建設プロジェクト管理システム開発の発注/外注/依頼/委託方法について

建設プロジェクト管理システムの発注は、業務課題とKPIを整理し、RFPで各社の提案を比べ、契約を結んでから段階的に導入する流れで進めます。この順で進めると、現場で使われる仕組みにつながります。

各工程で何を決め、誰が確認するかを、発注形態の選び方から導入後の進め方まで順に説明します。

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建設プロジェクト管理システムを発注する前に知るべき全体像

建設プロジェクト管理システムを中心に、案件情報、現場・管理情報、利用者と操作を示した図
工程だけでなく、案件と現場を支える情報が集まります。

発注の成否は、業務課題を数値で定義し、現場で使う範囲から委託できるかで大きく変わります。開発会社の技術力と並べて、この2点を発注前に確かめておきます。また、契約と運用で、どこまでを誰が受け持つかも合意しておきます。

案件全体を扱う対象範囲

このシステムの対象範囲は、案件情報と現場・管理情報をつなぐところにあります。

  • 案件情報:工事台帳、契約・受発注、見積・実行予算、工程、タスク。
  • 現場・管理情報:図面、写真、検査、日報、労務安全書類、入退場、原価、出来高、請求、入金、ダッシュボード。
  • 利用者と操作:営業・工事・経理・本社・協力会社のうち、誰がいつ何を入力するか。

発注側は、通信が不安定な現場で写真を保存できるか、協力会社の招待が複雑でないかを確かめます。また、同じ原価を会計システムと二重入力しないか、何回の操作で入力できるかも見ておきます。

設計が現場の使い方に合わないと、導入後もExcelやメールへ戻る可能性があります。

業務課題のKPI化

企画書に「DX推進」と掲げるだけでなく、改善する業務指標を数値で決めておきます。たとえば、次のような数値が候補です。

  • 作業負担:報告書作成や写真整理の時間、現場訪問回数。
  • 進捗把握:工程遅延を把握するまでの日数。
  • 品質と安全:原価差異の発見時期、安全書類の不備件数。
  • 目標状態:日報集計を翌営業日までに終え、月次の原価差異を締め後5営業日以内に確認する。

KPIがあれば、入力・移行・教育・保守を含む総費用が効果に見合うかを比べられます。

KPIを決める際の参考として、建設現場には2040年度までに省人化を少なくとも3割、すなわち生産性を1.5倍にする目標があります(出典:国土交通省「i-Construction 2.0」の2025年度の取組予定、2025年)。

発注者側の体制とデータの持ち主

情報システム部だけで仕様を決めると、現場監督が使わないシステムになりがちです。

  • 利用部門:工事部、現場監督、協力会社、経理、営業、本社管理部門の代表者。
  • 担当者:意思決定者、業務責任者、データ移行担当、受入テスト担当。
  • データ:図面、写真、検査記録、契約書、日報、原価データの所有者を明確にする。

協力会社の画面や費用負担も社内で先に決めておけば、後工程の調整が軽くなります。

委託先がクラウドを運用する場合は、利用目的、保管期間、バックアップを発注者が決めておきます。さらに、退職者アカウントの削除と、契約終了時の返却形式も発注者が取り決めます。

建設プロジェクト管理システムの発注形態の選び方

標準的な業務に合わせられるならSaaS、会計・原価・発注を業界標準で統一したいなら建設業ERPやパッケージが候補になります。

独自業務や既存の基幹システムとの深い連携が競争力に直結する場合は、スクラッチ開発を検討します。

形態は、課題の重要度と変えられない業務の範囲で判断します。最初から全社を完全オーダーメイドで作る前提にはしません。

現場展開を早めたい場合のSaaS導入

SaaSは提供会社がクラウド基盤、更新、障害対応を担い、初期投資と導入期間を抑えやすい方式です。

SaaSは、標準機能から始めて1現場または1工程で操作性を検証したい会社に合っています。

標準機能の利用と制約、費用の比較では、次の点を見ておきます。

  • 試す機能:工程、写真、図面、日報、検査を、1現場または1工程で試す範囲。
  • 標準機能の限界:独自原価計算、複雑な承認、古い基幹連携、特殊帳票は、再現できない場合がある。
  • 料金の前提:現場数、利用者数、写真・動画容量、協力会社アカウント、電子黒板、BPO、API、導入支援。

