債券取引システムの発注・外注は、画面や開発費だけで決めず、注文・約定・評価・利払・償還・決済・会計をつなぐ業務範囲と5年総保有コストで委託先を選ぶことが成功の近道です。
証券会社、銀行、信託銀行、運用会社、債券を発行・販売する事業会社では、銘柄情報や約定、保有残高、評価損益が複数のシステムやExcelに分散し、担当者の経験に依存した照合や例外処理が残りやすいです。この記事では、債券取引システムを発注する際の発注形態の選択、RFPと要件整理、契約形態、2026年時点の費用相場、委託先の選定、見積比較、移行と受入テストまでを順番に解説します。
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・債券取引システム開発の完全ガイド
債券取引システムを発注する前に押さえる全体像

債券取引システムは、債券の販売画面だけを指すものではありません。国債、地方債、社債、外国債券などの注文・約定を起点に、保有、評価、利払・償還、照合、決済、会計、リスク管理までを支える市場系システムです。発注前にどこまでを対象にするかを決めないと、見積の前提が会社ごとに変わり、後から追加開発が膨らみます。
債券と債権を区別し、対象商品を定義する
債券取引システムが扱うのは、国債・地方債・社債・外国債券などの有価証券です。銘柄コード、発行体、格付、クーポン、利払日、償還日、残存期間、通貨、経過利息、取得価額、評価価格などを正しく管理します。一方、債権管理システムは売掛金や貸付金など回収すべき権利を管理する仕組みです。RFPの冒頭に「対象は有価証券としての債券」と記載し、債権管理との混同を防ぐ必要があります。
対象商品は、国内債券、外国債券、物価連動債、変動利付債、レポ・現先、デジタル社債・STなどに分けて整理します。STはブロックチェーンや社債原簿の管理を含む場合があり、通常の振替国債・社債の取引基盤とは制度と接続方式が異なります。SBI証券が2026年の債券ST案内で説明するように、ibet for Finを前提にした発行・管理は別方式として扱い、同じ見積枠に無理に押し込まないことが大切です。
フロント・ミドル・バックの役割を分ける
フロントでは注文受付、RFQ、気配・価格・利回り表示、売買執行、約定登録、配分、訂正・取消、取引相手やブローカーの管理を行います。ミドルではポジション、簿価、未収利息、実現損益・評価損益、デュレーション、DV01、信用スプレッド、VaR、取引限度・与信限度を管理します。バックでは約定照合、決済指図、受渡、フェイル、会計仕訳、規制・社内帳票、監査証跡を扱います。
すべての機能を一つの製品に集約する必要はありません。フロントは専門パッケージ、決済と会計は既存基盤、銘柄マスターと市場データ連携は共通サービスという分割も可能です。ただし、取引ID、銘柄コード、評価基準日、訂正履歴、勘定区分をどのシステムが正本として持つかは発注者が決めます。ここを曖昧にすると、残高は合っていても評価損益や会計仕訳が一致しない事態になります。
債券取引システムの発注形態はどれがよいですか?

