勤怠管理システム開発のフルスクラッチ・オーダーメイド開発について

勤怠管理システムは、勤務ルールや既存システムとの連携要件を整理して選びます。フルスクラッチは、その要件に合わせて一から作る方式です。

SaaSやノーコードとも比べ、保守体制も踏まえて選ぶと、自社に合う運用につながります。各テーマの詳細は、関連記事もあわせてご覧ください。

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既存パッケージ・SaaSとフルスクラッチの違い

勤怠管理システムは、出退勤の打刻と労働時間の実績を記録し、残業・深夜・休憩・休日を集計します。集計結果を給与計算システムへ渡すことから、労務管理の基盤ともいえます。

シフト管理が勤務計画を扱うのに対し、勤怠管理は働いた実績を扱います。導入形態は、既存のパッケージやクラウドSaaSを使う方法と、自社の要件に合わせて開発する方法があります。

KING OF TIMEやジョブカン、マネーフォワードなどの既存サービスは、自社サーバーが不要で、最短数日から数週間で導入でき、初期投資も抑えられます。また、法改正の更新はベンダー側で自動対応されるため、コンプライアンス維持の負担も軽くなります。

両者では、コスト構造と運用が異なります。そのため、まず自社の要件と規模を照らし合わせることが、選択の出発点になります。そのうえで、両者の違いとそれぞれが向く企業を確認していきます。

コスト構造と拡張性の違い

費用の発生方法と拡張性を比べると、導入形態ごとの向き不向きが見えてきます。

  • クラウドSaaS:短期間で導入でき、初期負担が小さい。
  • フルスクラッチ:独自要件に合わせやすく、人数が増えても固定費化できる。

クラウドSaaSは、1ユーザーあたり月額300円から500円前後の従量課金が基本です。そのため、従業員が増えるほど月額が積み上がり、大規模では維持費が大きく膨らみます。

フルスクラッチ(オンプレミス・独自開発)は初期開発費が高く、導入にも時間がかかります。一方で、自社の就業ルールに合わせて柔軟にカスタマイズできます。

大規模組織では、長期的に費用を抑えられる可能性があります。少人数で早く始めるならSaaS、独自要件が強い大規模運用ならフルスクラッチが候補になります。

目先の初期費用だけで選ぶと、数年後に費用の大小が逆転することもあります。そのため、従業員数の見通しと要件の特殊性も、あわせて確認しておきましょう。

フルスクラッチが向いているケース

標準的なSaaSでは運用が難しい要件がある場合、フルスクラッチや大規模なカスタマイズが候補になります。

  • 複雑な就業規則:独自の勤務・休憩・集計ルールがある。
  • 特殊なシステム連携:標準APIやCSVで連携しにくい。
  • 厳しいセキュリティ要件:閉じたネットワークでの運用が必要。

フレックス制や変形労働時間制、裁量労働制に加え、独自の休憩ルールがある企業では、SaaSの設定だけで毎月の手修正が生じる場合があります。また、特殊な15分丸めや深夜跨ぎの計算も該当し、こうしたルールはフルスクラッチで作り込む価値があります。

独自開発の基幹システムや従来型の給与システムと組み合わせる場合も、対象になります。既製品で無理に連携すると、残業代の計算に10万円の差異が出たり、給与支給が3日遅れたりするトラブルにつながることがあります。

金融機関など、非常に厳しいセキュリティ基準が求められる企業にも向いています。これらに当てはまらず、標準的な勤務体系で運用できる企業は、SaaSで要件を満たせることが多くあります。そのうえで、自社に本当に必要かを冷静に見極めましょう。

ポイント

勤務体系が標準的で既存サービスと連携できるなら、SaaSやパッケージを先に検討します。独自ルールや基幹連携が多い場合は、フルスクラッチの費用と保守を並べて判断します。

独自の勤務体系・労基法対応の作り込みとリスク

勤怠システムを中心に、勤務時間、集計ルール、法令と連携の3領域を示す図。
給与計算へ渡す前の勤怠側の設計範囲を見渡せます。

フルスクラッチなら、自社の就業規則や労働時間ルールに合わせたシステムを構築できます。36協定の上限規制や有給休暇の管理義務など、労働基準法に沿った対応も設計できます。さらに、パッケージでは吸収しきれない例外運用も扱えます。

