クラウド移行とは?方式・進め方・失敗しやすい点を解説

クラウド移行は、目的の定義と方式の比較を経て、小さな検証から本番運用の監視へ進みます。また、着手前には、対象システム、依存関係、移行目的、許容できる停止時間、完了条件を整理しておきます。

  • 既存のシステムやデータをクラウドへ移し、運用・性能・費用・可用性を見直す活動です。
  • 資産棚卸し、依存関係、方式、転送を計画します。加えて、ネットワーク、権限、検証、切替、ロールバックも計画の対象です。
  • 移行目的の候補は、老朽化対応、拡張性向上、拠点統合、運用効率化です。

クラウド移行の定義と役割

クラウド移行では、既存環境からクラウド環境への切替を計画します。あわせて、移行後の運用も見直します。

移行の効果を前後で比べられるよう、比較する項目を先に決めておきます。そのうえで、性能、費用、可用性、運用負荷を同じ条件で記録します。

クラウド移行の仕組みと判断の流れ

目的とデータの単位を定義し、候補設定を比較して、結果を意思決定できる形へ変換するクラウド移行の流れを示す図
判断に必要な情報を順番にそろえる

1. 目的とデータの単位の定義

最初に、資産棚卸しと依存関係を押さえ、移行方式を決めます。データ転送、ネットワーク、権限の扱いも定めます。

そのうえで、検証から切替、ロールバック、運用移管までの順序を決め、段階移行の計画を立てます。また、移行対象ごとに依存関係と業務への影響を確認し、対象外にするシステムやデータは、範囲と理由を記録しておきます。

2. 候補設定の比較と見積もり

リホスト、リプラットフォーム、リファクタリングなどの候補を比べ、対象システムごとの方式と切替の順番を記録します。検証の結果は次の計画に反映し、さらに停止時間、費用、性能への影響を見積もります。

3. 結果を意思決定できる形への変換

まず、移行件数、停止時間、データ整合性、性能の実績を押さえます。次に、費用、障害、利用率、運用工数、計画との差異を見て、業務への影響と合わせて判断します。

ポイント

判断に必要な情報は、対象の定義、方式の比較、結果の整理の順にそろえます。どこかの段階で情報が欠けていれば、次の段階へ進む前に補うのが目安です。

クラウド移行の使い方と適用場面

小さな検証からの開始

老朽化対応や拡張性向上などを目的に、既存環境をクラウドへ移したい場合に適しています。まず目的と成功指標を決め、代表的なシステムやデータで検証します。

採用の可否は、移行件数や性能だけでなく、費用、障害、運用工数、例外対応まで含めて判断します。

評価期間と集計条件の合わせ方

比較レポートには、指標の単位、対象システム、移行期間、集計範囲を記載しておきます。

本番運用への移行

本番移行後は、性能、費用、障害、利用率、運用工数を監視します。悪化した場合に備えて、判断する人とロールバック先を決めておきます。また、移行時と同じ集計ができるよう、記録も残します。

ポイント

小さく検証した結果を、費用、障害、運用工数、例外対応まで含めて見て、本番運用へ広げるかを決めるのが目安です。評価期間と集計条件をそろえ、比べられる状態で判断します。