結論として、標準業務を早く稼働させたい場合はクラウド型・SaaS型や金融パッケージ型、独自の取引執行や評価・リスク計算が競争力に直結する場合はスクラッチ開発またはパッケージ併用が向いています。発注形態は「自社開発か外注か」の二択ではなく、標準機能、追加開発、外部接続、運用保守をどこまで委託するかで決めるものです。
クラウド・SaaS型を選ぶケース
クラウド型は、サーバー調達や拠点追加の負担を抑え、対象商品を絞って段階導入したい企業に適しています。伊藤忠テクノソリューションズは2025年9月、市場系システム「C-GOAT」をクラウド型で提供開始し、年間2,400万円(税抜き)からの価格を公表しています(出典: 伊藤忠テクノソリューションズ「C-GOAT提供開始」、2025年)。この価格は個別見積の代わりではありませんが、金融市場系の仕組みを一般的な業務SaaSと同じ数百万円規模で想定しないための公開価格アンカーになります。
一方で、利用料に初期設定、保振・日銀・カストディ接続、市場データ、データ移行、監視、災害対策、制度改定対応が含まれるとは限りません。データ保管場所、暗号化、特権ID、バックアップ、障害時の復旧時間、サービス終了時のデータ返却形式を契約前に確認し、年額料金と別請求の範囲を見積書に分けて記載してもらいます。
金融パッケージ型を選ぶケース
金融パッケージ型は、約定、証券残高、決済、会計、報告など共通性の高い機能を活用し、自社の差分だけを追加開発したい場合に適しています。野村総合研究所のT-STAR/GVは、株式・債券売買の約定管理、照合、ポートフォリオ、債券未収利息、利金・償還などをカバーすると説明されています(出典: 野村総合研究所「T-STAR/GV」、2026年参照)。機関投資家や運用会社で、フロントからバックまでのデータを標準化したい場合に比較候補になります。
選定時は製品名や導入社数だけでなく、自社の銘柄・約定・価格データを使ってFit & Gapを行います。差分を「標準設定」「周辺連携」「個別開発」「業務変更」「対象外」に分けると、見積の根拠が明確になります。標準機能を大きく改変すると、バージョンアップのたびに回帰テストと改修が必要になるため、業務を変える範囲も含めて比較することが大切です。
スクラッチ開発・ハイブリッドを選ぶケース
独自商品の評価ロジック、高頻度の注文処理、特殊なリスク指標、既存基幹との深い連携が競争力の源であれば、スクラッチ開発を検討します。ただし、金利カーブ、休日、時差、通貨、利払、償還、訂正・取消、決済フェイルまでを一から作ると、開発だけでなくテストと制度改定対応の負荷も大きくなります。
現実的には、標準パッケージで約定・決済・会計を持ち、独自の評価・リスク計算やデータ分析をAPIで追加するハイブリッドが有力です。将来のベンダー切り替えに備え、API仕様、データモデル、ログの取得方法、データ所有権を契約と設計書に残します。独自性の高い部分だけを内製・個別開発し、制度対応の共通部分は専門ベンダーに任せると、費用と継続性のバランスを取りやすくなります。
債券取引システムを発注・外注する進め方

外注の成否は、開発会社に相談する前の現状整理で大きく決まります。業務部門だけでなく、リスク管理、経理、決済、コンプライアンス、情報システム、監査の関係者を初期から集め、どの数字を誰が承認するのかまで合意します。現状診断、RFP作成、提案比較、契約、設計・開発、移行・受入、運用定着という段階に分けると、発注者側の判断事項が見えやすくなります。
現行業務とデータの正本を棚卸しする
最初に、銘柄マスター、注文・約定、残高・簿価、評価・損益、利払・償還、決済・照合、会計、リスク、帳票・監査の単位で、現行システム名、担当部署、入力元、出力先、処理時刻、手作業、例外処理を一覧にします。月末や決算日にだけ行う処理、約定訂正後の再計算、価格データが欠損した場合の代替値は、通常の業務フロー図から漏れやすい項目です。
現行データから、国内債券の代表銘柄、外国債券、クーポンが不規則な銘柄、繰上償還、休日をまたぐ取引、訂正済み約定、決済フェイルをサンプルとして選びます。ベンダーのデモ用データではなく、自社で実際に発生したデータを使うことで、経過利息や評価価格の計算差異を早い段階で発見できます。
RFPに機能・接続・非機能を具体的に書く
