CQRSのシステム開発の発注/外注/依頼/委託方法について

CQRSのシステム開発は、業務課題の整理、PoCでの検証、段階的な開発と運用設計の流れで進めると、複雑さに見合う予算と体制につながります。

発注形態から始めて、要件と契約、費用、委託先の選定を順に説明します。全体像はCQRSのシステム開発の完全ガイドもご覧ください。

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・CQRSのシステム開発の完全ガイド

CQRSのシステムを発注・外注する前に知っておきたい全体像

CQRSは、データを変更するCommandと、読み取るQueryの責務を分ける設計です。更新側では業務ルールや整合性を守り、一方で参照側は、画面・帳票・検索に合うRead Modelを設計します。

CommandとQueryを分ける理由

発注する際は、更新処理と参照処理の役割を具体例で確認します。どの処理がどちらに属するかは、発注側と開発会社で合わせておきます。

  • Command:受注確定時の入力検証、在庫引当、与信、承認権限、重複送信の排除、トランザクションを確かめる
  • Query:注文一覧を、検索条件に合う結合・集計済みのRead Modelから返す
  • 分離の効果:更新と参照を、それぞれの要件に合わせて組み立てやすくなる

ただし、イベント発行からProjection更新までを非同期にすると、Command完了後に数秒程度の表示遅延や一時的な不一致が起こることがあります。Microsoft Learnも最終的な整合性を考慮事項に挙げています(出典: Microsoft Learn「CQRS パターン」、2025年4月30日更新)。そのため、発注前に業務ごとの許容遅延を決めておきます。

CQRSを適用する範囲と適用しない範囲

更新の正しさと検索・集計の使いやすさを別々に求める業務では、CQRSを適用する効果を検討できます。

  • 適用を検討する業務:複雑な更新ルールや多い参照がある業務で、受注、決済、在庫、契約、申請、取引履歴など
  • 分離を急がない業務:単純なマスタ登録や小規模な社内申請では、別DBやイベント基盤の保守負担が効果を上回ることがある
  • 段階導入:最初は書き込みDBと読み取りDBを分けず、同一アプリ内でCommand HandlerとQuery Handlerを分けて単一RDBを共有する

負荷や検索要件が明らかになった部分だけ、Read Replica、検索エンジン、別DBへ広げます。なお、RFPでは、CQRSを採用するという結論よりも、どの課題をどの分離で解決するかを求めます。

CQRSのシステムの発注形態

発注形態は、標準機能で足りるか、社内に残す設計知識や既存連携がどこまでかを見て選びます。さらに、初期予算と導入速度も判断材料になります。

SaaSやパッケージ、クラウド、スクラッチ開発は、課題に合わせて組み合わせます。段階的な外注も、課題に応じて取り入れます。

SaaS・パッケージを活用するケース

顧客管理や商品マスタ、申請受付などが中心で、複雑な更新ルールや大量の参照がない場合は、SaaSやパッケージを優先します。必要なAPI、データ出力、権限が備わっているかを確かめます。さらに、監査ログと連携方式も確認します。

標準機能に足りない部分だけを開発する場合は、データの正本をどこに置くか、更新APIをどう作るか、自社でRead Modelを持つかを決めます。

SaaSのデータを検索用DBへ複製する場合は、反映の遅れや取得失敗、削除・訂正への対応を、提案書と契約書で確かめます。さらに、利用規約とデータ返却の扱いも、契約書で押さえます。

クラウド・スクラッチで構築するケース

独自の業務ルールがあり、複数の画面や外部サービスで同じデータを参照して、読み書きの負荷も異なる場合は、クラウド上の専用開発が候補になります。AWSでは、書き込みと読み取りのデータストアを分け、イベントでつなぐ構成を組めます。

  • 書き込み側:DynamoDBやAuroraが候補になる
  • 読み取り側:Auroraや検索基盤を使う構成が選択肢です
  • イベント連携:Lambda、SQS、EventBridgeによるProjectionの更新

