CRM開発のフルスクラッチ・オーダーメイド開発について

CRMのフルスクラッチ・オーダーメイド開発は、既製品やノーコードでは対応できない特別な事情があるときに選ぶ、独自構築の方法です。

判断では、業務フローへの適合性、既存システムとの連携、導入後の保守体制を比べ、必要な範囲を選びます。全体像は下のガイドでも確認できます。

▼全体ガイドの記事
・CRM開発の完全ガイド

CRM開発の選択肢とフルスクラッチの位置づけ

SaaS標準利用からフルスクラッチまで、開発範囲が広がるCRM導入方法を並べた図です。
既製機能の利用から独自構築へ、開発範囲が段階的に広がります。

CRMの導入方法は、大きく4つに分けられます。SaaS型のサービスには、Salesforce、HubSpot、Zoho CRM、GENIEE SFA/CRM、Mazrica Salesなどがあります。なかには、初期費用0円から始められ、月額数千円のライセンス費用で使えるものもあります。

  • SaaS標準利用:標準機能をそのまま使い、初期費用を抑えてすぐに始められます。
  • SaaS型の調整:標準機能を活かしながら、自社の仕様に近づける方式です。
  • ノーコード開発:専門知識がなくても、独自の業務フローを組み立てられます。
  • フルスクラッチ:独自システムをゼロから構築する方式で、自由度は高い一方、費用と期間も最大です。

たとえば、カスタムフィールドの追加やレイアウト変更、簡単なワークフロー設定は、SaaS型の軽微な調整にあたります。

実務では、SaaS型やノーコードを土台にする範囲で要件を満たせる企業が多くあります。そのため、フルスクラッチは、特別な事情がある場合に検討する選択肢になります。

フルスクラッチ・オーダーメイドが向いているケース

独自開発を検討するのは、既製のSaaS型CRMでは要件を満たせない明確な理由があるときです。

  • 複雑な承認フロー:日本特有の組織や商習慣への適合が必要になります。
  • 業務フローの維持:現場の混乱を避けるため、既存の営業プロセスを保つ必要があります。
  • 複数システム連携:基幹システムと緊密に連携させることが求められます。

海外製の高機能SFAでも、複雑な承認フローに合わないことがあります。カスタマイズが難しい、または追加費用がかかるため、Excelでの管理を併用するケースもあります。

自社の業務フローに完全に合う独自構築が必要になることがあります。また、既存業務を変えたくない企業には、kintoneのようにプログラミング不要で構築できるツールも適しています。

会計や生産管理とリアルタイムで連携させる場合、既製CRMのAPIでは対応しきれないことがあるため、独自の連携基盤を含めて構築することが求められます。

ポイント

標準機能やSaaS型の調整で要件を満たせるなら、フルスクラッチを選ぶ必要はありません。既製品やノーコードでは対応できない特別な事情があるかどうかを、まず見極めるのが近道です。

SaaS型カスタマイズとフルスクラッチの比較

判断の分かれ目は、SaaS型を土台にするか、完全に独自構築するかです。どちらを選ぶかで、費用や期間、自由度、保守負担が変わります。

SaaS型カスタマイズのメリット・デメリット

SaaS型は、初期費用や運用開始までの負担を抑えやすいのが特徴です。

  • 始めやすさ:初期費用0円から使えるサービスもあります。
  • 操作検証:無料トライアルで現場の操作性を試せるため、導入前のリスクを抑えられます。
  • 保守の分担:セキュリティ対策やインフラ保守は、ベンダーが受け持ちます。
  • 独自改修の難しさ:過度な改修は多額の追加費用を招くうえ、標準保守の対象外となり、保守負担も急増します。

ライセンス費用は、基本的に1ユーザーあたり月額で決まります。たとえば、Salesforceは月額3,000円〜、kintoneは月額780円〜です。

ベンダーの仕様変更やアップデートによって、自社のカスタマイズに影響が出るリスクもあります。

要件が標準機能の範囲に収まるなら、SaaS型はコストパフォーマンスに優れた選択肢になります。

フルスクラッチのメリット・デメリットとコスト感

フルスクラッチは自由度が高いため、独自の運用やシステムの保有を重視する場合に適します。

  • 業務への適合:承認や権限、連携方式まで実装し、自社業務に完全に合った独自運用を実現できます。
  • サービス変更への備え:ベンダーの仕様変更や終了に左右されない運用が可能です。
  • 初期負担:開発費用と期間は、一般的な業務システム並みか、それ以上になります。
  • 継続保守:インフラやセキュリティの更新を、自社側で担う必要があります。