RFPには、対象商品、銘柄数、年間取引件数、ピーク時の処理量、利用者数、拠点数、通貨、業務時間、データ移行期間を記載します。保振・日銀、カストディ、ブローカー、市場データ、会計・勘定系、顧客管理、認証基盤との接続先も明記し、API、ファイル、画面入力のどれを想定するかをそろえます。国内上場国債では、JPXが普通取引の決済期日を原則T+1、日本銀行の国債振替決済制度による決済と案内しています(出典: 日本取引所グループ「売買制度(国債)」、2026年参照)。そのため、約定後の照合・指図・フェイル対応を画面要件だけでなく時間要件として書きます。
非機能要件には、可用性、RTO・RPO、ピーク性能、監査ログ保存期間、権限分離、暗号化、脆弱性対応、再委託、データ所在、障害連絡、災害切替、サービス終了時のデータ返却を含めます。金融庁は2025年7月に金融分野のサイバーセキュリティガイドラインを一部改正しているため(出典: 金融庁「金融分野におけるサイバーセキュリティに関するガイドラインの一部改正」、2025年)、委託先のセキュリティ体制と第三者リスク管理も提案比較の対象にします。
実データを使ったFit & GapとPoCを行う
提案を受けた後は、ベンダーが用意したきれいなサンプルだけで判断しないことが重要です。代表的な銘柄と約定を5〜10件程度選び、注文登録から約定、評価、利払・償還、会計、決済指図、帳票までを実際に動かしてもらいます。特に、経過利息の再計算、価格欠損、二重約定、訂正・取消、決済先の不一致を試験シナリオに含めます。
シンプレクスのSimplexSTREAMは、フロントからミドル、バックを横断し、経過利息などの計算項目を自動化する統合型債券管理ソリューションとして公開されています(出典: シンプレクス「SimplexSTREAM」、2026年参照)。このような公開情報を起点に、自社の計算基準、情報ベンダー、既存会計仕訳との差を質問票に落とし込みます。画面が動くことではなく、同じ評価基準日と価格から残高・損益・会計が再現できることを合格基準にします。
債券取引システムの契約形態はどう選びますか?

契約形態は、要件の確定度と成果物を発注者がどこまで定義できるかで決めます。画面開発だけを見て請負契約にするのではなく、要件定義、パッケージ設定、個別開発、運用保守、制度改定を分けて考えることが大切です。契約書には、責任分界、変更管理、受入基準、知的財産、再委託、障害時の連絡と復旧、データ返却を具体的に記載します。
要件が固まった部分は請負契約にする
請負契約は、合意した成果物を完成させ、検査・受入を経て対価を支払う形態です。要件、画面・API仕様、データ移行仕様、テスト項目、納品物、受入条件が明確な機能であれば、予算と納期を管理しやすくなります。たとえば、国内債券の約定登録、決済状況照会、日次帳票など、業務と成果物を具体化できる範囲が候補になります。
ただし、金融システムでは外部制度や既存データの調査で要件が変わることがあります。未確定のまま請負範囲を広く設定すると、変更要求が増え、受託者がリスクを見込んだ高い見積を提示したり、発注者が必要な変更を諦めたりする可能性があります。変更時の単価、追加工数、納期影響、承認者、瑕疵・保証の範囲をあらかじめ合意しておきます。
調査・要件定義は準委任契約にする
準委任契約は、専門家が調査、設計、助言、開発支援などの業務を行い、作業時間や体制に応じて対価を支払う形態です。現行システムの棚卸し、業務整理、RFP作成支援、Fit & Gap、移行計画、セキュリティ評価など、結果を一つの完成品として定義しにくい工程に向いています。発注者が業務判断を保持しつつ、金融業務とシステムの両方に詳しい人材を補う場合にも使いやすい契約です。
準委任では、作業時間を使ったことだけを成果としないよう、週次の成果物、課題一覧、意思決定記録、設計レビュー、次工程の完了条件を定めます。受託者に丸投げすると、要件整理が進んでいるように見えても、発注者の承認や業務部門の合意が残ることがあります。責任者、会議体、報告頻度、情報不足時のエスカレーションを契約と計画書に残します。
要件定義は準委任、開発は請負に分ける
実務では、要件定義・基本設計を準委任で進め、仕様と受入条件が固まった後に開発・移行を請負へ切り替える組み合わせが現実的です。クラウドやパッケージの標準設定は月額・年額利用契約、追加開発は請負、運用監視と制度改定は保守・準委任という分け方もできます。各契約の境界で、どの成果物が次契約の入力になるかを明記すると、責任の押し付け合いを防ぎやすくなります。
契約方式を決める際は、価格だけでなく、要件変更への柔軟性、遅延時の責任、検収のしやすさ、ベンダー交代のしやすさを比較します。システムの中核データやAPI仕様を受託者だけが管理する契約にすると、将来の保守や更改で切り替え費用が高くなります。ソースコード、設定値、データ辞書、テストデータ、ログの閲覧・返却条件も発注時に確認します。
