基幹システム開発の保守・運用費用・ランニングコストについて

基幹システムの保守・運用費用は、導入形態、企業規模、保守範囲によって変わり、月額数万円から数百万円以上が目安です。初期費用だけでなく、保守の人件費、インフラ・ライセンス費用、法改正への対応費用まで含めて見ると、数年単位の予算が立てやすくなります。

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基幹システムの保守・運用費用の全体像

保守・運用費用の構造は、オンプレミス型かクラウド型かによって変わります。また、企業規模も費用に影響するため、投資の判断は初期費用だけでなく、総所有コスト(TCO)で行います。

オンプレミス型・クラウド型の月次・年次費用相場

導入形態が変わると、月次・年次の費用相場も、見積もりの読み方も変わります。

  • オンプレミス型:ソフトウェアライセンス費用の年間15%〜22%が保守費用に当たります。
  • 社員数400名規模:月額115.6万円のライセンスに、月額27万円の保守費用が発生した事例があります。
  • クラウド型:利用ユーザー数と機能範囲で、月額利用料が変わります。

クラウド型では、企業規模によって月額の目安が変わります。小規模企業(年商〜10億円・従業員〜20名程度)は月額数万円から数十万円、中小企業(年商10億〜50億円・従業員20名〜100名程度)は月額数十万円から100万円超です。

中堅企業(年商50億〜400億円・従業員100名〜500名程度)は月額100万円超から数百万円規模で、大企業(年商400億円〜・従業員500名以上)は月額数百万円以上が目安です。

利用人数別に見ると、3年間の総ランニングコストは、30名規模で約1,300万円から1,950万円です。さらに、100名規模では約4,300万円から6,490万円、300名規模では約1.3億円から1.9億円という試算例があります。

企業規模別の費用感の目安

費用感は、初期開発費用との比率と、システム規模ごとの月額費用の二つに分けて見ると、つかみやすくなります。

  • 小規模システム:初期費用は300万〜1,000万円、月額は数万円から20万円程度です。
  • 中規模システム:初期費用は1,000万〜5,000万円、月額は15万円から80万円程度です。
  • 大規模システム:初期費用は5,000万円〜1億円以上、月額は数十万円から数百万円以上です。

リリース後の保守・運用費用は、年間で初期開発費用の15%から25%が目安です。月額の目安としては、初期開発費の5%から15%程度とされています。

保守に含まれる範囲は、規模によって変わります。小規模システムでは、最低限の問い合わせ対応や簡易な運用サポートが中心です。一方、中規模システムになると、SLA(サービス品質保証)に基づく障害対応、定期的なアップデート、軽微な改修枠が含まれ始めます。

大規模システムでは、24時間365日の監視体制、他システムとの複雑な連携保守、厳格なセキュリティ対応が求められます。そのため、自社の規模帯を把握したうえで、数年単位のランニングコストまで含めて予算計画を立てることが重要です。

ポイント

まず導入形態を決め、そのうえで自社の規模に近い相場を見ると比較しやすくなります。初期費用だけで判断せず、数年分の総所有コストで比べるのが基本です。

保守費用に含まれる作業内容とインフラ・ライセンス費用の内訳

保守費用の人件費に含まれる問い合わせ対応、障害対応・バグ修正、運用・軽微な改修を示す図解。
日々の受付から改善まで、作業の役割が分かれています。

保守費用は、システムを維持するための実費と、作業を担う人の人件費に分けて考えます。内訳を分けて見ると、見積書の妥当性を判断しやすくなります。

保守費用に含まれる作業内容(人件費)

保守費用の中心は、システムを維持・管理するエンジニアの稼働です。具体的な作業は、次の3段階に分けられます。

  • 問い合わせ対応:現場ユーザーからの質問や不具合を受け付けます。
  • 障害対応・バグ修正:停止時の復旧と、恒久対策を進めます。
  • 運用・軽微な改修:バックアップや更新、改善を担います。

問い合わせ対応は一次対応にあたり、不具合の原因調査までを担当します。障害対応・バグ修正には、システム停止時の初動対応、暫定復旧、恒久対策プログラムの適用が含まれます。初動対応では、15分以内の着手を定める場合もあります。

運用作業・軽微な改修には、データバックアップの取得と復旧テストが含まれます。さらに、OSやセキュリティのアップデート対応、定例リリース枠による改善も該当します。

稼働後の設定変更やユーザーへの操作教育などの伴走支援は、委託費用として発生することがあります。こうした人件費相当の作業が、保守費用の大部分を占めます。

インフラ・ライセンス費用(実費)との違い

インフラ費用は、システムを稼働させる物理的・ソフトウェア的な場所代です。保守の人件費とは別に、実費として発生します。

  • クラウドサーバー:利用料は月額数万円〜が目安です。
  • データ基盤:データベースやストレージの利用料がかかります。
  • ソフトウェア:各種ソフトウェアのライセンス費用が必要です。
  • 外部サービス:外部APIや連携ツールの利用料です。
  • 証明書など:ドメイン維持費やSSL証明書費用がかかります。

