BtoBシステム開発では、PoC・プロトタイプ・モックアップを使い分けて、業務適合性、技術的実現性、関係者間の合意を小さく検証します。
検証を終えてから本開発へ進むと、手戻りを抑えやすくなります。この内容は、小さく試す企業担当者や提案を評価する方にも役立ちます。全体像はBtoBシステム開発の完全ガイドもご覧ください。
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BtoBシステム開発におけるPoC・プロトタイプ・モックアップの位置づけ

BtoBシステムは社内外の関係者が多く、既存業務や基幹システムと密接に結びつきます。そのため、本格開発の前に、技術的実現性と業務適合性を最小限のコストで検証します。その結果、本開発へ進むか撤退するかを客観的に判断できます。
BtoBアプリのUI試作やBtoB通販のカート導線の検証は、確認する対象が異なります。また、PoC、プロトタイプ、モックアップも、それぞれ検証する問いが異なります。混同すると、必要な検証を行えずに終わります。
BtoBシステムでは、営業・経理・代理店が関わる承認フローや、基幹システムとの技術連携を検証します。
PoCを行う目的・意義
PoCは、本開発に進む前に、技術面の不確実な点を限られた予算と期間で洗い出す方法です。
- API連携:既存の基幹システムと接続できるかどうか。
- 処理性能:実データで速度や負荷への耐性を測ります。
- 業務ロジック:与信管理や複数ロールの承認が、想定どおりに動くか。
いきなり数千万円規模のフルスクラッチ開発を行うと、大きな手戻りのリスクを伴います。そこで、動くものを早く見せて関係者の認識を合わせておくと、後工程での手戻りを防げます。
モックアップとプロトタイプの違い
モックアップとプロトタイプは、確かめる問いが異なります。
- モックアップ:画面の見た目や配置を確認します。
- プロトタイプ:画面遷移を操作し、UIや操作感を確かめます。
モックアップは内部処理を持たず、デザインツールで画面の見た目やレイアウトだけを作ります。卸・代理店ポータルでは、ダッシュボードの数値や配置について認識を合わせる場面で使います。
与信管理や承認フローは複数のロールが関わるため、操作の流れを確かめるにはプロトタイプで検証する必要があります。さらに、プロトタイプは仕様の認識ずれを減らし、モックアップより深い検証を担います。
与信・承認フロー、卸代理店ポータルのプロトタイピング
与信管理や卸・代理店ポータルでは、「使えるか」を確かめることが特に重要です。そこで、実際の利用者にプロトタイプを試してもらいます。
UX検証の具体的な進め方
Figmaなどでクリックできるデモを作り、実際の利用者に業務シナリオに沿って操作してもらいます。
- 申請・承認:申請から承認まで迷わず進めるかを確かめます。
- 与信情報:判断に必要な情報が画面にそろっているかを見ます。
- ポータル:在庫・価格・注文状況を日常的に確認できるかを試します。
ポータルの確認では、実在の取引先に近いダミーデータを使います。
利用者が操作すれば、現場の業務フローとのずれを本開発の前に見つけられます。
試作段階での修正は、本開発開始後より大幅に低コストで済みます。そのため、丁寧な検証は開発全体のコスト低減につながります。
複数ロールを巻き込んだ検証設計
よくある失敗は、開発チームや発注企業の情シス担当だけで検証を終えてしまうことです。そうなると、利用者の視点が抜け落ちます。
- 経理部門:与信管理を実際に使う立場として参加します。
- 営業管理職:承認フローを業務の目線で確かめます。
- 代理店担当者:ポータルの操作や表示情報を評価します。
部門横断のレビュー会を設け、各ロールに実際の業務シナリオを操作してもらいます。そのうえで、「この画面で承認できるか」「代理店に情報を見せてよいか」を確かめます。
社外の代理店を招く場合は、秘密保持契約や検証協力への謝礼を事前に調整しておきます。
この検証を省くと、本稼働後に代理店から使いにくいという苦情が出るおそれがあります。
既存基幹系との連携部分のPoC検証

