AWS導入・構築の必要機能や標準機能の一覧について

AWSで業務システムを動かす機能は、次の四つの層で整理できます。

  • コンピュート・ストレージ:処理とデータ保存を支える機能
  • 可用性・拡張性:負荷変動や障害に備える機能
  • API・DevOps:開発と運用を効率化する機能
  • ネットワーク・セキュリティ:接続と保護を管理する機能

AWSには200を超えるサービスがあり、名前を並べて見ても、自社に必須の機能と任意の機能の違いは見えてきません。全体像がまだ分からない方は、まずAWS導入・構築の完全ガイドからお読みください。

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コンピューティングとストレージの基本機能

AWS基本機能の図解。業務システムを支えるEC2、RDS、S3を注釈で示しています。
EC2とRDSが動かし、S3がためる役割をアイコンの配置で表しています。

AWS導入の出発点となるのが、コンピューティング(計算資源)とストレージ(保存領域)の基本機能です。どんな業務システムにも必要になる「サーバーとディスク」に相当する機能で、AWSでは必要なときに必要なだけ確保し、使った分だけ支払う形で利用できます。

このため、自前でハードウェアを購入・保有する必要がなくなる点が、クラウドの最も基本的な価値です。

仮想サーバー(EC2)による計算資源の確保機能

コンピューティングの中核を担うのが、仮想サーバーであるAmazon EC2です。EC2は、用途に応じてCPU・メモリの異なるインスタンスタイプを選べる機能で、Webアプリケーションのアプリケーションサーバーとして広く使われます。

一次データでは、Linuxの2コア・約8GBメモリ相当(t3.large)の従量課金が月$78.3、3年契約のリザーブドインスタンスなら月$40.4まで下がるとされています。特に、常時稼働させるサーバーでは、こうした長期契約による割引を活用するのが定石です。また、インスタンスタイプの選定では、まず標準的なタイプで構築し、実際の負荷を見ながら調整するのが現実的です。

最初から大きなスペックを確保すると無駄なコストになり、逆に小さすぎると性能不足に陥ります。AWSはインスタンスタイプの変更が容易なため、運用しながら最適なサイズに寄せていく「ライトサイジング」が機能として成り立ちます。この柔軟性こそ、固定スペックのオンプレミスにはないクラウドならではの機能的な強みです。

マネージドデータベースとストレージの保存機能

業務システムのデータを保存する機能として欠かせないのが、マネージドデータベースのAmazon RDSやAuroraです。マネージドとは、データベースサーバーの構築・バックアップ・冗長化・パッチ適用といった運用作業をAWSが代行してくれる、という意味です。これにより、自社はデータベースの運用管理から解放され、アプリケーション開発に集中できます。

一次データでは、OSSのデータベース(4コア・16GB〜)の従量課金がAWSで月$654とされています。また、ファイルや画像、ログなどの大容量データを保存する機能としては、Amazon S3(オブジェクトストレージ)が標準的に使われます。S3は事実上無制限の容量を持ち、保存量に応じた従量課金で、可用性・耐久性が非常に高いのが特徴です。

EC2とRDSが「動かす機能」を担い、S3が「ためる機能」を担う、という役割分担を理解しておくと、AWSの基本構成が見通しやすくなります。さらに、これらの基本機能を組み合わせることで、Web3層構成(Webサーバー・アプリケーションサーバー・データベース)という業務システムの王道アーキテクチャを構築できます。

ポイント

業務システムの土台は、計算資源のEC2と、データを保存するRDSやS3です。迷ったら標準的なインスタンスから始め、実際の負荷を見て調整するのが現実的です。

自動スケーリングとマルチAZによる高可用性機能

高可用性を支える負荷分散、自動的なサーバー増減、マルチAZ構成を3枚のカードで示した図解です。
負荷の変化にはサーバー数、障害には配置先を分けて備えます。

業務システムを安定して動かすうえで、基本機能の次に重要になるのが、可用性を高める機能群です。可用性とは「システムが止まらずに動き続ける度合い」のことで、ビジネスの根幹を担うシステムほど高い可用性が求められます。

