繁殖管理システム開発の進め方/やり方/流れや方法/手法/工程/手順

繁殖管理システムの開発は、紙やExcelの記録を画面に置き換えるだけでなく、発情の見逃しを減らし、授精や分娩後の対応を次の行動につなげる業務改善です。

進め方は、要件整理から定着までの6フェーズです。費用や見積もり、PoCの確認も、この流れに沿って見ていきます。

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・繁殖管理システム開発の完全ガイド

繁殖管理システム開発の全体像

繁殖管理システムの全体像を整理するイメージ

繁殖管理システムは、個体台帳を起点に、同じ個体IDで記録を追跡する仕組みです。発情から分娩までの繁殖イベントに加え、治療、子牛の育成、淘汰・出荷までを対象にします。

大切なのは、記録を蓄積するだけでなく、それを次の行動に結びつけることです。具体的には、「今日、誰が、どの個体に、何をするか」をカレンダーや通知で示し、対応結果を再び履歴へ戻すことが、開発のゴールです。

繁殖管理システムで管理する情報

最低限、耳標番号などの個体識別情報と、品種・性別・生年月日を管理します。母系・父系、飼養区画、所有者も管理します。そこへ、発情開始、授精日、精液・種雄牛、授精師を時系列で追加します。

さらに、妊娠鑑定と再授精、分娩予定日の記録も追加します。出産や治療の経過も、個体ごとに追えるように残します。

  • 分娩結果:出産の結果を、個体ごとに時系列で残す
  • 流産・不受胎:妊娠に至らなかった場合の経過と結果
  • 治療・ワクチン:治療やワクチンの内容と日付

分娩予定日の登録にとどめず、未授精の個体やリピートブリーダー、分娩後一定期間内に授精がない個体を条件検索できるようにすると、担当者の経験だけに頼らない運用になります。

対象が豚や養鶏の場合は、牛向けと同じ名称の機能でも設計が変わります。まず、対象畜種の繁殖サイクルと群・個体の識別単位を決め、そのうえで疾病・衛生記録や分娩・産卵の単位を整理します。牛向け製品の画面を、そのまま採用しない判断も欠かせません。

最初に決める開発範囲

開発範囲は、「個体台帳だけ」「繁殖イベントと予定通知まで」「センサー連携まで」「獣医師・JA・会計などの外部連携まで」の4段階に分けると整理しやすいです。夜間の発情・分娩監視が課題なら、センサーが有効です。一方で、入力が滞っている牧場では、まず個体IDとイベント記録を正しく揃えるほうが先です。

AI検知を先に発注すると、元データの欠損やセンサー未装着が原因で、使われない機能になりやすいです。そこで、最初の目的をKPIに置き換えてから機能を決めます。

農林水産省は、GPS、RFID、加速度計、体重計などを組み合わせた個体・健康・繁殖管理の活用を紹介しています(出典:農林水産省「ICTの活用を検討している方へ」)。ただし、センサーは観察を支援するもので、授精や治療の判断を自動で確定するものではありません。通知後の確認者と記録の残し方まで設計し、技術と業務を一体で考えます。

ポイント

繁殖管理システムは、記録を次の行動につなげる仕組みとして考えます。個体IDでつなぐ範囲と、通知後に誰が動くかを先に決めておくと、開発の方向がぶれにくくなります。

繁殖管理システム開発の進め方・6フェーズ

繁殖管理システムの開発フェーズを進めるイメージ

6フェーズは、要件整理とPoCで現場の入力・通信・通知を確かめながら進みます。その過程で設計に戻り、小さく繰り返す場面も含みます。

生物の繁殖サイクルや補助事業の時期があるため、日程は開発会社の都合よりも、発情から分娩までの実データが取れる期間に合わせて決めます。パイロット計画にも、その期間を組み込みます。

フェーズ1:要件整理と現場業務・KPIの定義

最初は、経営者だけでなく、現場作業者、繁殖担当、獣医師、授精師、JA・自治体の担当者など、データを入力・参照する人を集めて進めます。

朝の見回りから発情発見、授精依頼、妊娠鑑定までを、実際に歩いて確認します。さらに、分娩前後、治療、出荷までの流れも追います。そのうえで、「いつ、どの端末で、どの情報を見て、誰へ引き継ぐか」を業務フローにまとめます。

