

▼全体ガイドの記事
・勤怠管理システム開発の完全ガイド

勤怠管理システム開発の全体像

勤怠管理システム開発の全体像

勤怠管理システムとは、従業員の出退勤時刻の記録・集計・管理を行うシステムです。単なる打刻ツールにとどまらず、残業時間の把握・有給休暇の管理・36協定の遵守状況の確認・申請承認ワークフローの運用など、労務管理全般を支える基幹的な役割を担います。働き方改革関連法の施行により、残業時間の上限規制や有給休暇取得の義務化が課せられたことで、正確な勤怠情報の管理は企業に課せられた法的義務となっています。システム化によってこれらの義務を確実に履行し、同時に人事担当者の集計工数を大幅に削減することが開発の主な目的です。

勤怠管理システムが持つ主な機能

勤怠管理システムの主な機能は多岐にわたります。打刻機能では、ICカード・スマートフォンアプリ・生体認証(指紋・顔認証)・PC上のブラウザ打刻など複数の方式に対応し、テレワーク環境でも正確な出退勤記録を取得できます。勤務集計機能では、通常勤務・残業・深夜勤務・休日勤務などの区分ごとに自動集計し、法定労働時間の超過状況をリアルタイムで可視化します。申請承認ワークフロー機能では、遅刻・早退・残業申請・休暇申請(有給・特別休暇・育児介護休業など)をオンラインで完結させ、上長の承認を経て勤怠データに反映します。36協定管理機能では、従業員ごとの時間外労働の累積を追跡し、上限に近づいた場合にアラートを通知します。給与計算システム・人事システムとのデータ連携機能も不可欠で、月次の勤怠データを自動的に連携することで給与計算の正確性と効率を高めます。

開発工程の全体フローと期間目安

勤怠管理システム開発の標準的な工程は、業務ヒアリング・現状分析(1〜2ヶ月)、要件定義・機能設計(1〜2ヶ月)、基本設計・詳細設計(1〜2ヶ月)、開発・単体テスト(2〜4ヶ月)、結合テスト・ユーザー受け入れテスト(1〜2ヶ月)、移行・リリース・定着支援(1〜2ヶ月)という流れで進みます。勤務形態の種類が少なく比較的シンプルなシステムであれば合計4〜6ヶ月、多様な勤務形態や複数拠点対応が必要な場合は6〜12ヶ月が目安です。既存の紙やExcel管理からのデータ移行、既存の給与計算システムや人事システムとのAPI連携開発が伴う場合はさらに工数が増加します。月次の給与締め処理に間に合わせるリリーススケジュールも重要な考慮事項です。

勤怠管理システム開発の進め方(フェーズ別解説)

勤怠管理システム開発の進め方(フェーズ別解説)

勤怠管理システム開発を成功させるためには、各フェーズで「何を明確にするか」「誰が関与するか」を正しく理解することが不可欠です。特に要件定義フェーズでは、多様な勤務形態・複雑な就業規則・法令要件を正確に把握することが後工程の品質を大きく左右します。

業務ヒアリング・現状分析(As-Is整理)

開発の第一歩は、現在の勤怠管理がどのように行われているかを正確に把握することです。人事担当者・現場管理職・一般従業員それぞれへのヒアリングを通じて、現行の打刻方法・承認フロー・集計作業の実態・発生している課題を整理します。特に重要なのは、就業規則の内容を詳細に確認することです。フレックスタイム制・シフト制・裁量労働制・テレワーク勤務など、複数の勤務形態が混在している場合は、それぞれのルールと例外処理を漏れなく整理します。また、現行の給与計算システム・人事システムのデータ形式・連携仕様も早期に確認しておくことが、後工程での設計ミスを防ぐうえで欠かせません。As-Is整理の成果物として業務フロー図・課題一覧・要件候補リストを作成し、次の要件定義フェーズへの基盤を固めます。

要件定義・機能設計(To-Be設計)

As-Is整理をもとに、システム化後の理想の業務フローと必要な機能を定義します。機能要件として、打刻方式(ICカード・スマートフォン・生体認証・PC打刻)の種類と対応範囲、勤務区分の定義(所定内労働・時間外・深夜・休日)、申請承認ワークフローの種類と承認ルート、有給休暇取得率の自動集計、36協定のアラート基準と通知先、給与計算システム・人事システムへのデータ連携仕様などを明文化します。非機能要件として、マルチデバイス対応(PC・スマートフォン・タブレット)、クラウド型かオンプレミス型かの選択、同時接続数・レスポンスタイム・稼働率の基準、セキュリティ要件(個人情報保護・アクセスログ・暗号化)を定義します。要件定義書は人事部門・経営層・IT部門が揃って承認する正式なドキュメントとして位置づけることが重要です。