開発・運用全体の費用のうち、これら諸経費が20%から30%程度を占めることもあります。

オンプレミス型では、サーバーの電気代とハードウェアの定期メンテナンス・リプレイス費用がかかります。さらに、これらを監視・管理する情報システム部門の人件費も、隠れコストとして継続的に発生します。

一方、クラウド型では、サーバーインフラの維持管理やセキュリティ対応をベンダーが行います。そのため、インフラ関連の費用はライセンス費用に含まれ、追加の費用が発生しにくい点が特徴です。

インフラ・ライセンス費用は、システムが存在する限り毎月・毎年固定で発生します。ただし、アクセス数やデータ量が増えると、従量課金でさらに上がります。

ポイント

人件費とインフラ・ライセンス費用を分けて見ると、見積もりのどこで費用がかかっているかを判断しやすくなります。従量課金の部分は、利用量が増えると上がる点も確かめます。

バージョンアップ・法改正対応にかかる追加コスト

オンプレミス型では数百万円から数千万円の追加費用が生じる場合があり、クラウド型ではベンダー側が自動で更新する違いを示す図解。
カスタマイズの有無が、更新時の負担を左右します。

基幹システムは、会計・人事・販売など、法制度の影響を受ける業務を扱います。そのため、法改正のたびに一定の対応コストが発生し、その大きさは導入形態によって変わります。

オンプレミス型とクラウド型でのバージョンアップコストの差

バージョンアップの追加コストは、カスタマイズの量と導入形態によって変わります。

  • オンプレミス型:メジャーアップデートで、数百万円から数千万円の追加費用が生じることがあります。
  • クラウド型:法改正や機能改善の更新を、ベンダー側が自動で行います。

オンプレミス型では、既存のカスタマイズ(アドオン)の影響で、追加開発や再設定が必要になることがあります。特に、既存システムに独自連携用アドオンを重ねると、老朽化やブラックボックス化が進みやすくなります。さらに、本体のメジャーバージョンアップ時に追加改修や再設定が必要になる悪循環に陥りやすい点にも注意が必要です。

クラウド型では、法改正や機能改善のアップデートに伴う追加費用は、原則として発生しません。ただし、法改正や組織変更に合わせた設定変更と業務フローの見直しは必要です。そのため、これらに対応する社内リソースと運用予算を確保しておく必要があります。

インボイス制度・電子帳簿保存法など法改正対応

法改正への対応では、請求書の発行と保存に関する制度上の要件を満たすことに加えて、入金データを会計モジュールへ渡す際の処理も確認しておきます。

  • 適格請求書:インボイス制度の発行要件を満たす必要があります。
  • 請求書控え:電子帳簿保存法の検索・保存要件を満たします。
  • 入金データ:会計モジュールへの例外処理の扱い。

インボイス制度の正式名称は、適格請求書等保存方式です。基幹システムがブラックボックス化していると、新しい法要件への改修に多大な工数がかかります。

代理店や取引先からの入金データを会計モジュールへ連携する場合は、実務上の例外処理も確認が必要です。たとえば、振込名義の相違や振込手数料の差額処理、複数案件の合算入金を自動化できるかどうかが論点になります。

法改正への追随コストを見込むことは、ランニングコストの正確な見積もりに欠かせません。

ポイント

カスタマイズを重ねるほど追加コストは膨らみやすいため、契約前に独自部分の量と、その改修の範囲を把握しておくと判断の目安になります。

内製と外注のコスト差とベンダーロックインのリスク

運用保守を外部ベンダーに任せるか、自社で担うかによって、長期のコストは変わります。外注と内製化のそれぞれに、コスト構造とリスクの違いがあります。

外注による保守と内製化によるコスト削減の比較

外注と内製化では、障害時の対応を誰が担うかと、保守費用の抑え方が変わります。

  • 外注:SLAを結ぶことで、障害時の対応スピードを確保しやすくなります。
  • 内製化:設定変更や簡単なテストから、段階的に進めます。
  • 体制設計:社内体制とパートナー支援の配分を決めます。

多くの企業は、運用保守をSIerに外注しています。ただし、外注では年間数千万円の保守費用が発生するケースも珍しくありません。

一方、ブラックボックス化して特定ベンダーに依存すると、軽微な改修でも高額な追加見積もりが発生します。そこで、プロジェクトの初期から社内メンバーを教育しておく方法があります。

内製化によって外部コンサルタント費用を抑えられ、長期的な保守費用の削減にもつながります。なお、業務の責任はユーザー側にあるため、外部ベンダーに任せきりにはできません。