独自開発には、軽視すると稼働後の運用が苦しくなるリスクもあります。作り込みの利点と、技術負債のリスクを並べて確認しましょう。

自社固有の勤務体系・36協定対応への適合

勤務ルールを細部まで集計ロジックに反映できるため、雇用区分や部署ごとの違いも扱えます。

  • 勤務時間:所定時間、変形労働時間制、フレックスのコアタイム。
  • 集計ルール:休憩付与、裁量労働のみなし時間、深夜・休日割増。
  • 法令と連携:36協定の上限管理、給与側に合わせたデータ形式。

36協定では、特別条項の運用や複数月平均の管理といった細かな要件も作り込めます。そのうえで、法令遵守と自社運用の両立を目指せます。

給与計算システムが求める項目や形式に合わせて、連携インターフェースも設計できます。これにより、既製品で起こりやすいデータ不整合を避けやすくなります。

勤怠システムの役割は、労働時間データを集計して給与計算へ渡すことです。一方で、賃金額や税・社会保険の処理は給与計算側が担います。この役割分担を明確にすると、勤怠側での過剰な作り込みを防ぎ、開発範囲を適切に保てます。

法改正対応の負担と技術負債のリスク

法改正時の保守負担と技術負債が、フルスクラッチの大きな注意点です。法改正のたびに、自社で追加開発する体制も考えておく必要があります。

  • 変更しやすい設計:法改正が入りやすい部分を改修可能にする。
  • ドキュメント整備:仕様を記録し、属人化を避ける。
  • 保守体制の確保:担当パートナーや社内体制を長期的に保つ。

働き方改革関連法や社会保険料率の改定などは、フルスクラッチでは自社の責任と費用で対応します。これに対し、SaaSではベンダーが無償で自動対応する内容です。

改修を重ねると例外処理が積み上がり、仕様が複雑になる技術負債が生じます。たとえば、システムエラーや、新しい36協定に反映できないといった失敗例も報告されています。

フルスクラッチは、法令の変化に合わせて保守を続ける前提の投資です。そのため、稼働後の改修費と体制も含めて判断しましょう。

ポイント

就業ルールが複雑で既製品では例外処理や給与連携が収まらないなら、フルスクラッチを検討する価値があります。ただし、法改正への改修と保守の体制も含めて費用を見る必要があります。

パッケージ導入とフルスクラッチの5年TCO比較・開発期間の違い

クラウドSaaS、オンプレ型パッケージ、ERP連携型・フルスクラッチの5年TCOを費用レンジ付きで並べた図。
導入形態が変わると、5年間の費用レンジも大きく変わります。

費用が妥当かを判断するには、初期費用や月額だけでなく、3年から5年の総所有コスト(TCO)を比べます。

稼働までの期間も導入形態によって異なります。さらに、組織規模によって費用面の優位性が逆転します。そのため、規模別のTCO比較と開発期間を確認しておく必要があります。

導入形態別の5年TCO比較

導入形態ごとの5年間の総所有コストを比べると、規模による優位性の逆転が見えてきます。

  • クラウドSaaS:従業員20名で初期0円〜10万円、月額4,000円〜15,000円程度、5年約24万〜90万円。
  • オンプレ型パッケージ:初期50万〜300万円、保守月額5万〜20万円、5年約350万〜1,500万円。
  • ERP連携型・フルスクラッチ:初期500万円以上、保守月額20万〜100万円、5年約1,700万〜6,500万円。

クラウドSaaSでは、独自ルール対応のカスタマイズ費が別途発生するケースもあり、その額は20万円から100万円超です。

少人数の組織では、フルスクラッチの投資対効果が見合わないことがあります。一方、従業員が多く従量課金が膨らむ組織では、固定費型が見合う場合があります。

また、既製品で業務が回らないほど特殊な要件を持つ企業も、フルスクラッチが選択肢になります。自社の規模と要件を、5年TCOの目安に照らして比べましょう。

開発期間の違いとデータ移行の注意点

特に旧システムからのデータ移行は、難易度を見落としやすいため注意が必要です。

  • 稼働までの期間:SaaSは最短数日〜数週間、開発は要件定義・移行だけで数ヶ月、全体で半年〜1年以上。
  • データ移行:過去データの表記揺れや複雑な構造で、抽出・整形の工数が増えることがあります。
  • 移行の事例:見積もり違いで稼働が2ヶ月遅れた例、勤怠パターン登録に1ヶ月かかった例。
  • 事前準備:移行・初期設定の余裕、給与連携テスト、旧方式との並行集計を日程に含める。