開発・テスト・リリース・定着支援

設計が固まったら開発フェーズに移行します。勤怠管理システムでは、勤務区分の計算ロジック(残業時間の判定・深夜割増・休日割増)が特に複雑になりやすいため、設計段階で具体的なケースをすべて洗い出して仕様化しておくことが重要です。テストは「単体テスト(打刻ロジック・計算ロジックの正確性確認)」「結合テスト(申請承認ワークフローの動作確認・給与システム連携の確認)」「ユーザー受け入れテスト(実際の従業員による操作確認)」の段階で実施します。リリース前には、月次締め処理のシミュレーションを必ず行い、給与計算結果が正確に出力されるかを検証してください。リリース後の定着支援として、操作マニュアル・FAQの整備・従業員向けトレーニング・ヘルプデスク対応が不可欠です。特に全従業員が使うシステムであるため、現場での混乱を最小化するための丁寧なサポートが長期的な活用を支えます。

要件定義のポイントと注意事項

要件定義のポイントと注意事項

勤怠管理システムの要件定義は、労働法令への準拠という観点から特に精緻な作業が求められます。「とりあえず打刻できればよい」という発想では、法令違反リスクや後工程での大規模な仕様変更につながります。要件定義フェーズで確認すべき重要事項を以下に整理します。

勤務形態の種類を網羅的に整理する

勤怠管理システムの要件定義で最も重要な作業の一つが、自社で存在するすべての勤務形態を網羅的に整理することです。標準的な9時〜18時の固定時間制だけでなく、コアタイムのあるフレックスタイム制・コアタイムなしの完全フレックス制・シフト制(複数のシフトパターン)・裁量労働制(みなし労働時間制)・高度プロフェッショナル制度など、各制度によって時間外労働の計算方法や承認フローが異なります。テレワーク・在宅勤務の扱い(通常勤務と同じ扱いか否か)、出張時の移動時間の扱い、複数事業場を移動する従業員の打刻方法なども事前に明確化が必要です。勤務形態ごとに「どのルールが適用されるか」「例外処理はどう対応するか」を網羅的に整理することで、設計・開発フェーズの精度が大幅に向上します。

労働基準法・働き方改革対応要件の確認

勤怠管理システムは労働法令への準拠が必要であり、特に以下の法令要件をシステムに組み込む必要があります。まず、残業時間の上限規制(月45時間・年360時間の原則、特別条項でも月100時間未満・年720時間以内)に対するアラート機能は必須です。システムが上限に近づいた従業員を自動検出し、管理者に通知する仕組みが求められます。次に、有給休暇取得の義務化(年10日以上付与される従業員に年5日取得させる義務)への対応として、取得状況の自動集計と期限管理アラートが必要です。36協定管理では、協定で締結した限度時間を超えないよう監視し、超過リスクのある従業員を事前に把握できる機能が求められます。これらの法令要件は定期的に改正されるため、法改正への対応を継続的に行える保守体制も含めて要件定義に含めることが重要です。

給与計算・人事システムとの連携設計

勤怠管理システムは独立して稼働するのではなく、給与計算システム・人事システムとのデータ連携が不可欠です。連携設計を後回しにすると、月次締め時に手作業でのデータ転記が残ってしまい、システム化のメリットが大幅に失われます。要件定義段階で確認すべき事項として、連携先システムの種類(給与計算パッケージ・クラウド型人事システム・社内独自システム)とそのAPI仕様・データ形式(CSV・API連携・EDI)を早期に調査します。連携タイミング(月次一括連携・リアルタイム連携)と連携項目(勤務時間・残業時間・欠勤日数・有給取得日数など)も明確に定義します。特に給与計算システムと勤怠管理システムの間で、勤務区分の定義や計算ロジックに齟齬が生じないよう、両システムの担当者が同席してすり合わせを行うことを強くおすすめします。

開発方式の選択(スクラッチ vs パッケージカスタマイズ)

開発方式の選択(スクラッチ vs パッケージカスタマイズ)

勤怠管理システムの構築手段は、スクラッチ開発・パッケージソフトのカスタマイズ・クラウド型SaaSの活用・ノーコードツールの活用などに大別されます。自社の就業規則の複雑さ・予算・開発期間・保守体制を総合的に考慮して最適な手段を選択することが重要です。

スクラッチ開発が適しているケース

スクラッチ開発は、自社固有の就業規則・複雑な勤務形態・独自の計算ロジックを持つ企業に適しています。たとえば、業種特有のシフトパターン(24時間365日対応の医療・介護・警備など)・複数の雇用形態が混在する企業・海外拠点との連携が必要な企業などは、汎用パッケージでは対応しきれないケースが多く、スクラッチ開発が選ばれます。また、既存の独自システム(生産管理・販売管理など)との密な連携が必要な場合もスクラッチ開発の優位性が発揮されます。一方で開発コストと期間は他の手段より大きくなるため、「パッケージカスタマイズでは本当に対応できないか」を慎重に検討したうえで判断することが重要です。

