化学製造業向け生産管理システム開発の完全ガイド

化学製造業向けの生産管理システムは、計画・現場実行・品質ロットの管理を連携させ、原料受入から出荷・原価までを一つの履歴で追えるものです。

必要な機能、導入方式、進め方、費用の目安、開発会社の選び方を、この順に取り上げます。各テーマの詳細は、下の関連記事でも確認できます。

▼関連記事一覧
・化学製造業向け生産管理システム開発の進め方/やり方/流れや方法/手法/工程/手順
・化学製造業向け生産管理システム開発でおすすめの開発会社/ベンダー6選と選び方
・化学製造業向け生産管理システム開発の見積相場や費用/コスト/値段について
・化学製造業向け生産管理システム開発の発注/外注/依頼/委託方法について

化学製造業向け生産管理システムの全体像

化学製造業向け生産管理システムで扱う処方・配合、工程条件、在庫・原価、ロットトレーサビリティを4枚のパネルに整理した図。
各項目の履歴が原因分析を支える構成です。

化学製造業の生産管理は、受注や需要予測から原料調達、処方、製造指図までを、同じデータでつなぐ仕組みです。現場実績、品質判定、ロット在庫、出荷、原価も、その一連の流れの中で一つの履歴に残ります。製造予定と完成数だけを記録する生産管理とは、扱う範囲が大きく違います。

一般的な組立製造と違う管理項目

組立製造では部品表と製番を中心に、決められた部品を組み合わせる場面が多くあります。一方で化学製造では、原料の性状やロットによって投入量を調整し、反応条件によって収率や品質が変わることがあります。

  • 処方・配合:版、投入順、許容差、代替原料を記録します。
  • 工程条件:温度・圧力・時間、設備、作業者、検査結果を残します。
  • 在庫・原価:中間品、副産物、廃棄物、再加工品も対象に含めます。

たとえば、歩留まりが標準値を下回ったとき、原料ロットと工程条件を追えれば、原因分析と再発防止を経験だけに頼らず進められます。

ロットトレーサビリティが価値を生む理由

化学製品で品質問題や問い合わせが起きたときは、製品番号に加えて、対象製品の原料ロット、同じ原料を使った別製品、製造バッチも確認します。設備、作業者、検査値、保管場所、出荷先まで追えない場合は、回収や影響の範囲を安全側に広めに設定することになります。

  • トレースバック:生産管理システムで、製品から原料へ遡って検索する方向です。
  • トレースフォワード:原料から使用製品へ辿る検索も行います。

紙台帳や複数の表計算ファイルを照合する運用から、数クリックで履歴を出せる運用へ移すと、調査時間、転記ミス、担当者への依存を減らせます。

生産管理システムとMES・LIMS・DCSの違い

生産管理、MES、LIMS、DCSの担当範囲を、業務全体、製造実行、試験・検査、設備制御の4層で示す図。
業務計画から設備制御まで、扱う粒度が分かれています。

生産管理は業務全体、MESは製造実行、LIMSは試験・検査を受け持ち、DCSやPLCは設備制御を担います。管理する時間軸とデータの粒度が異なるため、役割分担と連携方式を先に決めておきます。

生産管理システムが担う経営・計画層

生産管理システムは、受注生産・見込生産・仕込生産に応じて、製造時期と数量を計画します。

  • 業務連携:原料所要量計算から購買依頼、製造指図、在庫引当、出荷、売上、原価までをつなぎます。
  • 経営情報:在庫金額、納期、製品別採算、原料価格の影響を確認できます。
  • ERP連携:販売・購買・会計を全社で統一する場合に候補となります。

ERPがすでに稼働しているなら、販売や会計を二重に管理せず、生産管理を製造・品質・ロットに絞る設計も合理的です。範囲を広げると便利になる一方で、マスタ統合とデータ移行の負荷も増えます。

MES・LIMS・DCSを組み合わせる判断

現場実績、作業手順、設備状態、バッチ進捗をリアルタイムに扱うなら、MESが候補になります。試験依頼、サンプル、試験結果、規格判定、承認、保留解除が中心であれば、LIMSが適しています。

一方、DCSやPLCは反応器や計装機器を自動制御し、温度・圧力・流量などを秒単位で扱います。役割がそれぞれ異なるため、すべてを一つの製品に詰め込む必要はありません。