KANNAは公式料金ページで、初期導入費用とサポート費用が無料で、他社アカウント数が無制限の3プランを案内しています(出典:株式会社アルダグラム「KANNA料金」、2026年確認)。ただし、他社の料金体系は異なるため、自社の人数と現場数で見積もります。

全社標準化と基幹連携を重視する場合のERP・パッケージ

建設業ERPやパッケージは、会計、工事原価、発注、請求をまとめやすい方式です。入金、給与、ワークフローまで含めやすいのも特徴です。

現場と本社の締め処理や経営管理を整えたい場合に適します。

業界向けのデータ項目や権限設計が備わる点も強みです。

  • 標準機能:業務をどこまでパッケージの仕組みに合わせるかの範囲。
  • カスタマイズ:個別に作り込む範囲と、標準のまま使う範囲の切り分け。

個社仕様を増やすと、更新のたびに追加費用が発生するうえ、将来の保守担当も限られます。

NECや内田洋行ITソリューションズなどに相談する場合は、会計だけでなく、現場の写真・工程・協力会社との連携範囲もRFPに記載します。

独自性と連携要件から見るスクラッチ開発の選び方

独自業務の機能と外部サービス連携を個別に作り込む場合は、次の要件が設計の対象になります。

  • 業務機能:見積・実行予算、複数工事の原価配賦、設備保全。
  • 外部連携:BIM、測量・IoT、会計・ERP・CI-NET・CCUS。

独自業務が利益や安全に直結し、SaaSやパッケージで差分を吸収できない場合に候補になります。

自由度が高いほど、曖昧な要件は費用と納期に影響します。そのため、最低限のMVP(Minimum Viable Product)を決め、効果を測りやすい写真・日報・工程から作ります。

全社の基幹連携は、検証後に広げます。なお、AIで開発期間を短縮できても、要件定義と権限設計、受入テストは欠かせません。また、脆弱性確認と運用教育も必要です。

ポイント

迷ったときは、課題の重要度が高い範囲を一部の現場で試せるかを基準にします。標準機能で足りない部分が多いほど、スクラッチ寄りの検討が必要になります。

RFPと要件整理の進め方

RFPに記載する案件業務、管理業務、性能と利用環境、保護と復旧の4領域を並べた図
機能と運用品質を分けると、提案条件をそろえやすくなります。

RFPは、希望機能だけでなく、背景、対象範囲、現行業務を伝える文書です。

データ、利用者、制約、評価基準、納期、契約条件も、RFPに含めて伝えます。

まず、現場ヒアリングを行い、業務フローを図にまとめます。これは、各社が同じ前提で提案できるようにするためです。

現場の一日を起点にした現行業務の整理

現場の一日の流れと例外時の対応を、次の観点で整理します。

  • 日常業務:朝の確認、作業員・協力会社からの情報、写真・日報登録、所長・本社が見る帳票。
  • 例外時の連絡:工程変更、追加工事、検査不備、資材遅延、原価差異。
  • 情報と操作:紙・Excel・メール・チャットの情報を案件ID、工種、日付、会社、担当者で整理し、端末で入力や閲覧範囲を試す。

現場の入力負担を増やす機能は、必須要件に入れないようにします。

機能要件と非機能要件の書き分け

要件は機能と運用品質に分けて、次の情報を記載します。

  • 案件業務:案件・工事台帳、見積、契約、予算、工程、写真・図面、検査、日報。
  • 管理業務:労務安全、入退場、原価、請求、通知、帳票、検索、承認。登録者・承認者と利用データの定義も含める。
  • 性能と利用環境:可用性、応答時間、同時利用者数、スマートフォン対応、オフライン、容量。
  • 保護と復旧:バックアップ、復旧目標、認証、権限、監査ログ、暗号化、脆弱性対応。
  • 運用条件:問い合わせ時間、障害連絡。

写真・動画の保存期間と、追加料金の計算方法も具体的に決めておきます。

RFPに含める提案範囲と評価方法

RFPでは、次の条件をそろえて各社に提示します。

  • 利用規模:対象現場数、利用者数、協力会社数、工事種別。
  • システム条件:既存システム、移行データ、連携先、希望導入時期、予算の考え方。
  • 費用範囲:初期、月額、追加開発、移行、教育、保守、解約時のデータ返却。

評価表には価格だけでなく、業務適合性、操作性、導入支援を含めます。また、実績、連携性、セキュリティを加えます。さらに、保守、拡張性、契約条件も評価の対象にします。

