勤怠管理システムを外注するには、労働法令・勤務形態・給与連携・現場運用を要件として整理し、そのうえで、RFP、契約、テスト、定着支援の順に段階的に進めていくのが基本の流れです。
- 勤務形態、打刻、休暇、残業、権限の決まりを整理する
- 法令や給与、人事、既存システムとの連携について決める
- RFP、契約、テスト、教育、運用の進め方を計画する
全体像は、こちらの記事で詳しく解説しています。
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勤怠管理システム開発の外注前に押さえるべき点
勤怠管理システムの外注を成功させるには、発注する前に何をどこまで準備すべきかを正確につかむことが第一歩です。
勤怠管理システムは、労働法令への準拠と給与計算システムとの正確な連携が求められます。そのため、発注側の事前準備は、他の業務システム開発以上に重要になります。
外注で失敗する典型的なパターン
勤怠管理システムの外注でよく見られる失敗を把握しておくと、同じ轍を踏まずに済みます。最も多いのは、就業規則の全体像を開発会社に伝えきれなかったケースです。本則だけでなく、フレックスタイム協定・36協定・育児介護休業規程・在宅勤務規程などの別規程や附則も対象になります。
これらを網羅しないまま要件定義を進めると、リリース後に「実際の就業規則に対応できていない」という致命的な問題が発生します。次に多いのは、給与計算システムとの連携仕様の確認が後回しになったケースです。
月次締め処理の直前になって連携データの形式が合わないことが分かり、大規模な修正が必要になった事例は少なくありません。また、現場担当者(一般従業員)が使いやすさの確認に加わらないまま開発が進み、操作性の問題でリリース後に定着しない失敗も頻発します。これらはいずれも、発注前の準備と体制設計によって防ぐことができます。
発注前に社内で整理すべき事項
①開発の目的と解決したい課題を明文化し、現行の勤怠管理の何が問題か、システム化で何を実現したいかを、経営層と人事担当者が合意しておきます。②就業規則と関連規程は、本則だけでなく別規程や附則、労使協定まで含めて集め、棚卸しします。③勤務形態の種類を整理し、固定時間・フレックス・シフト・裁量労働・テレワーク等の区分と人数を、それぞれ把握しておきます。
④連携が必要な外部システムは、給与計算・人事・入退室管理などの連携先ごとに一覧にし、そのAPIも確認しておきます。また、⑤プロジェクトの推進体制として、プロジェクトオーナーとプロジェクトマネージャーを置き、各部門のキーユーザーの選定も進めておきます。
⑥上限予算、希望リリース時期、月次給与処理への対応タイムラインを確認します。なかでも就業規則の棚卸しは、開発会社に依頼する前に社内で完了させておくことが理想です。
発注準備から契約までの流れ

発注前の準備から契約締結までの流れを体系的に進めると、発注後のトラブルを大きく減らせます。勤怠管理システム固有の注意点も含めて、各ステップを順に見ていきます。
要件の洗い出しと優先順位付け
発注前の要件洗い出しでは、必須機能、あったら良い機能、将来的に必要な機能を明確に区別して整理します。勤怠管理システムでは、まず打刻機能、勤務時間の自動集計、残業・有給の管理を必須機能として定義します。さらに、申請承認ワークフローと給与システムへのデータ連携も、外せない機能として扱います。
一方、シフト管理との統合や生体認証打刻、分析レポート・ダッシュボード、外国語対応は、優先度に応じて判断します。優先順位は、3つの観点で評価するのがおすすめです。3つの観点とは、業務インパクト(これがないと業務が回らないか)、法令対応上の必要性(違法リスクがあるか)、費用対効果(追加コストに見合う効果があるか)です。
優先度の低い機能は、フェーズ2以降に回します。そうすることで、初期開発費用を抑えながら、必要な機能から迅速にリリースできます。
複数社への相見積もりと評価
勤怠管理システム開発では、1〜2社だけでは費用の相場感・提案の質・対応力を比較できないため、必ず3社以上から見積もりを取ることをおすすめします。相見積もりでは、すべての会社に同じRFP(提案依頼書)を渡し、同じ条件で提案してもらいます。評価基準は5つ設け、各項目を点数化して比較することが有効です。