  • クラウドERP:標準化しやすい受注・購買・在庫を管理します。
  • 業種パッケージ:配合やロットの管理を受け持ちます。
  • MES・LIMS:現場実績・設備連携と試験・品質記録を担います。

製品名よりも、原料受入から出荷判定までのIDが途切れず連携するかどうかを見ます。

化学製造業向け生産管理システムの必須機能

機能一覧だけでは、自社に必要な範囲を判断しにくい面があります。そこで、代替原料、規格外、再加工の例外を含む業務シナリオで評価します。期限切れ、設備停止、計画変更といった場面も、同じシナリオに含めます。

品目・処方・バッチの管理

品目マスタには原料・資材・中間品・製品・副産物を登録します。単位換算や危険物区分、保管条件を品目ごとに持たせます。使用期限と再検査期限も、同じマスタで管理します。

  • 処方・レシピ:版、承認者、承認日時、適用日を管理します。
  • 製造指図:投入順、許容差、代替原料、配合パターンを扱います。
  • バッチ実績:原料ロット、設備、作業者、工程条件、出来高を紐づけます。

多段階の配合にも対応できれば、現場の判断をシステム外で行わずに済みます。また、投入計画と実績の差から、歩留まり差異や原価差異を月次で分析できます。

実績には収率、用役、廃棄量も含めます。さらに、配合変更が品質や原価に与えた影響を後から検証できることも重要です。

品質検査・保留・トレーサビリティ

検査項目・規格・サンプル・試験結果・判定者・承認日時を管理します。検査前の在庫は保留にし、合格後だけ引き当てられるようにすると、記憶や紙札に頼った誤出荷を防げます。

  • 規格外品:廃棄、再加工、特採、返品などの処置を記録します。
  • 承認経路:各処置の承認者と経路を残します。
  • 双方向検索:製品から原料へ、原料から製品・顧客・出荷へ辿ります。

回収訓練では、対象ロットから影響範囲を確定するまでの時間をKPIとして測ります。あわせて、実際の画面で検索できるかどうかを、テストで確かめます。

在庫・原価・現場入力の管理

在庫では、ロットごとの保管状態と期限を、タンクや倉庫の場所とあわせて扱います。入出庫と使用可否も、同じ在庫情報として持ちます。先入れ先出しの提案や、期限間近・保留中の在庫を計画から外す機能があると、廃棄と誤投入のリスクを抑えられます。

  • 端末操作:手袋をした状態で操作できるかを確認します。
  • 通信断:通信が切れても記録を保持できるかどうかを見ます。
  • 原価内訳:原料、歩留まり、用役、労務、間接費を含めます。

原価には廃棄・副産物・再加工も含め、ロット単位や製品単位で確認できるようにすると効果的です。原料価格が変動する業態では、標準原価と実際原価を分けて、差異の理由を追います。

現場の入力は後日まとめて転記せず、作業直後に登録して異常を知らせる設計が望ましいです。

ポイント

機能一覧の比較だけで決めず、代替原料や規格外品、設備停止などの例外を含む業務シナリオで評価すると、自社に必要な範囲を見極めやすくなります。

システムの種類と選び方:クラウド・パッケージ・スクラッチ

方式選定では、標準化できる業務と独自性の高い業務を分けます。たとえば、処方や工程条件が競争力に直結するなら、汎用機能に合わせると現場で使えないおそれがあります。

一方で、すべてを個別開発すると将来の保守負担が大きくなります。費用や機能数だけで判断せず、業務特性との適合を見ます。

クラウドSaaSと業種パッケージ

クラウドと業種パッケージは、標準化できる範囲や化学固有機能の対応状況で選びます。

  • クラウドSaaS:標準化しやすい受注・購買・在庫を早く始めたい場合の候補になります。
  • 業種パッケージ:配合、バッチ、ロット、期限、原価、品質の基本機能を備えます。

SaaSは初期費用を抑えやすく、バックアップや更新も任せやすい点が特徴です。なお、処方版、品質保留、設備連携、オフライン入力が標準で対応しているかは、製品ごとに確認します。

