AWS導入/構築の保守・運用費用・ランニングコストについて

AWS導入後の費用は、初期構築費の10〜20%程度の年間保守費用と、毎月の利用料を合計したものになります。その金額は、利用量、保守体制、割引の適用によって変わります。全体像は、AWS導入・構築の完全ガイドもご覧ください。

▼全体ガイドの記事
・AWS導入・構築の完全ガイド

AWS導入後にかかる費用の全体像

AWSの運用費用は、インフラ利用料と保守運用費用の2つに分けると、どこで費用が生じているのかが見えてきます。

AWSは初期投資を小さく始められる一方で、稼働中は両方の費用が毎月発生します。そのため、導入前から月々のランニングコストを試算しておくと、予算超過を防ぎやすくなります。

インフラ利用料と保守運用費用の違い

インフラ利用料と保守運用費用は、請求の対象も変動の仕方も違います。

  • インフラ利用料:利用したAWSリソースの量に応じて決まる従量課金
  • 保守運用費用:人が監視や更新を行い、安定稼働を支える費用

インフラ利用料は、EC2やRDS、S3などの利用分をAWSへ支払う仕組みです。CloudFrontやデータ転送も、使った分が請求の対象になります。アクセスが増えれば利用量も増えるため、支払額は月ごとに変わります。

保守運用では、監視や障害時の一次対応、OSやミドルウェアの更新を行います。加えて、IAMポリシーの見直しやバックアップ確認、性能チューニングも保守作業に含まれます。

インフラ利用料とは違い、保守運用費用は利用量に左右されにくいため、体制を維持するための固定費に近い性質があります。

発注時には、見積書にインフラ利用料と保守運用費用の一方または両方が含まれているかを確認しておきます。

年間保守費用の目安(開発費の10〜20%)と内訳

年間保守費用は初期開発費との比率で考えると分かりやすく、インフラ利用料とは別に見積もります。

  • 年間の目安:初期の開発・構築費用の10〜20%程度
  • 500万円の例:年間50万〜100万円、月額4万〜8万円程度
  • 別途必要な費用:毎月かかるEC2やRDSのインフラ利用料

保守費用には、CloudWatchによる監視と障害検知後の一次対応が含まれます。加えて、CloudTrailを使った監査やセキュリティ確認、脆弱性対応も必要になります。

OSやミドルウェアのパッチ適用、定期バックアップ、IAM権限の洗い出しも、保守の作業に含まれます。さらに、VPC構成の見直しや、AWS側のサービス仕様変更への対応も内訳に入ります。

保守作業は目に見えにくいものの、放置すると事故や障害が長引く原因になります。24時間365日の稼働が必要な業務システムでは、営業時間内だけの運用に比べて監視費用が増えます。だからこそ、必要な可用性を見極め、それに合わせて保守レベルと予算を設計することが重要です。

ポイント

見積もりを比べるときは、年間保守費用の目安(初期構築費の10〜20%)とインフラ利用料を分けて並べると判断しやすくなります。見積書がどちらを含むかは、比較の前に押さえておきたい点です。

AWSインフラ利用料の内訳とコスト構造

EC2、RDS、S3、Lambdaの課金要素を4枚のカードで示した図。
サービスごとに、料金を左右する利用条件が異なります。

AWSのインフラ利用料は、サービスごとの利用量で決まります。特に、多くのシステムではEC2やRDSなどの主要サービスが費用の大半を占めます。まず、課金単位を把握することが、コスト管理の前提になります。

EC2/RDS/Lambda/S3等、従量課金の主要コスト要因

主要サービスは、どの要素で課金されるかを見ると整理しやすくなります。項目ごとに課金の基準が違う点も、あわせて押さえておきます。

  • EC2:インスタンスタイプ(CPU・メモリの性能)と稼働時間で課金される仮想サーバー
  • RDS:サイズ、ストレージ、バックアップ、マルチAZの構成で料金が変わります
  • S3:保存量、リクエスト回数、データ転送量に応じた課金
  • Lambda:実行回数と実行時間に応じた費用
  • 通信・基盤:転送量のほか、VPC、IAM、Route 53も費用に影響します