開発期間中は、現行業務との並行運用や社内調整も続きます。そのため、期間を甘く見積もらないことが成功の鍵になります。

ポイント

従業員数の規模によって5年TCOの大小が入れ替わるため、TCOと開発期間の両方で比べて判断します。

ノーコード活用の代替アプローチと進め方の注意点

勤怠管理システムを必要最小限の機能から始め、使い勝手を確認して段階的に機能拡張する流れを示す図。
小さな構成で確認してから、次の機能へ進む順序です。

フルスクラッチは自由度が高い一方、費用と期間の負担も大きくなります。近年は、中間的な代替案としてノーコード・ローコード開発も注目されています。

ノーコード開発なら、カスタマイズ性を一定程度保ちながら、独自の勤怠管理システムをフルスクラッチより低コストで構築できます。費用感と進め方も、あわせて押さえておきましょう。

ノーコード・ローコード活用のコストとハイブリッド

Bubbleなどのプラットフォームを使う場合、フルスクラッチに近い自由度を保ちつつ、費用を抑えられます。

  • 費用:初期100万〜300万円、サーバー・保守は月額1万〜3万円、5年約160万〜500万円。
  • フルスクラッチとの比較:5年約1,700万〜6,500万円に対して安く、人数が増えてもサーバー費のみの固定費です。
  • SaaSとの損益分岐:従業員数20名が目安で、50名以上ではノーコードのほうが圧倒的に安くなります。
  • ハイブリッド:標準機能はSaaSやノーコード、特殊ルールや基幹連携は個別開発にできます。

独自要件があり投資を抑えたい企業には、有力な選択肢になります。費用と柔軟性のバランスを取りながら対応範囲を分けることで、過剰投資を防げます。

MVPでのスモールスタートとスコープクリープへの注意

フルスクラッチでもノーコードでも、初めからすべての業務をシステム化しないことが大切です。

  1. 打刻・残業管理・有給管理など、必要最小限の機能(MVP)から始める。
  2. 実際の使い勝手を確認し、本当に必要な機能を見定める。
  3. 後から段階的に機能を拡張し、コストとリスクを抑える。

最小構成から始めると、早い段階で使い勝手を確かめながら投資できます。また、要件が膨らんでいくスコープクリープにも注意が必要です。

例外的な勤務や独自の休憩ルールを洗い出しきれないと、開発中に想定外のカスタマイズが発生します。その結果、予算オーバーが20万円発生したり、カスタマイズ費がかさんだりする失敗例があります。

見積もりでは、基本料金に含まれる範囲と追加費用の条件を厳密にすり合わせます。要件を凍結する時期も、あらかじめ明確にしておく必要があります。

凍結後の追加要望は、次のフェーズに回す規律を守ります。また、人事・労務担当者や現場管理者を早く巻き込み、就業ルールを洗い出しておく必要があります。

事前に就業ルールを確かめておくことが、スコープクリープを抑え、予算と期間内での開発につながります。

ポイント

フルスクラッチより費用を抑えたいなら、ノーコードやハイブリッドも候補になります。初めから全業務を作らず、MVPから段階的に広げると、予算や期間のずれを防ぎやすくなります。

まとめ

勤怠管理のフルスクラッチ開発について、SaaSとの違いや適する企業、独自ルールと法令対応、保守リスクを整理しました。あわせて、5年TCOや開発期間、ノーコードの代替案と進め方も扱いました。

フルスクラッチは、複雑な就業規則や36協定、基幹連携、高度なセキュリティ要件に向いています。一方で、5年TCOは約1,700万円から6,500万円です。

開発には半年から1年以上かかり、法改正への改修負担や技術負債のリスクもあります。そのため、標準的な勤務体系なら、SaaSで要件を満たせることが多くあります。

独自要件があり投資を抑えたい場合は、5年約160万円から500万円のノーコード開発も候補です。

いずれの手法でも、打刻・残業管理・有給管理のMVPから始め、就業ルールを早めに洗い出して範囲の拡大を防ぐことが、予算・期間内の開発につながります。また、既製品と独自開発の範囲を分け、複数の開発会社への相談と5年TCOの試算を通じて、自社に合う方式を判断します。

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会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。