デモには自社の案件、写真、帳票、承認経路を使います。架空データだけで操作性を判断しないようにします。

ポイント

迷ったときは、各社が同じ前提で提案できるだけの情報がRFPにそろっているかを基準にします。希望機能より先に、現場の一日の流れと例外時の対応が書けているかを見ます。

準委任と請負の選び方

契約形態は、作業の不確実性と成果物の明確さで決まります。

要件が固まっていない調査・企画・要件定義は、準委任になります。一方で、仕様、納品物、検収条件が明確な開発は請負、運用改善は準委任が現実的です。

成果物、どこまでを誰が受け持つか、変更手続は、条項で確認しておきます。契約名だけで責任が決まるとは限らないためです。

検討・作業を柔軟に進める準委任契約

準委任では、発注者と受託者が一定期間協力し、工数や体制に応じて精算する形が一般的です。そのため、開始時点で仕様を完全に確定しにくい工程と相性が良いです。

  • 対象作業:現場ヒアリング、業務分析、プロトタイプ、要件定義、アジャイルな改善。
  • 決める条件:毎月の報告、稼働時間の上限、担当者の役割、成果確認、知的財産、再委託。
  • 作業結果:会議体、検討資料、画面モック、要件一覧などで確認できる状態。

請負契約での成果物と検収条件の具体化

請負では、成果物の完成と発注者の検収を定めます。そのうえで、納品物と変更管理の条件を契約書や仕様書に記載します。

  • 設計成果物:画面・機能一覧、API仕様、設計書の納品範囲。
  • 移行・テスト:データ移行結果、テスト結果、操作マニュアル、ソースコード。
  • 検収条件:検収期間と瑕疵対応の範囲。
  • 変更の受付:帳票改訂、法令変更、現場要望の受付者と影響分析。
  • 変更の合意:追加費用・納期の提示、承認者、変更後の検収方法。

変更管理を決めておくと、口頭の依頼による無償対応や納期遅延を抑えられます。

知的財産・データ・SLAの責任の分け方

契約時は、権利、データ管理、障害対応、サービス水準について、どこまでを誰が受け持つかを整理します。

  • 知的財産:開発プログラム、汎用部品、第三者サービス・OSSのライセンス。
  • データと委託:データ所有権、個人情報、秘密保持、再委託の条件。
  • 障害対応:脆弱性発見時の連絡と障害復旧。
  • 契約終了:終了後のデータ返却。
  • サービス水準:稼働率、サポート時間、重大度別の対応目標をSLAに分ける場合もある。

2024年公布の改正建設業法・入契法は、価格転嫁、ICT活用、技術者専任合理化などを含み、施行時期が段階に分かれています(出典: 国土交通省「建設業法・入契法改正」、2025年更新)。

法令対応は、システムを導入すれば自動で保証されるとは限りません。そのため、帳票、保存期間、承認記録、運用責任者を、社内の法務・管理部門と確かめます。

ポイント

迷ったときは、要件が固まっているかで決めます。固まっていれば請負、固まっていなければ準委任を基本にし、契約名だけで判断しないようにします。

建設プロジェクト管理システムの費用相場と内訳

費用は機能数だけでなく、現場数や利用者数、協力会社アカウントの数、写真・動画の容量で変わります。移行、連携、オフライン対応の範囲も、見積に影響します。さらに、権限、帳票、教育、保守も、見積の前提として確認する必要があります。

個別見積のサービスも多く、公開価格がないため、ここで示すのは、リサーチノートにある業務システム相場を建設業の範囲に当てはめた推定です。特定ベンダーの定価統計ではありません。

方式別の初期費用と期間の目安

方式ごとの推定レンジは、初期費用と期間の組み合わせで比べます。

  • SaaSの試用:1〜数現場で試す場合、初期設定・教育を含めて0〜100万円程度、導入2週間〜3か月程度。
  • クラウド製品の追加:帳票・権限・移行・API連携で100万〜500万円程度、2〜6か月程度。
  • ERP・パッケージ:500万〜2,000万円程度、導入6〜12か月程度。
  • スクラッチ開発:300万〜2,000万円が一般的な個別開発の目安。
  • 小規模PoC:50万〜300万円程度、期間0〜3か月程度。