パッケージ・SaaSカスタマイズが適しているケース

勤怠管理は法令準拠が求められる汎用性の高い業務であるため、クラウド型SaaS(KING OF TIME・ジョブカン・マネーフォワードHRなど)やパッケージソフトが多く普及しています。標準的な勤務形態(固定時間・フレックス)への対応・有給管理・残業管理などの基本機能が充実しており、初期コストを抑えながら短期間での導入が可能です。クラウド型SaaSのメリットとして、法改正への自動対応・インフラ管理不要・マルチデバイス対応が標準で提供される点が挙げられます。ただし、自社固有の特殊な就業規則や計算ロジックへの対応に限界がある場合があり、パッケージの標準機能で対応できない要件をどう扱うかを事前に確認することが重要です。スクラッチ開発と比較して大幅にコストと期間を抑えられるため、まずはパッケージでの対応可否を検討することを推奨します。

クラウド型とオンプレミス型の選択基準

勤怠管理システムの基盤として、クラウド型(インターネット経由でサービスを利用)とオンプレミス型(自社サーバーにシステムを構築)のどちらを選ぶかは重要な判断です。クラウド型は初期費用が低く・インフラ管理不要・テレワーク環境への対応が容易で、近年の主流となっています。従業員がスマートフォンやタブレットから場所を問わず打刻できることも大きなメリットです。一方オンプレミス型は、社内ネットワーク内でのみ稼働するため高いセキュリティが確保でき、個人情報保護の観点からクラウドへのデータ預けに制約がある業種(官公庁・医療機関・金融機関など)に選ばれるケースがあります。テレワーク普及の観点ではクラウド型が圧倒的に有利であり、セキュリティ要件との兼ね合いを慎重に判断することが選択のポイントです。

よくある失敗とその回避策

よくある失敗とその回避策

勤怠管理システム開発の失敗は多くの場合、「就業規則の確認不足」「連携先システムとの仕様齟齬」「現場の使い勝手への配慮不足」という三つの原因に集約されます。これらを事前に把握し、適切な対策を講じることがプロジェクト成功の確率を高めます。

就業規則・例外処理の確認不足

勤怠管理システム開発で最も多い失敗の一つが、就業規則に定められたルールを開発開始前に完全に把握していなかったケースです。就業規則は本則だけでなく別規程・付則・労使協定なども含めて確認する必要があります。特に「遅刻した場合の端数処理ルール」「深夜残業が翌日の所定内労働時間と重なった場合の扱い」「有給休暇の時間単位取得への対応」「介護休業・育児休業の残余日数計算」「特別休暇の種類と計算ルール」など細かな例外処理を網羅しないと、リリース後に「実際の給与計算と結果が合わない」という致命的な問題が発生します。回避策として、要件定義フェーズで社会保険労務士または労務経験のある担当者を交えてレビューを行い、就業規則上のすべての計算パターンをテストケースに落とし込むことが有効です。

給与システム連携の設計ミス

勤怠管理システムと給与計算システムの連携設計を後工程で行おうとした結果、両システムの勤務区分定義が食い違い、大規模な修正が必要になったケースは多くあります。たとえば、勤怠システムでは「所定外残業」と「法定外残業」を区別して集計しているのに、給与システム側では「残業計」としか受け取れない仕様になっていた場合、連携データの形式変換に予想外の工数が発生します。回避策として、要件定義の段階から給与計算システムのデータ仕様を詳細に確認し、連携項目・データ形式・連携タイミングを両システムの担当者が揃った場で合意することが不可欠です。新旧システムの並行稼働期間を設けてデータの突合確認を行い、給与計算結果が正確に一致するかを本番前に必ず検証してください。

現場の使いやすさへの配慮不足

勤怠管理システムは全従業員が毎日使うシステムであり、UIの使いやすさが定着率に直結します。「打刻ボタンがわかりにくい」「申請フローが複雑すぎる」「スマートフォンでの操作性が悪い」といった問題が現場での抵抗を生み、結果として「打刻漏れ」「紙の申請と並行運用」という状態に陥るケースがあります。回避策として、開発前にプロトタイプ(画面モック)を作成して現場の代表者に操作してもらい、使いやすさを確認するステップを必ず設けることが重要です。特にシフト勤務の現場ではスマートフォンやタブレットでの操作が主体になるため、マルチデバイス対応と直感的なUI設計を重点的に検討してください。また、打刻忘れの通知機能・申請期限のリマインド機能など、従業員が漏れなく操作できるサポート機能も検討に値します。

勤怠管理システム開発のご相談はriplaへ

勤怠管理システム開発のご相談はriplaへ

riplaは、コンサルティングから開発まで一気通貫で支援できる勤怠管理システム開発会社です。就業規則の分析・要件定義・設計・実装・給与システム連携・定着支援まで、プロジェクト全体を一貫してサポートします。働き方改革対応・多様な勤務形態への対応・マルチデバイス対応など、勤怠管理システムに求められる要件を熟知したメンバーが上流から関与し、現場に根付くシステムの実現をご支援します。

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株式会社riplaでは、IT事業会社出身のプロフェッショナルが「Impact-Driven型支援」を通じて、プロダクトやシステムの納品・提供を目的とせず、お客様と同じ目線で、事業成果の達成をゴールとして、高品質なDX/開発支援をいたします。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。IT事業会社出身のプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、「Impact-Driven型支援」を掲げ、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の実現に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。