プロトタイプは使えるかを検証し、PoC(概念実証)は技術的に作って動かせるかを確かめます。
基幹ERPや会計システムとの連携では、見た目よりも技術的な実現性に集中します。そのため、最小限のコードで連携を検証します。
連携可否とパフォーマンスの検証
既存の構成やセキュリティ要件のもとで、API連携できるかをまず確かめます。
- API仕様:仕様が古く、公開資料が整っていないことがあります。
- 接続経路:VPN経由のアクセスが必須になることがあります。
- 性能:実データに近い量で、速度と負荷への耐性を測ります。
基幹システムの制約は、実際に接続テストをしてみるまで分からないことがあります。
テストは、受発注件数がピークとなる月末・月初を想定したデータ量で行います。
レスポンスタイムが業務上許容できる範囲かを確認し、設計に反映します。早期に性能の課題を見つけられれば、本開発後の作り直しを避けられます。
異常系(失敗系)設計の技術実証
基幹システムや外部APIが停止、またはタイムアウトした場合の連携機能を検証します。連携先の障害では、受発注業務全体が止まるリスクがあります。
PoCでは、連携先を意図的に停止させ、疑似的な障害テストを行います。
- 縮退運転:一部機能を制限しながら稼働を続けます。
- リトライ処理:失敗した連携を再試行できるかを確かめます。
- 冪等性:同じ処理を重ねても結果が変わらないかを確認します。
障害時の設計が機能するかを技術的に実証することは、本稼働後の障害耐性を左右します。
PoC実施の進め方と費用感、よくある失敗
PoCでは検証範囲を絞り、成功と失敗の基準を事前に明確にします。
期間・費用相場とAI活用による圧縮
検証する機能は、絶対に必要なMust(必須)に絞るのが基本です。
- 期間:数日〜3週間が一般的で、長くても3ヶ月以内です。
- 簡易試作(プロトタイプ):70万〜90万円が目安です。
- 中規模PoC:基幹連携などを含むと、100万〜300万円が目安になります。
近年は、AIコーディング支援やBubbleなどのノーコードツールも活用されています。これらを使って、フロントエンドなどの開発費用を従来の50〜75%に圧縮する方法があります。その分、限られた予算でも検証範囲を広げやすくなります。
PoC失敗のよくある原因
PoCが「やって終わり」になる原因は、判断基準や参加者、範囲の決め方にあります。
- 成功基準がない:評価指標が決まらず、「動いた」だけで終わりがちです。
- 現場が不在:利用者を交えないまま進みます。
- 範囲が広がる:要望が膨らみ、目的を見失ってミニ本開発化します。
たとえば、承認作業時間が30%削減されたかといった指標を、開始前に決めておきます。
IT部門だけで進めると、代理店や業務担当者が加われず、業務フローに合わない検証になりがちです。
PoCを始める前に、何を、どの基準で、誰の合意のもとに判断するかを1枚の文書にまとめておきます。関係者全員で共有しておくことが有効です。
PoCから本開発への移行

PoCの知見を本番環境へ安全に移すには、移行そのものを開始前から設計しておく必要があります。
「出口」の事前設計と意思決定ログ
PoC開始前に、GoとNo-Goの基準、ロードマップ、撤退基準を経営層と合意します。
- Go:基準を満たしたら、本番化へ進みます。
- No-Go:基準未達なら、中止か再設計をします。
- 意思決定ログ:学びや制約を本開発の設計に渡します。
PoCのコードは捨てる前提で作るため、そのまま本番へ流用はしません。一方で、分かったこと、技術的制約、コスト上限は、意思決定ログ(ADR)にまとめます。ログの内容を本開発の要件定義と基本設計に反映すると、品質向上につながります。
非機能要件の確実な作り込み
PoCは検証の速さを優先するため、非機能要件は意図的に省かれることが一般的です。省いた要件は、本開発で確実に作り込みます。
- データアクセス権限:利用者ごとの権限を設計します。
- 監査ログ:操作記録を管理できるようにします。
- セキュリティ:エンタープライズ基準の水準まで整えます。
- 運用保守:本番運用の体制を確立します。
従業員50名の食品卸会社では、受発注メールのAI自動処理をPoCで検証しました。その際、精度95%以上、かつ既存システムとのAPI連携は2ヶ月以内という基準を、事前に設定しました。
2週間、約70万円をかけたPoCの結果、基準に届かないことが分かり、本番化を見送りました。基準未達で撤退したことで、無駄な大規模投資を防げた成功事例です。
このことから、厳格な基準を事前に定めておくことが、PoCを機能させる鍵になります。
まとめ
ここまで、PoCなどの違い、UXと基幹連携の検証、実施期間・費用、失敗要因、本開発への移行を見てきました。
PoCやプロトタイプで検証対象を分け、その結果をもとに本開発へ進むか判断します。
数日〜3週間、70万〜300万円程度で検証し、学びを意思決定ログとして引き継ぎます。
この流れは、本開発の手戻りを防ぎ、開発全体の期間とコストを抑えることにつながります。
導入を検討する際は、業務適合性と技術的実現性を分けて整理することから始めましょう。
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株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。
