予実管理システム開発の発注は、準備、開発会社の選定、契約、発注後の推進という順で、段階を追って進めるのが基本です。まず、依頼条件と候補会社を比べやすくするため、4つの点を先に決めておきます。
- 現状業務の課題と導入目的を整理する
- 必要な機能、データ、既存システム連携を確認する
- 予算、スケジュール、発注方式を比較する
- 契約、検収、保守の責任範囲を明確にする
初めて発注する担当者にも分かるよう、実務に沿って順に説明します。
▼全体ガイドの記事
・予実管理システム開発の完全ガイドをご覧ください。
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予実管理システム開発の発注の流れ
予実管理システムの外注・発注は、適切な手順を踏むことで成功の確率を大きく高められます。一般的なシステム開発の発注は、現状把握と課題整理から始まり、納品・本番稼働まで続きます。
現状把握と課題整理のあとは、開発方針の決定、RFP・要件定義書の作成の順で進みます。次に、開発会社の探索・選定を行い、見積もり・提案の取得と比較へ進みます。そのうえで発注先の決定と契約締結を経て、開発開始・プロジェクト推進に入り、納品・本番稼働まで続きます。
予実管理システムは業務への影響が大きいため、各ステップを丁寧に進める必要があります。
現状把握と課題整理
発注の第一歩は、現在の予実管理業務でどこに課題があるかを明確にすることです。たとえば「Excelでの管理に限界を感じている」「月次の予実集計に数日かかっている」のように、具体的な課題を洗い出してください。ほかにも、複数部門のデータ集約が手作業で非効率なことや、リアルタイムに経営状況を把握できないことも挙げられます。
課題を整理すると、システムで解決すべき問題が明確になり、要件定義の精度も高まります。さらに、導入によって期待する効果(月次集計工数の削減時間、意思決定スピードの向上など)を数値で示しておくと、投資対効果(ROI)の説明材料にもなります。
現状の業務フローは、誰がいつ、どのデータを使って予実管理業務を行っているかを整理した業務フロー図や業務記述書にしておくと、開発会社とのやり取りが円滑になります。また、Excelファイルやシステムの一覧、データ項目・フォーマット、月次クローズのタイムスケジュールなど、システムに取り込むべき情報も事前に整理しておくことが大切です。
開発方針の決定(スクラッチ開発かパッケージ導入か)
発注先を探す前に、「スクラッチ開発」「クラウドパッケージ導入」「パッケージのカスタマイズ」のどの方式で進めるかを決めておきます。この判断によって、発注先の候補を絞り込めます。
クラウドパッケージ(Loglass・DIGGLE・Manageboardなど)が80%以上の要件を満たせるなら、費用とスピードの面でパッケージ導入が有利です。一方で、管理会計の要件が特殊な場合は、スクラッチ開発やパッケージのカスタマイズが適しています。特殊な場合とは、たとえば独自の配賦ロジックや複数の管理軸、既存ERPとの密な連携が必要な場合などです。
発注前に準備すべきドキュメント

開発会社への依頼を成功させるには、発注前の準備を丁寧に整えておくことが欠かせません。「良い提案・正確な見積もりを引き出すためのドキュメント」を事前にそろえておくと、開発会社とのやり取りの質が大きく上がります。主に準備するのは、RFP(提案依頼書)と業務要件書(要件定義の素材)です。
RFP(提案依頼書)の作成方法
RFP(Request for Proposal=提案依頼書)は、複数社に同じ条件で提案と見積もりを依頼するための文書です。各社の回答を並べて比べるには、同じ前提を文書にそろえておくことが欠かせません。
- 自社の概要と導入目的:業種・規模・事業内容、現状の課題と導入目的
- 希望する機能:必須機能と希望機能に区分して記載
- 利用者と既存システム:利用者数・利用部門、連携が必要な既存システムの一覧と概要
- データ規模とセキュリティ要件:管理する部門数・案件数・取引件数など、社内ネットワーク制限・シングルサインオン要件など
- 稼働時期と予算の目安:希望する稼働時期を示し、上限額を記載すると現実的な提案を引き出せます
現在使っているExcelの管理帳票や経営会議の管理資料を添付すると、開発会社が求められる機能をより正確に理解できます。
曖昧な表現は避け、数値や条件で具体的に書くことが大切です。たとえば「リアルタイムで確認できること」より「前日までのデータを毎朝7時に自動更新すること」と書くほうが伝わります。「使いやすい画面」より「ITリテラシーが高くないユーザーでも操作できること(PC操作初心者でも30分のトレーニングで使いこなせるUI設計)」と書けば、各社の提案を比べやすくなります。