要件定義書には、必須項目と将来項目を分けて記載します。必須の例は、個体IDの重複防止、授精・妊娠鑑定・分娩の履歴、予定通知です。加えて、検索、CSV出力、役割別権限、紙・Excelからの初期移行も挙げられます。

KPIは受胎率だけに絞らず、ベースラインを取って測定します。対象は、初回授精までの日数、空胎日数、分娩間隔、授精回数です。さらに、分娩事故、見回り時間、未入力件数も測定します。

要件整理では、次の8項目を確認します。

  1. 対象畜種・頭数・拠点
  2. 個体または群の識別方法
  3. 現行の紙・Excel・既存製品
  4. 通信圏外・停電・放牧の有無
  5. 通知を受ける担当者
  6. 外部連携先
  7. 目標KPIと測定期間
  8. データの所有者と解約時の返却方法

この8項目が決まらないまま見積を取ると、後から追加費用が発生しやすくなります。

フェーズ2:同じ条件での製品・開発会社の選定

候補は、機能の数より課題との適合で絞ります。総合型・発情検知型・分娩監視型・組織向けの4タイプに分けて比べます。

  • 個体台帳と経営分析まで必要な場合:総合牛群管理が候補です。
  • 発情兆候を強化する場合:行動モニタリングが候補です。
  • 分娩事故を減らす場合:分娩監視が候補です。
  • JAや自治体が複数の生産者を横断管理する場合:組織向け台帳を選びます。

比較では、「検知率」だけで順位を付けず、通知後の対応フローと自社牧場での実証値を確認します。選定質問票には、次の項目を入れます。

  • 対象と料金:対象畜種、頭数課金の単位
  • 現場での操作:スマートフォン対応、手袋での入力、オフライン仮保存
  • センサーと通信:センサーの装着方式、親機・受信局、通信料、電池交換
  • データと連携:耳標変更、データ移行、CSV・API、獣医師や授精師との共有
  • 契約と支援:無料トライアル、現地支援、障害時の連絡先、5年総額

2026年7月にはデザミスがU-motionのイヤタグセンサーを繁殖牛にも対応させました(出典:デザミス株式会社「U-motionイヤタグセンサー、繁殖牛への対応を開始」)。こうした機能更新があるため、比較記事や過去の営業資料だけでなく、契約時点の仕様を確認します。

開発会社を選ぶ場合は、次の2点を見ます。

  • 担当者の知識:畜産業務を理解する担当者がいるか
  • 支援の範囲:要件定義から運用まで一気通貫で支援できるか

標準SaaSを中核に、既存台帳や会計だけをCSV・API連携するハイブリッド方式は、スクラッチ開発より費用と期間を抑えやすい選択肢です。ただし、独自の交配計画や複数農場の統合が必要な場合も、いきなり全機能を作らず、次のフェーズで小さなPoCを実施します。

フェーズ3:現場画面・データ・連携の設計と開発

設計では、まず個体、繁殖イベント、治療・衛生、センサーをデータモデルに整理します。通知、担当者、拠点も同じモデルに含めます。授精の記録は削除して書き換えず、訂正履歴を残します。そのうえで、誰がいつ変更したかを監査ログで追えるようにします。

現場UIは、次の点を優先します。

  • 操作:牛舎で片手入力できること
  • 項目数:入力項目を絞ること
  • 入力方法:耳標のバーコード・番号スキャンや音声入力を使えること

通信が不安定な場所では、端末に一時保存して復旧後に再送するオフラインキューを設けます。

通知は一斉に鳴らさず、次の4種類を優先度・期限・担当者に変換します。

  • 分娩予定:分娩日が近づいた個体の知らせ
  • 発情候補:発情の可能性がある個体の知らせ
  • 妊娠鑑定:鑑定の時期が来た個体の知らせ
  • 未対応アラート:対応がまだ済んでいない通知

対応結果は、ワンタップで記録できる形にします。また、個体IDが耳標変更や導入・売却で変わるときは、旧IDとの対応履歴を持たせ、出生から出荷までの追跡性を保ちます。