中規模のオーダーメイド開発は、期間4〜7か月、費用500万〜2,000万円程度が目安です。一方で、大規模なフルスクラッチでは、期間7〜12か月以上、費用2,000万円以上になることも珍しくありません。

保守を自社で担う場合も委託先に任せる場合も、長期的な体制づくりが欠かせません。

選ぶ際は、自由度に加え、初期投資と継続的な保守負担も踏まえます。

ポイント

要件が標準機能の範囲に収まるならSaaS型が合いやすく、独自の運用やシステム保有を重視するなら、初期費用と長期の保守体制を見たうえでフルスクラッチを検討します。

オーダーメイド開発時の要件定義のポイント

目的の明文化、必須要件の優先、段階的な開発を並べ、導入初期の1〜2個の機能を示す図です。
初期範囲を絞り、優先度の低い機能は後のフェーズに回します。

フルスクラッチ・オーダーメイドのCRMでは、要件定義の質が成否を左右します。既製品の機能から選べないため、自社で作るものを明確にしておく必要があります。

目的からの逆算と機能の絞り込み

機能は多いほど便利に見えますが、要件を膨らませすぎないよう、目的の達成に本当に必要な機能を発注側と開発会社で見極めます。

  • 目的を明文化:売上向上や顧客対応の効率化など、何のために作るのかを文章にして残します。
  • 必須要件を優先:「なければ業務が回らない」機能から先に決めます。
  • 段階的に開発:優先度の低い機能は、フェーズ2以降に回します。

導入初期は、「案件管理だけ」など1〜2個の必要最小限の機能から始める方法が推奨されます。

要件定義に盛り込む機能は、開発費用と期間に直結します。そのため、「あったら便利」な要望と必須要件を分け、目的に直結するコア業務の機能から順に、確実にリリースする進め方が必要です。

現場ヒアリングとワークフローの明確化

利用する現場の課題と必要な機能を聞き取り、その内容を導入計画に反映します。

  • 現場担当者の意見:日々入力する営業担当者にも聞きます。
  • 入力項目の整理:要件定義の段階で、売上に直結する失注理由や次の行動など、必要最小限に絞ります。
  • 運用手順の定義:誰がいつ何を入力するかを、事前に決めておきます。

経営層や情報システム部門だけで仕様を固めると、完成後に現場で使われないリスクが高まります。また、入力項目が多すぎると現場の負担が増え、システムが使われなくなるおそれがあるため、項目数には注意が必要です。

運用ワークフローは、ガイドラインとして整備しておきます。承認が複雑な組織では、どの案件金額から誰の承認が必要かを、業務部門と一緒に整理します。

設計の前に業務ルールを明確にしておけば、後の手戻りを防げます。

ポイント

機能は目的から逆算し、なければ業務が回らない必須要件から先に決めておくと、開発費用と期間のリスクを抑えやすくなります。

フルスクラッチ開発のリスクと対策

長期保守体制を中心に、納品と帰属の明確化、設計書の整備、複数のエンジニアによる保守体制を配置した図です。
仕様の記録と保守担当の複数化が、継続運用を支えます。

フルスクラッチには、自由度と引き換えのリスクがあります。事前に把握して対策を講じておくことが、プロジェクトを進める鍵になります。

過剰カスタマイズによる保守負担増大のリスク

複雑な業務に合わせて改修を重ねると、システムの構造が複雑になっていきます。

  • 機能を精査:独自機能で作るか、標準運用を変えて対応するかを、開発初期に都度検討します。
  • 追加を最小限に:フルスクラッチでも独自機能を次々に足さず、必要最小限にとどめます。
  • 専門家に相談:必要なときや複雑化したときは、外部の知見を借ります。

依存関係が複雑になると、管理者や開発パートナーが保守や更新に追われ、本来の活用推進が滞るリスクもあります。

独自業務に合わせた改修が必要な場合も、運用改善の進め方を外部の専門家と検討できます。

過剰なカスタマイズは短期的には便利でも、中長期の保守コストと変更の柔軟性を損ないます。そのため、開発の初期から抑える意識を持つ必要があります。

開発ベンダー依存と長期保守体制のリスク

仕様やコードを特定のベンダーやエンジニアだけが把握している状態では、関係が途切れた後の保守が難しくなります。

  • 納品と帰属を明確化:ソースコードやドキュメントの扱いを、契約で取り決めます。
  • 設計書を整備:仕様を記録して、属人化を防ぎます。
  • 保守体制を確保:複数のエンジニアで対応できる形を求めます。