こうした要件に応えるため、AWSは、負荷に応じてサーバー数を増減させる自動スケーリングと、障害に強い構成を作るマルチAZという機能を、標準的な仕組みとして提供しています。

負荷分散と自動スケーリングの機能

アクセスが集中したときにシステムを落とさないための機能が、ELB(ロードバランサー)による負荷分散と、Auto Scalingによる自動的なサーバー増減です。ELBは、複数のサーバーへリクエストを振り分けることで、1台に負荷が偏るのを防ぎます。さらに、Auto Scalingは、CPU使用率などの指標を監視し、負荷が高まれば自動でサーバーを増やし、落ち着けば減らす機能です。

これにより、繁忙期だけ自動で増強し、閑散期はコストを抑える運用が実現します。この負荷分散と自動スケーリングは、一次データで中規模構成(EC2・RDS各2台+WAF+ELBの高可用性構成、構築費用50万〜60万円)として位置づけられる、業務システムの標準的な可用性レベルを支える機能です。

加えて、WAF(Web Application Firewall)を組み合わせれば、不正アクセスやサイバー攻撃からシステムを守るセキュリティ機能も加わります。可用性とセキュリティは、本番運用する業務システムでは切り離せない要件であり、AWSはこれらを標準サービスの組み合わせで実現できる点が大きな利点です。

マルチAZによる障害耐性の確保機能

AWSの可用性機能で根幹をなすのが、マルチAZ(マルチアベイラビリティゾーン)構成です。AZとは、物理的に離れた独立したデータセンター群のことで、AWSのリージョンは複数のAZで構成されています。システムを複数のAZに分散配置しておけば、片方のAZで障害が起きても、もう片方で稼働を継続できます。

これにより、データセンターレベルの障害に対する耐性を確保できます。重要なのは、こうした耐性を「自社でデータセンターを複数借りて冗長化する」のではなく、AWSの標準機能の設定として実現できる点です。また、RDSのようなマネージドデータベースでは、マルチAZを設定一つで有効化でき、待機系のデータベースが別AZに自動で用意されます。

さらに高い可用性が求められる大規模システムでは、EFS(共有ファイルストレージ)やElastiCache(高速キャッシュ)を加えた構成(一次データで70万円以上が目安)へ発展させます。可用性をどこまで高めるかは、業務の止められなさ(許容できる停止時間)に応じて、機能の組み合わせで調整していくことになります。

ポイント

ビジネスの根幹を担うシステムほど高い可用性が必要になり、負荷の変動にはAuto Scaling、障害への備えにはマルチAZを使うのが基本です。

サーバーレスとAPI連携の機能

EC2のように常時起動するサーバーを管理せずにシステムを動かす機能が、サーバーレスです。その最大の特徴は、アクセスがあったときだけ動き、課金されることです。

AWSはLambda(イベント駆動でコードを実行する機能)、API Gateway(APIを公開・管理する機能)、DynamoDB(サーバーレスなNoSQLデータベース)といったサービスを揃えています。これらを組み合わせると、サーバー管理から解放された軽量なシステムを構築できます。

イベント駆動のサーバーレス実行機能

Lambdaは、ファイルがアップロードされた、APIが呼ばれた、定時になった、といったイベントをきっかけにコードを実行する機能です。サーバーの起動・停止・スケーリングをAWSが自動で行うため、開発者は処理の中身を書くことだけに集中できます。この機能は、軽量な業務処理やデータの変換・加工、定期バッチ、通知の送信といった用途に向いています。

一次データでは、コンピューティングの料金は100万GB秒あたり$16.7とされ、API呼び出しは月100万回まで無料です。超過分も100万回あたり$0.2とされ、小規模な利用ではコストがほとんどかからない料金体系です。

常時起動のサーバーを立てるほどではない処理も、必要なときだけ安価に動かせます。システムの一部をLambdaに切り出すことで、全体のコストと運用負荷を下げられます。一方で、長時間かかる重い処理や、応答速度をミリ秒単位で詰める必要がある処理には向かないため、適用範囲の見極めが機能活用の鍵になります。

