勤怠管理システム開発の保守・運用費用・ランニングコストについて

勤怠管理システムの保守・運用費用は、導入形態や従業員規模、連携や機器の範囲によって変わり、1人あたり月額300円から年額100万円程度までの幅があります。

構築・刷新や運用費を見直す情報システム・人事労務の担当者が予算や稟議に使えるよう、方式別の費用と追加費用、5年TCOを整理します。

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勤怠管理システムの保守・運用費用の全体像

クラウド型SaaSの従業員数に応じた月額利用料と、オンプレミス型・パッケージ型の初期費用と保守費を左右で比べた図。
人数の増減が月額に響く方式と、初期費用・保守費が中心の方式を見分けられます。

ランニングコストは、導入形態によって費用の出方が変わります。クラウド型SaaSは初期投資を抑えられる一方、従業員数に応じた月額利用料が続く従量課金型です。

自社サーバーに構築するオンプレミス型やパッケージ型は、まとまった初期費用がかかります。稼働後は保守費が中心になり、従業員が増えても月額が積み上がりにくい固定費型です。

見積もりでは、月額利用料や保守費だけでなく、給与連携や打刻機器、カスタマイズに加え、法改正への対応費も確認します。とくに、これらを見落とすと、月額の安いSaaSでも初年度に想定外の出費が重なることがあります。

勤怠管理に固有の費用として、打刻を支える機器の維持費と、頻繁に改正される労働関連法令への対応費があります。前者には、ICカードリーダーや生体認証端末の故障や更新への備えが含まれます。後者には、労働基準法や36協定の運用ルール、社会保険料率の変更にともなう集計ロジックの見直しがあります。

勤怠管理システムは、勤務予定をもとに打刻を記録し、集計した労働時間を給与計算システムへ渡します。そのため、シフト管理や給与計算のシステムとの接続を維持する運用費も見込んでおく必要があります。

まず、導入形態ごとに費用の発生の仕方を把握することが、無理のない長期予算の出発点になります。ランニングコストは、毎月の利用料などの継続負担と、法改正や機器更新で数年に一度発生するスポット負担に分けると、予算を立てやすくなります。

クラウド型とオンプレミス型のコスト構造の違い

方式ごとの費用を比べると、初期費用と稼働後に続く負担の違いが見えてきます。

  • クラウド型SaaS:初期費用は無料から10万円程度で、その後は従量課金が続きます。
  • オンプレミス型・パッケージ型:初期費用は30万円から100万円以上が目安です。
  • 保守費用:オンプレミス型などで年30万円から100万円程度です。

クラウド型は、1ユーザーあたり月額300円から500円が標準的な相場です。サーバー運用や保守のほか、セキュリティ対策と法改正対応もベンダーが担うため、自社で維持管理する手間を抑えられます。

オンプレミス型やパッケージ型は、大規模では初期費用が数百万円になることもあります。保守費は月額換算で5万円から20万円程度で、システムの維持管理やバージョンアップ対応にかかります。

従業員が少ない間はクラウド型が割安でも、人数が増えると月額が積み上がります。そのため、一定規模を境に、オンプレミス型や固定費型のほうが割安になる場合があります。方式は、今後の従業員数の増減も踏まえて選びます。

従業員規模別の月額・年額の目安

クラウド型SaaSの月額費用は従業員数に比例するため、規模別の目安を先に押さえておくとよいでしょう。

  • 小規模:従業員10名から30名程度では、月額1万円から5万円程度が目安です。
  • 中規模:従業員50名から100名程度では、月額15,000円から30,000円程度です。
  • 大規模:数百名を超えると、月額や初期費用で100万円以上のケースもあります。

30名以下を無料で利用できるプランを提供するサービスもあります。なお、中規模の目安は、1ユーザーあたり月額300円で換算した金額です。

大規模ではボリュームディスカウントが効く場合があります。一方で、高度なセキュリティや入退室システムとの連携を追加すると、費用が増えることもあります。

初期費用無料のサービスでも、初期設定代行やデータ移行支援に5万円から20万円程度かかるのが一般的です。そのため、無料プランや最安プランだけで判断せず、必要な機能とサポートを含めた実質的な月額・年額で比べます。

