予実管理システム開発の進め方/やり方/流れや方法/手法/工程/手順

予実管理システム開発は、予算と実績の差異を正確に把握する目的を定め、要件定義からテスト・運用まで段階ごとに管理して進めます。開発に入る前に、課題の洗い出しから運用の役割分担まで、次の4つを決めておきます。

  • 課題の洗い出し:予実の差異と業務課題
  • 要件の確定:必要な指標、権限、連携条件
  • テストの合意:テストの内容と受け入れ基準
  • 運用の役割分担:利用教育と運用改善を誰が担うか

各工程で決めることと注意点は、費用の目安とあわせて順に見ていきます。

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予実管理システムの全体像

予実管理システムを中心に、予算入力・管理、実績取込、差異分析、見込管理、レポーティング・ダッシュボードの5機能を配置した図。
入力から報告までの機能が一元管理を支えます。

予実管理システムは、企業が策定した予算(計画値)と実際の業績(実績値)を一元的に管理し、差異の原因分析や今後の見込み(フォーキャスト)の更新を効率よく行うための業務システムです。

経営管理の高度化が求められる今、予実管理システムは経営層がリアルタイムに意思決定するための基幹インフラと位置づけられています。

実際に、ITRの調査では、予算管理市場の2023年度売上金額が前年度比19.4%増の93億円となり、2028年度までの年平均成長率(CAGR)は19.3%と見込まれています。

予実管理システムの種類と導入形態

予実管理システムには、クラウド型、オンプレミス型、スクラッチ開発型の3種類があります。導入形態によって、初期費用の抑えやすさや、自社の業務への合わせやすさが変わります。

  • クラウド型:初期費用を抑えながら迅速に導入でき、自動アップデートで常に最新の機能を利用できる点が強みです。
  • オンプレミス型:自社サーバーにシステムを構築するため、既存の基幹システムと柔軟に連携でき、独自要件にも対応できます。
  • スクラッチ開発型:自社の業務フローや管理項目に完全に合わせて、一から構築します。

2026年現在の主流はクラウド型で、LoglassやDIGGLE、Manageboardといったサービスが中小・中堅企業を中心に広く普及しています。ただし、オンプレミス型は導入コストと運用負担が大きくなります。

スクラッチ開発型は、複雑な管理会計の要件や特殊な配賦ロジックへの対応が求められる企業に選ばれています。

予実管理システムの主要機能

予実管理システムの主要機能は、大きく5つのカテゴリに整理できます。

  1. 予算入力・管理機能:部門別・プロジェクト別・勘定科目別の予算をシステム上で入力・承認し、修正予算の管理も行います。
  2. 実績取込機能:会計システムや販売管理システムからの自動データ連携により、手作業によるデータ収集を排除します。
  3. 差異分析機能:予算と実績の乖離を金額と率の両面で見えるようにし、ドリルダウン分析で原因を掘り下げられます。
  4. 見込管理機能:期中の着地予測を随時更新し、年度末の着地感を常に把握できる状態を保ちます。
  5. レポーティング・ダッシュボード機能:経営会議向けの管理帳票や経営ダッシュボードを自動で作成します。

これらを活用すると、月次の予実差異報告にかかる工数を従来の数日から数時間に短縮した事例も報告されています。

ポイント

導入形態は、管理の複雑さと既存システムとの連携の要否で選ぶと判断しやすくなります。手軽に始めたいならクラウド型、独自の配賦ロジックが必要ならスクラッチ開発型が候補になります。

予実管理システム開発の進め方

予実管理システム開発を、要件定義・企画、設計、開発、テスト、リリースの順につないだ工程図。
各工程で業務担当者と開発者が連携します。

予実管理システムの開発は、一般的なシステム開発と同じく、要件定義から設計、開発、テストを経てリリースに至ります。ただし、管理会計の専門知識が必要になるため、各工程で業務担当者と開発者が緊密に連携することが欠かせません。

開発期間は規模によって異なりますが、中規模のスクラッチ開発では6〜12ヶ月程度が標準的です。

要件定義・企画フェーズ

要件定義では、「誰が、どの会議で、どんな判断をするために予実管理システムを使うのか」を先に決め、そこから逆算して要件を定めます。経営層は部門別の粗利や販管費の進捗を、営業責任者は案件別の売上見込みや達成率を、経理部門は月次決算との突合を素早く行うことを求めています。

利用者ごとに必要な情報と操作性は異なるため、関係者ごとの要件を漏れなく整理することが、開発の成否を大きく左右します。なかでも次の3項目は、後の設計や工数に響くため、早い段階で方針を固めておきます。

  • データの持ち方:予算・実績データを、部門別・案件別・商品別など管理粒度のどこまで分けて保持するか
  • 科目の体系:会計科目や管理項目の構成
  • 配賦の仕組み:配賦ロジックと補正処理の考え方

要件には、次の3項目も含まれます。

  • 既存システムとの連携:会計システムやERPなどとの連携仕様
  • データの入力方式:CSV取込、API連携、手動入力の役割分担
  • ダッシュボードと帳票:種類と表示項目