フルスクラッチでは、セキュリティパッチやサーバー保守を自社か委託先が担います。そのため、長期保守契約の内容と体制は、開発契約と合わせて事前に決めておく必要があります。

発注先を選ぶ際は、目先の開発費用だけでなく、5年・10年先の保守体制も見据えて判断します。

ポイント

独自機能の追加を必要最小限にとどめ、仕様と設計書を残し、保守を担える体制を契約で決めておくと、ベンダー依存や過剰な改修の影響を小さくできます。

発注時に確認すべきポイント

開発会社やベンダーの選定は、プロジェクトの行方を大きく左右します。発注側が支援の範囲や契約の形を前もって確かめておくと、選定の判断がしやすくなります。

伴走型サポート体制と現場目線の使いやすさ

発注先を選ぶ際は、まず伴走型のサポート体制があるかを確かめます。

  • 課題と目的の共有:営業フローの設計から伴走できるかどうか。
  • 教育と定着支援:リリース後の支援まで、提案に含まれているかどうか。
  • 使いやすさの設計:直感的に操作できるUIを実現できるかどうか。

CRMは、現場に定着して初めて価値を発揮します。マニュアルに頼らず操作できるUI(ユーザーインターフェース)かどうかを、実績やデモ画面で確認しておきます。

発注先の提案が、技術面だけでなく、営業現場での使われ方を想定したものになっているかも、判断材料になります。

セキュリティ体制と契約形態の確認

CRMは機密性の高い顧客情報を扱うため、セキュリティは欠かせない確認点です。保護体制と契約条件は、発注の前に確かめておきます。

  • 個人情報の保護:閲覧や入力の制限を、どこまで設けられるか。
  • 契約形態の使い分け:要件が確定している部分は請負、試行錯誤が必要な部分は準委任を検討します。
  • 段階的な契約:本開発の前に、PoCや無料トライアルの段階を挟みます。

ベンダーがプライバシーマークやISMSを取得しているかも、あわせて確認しましょう。

精度改善やUI調整は、試行錯誤が必要になりやすい典型例で、柔軟な準委任契約が有効です。

要件概要には、案件管理の範囲や承認フローのほか、既存連携、操作性、セキュリティ要件を盛り込みます。そのうえで、複数社から見積もりを取り、対応言語ではなく自社の要件を基準に比べます。

大規模開発に入る前にPoCや無料トライアルを行えば、現場への適合性を確かめられます。最後に、自社の営業活動を理解し、技術と業務の両面から提案してくれるパートナーを選びます。

ポイント

発注先は、伴走支援と使いやすさの設計があるか、セキュリティと契約形態に対応できるかで比べます。大規模開発の前にPoCを挟むと、適合性を判断しやすくなります。

まとめ

CRMのフルスクラッチ・オーダーメイド開発について、方式の位置づけからSaaS型との比較、要件定義、リスク対策、発注時の確認点まで、順に説明してきました。

承認フローや既存業務、複数システムとの連携に明確な事情がある場合は、独自開発が候補になります。

現在は、SaaSやノーコードを土台にして、承認や入力、連携の部分だけを整える方法が主流です。品質・コスト・期間のバランスに優れた、現実的な選択肢といえます。

発注側は、既製品で対応できない特殊な要件がある場合に、純粋なフルスクラッチを検討します。

要件定義では、目的から逆算して機能を絞り、現場の声を要件に反映させます。また、過剰な改修やベンダー依存に備えて、保守とセキュリティの体制を確認します。

無料トライアルやPoCで業務への適合性を確かめてから、段階的に本開発へ進む方法もあります。

自社に合うCRMを実現するには、伴走支援と業務理解のあるパートナー選びが鍵です。

▼全体ガイドの記事
・CRM開発の完全ガイド

会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

もし、システム開発やプロダクト開発に関するご要望がございましたら、お気軽にお問い合わせください。

・サービス概要資料のURLはこちら >>>
・お問合せページのURLはこちら >>>
・お役立ち資料のURLはこちら >>>

執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。