クラウド移行と関連手法の違い

リホスト、リプラットフォーム、リファクタリングの3手法を並べて違いを整理した図
構成を保つか、最適化するか、構造を変えるか

リホストは構成を保ち、リプラットフォームは一部を最適化します。リファクタリングは構造を変えます。ほかに、リテインや廃止も選択肢になります。

方式ごとに、対象範囲、運用への影響、費用、可用性、戻しやすさを比べます。ただし、単純な順位付けはせず、移行目的や制約に合う方式を選びます。

クラウド移行の評価方法と数字の見方

主要指標と不確実性

評価の土台は、移行件数、停止時間、データ整合性、性能です。費用、障害、利用率、運用工数、計画との差異も、併せて追います。

診断と再現性

計画値と実績値は、対象システムや移行期間ごとに比べます。移行条件が違う場合は、その差も記録し、同じ基準で再集計できるようにしておきます。

ポイント

評価では、主要指標を並べるだけで終えず、計画値と実績値の差や移行条件の違いまで見ておくのが目安です。数字だけで決めると、条件の違いを見落とす恐れがあります。

クラウド移行で起きやすい失敗と対策

クラウド移行で起きやすい依存漏れ、費用見積り誤差、データ移行失敗、権限過大、切替リハーサル不足を確認するチェックリスト図
条件と未解決の課題を併記する

データと前処理の問題

依存関係とデータの変換範囲を確認します。そのうえで、対象データと処理前後の件数、値域を記録し、移行漏れや不整合がないかを検証します。

指標と問いの混同

起きやすい失敗には、依存漏れ、費用見積り誤差、データ移行失敗、権限過大、切替リハーサル不足、移行後の最適化放置があります。

移行の指標が改善しても、費用や運用上の課題が残ることがあります。そこで、判断に使った条件と未解決の課題を併記します。

運用条件の変化の見落とし

クラウドサービスの仕様や料金、利用状況は変わることがあります。そのため、再評価の条件を決めておき、実装時は各サービスの公式資料を確認します。

ポイント

移行前に依存関係とデータを確認し、指標が改善しても費用や運用の課題を併記しておけば、失敗に早く気づけます。判断に迷ったら、この2点から見直すのが目安です。

クラウド移行を採用する判断基準

業務上の目的と移行効果が明確で、対象ごとの方式、順序、戻し方を設計できる場合に採用します。一方、採用を見送る場合も、比較した移行方式と理由、次に必要な情報を記録しておきます。

移行計画には、対象範囲、方式、前提、切替条件、ロールバック手順をまとめておきます。成功例だけでなく、失敗した項目と対応も残してください。

ポイント

明確な業務目的と移行効果があり、方式、順序、戻し方を設計できるかが採用の目安です。見送る場合も、比較した方式と理由を残します。

クラウド移行のまとめ|目的・前提・評価の整え方

クラウド移行は、既存の環境からクラウド環境へシステムとデータを移し、移行後の運用、性能、費用、可用性も見直す活動です。

はじめに、移行目的、対象範囲、許容できる停止時間、完了条件を定めます。続けて、移行件数、性能、費用、可用性、運用負荷を確認します。

まず代表的なシステムで検証し、問題がないことを確かめてから、適用範囲を広げます。移行方式、切替条件、評価結果、ロールバック手順を記録したうえで、費用や運用負荷も含めて判断します。

よくある質問(FAQ)

Q. クラウド移行とは何ですか?

計画と実行を含む活動で、既存のシステムやデータをクラウド環境へ移し、運用・性能・費用・可用性を見直します。

Q. クラウド移行はどのような場面で使いますか?

老朽化対応や拡張性向上などを目的に、既存のシステムやデータをクラウドへ移し、可用性や運用を改善したいときに使います。

Q. クラウド移行を使うときの評価指標は何ですか?

移行件数、停止時間、データ整合性、性能を確認します。加えて、費用、障害、利用率、運用工数、計画との差異も見ます。

Q. クラウド移行で起きやすい失敗は何ですか?

依存関係の漏れ、費用の見積り誤差、データ移行の失敗、権限の過大、切替リハーサルの不足、移行後の最適化の放置に注意します。

Q. クラウド移行と似た手法はどう使い分けますか?

リホストは移設、リプラットフォームは一部最適化、リファクタリングは構造の変更にあたります。リテインや廃止も選択肢になります。

参考資料

本記事の定義と実務上の注意は、次の公式資料を参照しています。

具体的には、AWS Cloud MigrationとMicrosoft Azure Cloud Adoption Frameworkです。実装時は、利用するバージョンの公式資料を確認してください。

会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。