業務要件の整理と優先順位付け
RFPの機能要件は、MoSCoW法(Must/Should/Could/Won’t)の4区分に分けて、優先順位を付けるのがおすすめです。
- Must:必ず実現すべき必須要件
- Should:実現できれば良い重要要件
- Could:余裕があれば実現する希望要件
- Won’t:今回のスコープ外の要件
この優先順位付けにより、予算が限られている場合のスコープ調整が容易になり、開発会社との交渉もスムーズに進みます。
特に予実管理システムでは、事前に整理しておきたい業務要件があります。次の項目を決めておきます。
- 何を軸に予実管理するか(部門別・事業別・プロジェクト別・商品別など)
- 売上・原価・粗利・販管費・営業利益など管理する指標の一覧
- 予算バージョン管理の考え方(当初予算・修正予算・月次予算の関係性)
- 見込みの更新ルールと承認フロー:誰がいつ、どのように見込みを更新するか、予算申請・修正の承認が必要か
- レポーティングの種類(経営会議向け・部門長向け・現場向けなど)
これらを文書にしておくと、開発会社との要件定義作業が大幅に効率化されます。
開発会社の探し方・選び方

発注先となる開発会社を探す方法は、複数あります。Web検索で「予実管理システム開発会社」と調べて候補を探す方法や、発注ナビ・システム幹事・アイミツなどのマッチングサービスを使う方法があります。ほかにも、業界の知人や取引先からの紹介、業界団体やIT展示会での出会いといった経路もあります。
一般的には、まず候補を10社程度リストアップします。次に初回ヒアリングを通じて3〜5社に絞り込み、最後に提案と見積もりを取って1〜2社を選びます。
発注先の種類と特徴
開発会社は「大手SIer」「中規模独立系開発会社」「小規模ベンダー・フリーランス」に分けられ、それぞれ特徴が異なります。
大手SIer(TIS・NSWなど売上数百億円以上の企業)は、次のような特徴があります。
- 強み:豊富なリソース、確立されたプロジェクト管理体制、長期保守サポート
- 注意点:費用は高め(人月単価100万円〜)で、小回りが利きにくい場合があります
- 向いている案件:グループ会社全体の大規模システムや、数十億円規模のプロジェクト
中規模独立系開発会社(売上数億円〜数十億円程度、従業員数十名〜数百名規模)は、費用と品質のバランスが良く(人月単価60万円〜100万円)、中小・中堅企業の予実管理システム開発に適しています。また、業務理解力の高い会社が多く、担当者との距離が近いコミュニケーションを取りやすいのも特徴です。
中小・中堅企業で管理会計の業務設計から一緒に取り組みたい場合は、この規模の会社が向いているケースが多いです。一方、小規模ベンダー・フリーランスは費用が低い(人月単価40万円〜60万円)ものの、プロジェクト管理体制や保守サポート体制が手薄で、経営情報を扱う重要システムの発注先としてはリスクが伴います。
開発会社を評価する具体的な方法
複数の開発会社を比べるときは、初回のヒアリングや商談の内容を重視してください。
管理会計・予実管理業務への理解度を測るには、質問を投げかけると有効です。例として、「御社が考える予実管理システムの要件定義で最も重要なポイントは何ですか?」や「予実管理システムの開発でよくある失敗パターンと対策を教えてください」があります。
- 回答の具体性:業務に詳しい会社は具体的に答え、技術面だけの会社は「それは要件を聞かないとわかりません」と抽象的に答える傾向があります。
- 提案書の質:自社の課題を正確に理解し、解決策・システム構成・スケジュール・費用の根拠が明示されている提案書は、業務理解力と提案力の高さを示します。
- 類似案件の実績:過去の類似案件の事例(業種・規模・実現した機能の概要)を提示でき、実績に裏付けされた提案ができるため、信頼性が高いと言えます。
- 長期的な信頼感:「この会社と長期的なパートナーとして付き合えるか」という信頼感も、大切な判断材料です。
発注時の契約と注意点

開発会社への発注を決めたら、契約締結に進みます。システム開発の契約には「請負契約」と「準委任契約」の2種類があり、特徴と適した場面がそれぞれ異なります。
2024年11月に施行されたフリーランス保護新法への対応も、発注側が確認しておくべき事項です。
請負契約と準委任契約の使い分け
請負契約は、完成したシステムの納品を開発会社が約束する契約で、完成責任は開発会社にあります。仕様どおりに完成しなければ、瑕疵担保責任(修正義務)が生じます。
準委任契約は、開発者が業務を遂行すること自体を約束する契約です。