AWS Prescriptive Guidanceは、Command側で検証・認可・更新し、イベントでQuery側を更新する流れを示しています(出典: AWS Prescriptive Guidance「CQRS pattern」、2026年確認)。クラウドでもデータストアが増えると、バックアップやログの管理が必要になります。さらに、データ転送、監視、障害時の再処理も欠かせません。

AWS Auroraの利用量やストレージ・I/Oの選択は料金に影響します(出典: AWS「Amazon Aurora pricing」、2026年確認)。見積では、コマンド数とクエリ数、イベント数を分けて算出してもらいます。さらに、保存期間とピーク同時実行数も、別に示してもらいます。

一括発注と段階発注を使い分ける方法

一括発注は、責任範囲や納期、予算をまとめて管理しやすい方法です。一方で、CQRSでは実装の途中で業務境界やイベントの粒度を見直すことがあります。そのため、要件が固まらないまま全社分を固定すると、追加の変更が膨らみやすくなります。

  1. 現状調査と要件定義の契約を結ぶ
  2. 1業務のPoCを行う
  3. MVPを開発する
  4. 本番展開へ進む

PoCでは、正常系の画面だけでなく、イベントの重複や順序逆転、Projectionの停止時の動きも確かめます。さらに、Read Modelの再生成や権限エラー、通信断からの復旧も確認します。

PoCの検証結果を、次の段階の見積条件に反映できます。そのため、委託先のCQRS経験を見極める機会にもなります。

CQRSのシステム開発を外注する進め方

現状調査から教育・稼働後の改善まで、CQRS開発を外注する工程を矢印で示した図。
PoCの実測結果を次の見積条件へつなぐ構成です。

業務課題と検証条件を整えてから候補会社へ相談すると、提案を比べやすくなります。そのうえで、各工程で何を判断し、どの納品物を受け取るかを先に決めておきます。

  1. 現状調査で業務とデータの正本を確認する
  2. 要件定義とPoCで非同期処理を実測する
  3. 提案・見積を比較し、契約範囲を決める
  4. 設計・開発後に分散テストと移行を行う
  5. 教育し、稼働後の改善を続ける

現状調査での業務とデータの正本確認

対象業務の利用者や拠点、1日の更新と参照の件数を洗い出します。さらに、ピーク時間と既存DB、外部連携を書き出します。障害時の手作業も、同じように洗い出します。

業務ごとに、指示を出す人や正とする状態、確認に使う画面や帳票を記録しておきます。Command側の正本と、Query側の派生データは区別しておきます。

そのうえで、Read Modelを直接編集するか、Commandで訂正するか、イベントログに履歴を残すかを決めます。Excelやバッチ、手作業も調べておきます。把握されていない業務ルールは、本番障害につながることがあります。

PoCと要件定義での非同期処理の実測

PoCでは、1つの業務ユースケースを選び、Commandを受け付けてからQuery表示まで一通り通します。途中のイベント発行やProjection更新も、その流れで確かめます。

  • 応答と反映:Command応答時間とQuery反映時間
  • 処理量:イベント処理量と失敗時の再試行時間
  • 復旧:Read Model再構築時間と障害後の復旧手順

この実測によって、非同期処理の遅れや復旧の時間を、見積の前に数字で確かめられます。要件定義では、最終的な整合性で足りる画面と、即時性が必要な画面を分けます。

決済や在庫引当、二重申請の防止は、Query表示だけで完了を判定しない設計が必要です。一方で、分析ダッシュボードや検索一覧では、数秒の遅延を許容して参照性能を優先できる場合があります。そのため、業務ごとの許容値を数値で決め、見積とテストの条件に入れます。

分散テスト・移行・運用設計の範囲

Commandやイベントを分散して処理する構成では、障害が起きたときに原因を特定し、復旧できるかを確かめます。

  • イベント:Command再送、重複、順序逆転、メッセージ欠落
  • 処理基盤:Projection停止、DB障害、権限不足、スキーマ変更
  • 復旧:Read Model再生成、手動再送、自動リトライ、Dead Letter Queueへの隔離