業種パッケージは、ゼロから作るより要件定義を短くしやすいです。ただし、例外機能を追加するたびに、更新への影響、テスト範囲、保守費用が増えます。追加開発の前に、業務変更・周辺サービスへの切り出し・標準機能での運用の三つを比べます。

スクラッチ開発とハイブリッド構成

独自の処方計算や特殊工程だけを個別に作り、残りを標準製品に任せる組み方もあります。その判断では、標準機能で表現できない業務を切り分け、段階導入で検証する範囲を見極めます。あわせて、ソースコードや設計書を自社に残せるかも確かめます。

  • スクラッチ開発:独自の処方計算、特殊工程、既存設備、顧客別品質帳票を標準機能で表せない場合に有効です。
  • 契約条件:ソースコード、設計書、テスト仕様、データ定義を自社に残せるか確認します。
  • ハイブリッド構成:標準のクラウドERPやパッケージを基盤に、配合・品質・現場入力を追加開発します。
  • 設備連携:設備データはMESやIoT基盤からAPIで取り込めます。

要件が曖昧なまま着手すると、完成後に現場の例外が使えず、仕様を説明できるのが担当者だけになることがあります。

2024年以降、化学プロセス向けバッチ製造管理製品でも、ERP、スケジューラー、品質管理システムとの連携を前提にする動きが見られます。

大規模に一括で導入するより、1製品群や1ラインで価値を検証するほうがリスクを小さくできます。

ポイント

標準化できる業務はクラウドやパッケージで整え、処方や工程条件など独自性の高い部分だけを追加開発するかどうかが、判断の目安になります。

化学製造業向け生産管理システムの進め方

化学製造業向け生産管理システムの導入検討を、現状把握とRFPの作成、Fit to StandardとPoC、データ移行・教育・切替の3項目で整理した図。
異常時の確認と移行準備も導入計画に含まれます。

導入前には、現状業務と目標を具体的にしておきます。「紙をなくす」といった目標のままでは、効果を測れません。

たとえば、トレースバックや在庫照会にかかる時間、製造実績の入力遅延を現状値として記録します。歩留まり、原価確定日数、規格外品の処置時間も、現状値として残します。

▶ 詳細はこちら:化学製造業向け生産管理システム開発の進め方/やり方/流れや方法/手法/工程/手順

現状把握とRFPの作成

提案を同じ条件で比べるには、現場の通常処理と例外の両方をRFPに落とし込むことが欠かせません。

  • 業務フロー:原料受入、検査、保管、払出、計量、仕込、反応、充填、中間・最終検査、出荷の流れ。
  • 例外処理:代替原料、投入ミス、通信断、規格外、再加工、返品、設備停止、緊急出荷も含めます。
  • 要件の分解:「現行通り」で済ませず、担当者、入力時期・内容、承認、次工程へ渡すデータを明らかにします。
  • RFPの基本情報:製品数、原料・中間品の種類、月間バッチ数、拠点数、利用者数、稼働時間を書き込みます。
  • 既存環境と比較条件:既存ERP・LIMS・WMS・DCS・PLC、保存年数、トレース範囲、移行対象、予算、希望稼働日を記載します。

処方版管理や品質保留の解除など、デモで確認するシナリオも添えます。

Fit to StandardとPoC

候補システムでは、標準機能で合わせる業務、設定で対応する業務、個別開発が必要な業務を分けます。法規制・安全・品質・競争力に直結しない帳票や画面は、標準化しておくと更新と教育が楽になります。

PoCでは、1製品群・1ライン・1倉庫を対象に、原料受入から製造、検査、出荷、トレースまでを一通り流します。あわせて、通信断、誤った原料、規格外の場面を試します。代替原料、再加工、計画変更も試します。

画面が動くかどうかに加えて、異常時に安全な状態へ戻せることを合格条件にします。

データ移行・教育・切替

移行・教育・切替は、データの正確さと操業継続の両面から準備します。そのため、データを正しく移しつつ、操業を止めない段取りを5段階で組みます。

  1. 移行範囲の決定:移行する過去ロットの範囲を決めます。
  2. データ照合:移行後の検索結果を現場と品質保証部門が確認します。
  3. 職種別の教育:管理者、品質保証、計画担当、作業者、保全、経理の業務ごとに教育します。
  4. 切替条件の決定:旧帳票を残す期間と二重入力の終了条件を決めます。
  5. 障害時の運用:問い合わせ窓口、紙運用、復旧後の再入力手順を定めます。24時間操業でも定着しやすくなります。