API Gatewayによる連携・公開機能

システム同士をつなぐ、あるいは外部にAPIを提供する機能を担うのが、API Gatewayです。API Gatewayは、APIのエンドポイントを作成し、認証、流量制限、ログ記録といった管理機能を提供します。

これとLambda、DynamoDBを組み合わせれば、サーバーを一切管理せずにAPIを公開でき、アクセス少〜中なら月数百円から運用できる、と一次データでも示されています。さらに、API連携の機能は、自社の複数システムをつなぐ内部連携にも、取引先や外部サービスと連携する外部連携にも使えます。

たとえば、受注と在庫のシステムをAPIでつなぐ、SaaSのデータを取り込む、自社の機能を外部に提供するといった用途で、業務の自動化や事業の拡張を支えます。AWSは、こうしたAPI連携を安価かつ堅牢に実現する部品が揃っています。そのため、システムを単体で完結させず「つなげて使う」設計がとりやすいのが、機能面の特長です。

ポイント

アクセスがあったときだけ動く処理は、サーバーレスで切り出すと費用と運用負荷を下げられます。API連携は、社内外のシステムをつなぐ部品として使います。

CI/CD・IaC・監視など開発運用を支える機能

開発運用を支える機能を3枚のカードで示し、自動テストと反映、構成のコード管理、指標の収集とアラートを並べています。
変更を自動化し、構成を再現し、異常の兆候を捉える並びです。

AWSの機能は、システムを動かすためのものだけではありません。システムを継続的に開発・改善し、安定して運用し続けるための機能群も、業務システムには欠かせません。

コードの変更を自動でテスト・反映するCI/CD、インフラ構成をコードで管理するIaC、システムの状態を見張る監視は、構築後の運用品質を左右する機能です。

CI/CDとIaCによる開発・構築の自動化機能

リリースや構築を手作業で行うと、ミスが入り込みやすくなります。その手作業を自動化の仕組みに置き換えるのが、CI/CDとIaCです。

  • CI/CD(継続的インテグレーション/継続的デリバリー):コードを変更するたびに自動でテストを実行し、問題がなければ本番環境へ反映する仕組み
  • IaC(Infrastructure as Code):サーバーやネットワークといったインフラ構成を、手作業のクリックではなくコードで定義・管理する仕組み

CI/CDを使えば、手作業でのリリースに伴うミスを減らし、改善のスピードを上げられます。AWS上では、CodePipelineなどのサービスやGitHub Actionsと組み合わせて、CI/CDパイプラインを構築できます。なお、一次データでは、CI/CD・DevOps系のSaaSは月数万円程度が相場とされています。CI/CDとIaCはセットで、変化に強く再現性の高い開発運用体制を支えます。

IaCでは、AWSのCloudFormationや外部ツールのTerraformを使えば、同じ構成を何度でも正確に再現でき、構成変更の履歴も追えます。さらに、内製化やCCoEを進めるうえで基盤となる重要な機能で、構成を属人化させず組織の資産として管理できるようにします。

監視・ログ収集による運用品質の維持機能

システムを安定運用するには、監視機能が欠かせません。AWSにはCloudWatchという標準の監視サービスがあり、CPU使用率、メモリ、ネットワークI/O、エラー率などの指標を収集し、しきい値を超えたらアラートを出すことができます。これにより、障害の予兆を早期に検知し、利用者に影響が出る前に手を打てます。

ログを一元的に収集・検索する機能も備わっており、問題発生時の原因究明を支えます。より高度な監視を求める場合は、Datadogのような外部ツールを併用し、一次データでは、Datadogの相場はホストあたり月$15〜$23とされています。また、監視機能は運用代行サービスとも密接に関わり、AWS運用代行(監視・障害一次対応)は初期・月額とも数万円程度が目安です。

これらの開発運用機能まで含めて設計することで、AWSは「作って終わり」ではなく「作り続け、止めずに運用し続ける」ための基盤になります。riplaはフルスクラッチ受託とクラウド構築・運用の伴走の立場から、こうした運用機能の設計と内製化支援までを一貫して手がけています。