- 費用:請負は予算が確定しやすい一方、準委任は時間・工数に応じた費用が発生し、不確定になるリスクがあります。
- 仕様変更:請負は仕様変更の際に追加費用が発生しやすく、準委任は仕様変更に柔軟に対応できます。
- 向いている段階:請負は要件が確定している設計・開発・テストの段階に、準委任は要件定義・コンサルティングのような探索的な作業に適しています。
予実管理システムのような複雑なシステムでは、要件定義を準委任契約で進め、要件が確定してから設計・開発・テストを請負契約に切り替えるハイブリッドアプローチが推奨されます。このアプローチにより、要件定義の柔軟性と開発フェーズのコスト確定性を両立できます。
契約書で確認すべき重要事項
契約書では、確認と交渉が欠かせない事項があります。最初に見ておきたいのは、知的財産権の帰属です。ソースコードやデータベース設計の著作権が発注者(自社)と開発会社のどちらに帰属するかを、明確にしてください。自社に帰属させておけば、将来ほかの会社に保守を移管したり、社内で改修したりできます。
次に、仕様変更の取り扱いを決めておきます。開発中に仕様変更が起きた場合の対応手順(変更依頼書の提出、費用・スケジュール調整の合意フロー)を契約書か別紙に明記すると、後からのトラブルを防げます。また、瑕疵担保責任(納品後の不具合対応)の期間・範囲も確認が必要です。
一般的に納品後6ヶ月〜1年間の瑕疵担保期間が設けられますが、期間と対応範囲(設計ミスか仕様変更かの判断基準)は、事前に明確にしておくと安心です。さらに、機密情報・個人情報の取り扱い(NDA・秘密保持義務)も、財務データを扱う予実管理システムでは特に大切です。
発注後のプロジェクト推進のポイント
発注後の開発フェーズは、発注者側の関わり方がプロジェクトの成否を左右します。「あとは開発会社にお任せ」にせず、プロジェクトの当事者として積極的に関わることが重要です。
定例ミーティングと進捗確認
週次または隔週の定例ミーティングで、進捗状況と課題、次週の作業計画を確認する習慣をつけておきます。進捗が滞っているときは、原因を早めに特定し、解決に向けた動きを迅速にとることで、スケジュール遅延を最小限に抑えられます。
プロトタイプ(動く試作品)が完成したら、実際の業務担当者に触れてもらい、「使いやすいか」「業務の実態に合っているか」を早めに確かめます。早い段階で確かめておくと、手戻りを防げます。
プロジェクトの課題は、早く見つけるほど修正のコストが小さく済みます。そのため、開発会社からの「問題ありません」という報告を鵜呑みにせず、自ら積極的に確認することが大切です。
システム定着のための取り組み
予実管理システムは、開発と導入が終わっても業務担当者に使われなければ意味がありません。定着を促すには、本番稼働前にユーザーへ十分なトレーニングを行います(操作マニュアルの配布・ハンズオン研修の実施)。本番稼働直後の一定期間は、サポート体制を手厚くすることも欠かせません。
発注側が従来のExcel管理との並行運用期間(1〜3ヶ月程度)を設けると、現場の不安を解消しながら、段階的に新システムへの移行を進められます。
定着後も利用状況を定期的にモニタリングし、「使われていない機能」や「追加で欲しい機能」を吸い上げて、継続的な改善を行います。そうすることで、予実管理システムの価値を高め続けられます。
まとめ
予実管理システムの開発を成功させる発注のポイントは、4点にまとめられます。「発注前の十分な準備」「管理会計の業務理解が深いベンダーの選定」「適切な契約形式の選択」「発注後も能動的に関与するプロジェクト推進体制」の4点です。
特に発注前に、RFPを丁寧に作成し、現状の業務フロー・課題・希望機能を文書にしておくことが、良い提案と正確な見積もりを引き出すための最重要の準備です。
開発会社の選定では、予実管理・管理会計領域の業務知識を持ち、類似案件の実績があるベンダーを優先してください。
費用に加えて、業務理解力・提案品質・プロジェクト管理体制・長期的なサポート体制を総合的に評価することが、成功につながります。
ここまでの手順とポイントを参考に、自社の予実管理業務の高度化につながるシステム開発を成功させていただければ幸いです。
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株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

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株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。