データクレンジングを後回しにすると、新システムでも混乱が再現されます。そのため、移行前に原料、製品コード、ロット番号の重複を整理しておきます。ほかにも次の項目について、重複を整理しておきます。

  • 単位
  • 期限・仕入先
  • 顧客
  • 設備
  • 処方

過去ロットは、全件を移行する、一定期間分だけ移行する、参照用に別保管する、のいずれかを選びます。

ポイント

導入前に現状値と目標を数字で持ち、1製品群や1ラインで試行してから対象を広げるかどうかが、導入の失敗を減らす判断の目安になります。

費用相場と開発期間:2026年時点の目安

費用は、拠点数や設備連携の範囲によって大きく変わります。品質・監査要件、データ移行、現場端末、操業を止めない切替支援の有無も、費用を左右します。ここに挙げる金額は一律の価格ではなく、公開価格や類似事例、化学製造の要件をもとにした、予算計画上の目安です。

▶ 詳細はこちら:化学製造業向け生産管理システム開発の見積相場や費用/コスト/値段について

導入パターン別の費用レンジ

費用と期間は導入範囲によって変わるため、方式ごとの目安と公開事例を、機能や条件も合わせて比べます。

  • クラウドSaaS:簡易入力や在庫・受注の初期費用は0〜60万円程度です。月額は数千円〜数十万円が加わり、導入は即日〜3か月程度が目安です。
  • 業種パッケージ:設定や軽微な追加開発を含み、300万〜1,500万円程度、3〜9か月程度が目安です。
  • 配合型パッケージ・工場MES:レシピ、設備・端末連携、品質判定、実績収集を含み、1,000万〜5,000万円程度、6〜18か月程度です。
  • 複数工場の統合:ERP・MES・LIMS統合、複雑なマスタ移行、24時間操業の切替では、5,000万円〜1億円以上、12〜24か月以上もあり得ます。
  • 公開価格:製造業向け業務管理サービスには、買い切り約400万円〜、フルスクラッチ約1,500万円〜の例があります。

クラウドの費用は、処方版、品質保留、双方向ロットトレース、設備連携を含むかどうかで変わります。公開価格には化学固有の品質・設備要件が含まれていないため、自社の見積もりにそのまま使えません。

公開事例では従業員50名規模の化学系原材料製造会社が、生産・販売、処方、在庫、ロットトレース、原価を一体化し、導入に15か月かかりました(出典:配合型製造業向け生産管理システムの公開導入事例、2026年確認)。

この事例は、自社の価格を決めるための数字ではなく、参考の一つです。ただし、Excel移行や販売管理との統合を含む場合は、数か月で終わるとは限りません。

初期費用だけでなく5年TCOでの比較

導入後に続く費用と効果も、初期費用と同じ期間に並べて比べます。

  • 初期費用:ライセンス・開発費のほか、要件定義、マスタ整備、移行、API連携を分けて確認します。
  • 運用費:端末、ネットワーク、教育、切替、保守、クラウド、バックアップ、脆弱性・法改正対応も見込みます。
  • 保守の目安:初期開発費に対し、一般的な年15〜25%程度を置いて契約条件と比べます。
  • 5年TCO:月額、追加ユーザー・拠点、容量、端末更新、サポート時間、カスタマイズ保守を含めます。
  • 投資効果:在庫・廃棄削減、原価確定の早期化、回収調査や転記工数の短縮を見積もります。

ポイント

費用は初期費用だけで比べず、運用費や保守費、投資効果を含めた5年TCOで比べます。公開価格は目安として扱い、見積もりの境界が明確かを確かめることが大切です。

開発会社・ベンダーの選び方

開発会社やベンダーは、知名度や価格だけでなく、得意な領域で比べます。たとえば、配合・ロット・原価を一体で管理する場合や、設備・バッチ・MESを扱う場合では、提案範囲や進め方が違います。ERP・販売・在庫の統合や、紙帳票の端末化についても、得意な範囲を確かめます。