移行では、既存データをCommandで再投入するか、専用のProjectionを使うか、過去イベントのスキーマを変換するかで方法を決めます。

稼働後は、Read Modelの遅延とイベントの失敗率、再処理の件数を監視します。さらに、Commandのエラー率とQuery応答時間も見ておきます。

納品物には、要件・設計書やAPI仕様、イベントカタログを含めます。さらに、Read Model定義、テスト計画と結果、移行計画も含めます。

ソースコードやInfrastructure as Code(IaC)、監視設定も納品対象です。加えて、運用手順書と教育資料も含まれます。

ポイント

次の段階へ進むかは、PoCで非同期処理の遅れや復旧時間を実測できたかで判断します。実測の結果を次の見積条件に反映できれば、段階的な発注を無理なく続けられます。

RFPと要件整理に盛り込む内容

RFPに記載するデータ連携、イベント、非機能、個人情報の4条件を中心から放射状に示した図。
条件を分けると、提案各社の前提をそろえやすくなります。

RFPには、「CQRSで作る」という技術の指定だけでは不十分です。そのため、業務の背景や目的を書きます。対象業務や現行システム、データ量も記載します。

さらに、要件や移行、運用の方針を示します。納品物、提案形式、評価方法も記載します。

IPAの資料も、背景・目的や求めるシステムを記載する考え方を示しています。加えて、提案・契約の手続きや業務フロー、現行構成にも触れています(出典: IPA「ストーリーで学ぶ要件定義実践入門」、2026年確認)。

業務シナリオとCommand・Queryの一覧

要件は、機能名よりも業務シナリオで書きます。更新の指示と参照は、分けて整理します。

  • Command:受注確定、在庫引当、契約承認、申請差し戻し
  • Query:注文一覧、在庫検索、月次集計、監査照会

各項目には、利用者と入力、事前条件を添えます。さらに、成功条件と失敗時の扱い、権限も加えます。

Read Modelを画面ごとに作るか、複数の画面で共有するかも記載します。帳票の締め時点や検索の反映期限、集計の再計算によって、Projectionの設計と費用が変わります。さらに、過去時点の状態を確認する要件も、Projectionの設計と費用に影響します。

画面の速さだけでなく、誤って表示された場合に業務へ与える影響も説明します。

データ連携・非機能・セキュリティの条件

連携、非機能、セキュリティの条件は、分けてRFPに記載します。

  • データ連携:ERP・販売管理・在庫・会計・認証・外部APIの接続先、項目、頻度、方式、再送
  • イベント:送受信元や保持期間、互換性、重複排除キー、順序性を決め、ブローカーやOutboxの要否を検討する
  • 非機能:同時実行数、ピーク時のCommand応答・Query応答、反映SLO、稼働時間、復旧目標、監視・ログ・保守窓口
  • 個人情報:権限、保存期限、訂正・削除、再委託、ログ出力禁止項目

バックアップと脆弱性対応も非機能要件に含めます。また、個人情報保護委員会の指針は、安全管理措置と委託先監督の確認材料です(出典: 個人情報保護委員会「個人情報保護法ガイドライン(通則編)」、2026年確認)。

納品物と評価基準の決め方

納品の範囲と提案の評価基準を先に決めておくと、各社の条件をそろえて比べられます。

  • 設計資料:要件定義書、基本・詳細設計書、API仕様、イベントカタログ、Read Model定義
  • 開発資料:テスト計画と結果、移行計画、ソースコード
  • 運用資料:Infrastructure as Code、監視設定、運用手順書、教育資料
  • 提案評価:CQRSの代替案、PoC項目、障害時の責任分界、要件確認体制、ソースとデータの所有権
  • 見積条件:各社の前提、対象外、リスク、追加費用

イベント駆動の設計書が不足していると、発注先や担当者が変わった際に、再処理ができなくなることがあります。

ポイント

RFPには、CQRSを採用するかどうかよりも、どの課題をどの分離で解決するかを書きます。データ連携、イベント、非機能、個人情報の条件を分けて書くと、提案各社の前提をそろえられます。