債券取引システムの費用相場とコストの内訳

債券取引システムには、ベンダー横断の公的な全国平均価格や一律の定価がありません。費用は、対象商品、取引量、銘柄数、拠点数、接続先、データライセンス、移行量、24時間運用、監査・セキュリティ要件で変わります。以下は、CTCの公開価格と金融業務システムの機能範囲を基にした企画段階の推定であり、発注前には必ず同じ条件で個別見積を取得します。
発注方式別の初期費用と期間の目安
クラウド・SaaSの標準設定で対象商品と接続先を絞る場合、初期費用は1,000万〜5,000万円程度、導入期間は3〜9か月が企画上の目安です。パッケージに会計・市場データ・決済連携を加える場合は5,000万〜2億円程度、9〜18か月程度を見込みます。パッケージを大幅にカスタマイズする場合は1.5億〜5億円程度、18〜30か月程度、フロントからバックまでのフルスクラッチは3億〜10億円超、24〜48か月程度になる可能性があります。
これらは債券取引システム単体の統計ではなく、公開価格と類似する金融システムの構成から置いた推定レンジです。たとえば年額2,400万円からのサービスを5年間使う場合、利用料だけで1億2,000万円になります。初期費用が1,000万円のクラウド提案でも、接続、移行、データ、保守、制度改定を加えると、初期費用が高いパッケージと総額が逆転する場合があります。
5年TCOに含める費用項目
初期費用は、企画・要件定義、基本設計、設定、追加開発、API・ファイル連携、データ移行、テスト、教育、マニュアル、リリース支援に分解します。継続費用には、クラウド基盤、ライセンス、保守、監視、ヘルプデスク、脆弱性対応、制度改定、市場データ、バックアップ、災害対策、追加ユーザー・拠点・銘柄の料金を含めます。見積書で「一式」とされている項目は、対象範囲と数量を確認します。
さらに、業務担当者が照合や帳票作成に費やす時間、決済フェイルの調査、監査資料の作成、障害による業務停止もTCOに含めます。導入前後で、年間の手作業時間、照合差異の件数、決算処理日数、障害復旧時間、制度改定時の改修日数を測れるようにすると、価格だけでは見えない投資効果を説明しやすくなります。
見積書は工程・接続・保守の単位で確認する
見積を比較するときは、要件定義・基本設計、アプリ設定・開発、外部接続、データ移行、テスト、教育、並行稼働、運用監視、セキュリティ評価、制度改定対応に分けて金額と工数を確認します。特に、保振・日銀・カストディ・市場データとの接続、利払・償還と経過利息の再計算、約定訂正後の会計・リスク連動、災害切替試験は、別工程として価格と責任者を明示してもらいます。
安い見積がよいとは限りません。要件定義を極端に短くしていたり、データ移行や受入テストを発注者作業としていたり、制度改定を別途見積としていたりする可能性があります。同じRFPに対して、標準機能、追加開発、除外、前提条件、リスク予備費、保守の範囲を同じ様式で回答してもらうと、見積の比較可能性が上がります。
債券取引システムの委託先選定と見積比較のポイント

委託先は、会社の知名度や開発言語ではなく、債券業務のどの領域に強いか、標準と個別開発の境界を説明できるか、制度対応とデータ返却を誰が担うかで比較します。候補には同じRFPを配布し、提案書の内容だけでなく、質問の質、前提条件の出し方、リスクの伝え方、現場責任者の経験、稼働後の支援体制を確認します。
債券固有の実績と業務知識を確認する
提案会社には、債券の注文・約定だけでなく、経過利息、利払・償還、評価価格、利回り、決済照合、フェイル、会計連携までの実績を確認します。守秘義務のため顧客名を出せない場合でも、対象商品、利用者数、拠点数、取引量、担当範囲、稼働後の保守年数を匿名化して説明できるかを聞きます。株式システムの実績だけで「債券にも対応できる」と判断せず、債券固有の計算・制度・例外処理を質問します。
決済を重視する場合は、東証コンピュータシステムの保振日銀接続パッケージのように、JASDECや日銀とのSTP、ISO 20022準拠の電文、決済照合の不一致検知を公開しているサービスも比較の観点になります(出典: 東証コンピュータシステム「保振日銀接続パッケージ」、2026年参照)。候補会社の提案でも、約定から指図、照合差異の解消までの責任分界を図で示してもらいます。
見積比較は金額・期間・前提を同時に見る