化学製造の実績と対応範囲

「製造業の実績」があるかだけでなく、化学系のどの工程を経験したかを聞き、確認したいのは原料受入、計量、配合、反応、充填の工程での経験です。加えて、品質保留や再加工、危険物保管の経験を確かめます。SDS、期限管理、双方向トレース、設備連携の実装経験も見ておきます。

公開事例では、業種名に加えて、製品数、拠点、バッチ頻度、導入期間、現場人数、対象機能を確認します。デモでは、正常な指図だけでなく、代替原料、規格外、再加工、期限切れ、通信断、ロット回収の場面も、実際に操作して見せてもらいます。

品質保証に必要な承認・監査ログと、現場の短い入力動線を両立できるかどうかが、実務上の評価の観点です。

プロジェクト体制と発注条件

導入中や切替後の責任範囲が分かるよう、体制と契約条件を明確にします。

  • 体制:業務整理の支援、責任者、業務コンサルタント、連携・現場導入・保守の担当者を確認します。
  • 進行管理:契約後の継続参加、課題・変更管理、工場の停止可能時間、夜間切替への対応を明確にします。
  • 契約条件:納品物、受入基準、追加費用、遅延時の扱い、データ帰属、ソースコード・設計書の開示を確かめます。
  • 保守・移行:他社へ移行できる形式、障害時の復旧目標、リモート保守の接続方法を定めます。
  • 見積もり:設定と個別開発の境界を明確にし、機能ごとに費用を分けます。曖昧だと追加費用が生じやすいためです。

▶ 詳細はこちら:化学製造業向け生産管理システム開発でおすすめの開発会社/ベンダー6選と選び方

▶ 詳細はこちら:化学製造業向け生産管理システム開発の発注/外注/依頼/委託方法について

ポイント

知名度や価格だけでなく、化学製造の工程経験と、品質保証に必要な承認・監査ログを両立できるかで比べると、要件のずれを防ぎやすくなります。

法規制・セキュリティ・失敗パターン

適用される法規制は、製品、用途、事業所、取引形態によって変わります。法律名を並べるだけでなく、マスタ、帳票、承認、保存記録にどう反映するかを、品質保証・安全衛生・環境の各部門と決めておきます。

PRTR・SDS・GHSなどの情報管理

法規制の情報は、化学物質マスタや製造実績と結び付けて、対象製品ごとに確認します。

  • 化管法:PRTR・SDS制度に基づく化学物質の自主管理を確認します。
  • 集計データ:含有情報、取扱量、移動・排出量を原料ロットや製造実績と結び付けます。対象物質や届出実務も、定期的に確認します。
  • ラベル・SDS:労働安全衛生法のラベル・SDS、GHS情報、保管条件、注意事項を化学物質マスタと連携します。
  • 電子交換:厚生労働省はSDS情報交換の標準フォーマットを公開しています(出典:厚生労働省「SDS情報交換のための標準的フォーマット等の公開」、2024年)。
  • 追加要件:項目を構造化するとPDF保管より将来の連携を見据えられます。医薬品、食品、輸出品などは専門部門に確認します。

経済産業省は2026年2月に、2024年度PRTR届出データの概要を公表しました(出典:経済産業省「令和6年度 PRTRデータの概要」、2026年)。

工場ネットワークと監査証跡

生産管理をクラウドや社内ネットワークにつなぐ際は、ITだけでなく、OT、つまり設備制御や現場端末の安全も考慮します。経済産業省は2025年4月に、中小製造事業者向けの工場セキュリティ資料を公表しました。

  • ネットワーク:資産を把握し、IT・OTを分離します。
  • 運用管理:権限、パッチ、バックアップ、リモート保守を確認します。
  • 責任分担:サプライチェーンの役割をRFPに記載します。

上記の確認項目の根拠は、経済産業省「工場システムにおけるサイバー・フィジカル・セキュリティ対策ガイドライン Appendix」(2025年)です。

品質記録や処方の変更履歴には、変更者、日時、内容、理由、承認者を残しておきます。そのうえで、利用者が監査ログを削除できないことや、バックアップから復元できることを確認します。