常時稼働の業務システムでは、EC2の稼働時間がそのまま請求額に響きます。RDSは可用性を高める構成を選ぶほど料金が上がるため、必要な可用性と合わせて見積もります。

S3は単価が比較的低いものの、大量データを長期保存すると費用が積み上がります。また、Lambdaはアクセスがないときに費用が発生せず、断続的な処理では常時稼働のEC2より安くなることがあります。

インターネットへのアウトバウンド通信やCloudFront(CDN)を経由した配信は、トラフィック増加で費用がかさみます。各サービスの合計は毎月変わるため、どのサービスが費用の主因になっているかを継続的に把握しておきます。

コンテナで組む場合は、ECSやEKSのほか、管理負担を減らせるFargateも選択肢になります。ワークロードに合ったサービスを選ぶことそのものが、コスト構造を決める要素になります。

AWSサポートプラン(Business/Enterprise)と外部監視ツールの費用

AWSの利用料とは別に、サポートプランと監視ツールの費用も見込んでおきます。

  • サポートの種類:Basicは無料で、ほかにDeveloper、Business、Enterpriseがあります
  • Business:月額100ドル程度からで、利用額に応じて増える料金
  • Enterprise:大規模システム向けで、月額15,000ドル以上が目安
  • 外部監視SaaS:ホストあたり月額15〜23ドル程度が目安

業務システムでは、Business以上を選ぶのが一般的です。Businessの実際の料金は、AWS利用額に一定の料率を掛けて算出されます。

24時間365日の技術サポートや短い応答時間が必要な場合は、Enterpriseが選択肢になります。Enterpriseでは、専任のテクニカルアカウントマネージャーによる支援も受けられます。また、有料プランにすると、障害時の支援に加えて、Trusted Advisorで確認できるコスト・セキュリティ推奨の範囲も広がります。

CloudWatchだけでは要件を満たせない場合は、Datadogなどの外部監視ツールを併用します。監視対象のサーバー数が増えるほど、外部監視SaaSの費用も積み上がります。

CloudWatchとSNSの通知構成だけで完結するなら、追加コストを抑えられます。そのうえで、監視費用は、システムの重要度と必要な可用性のバランスで判断します。

ポイント

毎月の請求額を見直すときは、EC2やRDSのように常時稼働する要素から確認すると、金額への影響を把握しやすくなります。

保守運用体制の費用(内製 vs 外部委託)

AWSの人的な保守費用は、社内で運用するか、外部の運用代行へ委託するかで変わります。そのため、システム規模や必要な可用性、社内人材の状況を踏まえて体制を選ぶことになります。

内製運用のメリットと24時間監視体制の人件費課題

内製運用では、社内に知識を蓄積しながら外部への支払いを抑えられる可能性があります。

  • 長期的な利点:運用ノウハウが社内に蓄積されること
  • 必要な知識:ネットワーク、セキュリティ、監視、コスト管理
  • 24時間監視:夜間や休日のシフトによって人件費が膨らむこと
  • 通知の仕組み:CloudWatchとSNSで、メールやSlackへ通知できる構成

EC2、RDS、IAMの構成を知る社内エンジニアがいれば、障害対応や変更を素早く行えます。また、事業の変化に合わせて柔軟に運用を変えられる点も、内製のメリットです。

一方で、幅広い知識を持つ人材を採用して育てるには、時間とコストがかかります。さらに、24時間365日の即応には複数人のシフト勤務が必要になり、そのぶん人件費も大きくなります。

少人数の運用チームでは、特定の担当者に仕事が偏る属人化も進みやすくなります。そのため、人件費は給与だけで判断せず、シフトや教育・育成、文書整備も含めて評価することが大切です。

少人数でも監視は回せますが、夜間の即応まで求めると費用が跳ね上がります。だからこそ、どこまで即応するかを先に決めておくと、人件費の見通しが立ちます。

外部委託・運用代行のメリットと注意点

外部委託は、専門人材の採用や24時間監視の負担を自社で抱えずに済む方法です。

  • 費用の始まり:初期費用と月額費用が数万円程度から始まるサービスもある
  • 主な対応:監視、一次対応、更新代行など
  • 注意点:知識が社内に残りにくいことと、契約範囲外で追加費用が生じる場合があること
  • 選定基準:監視範囲、応答時間、AWSパートナーとしての実績