ポイント

従業員数が今後どれだけ増えるかを見積もり前に決めておくと、クラウド型と固定費型のどちらが合うかを判断しやすくなります。

保守契約・法改正対応・バージョンアップ費用

勤怠管理は、他の業務システムと比べて法改正の影響を受けやすく、対応にかかる費用が長期コストを左右します。そのため、保守契約とバージョンアップ、法改正対応を、どの形態でどこまで負担するかを事前に確認しておく必要があります。

システム本体の保守契約・バージョンアップ費用

オンプレミス型やパッケージ型は、安定稼働を続けるための保守契約が欠かせません。

  • 保守費用:年30万円から100万円程度で、月額換算では5万円から20万円です。
  • 契約に含まれる対応:不具合修正、セキュリティパッチ、稼働監視、問い合わせ対応などです。
  • 追加費用:パッケージのメジャーバージョンアップで発生することがあります。

古いバージョンを使い続けると、サポート終了後に法改正へ追随できなくなるリスクがあります。

クラウド型SaaSの保守やバージョンアップは、ベンダーが継続して行い、月額利用料に含まれるのが一般的です。自社で保守要員を抱えずに済む点も含めて、保守費用が月額に織り込まれているかを比べます。

契約時には、保守の対応範囲と追加費用になる範囲を明確にしておくと、想定外の出費を防げます。

法改正対応のアップデート費用は、長期コストで見落とされやすい項目です。

  • 制度変更:36協定の上限規制や年5日の有給休暇取得義務などがあります。
  • 必要な見直し:勤怠の集計ロジックや帳票を改める必要が生じます。
  • 費用負担:自社開発やオンプレミス型では追加開発・保守費用がかかります。

労働関連法令は頻繁に改正され、働き方改革関連法による残業時間の上限規制や、社会保険料率の改定もその例です。フルスクラッチのシステムでは、対応を重ねるうちに仕様が複雑になり、運用が難しくなるケースもあります。

一方、クラウド型SaaSは、ベンダーが法改正に合わせて自動かつ無償でアップデートし、その対応費用は月額料金に含まれます。そのため、労務担当者が制度変更へ個別に対応する負担を抑えられます。

自社開発やオンプレミス型を選ぶ場合は、改正の頻度を見込んだうえで、改修費用を毎年の運用予算に含めます。

ポイント

保守契約の対応範囲と追加費用になる範囲を並べて確かめると、年額の比較がしやすくなります。法改正のたびに費用が増える契約かどうかも、あわせて確認しておくとよいでしょう。

給与連携・打刻機器・カスタマイズのコスト増要因

勤怠管理システムの追加費用として、給与連携、打刻機器、独自ルールのカスタマイズを3枚のパネルに分けた図。
見積もり時にこの3項目を個別に確認すると、追加費用の見落としを減らせます。

月額利用料や保守費とは別に、給与連携、打刻機器、独自ルールへのカスタマイズが費用を押し上げます。

これらは月額の見積書に表れにくい費用で、重なると、安価なSaaSでも初年度に数十万円から数百万円の増加につながります。

複数拠点への端末配備や既存システムとの連携は、導入時だけの費用とは限りません。さらに、端末の保守や連携先の更新にともなう再調整が、運用中にも発生します。

打刻機器(ICカード・生体認証端末)のハード保守費用

勤怠管理ならではの費用が、打刻を支えるハードウェアの導入費と保守費です。

  • 対象機器:ICカードリーダー、タイムレコーダー、生体認証機器などです。
  • スマートフォン・PC打刻:専用機器のコストを抑えられます。
  • 物理端末:なりすまし防止や現場環境によって必要な職場があります。

機器の導入費は5万円から50万円程度です。複数拠点に端末を置く場合は、端末代だけで数十万円が必要になり、拠点数が増えるほど端末コストも積み上がります。

購入後も、故障や更新、ファームウェアのアップデート、認証精度の低下への対応が続きます。生体認証端末は現場環境によって認証エラーや障害が起きやすいため、安定した打刻を保つための保守体制が欠かせません。

自社の打刻方式に応じて、機器の初期費用と保守費を運用予算に組み込みます。

給与連携・カスタマイズ機能追加時のコスト増要因

給与連携と独自ルールの再現では、設定や追加開発の費用が発生する場合があります。

  • 給与計算システムとのAPI連携:有償オプションの場合、設定に10万円から50万円程度かかります。
  • 独自ルールの追加開発:20万円から100万円超になるケースがあります。
  • 要件確認:基本設定で対応できるか、個別開発になるかを契約前に確認します。