通信断や停電後の重複登録を防ぐため、設備を直接インターネットへ接続せず、必要なデータだけを中継します。あわせて、障害時に安全な手動運転へ移れる構成も検討します。

よくある失敗と回避策

機能設計、データ連携、要件定義、稼働後の評価のどれかを切り離すと、導入後に問題が表面化します。よくある失敗は、この4つのどれかを切り離したことから起きます。

  • 入力負荷:項目を法規制・品質・トレースの必須、分析用、将来追加に分け、機能過多による停滞を防ぎます。
  • データ分散:配合や品質を表計算に残す場合、システム間の責任範囲と連携IDを決め、正とするデータを定めます。
  • 要件漏れ:要件定義を開発会社へ任せきると、現場の例外が後から判明することがあります。
  • 定着未確認:導入日をゴールにすると、稼働後の定着を測れないおそれがあります。

現場、品質保証、購買、営業、経理、保全を含めた意思決定チームを作り、PoCで異常系を確認します。

稼働後は入力遅延、トレース時間、在庫差異、規格外処置時間、利用率を月次で確認し、改善を続けます。

よくある質問(FAQ)

導入検討時によくある質問を取り上げます。製造形態や法規制によって適切な構成は変わるため、回答をそのまま要件にせず、現場の業務フローと照らし合わせてください。

Excel管理からいきなり全社システムへ移行すべきですか?

いきなり全社へ広げる必要はありません。1製品群、1ライン、1倉庫など、原料受入から出荷・トレースまで完結する範囲で、MVP(Minimum Viable Product)を作ります。

入力負荷と効果を確かめながら、表計算は参照用に残し、正とするデータを新システムへ段階的に移す方法が現実的です。

化学製造業ではMESまで導入しないと不十分ですか?

不十分とは限りません。販売・購買・在庫・原価を見えるようにすることが先なら、生産管理から始めます。現場手順、実績、設備データ、バッチ進捗をリアルタイムで管理したい場合は、MESを加えます。

既存のDCS・PLCやLIMSは置き換えず、責任範囲と連携項目を整理して段階的に接続します。

化学製造業向け生産管理システムの費用はどのくらいですか?

簡易なクラウド導入は初期費用0〜60万円程度、業種パッケージは300万〜1,500万円程度です。配合・品質・設備連携を含む工場単位の導入は1,000万〜5,000万円程度が目安です。

複数工場の統合や大規模なスクラッチ開発では、5,000万円〜1億円以上もあり得ます。移行、端末、教育、保守、ネットワーク、法規制対応を含めた5年TCO(総所有コスト)で比べます。

法規制対応はシステムだけで完結できますか?

法令の判断は、システムだけでは完結しません。化管法、労働安全衛生法、GHSは、製品・事業所ごとに専門部門が確認します。化審法や輸出管理、医薬品・食品の追加要件も、専門部門の確認が要ります。

システムには、必要なデータ、承認、帳票、保存履歴を実装します。あわせて、法改正の際にマスタや帳票を更新する運用責任者も決めておきます。

まとめ

選定で外せない基本原則

受注や在庫に加えて、処方版、バッチ、原料ロット、工程条件、収率を一つの履歴で追えるかを確認します。副産物、品質保留、再加工、出荷、原価も、同じ履歴に含まれるかを見ます。

生産管理、MES、LIMS、DCS・PLCは、それぞれ役割が異なります。そのため、最初にデータの責任範囲と連携IDを決めておきます。

最初に着手すること

まず、標準化する業務と独自要件を分けておきます。

  • 方式構成:業務特性に合わせて、システムを組み合わせます。
  • 要件と費用:提案を同じ条件で比べられる形に整理します。
  • 小さく検証:試行結果を確認して、導入範囲を広げます。

標準化しやすい業務はクラウドやパッケージで整え、独自性の高い処方・工程だけを追加開発します。リアルタイムの設備データは、MESやIoT連携で扱います。

RFPには代替原料、規格外、再加工、期限切れ、通信断、ロット回収を記載します。費用は移行・教育・保守込みの5年TCOで比較します。

法規制と工場セキュリティは要件定義から組み込みます。1製品群や1ラインでMVPと異常系テストを行います。

試行ではトレース時間、在庫差異、入力遅延、歩留まり、原価確定日数を測定し、結果を見ながら対象拠点を広げます。

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会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

もし、システム開発やプロダクト開発に関するご要望がございましたら、お気軽にお問い合わせください。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。