一般的なサービスには、24時間365日の監視、担当SE、障害時の自動復旧スクリプトが含まれます。さらに、OSやミドルウェアのセキュリティ更新を代行するサービスもあります。

夜間シフトを自社で組むより費用対効果が高く、専門エンジニアがいない企業にも現実的な方法です。一方で、委託に任せきりにすると、構成や運用ノウハウが社内に蓄積されません。そのため、内製への切り替えや委託先の変更が難しくなる点にも注意が必要です。

障害対応や構成変更が契約の範囲外になると、追加費用や対応時間の制限が生じます。このため、障害の切り分けや仕様変更への対応範囲、緊急連絡先、応答時間は、契約前に確認しておきます。

AWSパートナー認定の実績があるかも、委託先を選ぶ判断材料になります。そのうえで、何を任せ、何を自社で管理するかを決めてから、契約内容を精査します。

ポイント

内製と外部委託の判断は、夜間や休日の即応をどこまで求めるかで大きく変わります。委託する場合は、どこまでを任せるかを先に決めておくと、契約内容を比べやすくなります。

AWS特有のコスト最適化手法

ランニングコストの周囲に、長期利用の割引、稼働時間調整、Cost Explorer、棚卸しを配置した図。
割引の適用と利用状況の点検を組み合わせて考えます。

AWSは、割引制度と管理ツールを使うことで、ランニングコストを下げられます。なかでも、割引の適用と利用状況の見直しを組み合わせることが、請求額を抑える鍵になります。

リザーブドインスタンス・Savings Plansによる割引

常時稼働するリソースには、長期利用を前提にした割引が有効です。

  • 契約期間:1年または3年の利用を約束して受ける割引
  • 割引幅:支払方法などによって、オンデマンド比で最大72%程度
  • 制度の違い:RIは型に紐づき、Savings Plansは利用額をコミットする仕組み
  • 使い分け:安定した負荷は割引、変動する負荷はオンデマンドで対応

常時稼働が前提のEC2やRDSでは、割引を適用するかどうかで、年間の利用料が大きく変わります。

リザーブドインスタンスは特定のインスタンスタイプに紐づく割引です。Savings PlansはEC2、Fargate、Lambdaにまたがって利用金額をコミットできる点が特徴です。

変動が大きい負荷はオンデマンドで、バッチ処理にはSpotインスタンスを組み合わせる方法もあります。

長期コミットでは、稼働をやめても約束した分の料金が発生する点に注意が必要です。そのため、まず数か月はオンデマンドで運用し、安定した利用が確かめられたリソースから適用します。

稼働時間調整・AWS Cost Explorerによる継続的な棚卸し

割引制度を使うだけでなく、不要な稼働を減らし、利用状況を定期的に確認します。

  • 停止設定:不要な時間帯にEC2やRDSを自動で止める設定
  • 削減幅:対象リソースのコストを最大50%程度まで減らせる場合がある
  • Cost Explorer:サービス別の費用と増加傾向の把握
  • 棚卸し:不要なEBSや古いスナップショットの洗い出し
  • 継続確認:月額利用料を10〜30%程度減らせるケース

開発・検証環境や日中だけ使う社内システムは、夜間や休日に停止します。停止中は課金されません。そのうえで、LambdaやEventBridgeを使えば起動と停止を自動化できます。

Cost Explorerでは、費用の推移と増加傾向を時系列で把握できます。そのうえで、起動しっぱなしのインスタンス、未使用のEBS、不要な古いスナップショットを減らしていきます。

Trusted Advisorを併用すると、コスト、セキュリティ、性能の改善点を自動で確認できます。また、コスト最適化は一度きりで終えず、利用状況を定期的に見直す習慣にします。