センサー連携では、次の例外シナリオを設計します。

  • 通信断:親機からクラウドへ届かないときの対応
  • 電池切れ:センサーが止まったときの代替手段
  • 未装着:センサーを付けていない個体の扱い
  • 紐付けミス:センサーと個体IDの対応が誤っている場合の修正
  • 誤検知・見逃し:通知が誤っていた場合と、通知されなかった場合の扱い

AIは発情や分娩の候補を提示する補助機能から始め、授精・治療・出荷を自動確定させない運用にします。

セキュリティの項目も、開発後ではなく設計時に決めます。

  • 通信の暗号化:TLSで通信を保護する
  • 保存データ:データを保存するときに暗号化する
  • 利用者の権限:役割ごとに見られる範囲と操作できる範囲を分ける
  • 本人確認:多要素認証で利用者を確かめる
  • 障害への備え:バックアップの取得と復旧手順の決定

フェーズ4:実データと現場動作のテスト

テストは、画面の表示確認だけで終わらせず、業務の流れに沿って行います。正常系では、個体登録から発情、授精、妊娠鑑定、分娩までを一つの個体で通します。さらに、子牛登録、治療、出荷も同じ個体で確かめます。

異常系では、同じ耳標番号の重複、日付の逆転、流産後の再授精、未入力を試します。さらに、個体の移動、タグ故障、通信断、停電、担当者不在、CSVの文字化けも確かめます。実際の牛舎でユーザー受入テストを行い、手袋での操作や雨天、夜間、圏外を含めます。

受入条件は、業務KPIで定義します。たとえば、現場スタッフが1頭の発情記録を1分以内に登録できること、通信断から復旧した後に重複登録が起きないこと、分娩予定の通知を担当者が確認できることを条件にします。さらに、CSVの個体件数と原台帳の件数が一致すること、権限のない利用者が投薬記録を修正できないことも含めます。

フェーズ5:小規模な稼働と切替時の業務停止対策

本番稼働は、全頭・全拠点を一日で切り替えず、1棟または20〜50頭程度のパイロットから始めます。紙やExcelを一定期間併用し、個体IDの不一致、入力漏れ、通知の過不足、センサーの装着率、対応時間を記録します。パイロット終了時には、継続・修正・中止の判断を、KPIと現場インタビューの両方で行います。

移行では、原台帳をそのまま一括登録する前に、重複個体、表記揺れ、欠損した授精日、旧耳標、売却済み個体を洗い出します。そのうえで、移行対象を「現役の繁殖牛」「育成牛」「履歴だけ保持する個体」に分け、テスト環境で件数とサンプルを照合します。

稼働当日は、紙の緊急記録、問い合わせ窓口、障害時の連絡先、バックアップからの復旧方法を現場へ渡しておきます。そうしておけば、システム障害が繁殖業務の停止に直結しません。

フェーズ6:定着化と改善サイクルの設計

稼働後に見るのは、使った人数やログイン回数より、業務が変わったかどうかです。現場の動きは週ごとに、成績の指標は月ごとに分けて追います。

  • 週次:未対応アラート、未入力件数、通知から確認までの時間
  • 月次:受胎率、初回授精日数、空胎日数、分娩間隔
  • 月次で加えて比べる項目:授精回数、分娩事故、見回り時間

数値が改善しない場合は、システムの問題と、飼料・疾病・授精技術などの別要因を切り分けます。そのため、システムだけの効果と断定しない姿勢が必要です。

現場の定着には、全員を一度に教育するより、次の方法が向いています。

  • 推進役:牛舎ごとに推進担当を置く
  • 朝礼での共有:前日のアラートと対応結果を確認する

改善の候補は、月1回の改善会議で優先順位を付けます。

  • 入力項目:現場の負担になっている項目から減らす
  • 通知の時間帯:現場の動きに合わせて変える
  • 権限:役割に合わせた見直し
  • 帳票:現場で必要なものを追加する

また、2025年12月にファームノートが発表したV3でも、音声入力、AIによるアラートのタスク化、導入後のプロフェッショナルサービスが示されています(出典:株式会社ファームノート「Farmnote Cloud Platform V3」)。新機能を導入する場合も、現場の作業へ落とし込める支援があるかを確認します。