①勤怠管理システムの開発実績は、同業種や類似規模の実績があるかで見ます。②労務知識は、就業規則の複雑さを理解した提案が来ているかで確認します。③費用の妥当性と透明性は、見積もりの内訳が明確で作業範囲が明示されているかで判断します。
④給与計算システムとの連携経験は、連携先システムの実績があるかを問います。⑤コミュニケーション力は、提案時のレスポンスや説明の明確さで測ります。価格だけでなく「法令対応の完全性」を重視して選定することが、後のトラブル防止につながります。
契約形態の選び方と注意点
勤怠管理システム開発の契約は、主に「請負契約」と「準委任契約」の2種類です。違いは、報酬の払い方と、要件がどこまで固まっているかに表れます。
- 請負契約:成果物の納品に対して報酬を支払い、開発スコープ・品質基準・納期を明確に定めます。要件が固まり、特に計算ロジックが確定した場合に使われます。
- 準委任契約:開発作業の工数に対して報酬を支払います。要件が流動的なアジャイル開発を採る場合に選ばれます。
- フェーズ別の分割:要件定義・設計フェーズは準委任契約、開発・テストフェーズは請負契約に分ける形も一般的です。
契約書には、開発スコープ(対応する勤務形態・機能一覧)、納期、費用を記載し、変更管理のルールも加えます。勤怠管理システム特有の注意点として、「労働法改正への対応方針と費用負担」「月次処理時の緊急対応SLA」「給与計算システム連携のデータ形式変更時の対応ルール」を契約に明記しておくことが大切です。
RFP(提案依頼書)の書き方と注意点
RFP(提案依頼書)は、開発会社に正確な提案と見積もりを求めるための重要な文書です。勤怠管理システムのRFPでは、一般的な業務システムのRFPに加えて、労務や勤務管理に特有の情報を詳しく書くことが、質の高い提案を受けるうえで欠かせません。
勤怠管理システムRFPに含めるべき項目
①プロジェクトの背景と目的(なぜ今勤怠管理システムを構築・刷新するのか)を示します。②従業員規模と拠点情報では、従業員数・事業所数・テレワーク勤務の割合を伝えます。③勤務形態の種類と対応人数は、固定時間・フレックス・シフト・裁量労働・テレワーク等の区分ごとに整理します。
④希望する打刻方式は、PCブラウザ・スマートフォンアプリ・ICカード・生体認証・GPS打刻の組み合わせで示します。⑤申請承認ワークフローは、その種類と承認ルートの複雑さ(残業・有給・特別休暇・テレワーク申請等)を伝えます。⑥36協定管理の要件は、アラート基準・通知対象・管理レポートの内容を定めます。
⑦連携が必要な外部システムは、給与計算・人事・入退室管理等とAPI仕様の確認状況とあわせて一覧にします。⑧クラウド型かオンプレミス型かの希望と、その理由も書きます。⑨希望スケジュールと予算感、⑩選定基準と提案に含めてほしい内容を、あわせて伝えます。
RFP作成で陥りやすい落とし穴
勤怠管理システムのRFPで最も多い落とし穴は、「例外処理・特殊ルールの記載漏れ」です。「うちは特殊なルールはない」と思っていても、就業規則を詳しく確認すると、多くの場合ルールが見つかります。たとえば、「深夜残業が翌日の所定時間にかかった場合の端数処理」「有給の半日取得・時間単位取得への対応」「法定休日と所定休日の区別と割増率の違い」などです。
これらが記載されていないと、見積もりに対応工数が含まれず、後から追加費用が発生します。さらに、連携仕様をRFPに記載しなかったため、各社の提案で連携の進め方が大きく異なり、比較できなくなるケースも多いです。
RFPは詳細すぎても開発会社の創造性を制限しますが、勤怠管理では、計算ロジックと連携要件を具体的に書くことが大切です。
開発中の進捗管理と品質確保

発注と契約が済み、プロジェクトが始まった後も、発注側は関わり続ける必要があります。開発会社任せにすると、「給与計算の結果が合わない」「現場での操作性が悪い」といった問題を、リリース直前まで発見できないリスクがあります。そのため、適切なプロジェクト管理体制を整え、開発中から発注側が積極的に関わることが成功の鍵です。
プロジェクト管理体制の構築
プロジェクト管理体制は、発注側(クライアント)に三層を置くことをおすすめします。三層とは、「プロジェクトオーナー(人事部門長または経営層)」「プロジェクトマネージャー(IT部門または人事部門リーダー)」「キーユーザー(人事担当者・各部門管理職の代表)」です。