会計・原価・BIM連携まで含む全社展開では、1,500万〜5,000万円程度となる可能性があります。

SaaSの月額は、利用者数や現場数、機能構成により3万〜50万円程度、大規模・複数機能では10万〜100万円程度の一般相場として示されることがあります。ただし、実際の価格は料金体系と利用条件で確定します。

いずれも要件と規模で変わるため、レンジを超える提案や下回る提案を、すぐに除外しないでください。

PoCでは、現場で使えるか、入力時間が減るか、写真や日報のデータが後工程で使えるかを確かめます。

PoCの目的は、完成版を安く作ることではなく、本番開発の判断材料を得ることです。

成果指標を決めないまま始めると、得た結果を判断に使えません。

開発費以外も含めた見積書の内訳

見積書では、次の費目を分けて確認します。

  • 開発工程:企画・要件定義、UI設計、アプリ・Web、API・データベース。
  • 導入作業:インフラ、テスト、データ移行、教育、プロジェクト管理。
  • 継続費用:クラウド利用料、ストレージ超過、SMS・電子署名などの従量課金、保守、監視、問い合わせ。
  • 追加費用:容量単価、利用者・現場の追加料金、協力会社利用料、API費用、移行件数、帳票単価。

クラウド利用料、従量課金、保守、追加開発は、月次・年次で示してもらいます。

初期費用が低くても、全現場展開後の月額や保守が高い場合があります。そのため、3年程度の利用期間を仮定し、初期費用とランニング費用を合算して比較してください。

段階導入とKPIによる費用対効果の検証

投資対効果は機能数ではなく、削減できる工数や損失で測ります。導入前に次の項目を測り、PoC後と本番後に同じ方法で比較します。

  • 作業時間:報告書作成と写真整理にかかる時間。
  • 確認負荷:現場と本社の確認回数、原価差異の発見日数。
  • 損失と不備:手戻り、請求漏れ、安全書類の不備件数。

まず、1現場・1工程のPoCから始め、数現場のパイロット、全社展開の順で進めます。価値が出た機能を残し、使われない入力や重複機能を減らすと、開発費と教育負担を抑えられます。

ポイント

費用は、同じ前提の見積を並べて比べます。初期費用だけでなく、3年程度の利用期間での合計で判断すると、見落としを減らせます。

委託先の選定と見積比較で確認するポイント

委託先を中心に、導入規模、運用実績、他社への確認を示した図
現場数や利用者数と、稼働後の利用状況をあわせて見ます。

開発会社は、知名度や提案資料の見栄えではなく、建設業務への理解と現場定着の体制で選びます。

SaaS、ERP・SI、受託開発では、得意とする領域が異なります。

同じRFPを渡しても、提案の前提が異なる場合があります。そのため、費用と作業範囲をそろえて比較します。

建設業務と類似規模の実績

実績を確認するときは、規模と導入後の運用状況を次の観点で見ます。

  • 導入規模:工事種別、現場数、利用者数、協力会社の参加方法、移行件数、連携先、導入期間。
  • 運用実績:稼働後の利用率、発注者・受託者の役割、現場教育と運用設計の担当者。
  • 他社への確認:同規模企業の見積差異、追加費用、導入後の問い合わせ量。

2026年2月にリバスタが公表した事例では、大林組がBuildeeを土木・建築部門の全現場へ統一し、2028年度中の全現場導入を目指しています。

2025年10月末時点で元請導入企業約800社、登録作業員約200万名、現場導入累計3万件以上と説明されています(出典:株式会社リバスタ「大林組、Buildeeの全現場導入を決定」、2026年)。

この事例からは、機能単体だけでなく、複数サービスの統一、協力会社の利用条件、段階展開、定着支援まで見ておく必要があることが分かります。

同じ前提での見積比較と、安さの理由

見積の項目、条件、金額差の理由をそろえて比べます。

  • 見積項目:要件定義、設計、開発、テスト、移行、教育、保守。
  • 提示条件:含むもの、含まないもの、前提条件、追加時の単価。
  • 安い見積:要件の読み落としやテスト・管理の省略、保守の別契約の有無。
  • 高い見積:過剰なカスタマイズや不要なライセンスの有無。