ポイント

CI/CD・IaC・監視は、構築後の運用品質を左右する機能です。変更の自動化と構成の再現性は内製化の基盤になり、障害の予兆は監視で早く把握できます。

ネットワーク・セキュリティ・コスト管理の機能

業務システムをAWSで安全に運用するには、ここまでの機能に加えて、ネットワークを分離・保護する機能、不正アクセスを防ぐセキュリティ機能、そして費用をコントロールするコスト管理機能が欠かせません。これらは派手さこそないものの、本番運用するシステムでは必須の機能群であり、要件として最初から織り込んでおくべき領域です。

ネットワーク分離とアクセス制御の機能

AWSでシステムを安全に配置するための基盤が、VPC(Virtual Private Cloud)という仮想ネットワーク機能です。VPCを使えば、自社専用の閉じたネットワーク空間を作り、その中にサーバーやデータベースを配置できます。外部に公開すべきWebサーバーと、外部からは直接触れさせたくないデータベースを、サブネットで分離して配置することで、攻撃面を最小化できます。

これが、クラウド上のセキュリティ設計の土台になります。アクセス制御の機能としては、IAM(Identity and Access Management)が中核を担います。IAMは、誰がどのリソースにどこまでアクセスできるかを細かく制御する機能で、最小権限の原則に基づいた設計が可能です。

さらに、前述のWAF(Web Application Firewall)と組み合わせれば、ネットワークレベルとアプリケーションレベルの両面で防御を固められます。これらの機能は、ゼロトラストの考え方を実装するうえでも重要で、規制業種のコンプライアンス対応でも要となります。

コスト可視化と上限管理の機能

従量課金のクラウドで欠かせないのが、コストの状況を把握して管理する機能です。AWSには、利用状況を分析するCost Explorerや、予算を設定して超過時にアラートを出すBudgetsといった機能が標準で用意されています。これらを使えば、どのサービスにいくらかかっているかが分かり、想定外の費用増を早期に検知できます。

また、データ転送量の急増のように見落とされがちな隠れコストも、これらの機能で確認できます。コスト管理機能は、コストを抑える最適化の機能とも連動します。常時稼働が確定したリソースは、リザーブドインスタンス(一次データではt3.largeが従量$78.3から3年契約で$40.4へ)で固定的に安くし、サポートプランも用途に応じて選びます。

なお、一次データでは、ビジネス向けサポートプランは月額最低$100(年$1,200)からとされています。これらの機能を運用に組み込むことで、AWSの従量課金を「気づいたら高い」ではなく「計画的にコントロールできる」状態に保てます。こうした仕組みを使いこなせるかが、クラウド運用の成熟度を左右します。

ポイント

本番運用では、ネットワークの分離とアクセス制御、コスト管理を、最初から要件に含めておきます。公開範囲はVPC、権限はIAM、費用は予算設定で押さえます。

まとめ

AWS導入・構築で押さえる機能は、大きく四つの層で整理できます。基本機能はEC2・RDS・S3が、可用性とセキュリティはELB・Auto Scaling・マルチAZが担います。サーバーレスとAPI連携はLambda・API Gateway・DynamoDBが、開発運用はCI/CD・IaC・CloudWatch監視が担います。

これらを業務の要件に応じて組み合わせることで、小規模なシングル構成(20万〜30万円)から大規模な高可用性構成(70万円以上)まで、必要十分なシステムを構築できます。

機能選びで大切なのは、サービス名を網羅することではなく、「自社の業務システムにどのレベルの可用性・自動化・運用品質が必要か」を起点に、それを実現する機能を選ぶことです。過剰な機能はコストの無駄になり、逆に不足する機能は運用の不安定さを招きます。

riplaはフルスクラッチ受託とクラウド構築・運用の伴走を組み合わせ、業務要件から逆算した機能選定と、内製化を見据えた構成設計を支援します。全体像の確認には、あらためて完全ガイドをご活用ください。

会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。