ポイント

各フェーズは、現場で確かめた結果によって設計へ戻る前提で進めます。日程は、発情から分娩までの実データが取れる期間に合わせて組むと、判断の材料がそろいます。

繁殖管理システムの費用相場とコストの内訳

繁殖管理システムの費用を検討するイメージ

費用は、既製クラウドを利用するか、センサーを含めるか、個別開発を行うかで大きく変わります。頭数や拠点数、現場端末と通信設備のほか、データ移行、外部連携、研修、保守も別々に見積もります。

初期費用だけで判断すると、後の負担を見落としやすくなります。以下は公開価格と公的な導入モデルを土台にした目安であり、2026年時点の個別案件の確定額ではありません。

クラウド型の月額料金の目安

公開価格の例では、ファームノートのFarmnote Cloud個体管理プランは1〜49頭で月額4,000円、50〜99頭で月額8,000円です。牛群管理プランは、1〜49頭で月額6,500円、50〜99頭で月額13,000円、100〜149頭で月額19,500円、250〜299頭で月額39,000円です。頭数に応じて段階的に設定されています(出典:株式会社ファームノート「料金」)。

この価格はサービス利用料の目安で、センサー、通信、初期設定、移行、訪問支援などを含むとは限りません。そのため、既製クラウドのみなら初期0〜30万円、月額0.4万〜5万円程度、CSV移行や研修まで頼む場合は初期10万〜50万円程度を見込むと比較しやすいです。

発情・分娩センサーを組み合わせる場合は、数十頭規模で初期20万〜150万円、月額1万〜15万円程度が一つの検討レンジになります。なお、放牧地、鉄骨牛舎、複数棟、携帯圏外では、親機・受信局・長距離無線・ソーラー電源などが別途必要になる場合があります。

個別開発やセンサー連携の費用の幅

個別開発の費用は、対象の広さによって次のように変わります。

  • PoC(1棟・1区画、20〜50頭、主要画面と通知に絞る場合):50万〜300万円、0〜3か月程度が目安です。
  • 中小規模のスクラッチ開発や大幅カスタマイズ:個体台帳、繁殖イベント、権限、帳票、外部連携を含めて300万〜2,000万円、6〜12か月程度のレンジを見ます。
  • 複数農場を含む場合:AI、カメラ、ERP連携、厳格な監査ログまで含めると、1,000万〜3,000万円超になる可能性があります。

費用は、要件とデータ品質によって変動するため、特定の金額は断定できません。

農林水産省の技術マニュアルには、45頭モデルでレンタル、クラウド、繁殖管理アプリを合計して月53,750円とする試算があります(出典:農林水産省「スマート農業実装化に向けた技術マニュアル」)。これは掲載時点のモデル価格であり、現行の見積を保証するものではありませんが、センサー費・クラウド費・頭数課金を分けて確認する基準になります。比較時は、月額だけでなく次の費用も合計します。

  • 利用料:5年分の額で見る
  • センサー交換:交換にかかる費用
  • 通信料:通信にかかる費用
  • その他の作業:保守、研修、移行、解約時のデータ出力の費用

導入効果と投資回収の計算指標

ROIは、削減した見回り時間、初回授精日数・分娩間隔の短縮を分けて計算します。受胎率、子牛生産頭数、分娩事故の回避も、それぞれ別に見ます。

農研機構のスマート農業実証では、放牧牛の安否確認を70分に短縮し、作業時間を61%削減しました。その削減時間を発情兆候の観察などへ振り向けた結果、分娩間隔が32日短縮し、子牛生産頭数が10.4%増えた事例があります(出典:農研機構「畜産・飼料作の分析結果」)。この結果は特定の実証条件の値であり、自社牧場で同じ改善が再現するとは限りません。

自社で試算する場合は、導入前3〜6か月のベースラインを取り、1頭あたりの見回り・記録時間、見逃しや未対応の件数、受胎率、空胎日数を記録します。さらに、分娩間隔、事故・治療費、スタッフの残業時間も残します。改善額から初期費用と5年総額を差し引き、何年で回収できるかを見ます。営業資料の受胎率に合わせるだけでなく、PoCで自社の通知確認率と対応時間まで測ることが、過大な期待を防ぎます。