見積比較では、初期費用、年額・月額、開発期間、稼働開始日、対象機能、除外項目、追加変更単価、保守料、SLAを一つの比較表にまとめます。価格が低い提案でも、外国債券、レポ、リアルタイムリスク、データ移行、並行稼働、教育が除外されていれば、実際の総額と期間は大きくなります。反対に、金額が高い提案でも標準機能と制度対応が含まれ、5年TCOと業務リスクが低い場合があります。
評価軸は、業務適合性、データ・接続適合性、非機能・セキュリティ、開発体制、運用保守、費用・契約の6項目に分けます。各項目を5点満点で採点する場合も、採点結果だけで決めず、0点や1点になった要件を経営判断へ上げます。特に、T+1の時間制約、災害時の復旧、再委託先の管理、データを返却できる形式は、価格差より優先すべき場合があります。
セキュリティと運用の責任分界を確認する
金融機関向けの債券取引システムでは、認証・権限分離、特権ID管理、操作ログ、暗号化、脆弱性診断、バックアップ、監視、障害訓練、災害切替を機能要件と同じ重さで確認します。クラウドを選ぶ場合は、クラウド事業者、アプリ開発会社、運用会社、自社のどこが各対策を担うかを表にします。再委託先、海外拠点、データの保管場所、インシデント時の報告時間も契約に含めます。
金融庁のガイドラインや自社の監査基準に照らし、委託先の第三者評価、監査報告、脆弱性対応の期限、ログ保存期間、復旧訓練の実施頻度を聞きます。障害が起きたときに「製品の問題」「クラウドの問題」「外部接続の問題」と責任が分散すると復旧が遅れるため、障害受付の一本化、初動、切り分け、代替運用、復旧確認の手順を受入前に試験します。
外注後の移行・受入テストを成功させる方法

発注先が決まった後は、開発の進捗だけでなく、データと業務結果が正しくつながるかを管理します。債券取引システムは、画面の動作確認だけでは品質を判断できません。旧システムと新システムの残高、評価損益、未収利息、利払・償還、会計仕訳、決済状況を同じ基準日で照合することが重要です。
移行対象と並行照合の範囲を決める
移行対象は、銘柄マスター、過去取引、保有残高、簿価、未収利息、評価価格、利払・償還履歴、会計仕訳、取引相手、監査ログに分けます。過去データをすべて移すのか、参照用に別保管するのか、法定・監査上の保存期間はどれくらいかを決めます。銘柄コードの名寄せ、通貨・日付・休日カレンダーの変換、評価基準日の違いは移行事故につながりやすい項目です。
並行稼働では、残高の合計だけでなく、取引単位の約定、評価価格、経過利息、評価損益、利払額、決済ステータス、訂正後データを日次で照合します。差異が出た場合に、どのデータを正とし、誰が原因を判定し、いつまでに修正するかを決めます。並行照合の終了条件を「大きな問題がない」ではなく、差異件数、金額、未解決課題の件数で定量化します。
正常系と異常系を受入条件に含める
受入テストでは、注文、約定、評価、利払・償還、決済、会計、帳票を一連の業務シナリオで確認します。正常系に加えて、価格欠損、重複約定、誤った銘柄コード、約定訂正、二重送信防止、通信断、決済フェイル、権限剥奪、バックアップ復元、災害切替を含めます。各シナリオで、画面の結果だけでなく、外部電文、監査ログ、会計仕訳、通知、再実行の結果を確認します。
受入条件は、業務部門、経理、決済、リスク管理、情報システム、監査が共同で承認します。発注者側がテストデータと期待結果を用意し、受託者が実行と不具合修正を担うなど、役割を分けることも有効です。稼働後に制度改定や新商品が追加されるため、受入完了をゴールにせず、運用KPIと改善会議、保守の優先順位を引き継ぎます。
稼働後のSLAと制度改定対応を決める
運用契約では、受付時間、重要度ごとの初動時間、復旧目標、代替運用、月次報告、障害の再発防止、脆弱性対応、バックアップ確認、災害訓練の頻度を定めます。市場データの遅延や誤配信、外部接続の停止、制度改定による計算変更は、通常のアプリ不具合とは異なるため、誰が情報を収集し、誰が影響範囲を判断し、いつリリースするかを明記します。
保守費用は、単なる問い合わせ対応だけでなく、OS・ミドルウェア更新、セキュリティパッチ、制度改定、外部電文変更、評価ロジックの修正、データ補正、性能改善を含むか確認します。5年後の更改やベンダー交代に備え、データを標準形式で返却する条件、移行支援の単価、設計書・設定値・テスト資産の引き渡しも契約に入れておくと、長期的な依存を抑えられます。
よくある質問(FAQ)

債券取引システムの発注では、費用、期間、契約、既存システムとの接続に関する質問が多く寄せられます。ここでは、発注前に特に確認しておきたい疑問へ直接回答します。
債券取引システムの開発費用は最低いくらですか?