移行や現場教育の有無が違うと、総額の比較を誤ります。特に、安い見積では、経験の浅い要員の配置や、再委託費の後出しも確かめます。

金額差は、値引き交渉で埋めるより、業務範囲とリスクの差として比べます。

導入支援・保守・解約時の出口

導入時、運用中、契約終了時のそれぞれで、条件を確かめます。

  • 導入支援:説明会、操作マニュアル、管理者研修、協力会社への説明、問い合わせ窓口。
  • 運用保守:利用分析、定着支援、障害・機能改善、更新通知、料金改定、旧機能終了。
  • 運用責任者:データ復元とアカウント削除の責任者。
  • データ返却:写真、図面、帳票、監査ログ、マスタの返却形式・費用と消去時期。

便利なサービスを使うほど、データが蓄積されます。そのため、開始時点で出口を決めておくことが、長期のベンダーロックインを抑える対策になります。

ポイント

迷ったときは、同じ前提の見積で金額差の理由を説明できるかを基準にします。説明できない差は、業務範囲とリスクの差として、あらためて確かめます。

発注後の開発と導入の進め方

契約後は、要件定義と設計・開発を進め、テスト、移行、教育を行います。次に、パイロット、本番展開、改善へ進みます。

発注者は各工程で確認と意思決定を行います。ただし、作業を委託しても、業務の優先順位や受入の責任は発注者にあります。

要件定義後の画面とデータの流れ

画面とデータの設計では、利用者ごとの操作と情報のつながりを確かめます。

  • 画面設計:現場監督のスマートフォン入力と本社のPC集計の分離。
  • データ設計:案件ID、工事、工種、写真、検査、原価、協力会社をつなぐ。
  • 集計と権限:API連携できる構造にし、会社・現場・役割・承認状態で閲覧・編集を分ける。
  • 現場での試用:週次または隔週で写真、図面、日報、検査記録を確かめる。
  • 操作性の確認:入力負担、検索性、通知、通信断からの復帰。

要望はすべて追加するのではなく、KPIへの影響と費用・納期で優先順位を決めます。

現場の業務シナリオによる受入テスト

受入テストでは、実際の業務を次の順に通します。

  1. ログインし、案件を作成する。
  2. 協力会社を招待し、工程変更を登録する。
  3. 写真、検査指摘、日報承認、原価計上、請求を処理する。
  4. 帳票出力、権限変更、データ削除、障害復旧を確認する。

発注側は、通信断、写真の重複登録、担当者の退職、承認者の不在など、例外時の動きも確かめます。

受入条件は、必須機能が動くこと、重大な不具合がないこと、性能・権限・帳票・移行結果が要件を満たすことです。また、現場代表者が合否判定に参加します。

未解決事項、暫定運用、修正期限、担当者を一覧にすると、本番後の混乱を抑えられます。

協力会社を含めた教育と定着化の設計

一斉に切り替えるより、代表現場でのパイロットを経るほうが安全です。そのうえで、現場監督、協力会社、本社管理者それぞれに合わせて説明し、短い動画、操作手順、問い合わせ窓口を用意します。

利用率、入力完了率、未承認件数、問い合わせ内容を週次で確かめ、操作を妨げる要因を改修します。

協力会社の利用料金、アカウント制限、代理入力の可否は、展開速度を左右します。そのため、協力会社が登録する情報と元請が確認する情報を整理し、案内と利用ルールを契約・運用に組み込みます。

セキュリティと法令対応を発注条件に含める方法

システムには、契約金額、図面、住所、作業員情報が入ります。加えて、顔認証・入退場記録や事故・検査記録も扱うため、漏えい時の影響が大きくなります。

RFPでは、「セキュリティ対応済み」の一文で済ませず、質問項目に落とし込みます。まず、認証、権限、暗号化、バックアップについて尋ねます。さらに、監査ログ、脆弱性対応、障害連絡も質問に加えます。

クラウドの安全性と復旧条件

クラウドの安全性と復旧条件は、契約前に次の項目を確認します。

  • 保管とアクセス:データセンターの場所、委託先、保存・通信時の暗号化、MFA、管理者権限、ログ保存期間。
  • 復旧と保守:バックアップ頻度、復旧目標時間、障害履歴、脆弱性の修正方針。
  • 端末紛失:遠隔ログアウトやアカウント停止が可能か。

IPAの「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」第4.0版は2026年3月に公開されました。

第4.0版では、基本対策にバックアップを加え、クラウドサービス安全利用の手引きを付録に掲載しています(出典:IPA「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」、2026年)。