ポイント

費用は、月額だけでなく5年総額で比べると、見積の差を読み取れます。クラウド、センサー、個別開発の違いを分けて見積もることが、比較の出発点です。

繁殖管理システムの見積もりを取る際のポイント

繁殖管理システムの見積条件を確認するイメージ

見積書は、機能、工数、機器、データ、支援の内訳で受け取ります。「システム一式」とだけ書かれた見積は避けます。

候補会社へ同じRFPを渡し、対象頭数・拠点数・センサー台数・連携先・移行件数・受入条件をそろえます。そうすると、安さよりも前提の違いを比べられます。

見積依頼書の記載項目

RFPには、次の5つの内容を書きます。

  • 対象:対象畜種、頭数、拠点・牛舎数
  • 経営形態:繁殖、肥育、酪農
  • 利用者と業務:利用者の役割、現行業務、課題
  • 機能:必須機能、将来機能
  • 環境:利用端末、通信環境、センサー、外部連携

加えて、移行対象、希望スケジュール、予算の考え方、保守窓口、データ所有権も入れます。特に「発情を検知する」だけでなく、「通知を誰が何分以内に確認し、授精判断をどこへ記録するか」まで書くと、会社ごとの提案品質を比べやすくなります。開発会社から「対応可能です」と返ってきたら、画面サンプル、過去事例、PoCの検証方法、追加費用が発生する条件をセットで確認します。

また、受入条件を先に提示します。例えば、現場で片手入力できること、圏外時に記録を失わないこと、CSV移行後の個体件数が一致することです。さらに、通知履歴が残ること、権限別に参照・修正範囲を分けられること、障害時に紙運用へ戻せることも含めます。

開発会社や製品の比較基準

比較の軸は、次の4つの観点です。

  • 対象と規模:対象畜種と導入規模、個体台帳・繁殖イベントの網羅性
  • 検知方式:発情・分娩の検知方式
  • 操作と通信:スマートフォンとオフライン対応、通信設備とセンサー保守、CSV・API連携
  • 運用と支援:獣医師・授精師との共有、セキュリティと監査ログ、現地研修・問い合わせ体制、5年TCOと解約時のデータ返却

候補を一律にランキングせず、自社の最重要課題に重みを付けて評価します。例えば、夜間の分娩監視が最優先なら、個体分析の多さより通知の到達性、センサー故障時の代替手順、電話連絡の体制を重く見ます。

JAや自治体で複数の生産者を管理するなら、生産者ごとの権限、マスタ更新、帳票、入力チェック、データ返却を確認します。AIや音声入力を選ぶ場合は、認識ミスを人が承認してから確定できるか、AI学習への二次利用を拒否できるか、導入後にモデルの精度を検証できるかも契約に含めます。

契約と運用で見落としやすいリスク

家畜伝染病予防法に基づく飼養衛生管理基準や定期報告を見据え、繁殖履歴と衛生・投薬履歴を同じ個体IDで結び、入力・修正・出力の履歴を残します(出典:農林水産省「飼養衛生管理基準について」)。

契約書では、データの所有者、バックアップ期間、障害時の復旧目標、センサー故障時にどこまでを誰が受け持つか、サポート時間を確認します。さらに、仕様変更の通知、AIへの二次利用、解約時のエクスポート形式と費用も見ます。

見積が安くても、次のようなケースがあります。

  • 移行と研修:初期移行や現地研修が別料金
  • 通信環境:通信設備が対象外
  • 通知の費用:携帯料金を利用者が負担
  • 保守の範囲:センサー交換が保守外

そのため、契約前に5年分の費用を表にまとめ、上限と変更条件まで書面にします。表には、初期費用、月額、従量課金、機器購入・レンタルを入れます。さらに、次の項目も書き出します。

  • 通信:回線や機器にかかる費用
  • 移行・研修:移行作業と利用者向けの研修の費用
  • 保守:契約後の対応にかかる費用
  • 追加開発:後から機能を足す場合の費用
  • 解約・データ返却:解約時のデータの返し方にかかる費用

ポイント

見積は、機能・工数・機器・データ・支援の内訳で受け取ります。同じRFPを各社に渡して前提をそろえ、前提の違いで比べることが大切です。

よくある質問(FAQ):繁殖管理システムについて

繁殖管理システムのよくある質問を確認するイメージ

繁殖管理システムは、牧場の規模や課題によって最適な構成が変わります。導入前によく尋ねられる費用、センサー、畜種、AIの考え方を、判断の基準とあわせて答えます。

繁殖管理システムは小規模農家でも導入できますか?