請負と準委任の使い分け

要件が変わりやすい上流工程と、完成条件を定めやすい開発工程では、契約を分けられます。契約の前に、納品物と、発注者が決める範囲、仕様変更の手順を確認します。

請負契約を使う工程

請負は、完成条件を合意できる工程に向いています。その場合、確定した納品物と受入条件を契約に記載します。

  • 納品物:確定したAPI、画面、データ移行、テスト、納品資料
  • 受入条件:Command重複排除、Query反映時間、再処理、監視、不具合修正の扱い
  • 変更管理:変更単価、見積・承認者、納期への影響、保留作業

検収の基準は、具体的な受入条件で示す必要があります。「CQRS対応」の一語では、何を検収するのかを決められません。

また、発注者の業務ルールや連携先の仕様変更が、無料になるとは限りません。完成の責任と、発注者が提供するデータや判断、環境の範囲も分けて決めます。

準委任契約を使う工程

準委任は、工程の進め方を決めながら進める場面に使われます。契約時や請負への切り替え時には、決めておく事項を整理します。

  • 向いている工程:現状調査、要件定義、設計検討、PoC、アジャイル開発など、支援を受けて成果を調整する工程
  • 契約で定めること:稼働時間と担当者、会議・報告・レビューの進め方、作業場所、再委託の扱い、月次上限額、作業完了の条件
  • 契約の組み合わせ:PoCの実測値で構成を変える場合があり、要件定義は準委任、実装範囲の確定後は請負へ移る方法もある
  • 切り替え時の記録:未確定のイベント仕様、追加調査、採用しない範囲、次段階の見積前提を文書化する

知的財産権・SLA・終了条件

納品後の保守と、契約終了時の移管を見据えて、権利、SLA、終了条件を取り決めます。

  • 権利:コードやイベントスキーマ、Read Model、IaC、テストデータ・ログ・監視設定の所有権と利用権
  • ライセンス:フレームワーク、クラウド、OSS、再委託先の権利関係
  • SLA:稼働率、イベント遅延、停止の検知と通知、復旧と再処理、不整合の調査
  • 終了時:データ返却、Read Model廃棄、ログ・バックアップの保存と削除、アカウント停止、移管支援

リポジトリへのアクセス権と、文書の更新責任も明確にしておきます。

ポイント

要件が固まらない工程は準委任、完成条件を合意できる工程は請負で考えます。請負にする場合は、納品物と受入条件を契約に具体的に書きます。

CQRSのシステム開発費用相場とコスト内訳

PoCから基幹刷新まで、CQRS開発の4規模に対応する概算費用レンジを並べた図。
対象範囲や運用要件が大きいほど、見積もりの上限側を見込みます。

CQRS単独の国内公開の見積統計は、確認できません。そのため、一般的な業務システムの費用に、Read Modelとイベント連携の工数を加えて考えます。さらに、分散テストと運用設計の工数も加えます。

以下は、リサーチノートに基づく2026年時点の概算です。金額は、業務範囲やデータ量、連携本数で変わります。さらに、可用性や監査、既存データの移行でも差が出るため、金額を確約するものではありません。

規模別の費用レンジ

PoCから基幹刷新へ規模が上がるにつれ、費用も期間も段階的に大きくなります。なお、この費用と期間は、リサーチノートによる推定です。各レンジに含まれる範囲は、次の項目で示します。

  • PoC:1業務ユースケース、150万〜400万円、1〜2か月。簡易Projectionや負荷検証を含む
  • 小〜中規模本番:500万〜1,200万円、4〜7か月。1業務境界、RDB、Read Modelは1〜数個
  • 中規模クラウド型:1,200万〜3,000万円、6〜12か月。別DB等や連携、CI/CDを含む
  • 基幹刷新:3,000万円〜1億円超、12〜24か月以上となる場合がある

PoCには、Command・Query分離、簡易Projection、負荷・遅延検証を含みます。一方で、本番導入は、基本的なリトライや監視を想定します。

中規模クラウド型は、ブローカーや別DBまたは検索基盤、外部APIを含む想定です。基幹刷新には、複数ドメインや既存データの移行を含みます。加えて、マルチAZや災害復旧、監査も範囲に入ります。