公開情報だけで一律の最低額は決められませんが、標準設定を中心とするクラウド型でも初期1,000万〜5,000万円程度を企画上の目安にします。CTCには年間2,400万円(税抜き)からの市場系クラウドの公開例がありますが、接続、移行、データ、保守を含む総額は個別条件で変わります。RFPで対象範囲をそろえ、初期費用ではなく5年TCOで比較することが重要です。
債券取引システムの外注は請負と準委任のどちらがよいですか?
要件と成果物が固まっている開発・設定は請負、現状診断・要件定義・Fit & Gapなど不確実性が高い工程は準委任が向いています。実務では、要件定義を準委任、仕様確定後の開発を請負、稼働後の監視・制度改定を保守契約に分ける方法が使いやすいです。契約の境界、変更時の費用、検収、障害時の責任を明確にすることが大切です。
パッケージとスクラッチ開発はどう選びますか?
標準的な約定・決済・会計・報告を早く安定させたい場合は、金融パッケージやクラウド型が候補です。独自の評価・リスク計算、注文執行、既存基盤との連携が競争力に直結する場合は、パッケージ併用やスクラッチを検討します。実データでFit & Gapを行い、標準設定、個別開発、業務変更、対象外を分けてから判断すると、過剰な作り込みを防げます。
発注前のRFPには何を書けばよいですか?
対象商品・拠点・通貨・銘柄数・取引量・利用者数、フロント・ミドル・バックの対象範囲、既存システムと外部接続先、移行データ、業務時間、T+1に関わる締め時刻を記載します。さらに、RTO・RPO、監査ログ、権限分離、脆弱性対応、再委託、SLA、データ所有権、契約終了時の返却条件も必要です。代表的な銘柄と約定、訂正、価格欠損、決済フェイルのテストケースを添付すると、提案の比較精度が上がります。
まとめ

債券取引システムの発注・外注では、まず債券と債権を区別し、対象商品とフロント・ミドル・バックの範囲を決めます。そのうえで、クラウド・SaaS、金融パッケージ、スクラッチ、ハイブリッドの特徴を比較し、自社の競争力と標準化したい業務を切り分けます。
RFPには機能だけでなく、保振・日銀・カストディ・市場データ・会計との接続、T+1の締め時刻、経過利息・利払・償還、照合差異、決済フェイル、RTO・RPO、セキュリティ、再委託、データ返却を記載します。見積は初期費用の安さではなく、接続・移行・保守・制度改定・業務停止リスクを含む5年TCOで比較します。
契約は、要件定義を準委任、仕様確定後の開発を請負、稼働後の監視や制度改定を保守契約に分ける方法が現実的です。実データを使ったFit & Gap、異常系を含む受入テスト、旧新システムの並行照合、障害・災害時の責任分界まで確認してから委託先を決めると、債券取引システムの発注を長期運用につなげやすくなります。
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会社紹介
株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。