導入できます。少頭数なら、個体台帳・予定通知・スマートフォン入力を備えた既製クラウドから始め、センサーや個別開発は効果を確認してから追加する方法が現実的です。

頭数課金、最低利用料、無料トライアル、CSV移行費、解約時のデータ返却を確認し、月額だけでなく5年総額で判断します。

発情検知センサーだけで繁殖管理は完結しますか?

完結しません。センサーは行動や体温などから発情・疾病・分娩の兆候を知らせる支援ツールであり、個体台帳、授精、妊娠鑑定、分娩結果、治療、再授精の履歴とつながって初めて繁殖管理の改善に使えます。

センサーを導入するなら、通知後の確認者、授精判断、誤検知・見逃し時の扱い、電池切れ・通信断の代替手段まで確認してください。

牛以外の豚や養鶏にも同じシステムを使えますか?

製品によって異なります。牛向けに設計された個体ID、発情、授精、妊娠鑑定、分娩のモデルは、豚の群管理や養鶏のロット・鶏舎管理とは一致しない場合があります。

対象畜種の繁殖サイクル、個体・群の単位、疾病・衛生項目、必要な帳票を要件定義で洗い出します。そのうえで、既製品の標準機能で足りない部分だけを連携・追加開発するのが安全です。

AIの発情・分娩アラートをそのまま判断に使ってよいですか?

アラートを確定判断にそのまま使わず、担当者が個体の状態と現場情報を確認して承認する運用にします。

AIの精度は対象畜種、頭数、センサー装着率、通信、記録品質によって変わるため、PoCで適合率、見逃し、誤通知、通知から対応までの時間を測定します。

発情・分娩候補は作業の優先順位付けに使い、授精、投薬、治療、出荷などの判断権限は人に残す設計が適切です。

ポイント

少頭数なら既製クラウドから始め、センサーや個別開発は効果を確かめてから加えるのが現実的です。AIのアラートも、担当者の承認を経て使う運用にします。

まとめ:現場の行動まで設計する繁殖管理システム

繁殖管理システムの導入計画をまとめるイメージ

繁殖管理システム開発の進め方は、6フェーズです。まず、現場業務とKPIを要件整理します。次に、総合管理・センサー・分娩監視・組織向けのタイプから、製品や開発会社を選定します。

続いて、個体ID・イベント・通知・権限・連携を設計します。その後、実データと通信断を含めてテストします。さらに、小さく稼働します。最後に、KPIと現場の声で定着化します。

発注前に確認するチェックリスト

発注前は、対象畜種・頭数・拠点、個体ID、必須KPIを確認します。さらに、入力者と確認者、通信環境、オフライン時の記録、センサーの故障対応を見ます。加えて、外部連携、移行範囲、受入条件、セキュリティを確かめます。

そのうえで、データ所有権、AIの人間承認、5年総額、解約時のデータ返却を見ます。検知精度や初期費用だけでなく、通知が届いた後に現場が動けるか、業務停止時に復旧できるかまで問うことが、導入後の失敗を防ぎます。

最初の一歩となる小さなPoC

1棟または対象頭数を絞り、個体登録から通知、対応記録、KPI集計までを通して検証します。全牧場の全機能を一度に作り込むより、この進め方が現実的です。

PoCでデータ品質、現場入力、通信、通知の信頼性、担当者の役割を確認できれば、本開発で必要な機能と不要な機能を見極められます。

繁殖管理システムを記録のデジタル化で終わらせず、繁殖成績と働き方を改善する仕組みとして設計してください。

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・繁殖管理システム開発の完全ガイド

会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。