24時間運用やEvent Sourcingも、基幹刷新の対象範囲です。

見積に含める初期費用と追加工数

初期費用は工程ごとに分けて、見積の抜けがないかを確認します。

  • 上流:企画・調査、要件定義、ドメイン設計
  • 開発:Commandの業務ロジック、Read Model、API、イベント
  • 基盤と導入:ブローカーやデータストアの設定、連携と移行、テストと教育、監視
  • 運用対応:リトライ、冪等性、DLQ、再処理、スキーマ変更、再構築手順

Projection実装だけでなく、運用対応の工数が見積に含まれるかを確認します。

別DBやブローカーを採用する場合は、初期開発費に20〜50%程度を上乗せして仮置きすると安全です。非同期処理や分散テストを含むときも、同じように見込みます。この数字はリサーチノートによる概算で、公開統計に基づくものではありません。

Event Sourcingを併用する場合は、イベントの長期保管、スナップショット、リプレイを考慮します。さらに、個人情報の訂正・削除やストレージの増大も見込んで、上限側の見積で比べます。

クラウド月額と保守・運用費

月額は、利用量と冗長化の要件で変わります。そのため、規模別の概算を予算化の起点にします。

運用費は、クラウドやDB、ブローカーの費用に分けて考えます。さらに、ログや監視、バックアップの費用を分けます。転送と保守工数も、別々に見積もります。

  • 小規模マネージド構成:月10万〜50万円程度
  • 中規模以上:月50万〜300万円以上

金額は、利用量と冗長化要件に基づく概算です。なお、夜間監視や24時間対応を外注する場合は、保守費をクラウド料金と別に見積もります。

月額の前提には、イベント数やクエリ数、保存量を置きます。さらに、ログ期間やバックアップ世代、ピーク同時実行数も前提に加えます。加えて、マルチAZやDRを前提にするかも含めます。

料金計算機と実測をもとに、月額を更新します。あわせて、監視や転送、障害対応が見積から除外されていないかも確認します。

ポイント

費用は規模別の概算レンジを起点に、別DBやブローカーなどの採用で上乗せ分を考えます。金額は業務範囲や連携本数で変わるため、各社の前提や対象外をそろえて比べます。

CQRSの委託先選定と見積比較のポイント

委託先は、業務理解と分散設計、クラウド運用を総合的に評価します。さらに、移行や障害対応、契約・知財の扱いも見ます。

候補にするのは、CQRSやDDD、マイクロサービスが自社の課題に必要かを説明できる会社です。Event Sourcingについても、同じように説明できるかを見ます。

CQRSと業務システムの経験の確認

実績については、対象業務やCommandとQueryの分け方、Read Modelを尋ねます。遅延・件数・可用性も、あわせて聞きます。

顧客名を出せない場合でも、匿名化した構成図や障害事例を説明できるかを見ます。さらに、再処理と移行方法の説明も確かめます。

CQRSを採用しなかった案件についても尋ねます。単純なCRUDで足りる領域をイベント基盤に分けなかった判断は、費用対効果を見ているかの材料になります。業務、開発、インフラの担当者が、同じ場で設計を説明できる体制も確認します。

見積書の前提・対象外・単価をそろえた比較

総額だけでなく、工程の区分、費用の条件、責任の範囲をそろえて比べます。

  • 工程:要件定義と設計、実装とテスト、移行、教育と監視、保守
  • 費用条件:人月、単価、期間、リスク予備費
  • 責任範囲:担当者、納品物、前提条件、対象外

イベント再処理や負荷試験が見積の外にあると、追加費用になる可能性があります。障害訓練やデータ移行も、見積の外にあれば、費用が増えることがあります。既存APIや正規化済みデータを前提にする場合は、その準備を誰が担うかも確かめます。

比較表には、Read Model数、イベント種類、連携本数を並べます。さらに、データ量とテスト環境も含めます。加えて、クラウド・ライセンス費と保守時間も載せます。

提案会社へ確認する質問

面談では、反映遅延の測定と表示、イベント重複の排除、順序逆転時の復旧を尋ねます。さらに、Projection再構築と個人情報の訂正・削除の反映についても聞きます。そのうえで、設計とテストを具体的に答えられるかを見ます。

本番の一次対応者や業務継続の手順、スキーマ変更の承認者を確認します。コードやIaC、監視設定の引き渡し形式を確かめます。再委託先との責任分界も、あわせて確認します。

営業担当に加えて、実装責任者や運用担当者から説明を受けられると望ましいです。

ポイント

委託先は、CQRSを使わない代替案を示せるか、障害時や再処理を説明できるかで判断します。営業担当だけでなく、実装責任者や運用担当者から説明を受けられるかも目安になります。

よくある質問(FAQ)

契約、費用、技術判断に関する疑問を取り上げます。そのうえで、自社の業務で許容できる遅延と運用体制を確認します。

CQRSとEvent Sourcingは一緒に発注すべきですか?