ポイント

割引の対象は、常時稼働が続くリソースかどうかで選ぶと分かりやすくなります。変動の大きい負荷は、割引よりもオンデマンドのまま残すほうが合っています。

ランニングコストを抑えるための発注・体制づくりのポイント

社内で担う業務、外部へ任せる領域、分担を決める観点を3層で示した図。
担当範囲は人材とシステムの重要度に沿って決めます。

ランニングコストは、技術だけでなく運用体制と発注先の選び方でも変わります。そのため、内製と外部委託を組み合わせながら、人材とパートナーの適性を見極めます。

ハイブリッド運用体制(コア業務は内製、専門領域は外部委託)

内製と外部委託を組み合わせると、費用と運用品質のバランスを取りやすくなります。

  • 社内で担う業務:日常運用と、業務理解が欠かせない構成変更
  • 外部へ任せる領域:高度な設計、セキュリティ、24時間監視
  • 得られる効果:知識を残しながら、夜間シフトの費用を抑えられること
  • 設計の要点:人材状況とシステムの重要度による線引き

社内には運用ノウハウが残り、事業の変化に対応する機動力も保てます。一方で、夜間シフトや、AWS専門人材の採用・育成費用は外部へ切り出せます。

また、大規模なアーキテクチャ見直しやWell-Architectedの改善を、外部に任せる方法もあります。深夜帯の障害一次対応も、専門パートナーへの委託対象にできます。

すべてを内製すると人件費と属人化が増え、すべてを任せると知識と費用の管理が難しくなります。だからこそ、コア業務は社内で握り、専門領域と時間外対応を外部へ出す形が現実的です。

AWS認定資格保有エンジニアと実績あるパートナーの見極め

担い手がAWSにどれだけ精通しているかは、長期的なコスト最適化に影響します。

  • 認定資格:設計、運用、セキュリティの知識を判断する材料
  • 初級・中級:月額25万〜50万円、50万〜80万円が目安
  • 上級人材:シニアやアーキテクトは月額80万〜120万円以上が目安
  • パートナー:認定、類似実績、コストを下げる提案の有無

対象となる資格には、Solutions Architect(Associate/Professional)があります。ほかにも、DevOps Engineer Professional、SysOps Administrator、Security Specialtyが挙げられます。

資格保有者は、AWSの設計・運用・セキュリティに関する体系的な知識を持つ目安になります。一方で、設計経験が豊富なアーキテクトは需要が高く、単価も上がります。AWS認定資格と設計経験がある人材では、月額100万円を超えるケースもあります。

AWSは、国内企業のパブリッククラウド導入で長年高いシェアを維持してきました。シェアが高いぶんパートナーも多いため、選ぶ際はAWSの認定だけでなく構築・運用実績も確認します。

料金だけで決めず、類似システムの実績と最適化提案の範囲を比べます。そのうえで、リザーブドインスタンスやCost Explorerまで提案できるかも確認します。

適切なスキルを持つ担い手を選ぶことは、目先の単価以上の費用対効果につながります。

ポイント

内製と外部委託の線引きは、コア業務を社内に残すかで考えると整理しやすくなります。専門領域と夜間対応だけを外に出せば、知識を残しつつ人件費を抑えられます。

まとめ

AWSの費用は、従量課金のインフラ利用料と保守運用費用の二軸で考えます。年間保守費用は、初期構築費の10〜20%程度が目安です。

EC2、RDS、Lambda、S3では、課金の基準がサービスごとに違うため、それぞれの課金構造を確認しておきます。そのうえで、サポートプラン、外部監視、内製と外部委託の体制費用も見積もりに含めます。

コストを抑えるには、長期コミット割引、停止設定、Cost Explorerを活用します。また、コア業務を内製し、専門領域と24時間監視を外部委託する方法もあります。

AWSは初期投資を小さく始められる一方で、稼働中は費用が発生し続けます。そのため、導入時から運用費用を含む予算計画を立てることが、安定稼働と適正コストにつながります。具体的な試算は、自社の規模と利用量を前提に、複数のAWSパートナーへ見積もりを依頼して進めます。

▼全体ガイドの記事
・AWS導入・構築の完全ガイド

会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

もし、システム開発やプロダクト開発に関するご要望がございましたら、お気軽にお問い合わせください。

・サービス概要資料のURLはこちら >>>
・お問合せページのURLはこちら >>>
・お役立ち資料のURLはこちら >>>

執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。