過度なカスタマイズによるベンダーロックインのリスク

過度なカスタマイズを避けることに加えて、標準機能と契約条件の両面からロックインを確かめておく必要があります。

  • ブラックボックス化:保守や改修を特定ベンダーに任せきりになりがちです。
  • Fit to Standard:業務を標準機能に合わせる方針です。
  • SLA確認:バグ修正の範囲と初動対応時間を、契約前に見ておきます。

特殊な業務に合わせて過度なカスタマイズ(アドオン開発)を重ねると、内部構造がブラックボックス化し、ベンダーロックインの状態に陥るおそれがあります。

特に、バージョンアップや法改正のたびに高額な追加開発費を言い値で請求され、保守費用が高止まりする点は重大なリスクです。

契約前には、保守・運用とSLAが明確に示されているかを確かめることが大切です。SLAでは、恒久対策の提出期限なども具体的に見ておく必要があります。こうした確認は、費用を抑えながらロックインを避けることにつながります。

ポイント

外注と内製化のどちらに寄せるかは、社内で運用を回せる範囲を基準にすると判断しやすくなります。特定ベンダーへの依存は、カスタマイズを抑えることで防げます。

保守・運用コストを最適化する実務的なポイント

総所有コスト(TCO)を中心に、初期費用、保守費用、インフラ・ライセンス費用、追加改修費用、運用工数を配置した図解。
保守料以外の継続費用や運用工数も全体像に含まれます。

保守費用は、契約段階での見極めと、稼働後の中長期的な予算管理の両面から抑えられます。まず保守契約の中身を確かめ、そのうえでTCOの視点から中長期の予算を組みます。

保守契約・SLAを見極めるチェックポイント

保守契約は、料金と保証範囲をセットで確認することが基本です。

  • バグ修正範囲:無償対応と別途見積もりの線引き。
  • 初動対応時間:例として15分以内の着手や、恒久対策の期限。
  • 問い合わせ窓口:受付時間帯、チャネル、月間上限。
  • 軽微な改修枠:月次保守費用に含まれるかどうか。
  • 責任分界点:障害の切り分けと復旧を、どこまで誰が受け持つか。

基幹システムは、業務が止まると影響が甚大です。そのため、SLAの項目が契約書に明記されているかどうかで、追加費用と対応スピードが左右されます。

保守費用の安さだけで契約すると、対応範囲外として高額な別途見積もりを提示されることがあります。その結果、TCOが膨らむおそれがあります。そのため、金額とSLAはセットで比べることが欠かせません。

TCO視点での中長期の予算計画とコスト削減策

TCOを試算するときは、費用項目と削減策を分けて考えます。

  • 5年間のTCO:初期費用から隠れコストまでを含めた試算。
  • 3年間試算:30名は約1,300万〜1,950万円、100名は約4,300万〜6,490万円です。
  • クラウド移行:インフラ維持やバージョンアップの負担を軽減します。
  • 段階的な内製化:設定変更や簡単なテストで外部委託費を抑えます。
  • 標準機能の活用:過度なカスタマイズを避けて、Fit to Standardを徹底します。

基幹システムのコストは、5年間などの期間で見た総所有コスト(TCO)で捉えることが大切です。初期開発費用や単年度の保守費用は、その一部にあたります。

TCOには、初期費用、毎年の保守費用、インフラ/ライセンス費用を含めます。また、法改正対応やバージョンアップに伴う追加改修費用も含めます。さらに、情報システム部門の運用工数も、隠れコストとして試算します。

300名規模では、3年間の総ランニングコストが約1.3億円から1.9億円という試算例もあります。

導入時点で数年先までのコスト推移をシミュレーションし、定期的に保守契約の内容と実際の利用状況を照らし合わせて見直します。

ポイント

契約時にはSLA項目を金額と並べて比べ、稼働後は数年分の試算を利用実態に合わせて更新すると、追加費用を見落としにくくなります。

まとめ

基幹システムの保守・運用費用は、導入形態によって構造が大きく異なります。オンプレミス型はライセンス費用の年間15%〜22%程度、クラウド型は企業規模に応じて月額数万円から数百万円が目安です。

保守費用は、問い合わせ対応・障害対応・軽微な改修などの人件費が中心です。一方、インフラ・ライセンス費用などの諸経費は実費として別途発生し、開発・運用全体の費用の20%〜30%程度を占めることもあります。

バージョンアップや法改正対応は、オンプレミス型で高額になりやすく、クラウド型では抑えやすい傾向があります。長期的な費用の抑制とベンダーロックイン回避の鍵は、内製化の推進と、過度なカスタマイズの回避にあります。

契約段階では、SLA(バグ修正範囲・初動対応時間・責任分界点など)を見極めます。そのうえで、総所有コスト(TCO)の視点から数年先までのコスト推移をシミュレーションすると、稼働後の費用膨張を防ぎやすくなります。

初期費用だけでなく、数年単位のランニングコストまで見据えた予算計画が、基幹システムを長く安定して活用する重要な一歩です。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。