CQRSとEvent Sourcingは、別々に検討できます。CQRSは読み書きの分離で、通常のRDBをCommand側に置き、Read Modelだけ別にする構成も可能です。

Event Sourcingは、状態の変化をイベントとして正本に保存します。監査や履歴の再構築が必要な領域に絞って検討し、リプレイ、個人情報の削除、保守体制を評価します。

CQRSのシステム開発は通常の開発より高くなりますか?

別モデルやイベント連携、非同期処理が必要になります。再処理や分散テスト、監視も求められます。そのため、単純なCRUDより高くなりやすいです。

すべてを分散させなくてもよく、軽量CQRSや段階導入で追加費用を抑えられます。PoCで効果と運用負担を測ったうえで、費用レンジを更新し、本番の範囲を決めます。

CQRSの経験がある開発会社は何を基準に選べばよいですか?

業務シナリオとRead Modelを説明できるか、イベントの重複・順序逆転・欠落を扱えるかで選びます。さらに、再処理や監視、障害運用を説明できるかも見ます。

CQRSを使わない代替案や見積の対象外、コードやIaCの引き渡しを確認します。そのうえで、技術・業務・契約を合わせて比べます。

Read Modelの表示遅延はどのように発注条件へ入れますか?

画面や業務ごとに、Command完了からQuery反映までの目標時間を定めます。あわせて、遅延したときの表示も決めます。

分析や検索は数秒の遅延を許容できる一方で、決済や在庫引当、承認完了はCommand側を正とします。そのため、Query表示だけで判断しない設計が必要です。さらに、RFPと受入テスト、監視に同じSLOを記載します。

まとめ

CQRSの発注は、更新と参照の要件が異なる業務を特定するところから始めます。そのうえで、軽量CQRSを経て、別DBやイベント連携へ段階的に広げます。

発注形態は、課題に合わせて選びます。要件が固まっていない工程は準委任、成果と検収条件が定まっている工程は請負で考えます。

発注前に確認するポイント

発注前には、業務や処理の条件と体制を確認します。

  • 業務とデータ:対象業務、Command・Query一覧、Read Model更新
  • 処理条件:許容遅延、イベント重複・欠落・順序逆転への対応
  • 体制と契約:移行範囲、運用担当、納品物、責任分界

候補の会社には、CQRSを使わない案との比較を示してもらいます。加えて、PoCの検証項目も提示してもらいます。

業務ルールを発注者が確定する前提であれば、その作業を誰が担うかも確認します。

PoCから相談を始める方法

相談の前に、RFPと予算、委託条件を整理しておきます。費用は、リサーチノートによる推定レンジを比較の起点にします。

  • PoC:150万〜400万円程度
  • 小〜中規模本番:500万〜1,200万円程度
  • 中規模クラウド型:1,200万〜3,000万円程度
  • 基幹刷新:3,000万円〜1億円超

RFPには、業務シナリオと許容遅延、Read Modelを盛り込みます。さらに、連携条件やイベント異常時の対応、再処理を入れます。

加えて、セキュリティと移行、監視を入れます。納品物と責任分界も、同じRFPに盛り込みます。

基幹刷新の金額も含めて、各社の前提や対象外、運用費をそろえて比べます。委託先は、業務価値と運用責任まで説明できる会社を選びます。PoCでは、正常系だけでなく、障害・再処理・再構築も検証します。

契約では、ソースコードやイベントスキーマ、Infrastructure as Codeを自社資産として受け取れるようにします。さらに、監視設定とRunbookも、自社資産として受け取れるようにします。

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会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。