要件定義の内容は「要件定義書」にまとめ、開発ベンダーと認識を合わせておけば、後工程での仕様変更リスクを大きく減らせます。

設計・開発フェーズ

設計フェーズは基本設計と詳細設計の2段階で進めます。基本設計では、システム全体のアーキテクチャ、データフロー、画面遷移を定義します。特に重要なのは、部門・案件・商品・拠点などの組織マスタと会計マスタの設計、そしてデータモデル設計です。

基本設計書には、次の内容をまとめます。

  • データの関係:予算データと実績データの関係性
  • バージョン管理:修正予算の履歴を保持する仕組み
  • 外部連携の仕様:外部システムとのインターフェース仕様

詳細設計では、次の内容を定義します。

  • 画面の入力ルール:各画面の入力項目とバリデーションルール
  • 帳票と集計:帳票レイアウトと集計ロジック

開発は詳細設計書に基づいて進めますが、集計や差異計算のロジックは複雑になりやすいため、単体テストで正確性を検証することが欠かせません。

次の2点は、早い段階から確認しておくことをお勧めします。

  • 集計速度:年間の予算・実績データが数万件になった場合
  • 反復的な確認:開発中に業務担当者へプロトタイプを定期的に確認してもらい、業務フローとのずれを早く直す

テスト・リリースフェーズ

テストは単体テストから受け入れテスト(UAT)まで、この順に品質を確認します。確かめる内容は次の4つで、先頭の2つを特に重点的に確かめます。

  • 集計ロジックの正確性:既存のExcel管理表と数値が一致するか
  • 外部システム連携:外部システムとの受け渡しの整合性
  • 権限管理:役職に応じて参照範囲が正しく制限されているか
  • 処理性能:大量データを処理するときの速さ

受け入れテストでは、実際の業務データを使って本番に近い環境でテストを実施し、経理部門や経営企画部門の担当者が業務フローを一通り試します。そのうえで、システムの使いやすさと業務との適合性を確かめます。

リリースは、一度に全社へ広げると問題が起きたときの影響が大きくなるため、段階的に進めることをお勧めします。具体的には次の2段階です。

  1. 特定の部門や管理項目に絞って稼働させ、問題がないことを確かめてから全社に展開します(万一の問題が起きても影響範囲を限定できます)。
  2. 本番稼働後の一定期間は、旧来のExcel管理と並行運用して新システムと従来の管理数値を照合します(現場の安心感を高め、定着を促すうえでも効果的です)。

ポイント

進め方は、要件定義から設計、開発、テスト、リリースまでを順に追うのが基本です。どの工程でも業務担当者と開発者が連携し、利用目的からずれていないかを確かめながら進めると、手戻りを減らせます。

費用相場とコストの内訳

予実管理システムの開発費用は、開発方式・規模・要件の複雑さによって大きく異なります。

たとえば、クラウドパッケージなら月額数万円から利用を始められますが、スクラッチ開発で独自のシステムを構築する場合は、数百万円から数千万円の費用がかかります。

人件費と工数の考え方

スクラッチ開発の費用は「人月単価 × 工数」で算出するのが基本で、2025年時点の開発会社の人月単価は、エンジニアのスキルや会社規模によって異なるものの、60万円〜120万円程度が一般的な相場です。工数は要件の規模と複雑さによって決まります。

クラウドパッケージは初期費用がほぼゼロ〜数十万円程度ですが、カスタマイズ要件があると追加費用が発生します。

工数は規模ごとに大きく変わり、部門数や配賦ロジックの複雑さ、外部システム連携の有無で3区分に分かれます。

  • 小規模(部門数10程度・基本的な集計機能のみ):5〜10人月
  • 中規模(複数事業部・複雑な配賦ロジック・外部システム連携あり):15〜30人月
  • 大規模(グループ会社全体・多軸分析・高度なBI連携):50人月以上

工数を費用に換算すると、小規模で300万円〜600万円、中規模で900万円〜2,400万円、大規模で3,000万円以上が目安となります。

要件定義が曖昧なまま開発を始めると、仕様変更による手戻りが生じ、当初見積もりの1.3〜1.5倍に費用が膨らむケースが多く報告されています。そのため、要件定義に十分な時間と費用をかけることが、結果的にコスト削減につながります。

初期費用以外のランニングコスト

システムは導入後も費用がかかるため、運用・保守費用も予算計画に含める必要があります。スクラッチ開発システムの場合、保守・運用費用は初期開発費用の5〜15%が年間コストの目安です。具体的には、不具合対応やバグ修正、法改正対応(税制改正・会計基準変更への対応)の費用が発生します。

さらに、機能改善・追加開発、インフラ(サーバー・ネットワーク)の維持管理、ヘルプデスク対応の費用もかかります。一方、クラウド型パッケージの場合は、月額のサービス利用料(ユーザー数×単価が一般的)と、必要に応じたカスタマイズの追加費用がランニングコストの中心となります。また、導入後のトレーニング費用(ユーザー向け研修・マニュアル整備)も、忘れずに計上しておく必要があります。