発注者は、この観点を質問票に反映し、回答を契約書や運用手順と結びつけます。

権限・監査ログ・データ返却の具体化

権限は、会社や現場、工種、役職を単位に設計します。協力会社との関係も含め、最小権限を基本にします。

  • アカウント:退職・異動時の停止時期、共有アカウントの禁止、承認履歴の閲覧者。
  • 監査ログ:図面のダウンロードや帳票出力など、情報を外へ出す操作も対象にする。
  • 帳票保存:建設業法や電子帳簿保存法に関係する保存要件を、システムだけに任せない。
  • 法令対応:更新責任、帳票の版、訂正・削除履歴、電子契約・会計との連携を、社内専門部署と受託先で確認する。

AI・BIM・CCUSの段階的な取り込み

BIM、IoT、CCUS、AI、設備保全は、将来の拡張候補です。そのため、要件には段階的に取り込みます。

  • AIの補助用途:写真分類、日報要約、議事録作成、工程遅延の兆候検出など、人が確認できる業務からの着手。
  • AIの管理条件:発注・契約・安全判断を出力だけで決めないための、入力データの出典、承認、訂正、ログ、利用停止の取り決め。
  • 将来連携:API、マスタ、権限、データ形式を連携しやすい構造にしておく。

国土交通省がデータ連携と施工管理のオートメーション化を推進するなか、システムは一度作って終わりにしないことが大切です。

将来使うか分からない連携は、初期費用に含めず、採用条件と実装時期を分けて見積もります。

建設プロジェクト管理システムの発注でよくある質問

方式、費用、進め方に関する疑問に答えます。自社の現場数や既存システムに合わせて、回答をRFPの確認項目に置き換えてください。

建設プロジェクト管理システムはSaaSとスクラッチのどちらがよいですか?

標準業務に合わせて早く複数現場へ展開するならSaaS、独自の原価計算や基幹連携が競争力に直結するならスクラッチが候補です。

決めきれない場合は、まずSaaSまたはパッケージでPoCを行い、標準機能で解決できない差分だけを追加開発します。

建設プロジェクト管理システムの開発費用はいくらですか?

費用は推定レンジとして捉え、同じRFPで各社の個別見積を比べます。

  • SaaS・クラウド製品:小規模SaaSは初期0〜100万円程度、移行・帳票・連携を加える場合は100万〜500万円程度。
  • ERP・スクラッチ:ERP・パッケージは500万〜2,000万円程度、スクラッチは300万〜2,000万円が推定の目安。

これらは、リサーチノートに基づく一般的なレンジです。ただし、利用者数、現場数、容量、連携、教育、保守の範囲によって変わります。

RFPには最低限何を書けばよいですか?

まず、背景とKPI、対象業務、現行フローを記載します。あわせて、利用者・現場数、協力会社数、必須機能、非機能要件も書きます。

既存システム、移行、連携、希望時期、評価基準、契約条件も含めます。

費用は、初期と月額、追加開発を分けた見積を求めると比べやすくなります。移行、教育、保守、データ返却も、別項目で示してもらいます。

協力会社もシステムを使う場合に何を確認しますか?

協力会社の確認事項は、アカウント料金、登録数、権限、招待方法です。あわせて、代理入力、スマートフォン対応、教育資料、問い合わせ窓口も確かめます。

協力会社が入力しなければ、データは完成しません。そのため、代表的な会社に実機で試してもらい、入力時間と操作のつまずきを評価します。

まとめ

発注では、SaaS、ERP・パッケージ、スクラッチを、業務課題と変えられない要件から選びます。そのうえで、RFPに現場・本社・協力会社の業務を具体的に記載します。

契約は工程ごとに準委任と請負を使い分け、成果物、検収、変更管理、データ、保守、解約時の返却まで合意します。

現場で使われる範囲から始める発注

費用は開発費だけでなく、移行、教育、月額、ストレージ、連携、保守を含む総額で比べます。

1現場・1工程のPoCでKPI、操作性、協力会社の参加、原価や工程データの活用を確かめてから本番へ進むと、過剰投資や未使用機能を抑えられます。

業務課題と比較条件の1枚まとめ

最初に、改善するKPI、対象現場、関係者、現行データ、既存システム、必須のセキュリティ条件を、1枚にまとめます。

その資料をもとに、複数社へ同じRFPを渡し、見積前提と導入支援の範囲をそろえます。そのうえで、建設業務と開発の両方を理解するパートナーと設計を進めることが、導入後の成功につながります。

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会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。