特に人事担当者は、勤怠管理の業務知識を持つ重要なステークホルダーです。そのため、要件定義から設計・テストの各フェーズで積極的に関わってもらうことが、品質向上につながります。
開発側とは、定例ミーティング(週次)を設定して、進捗報告・課題共有・仕様確認を定期的に行う仕組みを作ります。計算ロジックの仕様変更が発生した場合は、「変更管理プロセス」を必ず経ることで、スコープクリープを防げます。このプロセスでは、変更内容の記録、給与計算への影響確認、追加費用、スケジュール変更の合意を行います。
テスト・品質管理のポイント
勤怠管理システムのテストは、開発会社任せにせず、発注側も積極的に関わることが大切です。特に「計算ロジックの検証」と「ユーザー受け入れテスト(UAT)」は、発注側が主体になって進めるべきテストです。
計算ロジックの検証では、すべての勤務形態と例外処理のパターンについて、実際の就業規則に基づく正しい計算結果と一致するかを、人事担当者が確認します。加えて、過去の給与計算の実績データを使い、新システムの計算結果と突き合わせるのも有効です。
UATでは、現場の従業員代表・管理職代表・人事担当者が、月初から月末まで、残業申請から承認まで、有給申請から取得管理までといった業務シナリオを通して操作を確認します。マルチデバイス対応の確認では、PC・スマートフォン・タブレット各端末での操作確認を行います。さらに、高負荷時のパフォーマンステストも、月次締め処理時の同時アクセスを想定して、忘れずに実施します。
リリース後の定着支援と運用体制

勤怠管理システムは全従業員が毎日使うため、ゴールは「リリース」ではなく、「全従業員が日常的に正確に使えるようになること」です。リリース直後は現場で混乱が起きやすいため、丁寧な定着支援が欠かせません。
従業員向けトレーニングとマニュアル整備
定着支援では、まず操作マニュアルとFAQを整えます。マニュアルは、一般従業員向け、管理職向け、人事担当者向けの三種類を用途別に作るのがおすすめです。一般従業員向けでは打刻方法・申請方法・有給残日数の確認方法を、管理職向けでは承認操作・部下の勤怠確認・残業時間アラート対応を扱います。
人事担当者向けでは、月次集計・勤怠データエクスポート・マスタ管理・トラブル対応を扱います。操作トレーニングは、リリース前に全従業員向けの説明会(全社・部門単位・個別フォロー)を開き、スマートフォン打刻やICカード打刻など打刻デバイスの実機操作を体験させます。特にITリテラシーが低い従業員が多い職場では、現場での個別フォローアップが重要です。
リリース直後の1〜2ヶ月は、ヘルプデスク(問い合わせ窓口)を設け、操作に関する問い合わせ、打刻漏れ、申請エラーに迅速に対応できる体制を整えます。
運用体制と継続的な改善サイクル
リリース後の運用では、社内の勤怠管理システム担当者(システム管理者)を明確に定めます。担当者には、マスタデータの管理(従業員登録・部署変更・異動対応・勤務形態変更)、月次集計処理の管理、不具合発生時の一次対応を担ってもらいます。
開発会社との保守契約では、法改正対応の範囲・費用・対応期限を明確にしておきます。年1〜2回の就業規則改定や労働法令改正に確実に対応することが、長期的なリスク管理につながります。
リリース後には、現場から操作性の改善要望や機能追加要望が上がるのが自然です。定期的に要望を集めて優先度を付けながら、改善開発のサイクルを回すことで、システムの価値を継続的に高められます。加えて、riplaはリリース後の定着支援・法改正対応・継続的な改善サポートも、一気通貫で提供しています。
勤怠管理システム開発の相談先
riplaは、コンサルティングから開発まで一気通貫で支援できる勤怠管理システム開発会社です。RFP作成の支援や要件定義・設計・実装・テストに加え、給与システム連携、定着支援、法改正対応まで、プロジェクト全体を責任を持ってサポートします。
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株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。