予実管理システムは、組織変更や新しい管理軸の追加に伴って継続的な改善が必要になることが多いです。そのため、ベンダーと長期的なパートナーシップを前提にした費用計画を立てることが重要です。

ポイント

費用は開発方式と要件の規模で大きく変わるため、見積もりを比べるときは、初期費用だけでなく保守・運用の費用と、要件が曖昧なまま進んだ場合の膨らみ方も合わせて見ると判断しやすくなります。

見積もりを取る際のポイント

見積もり比較の観点として、RFP・要件定義書、3社以上の見積もり、作業範囲・開発期間・保守、予実管理業務への理解度・開発実績を並べた図。
金額以外の条件も同じ基準で見比べられます。

開発会社に見積もりを依頼する際は、事前準備の質が見積もりの精度と開発成功率を大きく左右します。

曖昧な依頼では、各社がばらばらの前提で見積もりを作るため、比較が難しくなります。さらに、本番開発に入ってから「聞いていた要件と違う」というトラブルが起きやすくなります。

要件明確化と仕様書の準備

見積もり依頼の前に、RFP(提案依頼書)または要件定義書の草案を作成することをお勧めします。

RFPには、導入目的や解決したい課題、想定ユーザー数と利用部門、必須と希望に分けた機能の一覧を書きます。

さらに、次の内容も書き添えます。

  • 連携先の一覧:連携が必要な既存システム
  • データ量:想定される件数などの目安
  • 安全対策:セキュリティ上の要件
  • 予算と稼働時期:予算感(上限目安)と希望する稼働時期

こうした情報をそろえると、各社から質の高い提案を引き出せます。特に、管理粒度(何を軸に予実を管理するか:部門別・事業別・案件別・商品別など)と連携システムの仕様は、開発工数に直結するため、できるだけ具体的に書きます。

現在使っているExcel管理表を共有するのも有効です。たとえば、実際のExcel帳票を見せると、開発会社は必要な集計ロジックや画面イメージを具体的につかめ、見積もりの精度が格段に上がります。「こういう管理帳票を毎月作っているので、これを自動化したい」と伝えると、開発会社も適切な提案をしやすくなります。

複数社比較と発注先の選び方

見積もりは、必ず3社以上から取ることをお勧めします。複数社の見積もりを比べると、適正な費用の水準がつかめるうえ、各社の提案内容の違いも分かります。さらに、金額だけでなく、作業範囲(要件定義費用やテスト工程が含まれているか)も見ます。

開発期間の想定や、保守・運用サポートの内容と費用も確かめます。そのうえで、予実管理業務への理解度(提案書の質から判断)と過去の開発実績も含めて評価します。ただし、価格が極端に安い提案は注意が必要で、後から追加費用を請求されるリスク、品質が保証されない恐れ、経験不足による開発遅延のリスクが隠れている場合があります。

そのため、発注先は価格だけでなく、「この会社と長期的なパートナーとして付き合えるか」という視点で総合的に判断することが、プロジェクト成功の鍵となります。また、予実管理システムは、導入後も組織変更や管理軸の追加に伴って継続的な改善が必要になることが多いです。特に、導入後のサポート体制と実績を重視して選ぶことをお勧めします。

注意すべきリスクと対策

よく見られる失敗パターンには、要件定義の不足による仕様変更の頻発、既存システムとのデータ連携で起きる予期しない問題、業務担当者がシステムを使いこなせず定着しないことがあります。これらの対策として、要件定義フェーズに十分な時間(全体開発期間の20〜30%)を割り当てます。

さらに、連携先システムの仕様を早期に調べて不明点を解消し、開発段階から業務担当者を巻き込んでプロトタイプの確認を繰り返すことも有効です。また、2024年以降の法改正にも注意が必要です。

フリーランス保護新法(2024年11月施行)の適用を受ける場合は、発注側として適切な書面交付と支払い条件の遵守が必要です。開発ベンダーとの契約書では、仕様変更時の追加費用、知的財産権の帰属、個人情報・機密情報の取り扱いを明確にしておきます。そうすれば、後々のトラブルを防ぐことができます。

ポイント

見積もりを比べる前に、RFPや要件定義書で前提をそろえておくと比較しやすくなります。金額に加えて、作業範囲、開発期間、保守の内容、予実管理業務への理解度を並べて評価すると、発注先を選びやすくなります。

まとめ

予実管理システムの開発を成功させるには、目的から逆算した要件定義、業務担当者と開発者の継続的な連携、適切なベンダー選定と費用計画の3点が特に大切です。

要件定義に十分な時間をかけ、管理会計への理解が深い開発会社をパートナーに選ぶことで、経営管理の高度化という本来の目的を達成できるシステムになります。

費用は、開発規模と要件の複雑さに応じて、小規模で300万円〜、中規模で900万円〜、大規模で3,000万円〜が目安です。

クラウドパッケージと独自開発のどちらが自社に適しているかは、管理の複雑さや既存システムとの連携要件、中長期的な拡張性の観点から総合的に判断します。

ここまでの進め方とポイントを参考に、自社に合った予実管理システムの実現に向けて、ぜひ第一歩を踏み出してください。

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会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。