追加開発の対象には、独自のシフトルール、複雑な残業計算、特殊な休憩の自動控除があります。

イレギュラーな勤務パターンは、要件定義の段階で洗い出しておく必要があります。洗い出しが不十分だと、稼働後に残業を正しく計算できない問題が見つかることがあり、その結果、想定外のカスタマイズで20万円ほど予算を超えた事例も報告されています。

契約前には、費用の内訳とベンダーの支援範囲を確かめておきます。初期設定とデータ移行、教育、保守が、それぞれどこまで含まれるかも見ておきます。

賃金額の計算や税・社会保険の処理は、給与計算システム側の役割です。一方、勤怠側は正確な労働時間データを渡すための集計と連携だけを担うようにすれば、開発範囲を広げすぎずに済みます。

ポイント

月額の見積もりに表れない機器、連携、カスタマイズは、要件定義の段階で一つずつ金額にしておくと、予算超過を防ぎやすくなります。

5年TCOで見る費用の抑え方

最小構成からの段階拡張として、小さく開始し、機能を見極め、契約を見直す3段階を矢印で示した図。
利用状況に合わせて順に確認すると、不要な機能への支出を抑えやすくなります。

コスト判断では、初期費用や月額だけでなく、3年から5年の総所有コスト(TCO)を試算します。

導入1年目はクラウド型SaaSが安価でも、従業員数が増えると従量課金が積み上がります。そのため長期では、オンプレミス型や固定費型と費用の大小が逆転することがあります。

利用規模拡大時のコストシミュレーション

5年間のTCOを規模別に試算すると、クラウド型SaaSと固定費型の損益分岐点を把握できます。

  • 20名規模:SaaSは約360万円、ノーコード受託開発は約290万円です。
  • 50名規模:SaaSは約900万円、固定費型の開発は約350万円です。
  • 100名規模:SaaSは約1,800万円、固定費型は約500万円です。

SaaSは従業員1人あたりの月額課金のため、人数に比例して費用が増えます。一方、固定費型はサーバーや保守費が中心のため、人数が増えても総額があまり変わりません。

従業員20名前後が損益分岐点とされ、それを超える組織では月額固定のシステムが有利になる傾向があります。また、現在の人数だけでなく、数年後の人員増加も織り込んで試算します。

最小構成からの段階拡張と契約・サポート範囲の見直し

必要最小限の機能から始め、運用状況に合わせて段階的に拡張すると、不要な支出を抑えやすくなります。

  • 小さく開始:打刻と労働時間集計などのコア機能から導入します。
  • 機能を見極める:無料トライアルや最小プランで、使い勝手と費用対効果を試せます。
  • 契約を見直す:人数に合うプランか、未使用のオプションがないかを確かめます。

必要な機能だけを追加すれば、使わない機能に月額を払い続ける無駄を避けられます。

契約内容とサポート範囲を年に一度棚卸しして、保守契約が実態に合うかを確認します。定期的に点検すると、ランニングコストの膨張を抑えられます。

月次の勤怠集計にかかっていた手作業の工数を人件費に換算し、削減効果とランニングコストを比べれば、費用対効果を数字で評価できます。

目先の安さだけで決めず、数年後の成長を見据えて料金体系を選びます。

ポイント

1年目の安さだけで選ぶと、従業員の増加に伴う費用の逆転を見落とします。想定する人員の伸びを前提に、3年から5年の総額で比べてください。

まとめ

勤怠管理システムの保守・運用費について、方式別や規模別の目安、保守と法改正対応、追加費用、5年TCOを整理しました。

クラウド型SaaSは1ユーザーあたり月額300円から500円が相場です。初期投資を抑えられ、法改正対応が月額に含まれる点が利点です。

一方、オンプレミス型は初期費用30万円から100万円以上、保守費は年30万円から100万円程度です。人数が増えても月額が積み上がりにくい固定費型です。

ICカードリーダーや生体認証端末は5万円から50万円、給与連携は10万円から50万円、独自ルールのカスタマイズは20万円から100万円超の場合があります。5年TCOでは従業員20名前後が損益分岐点となり、20名を超える組織では固定費型が有利になる傾向です。

発注する側は、従業員数の増減、必要な打刻方式、連携範囲を整理し、複数の開発会社やサービスから見積もりを取ります。初期費用だけでなく、数年単位の総額で比べることが欠かせません。

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会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。