CTI(コールセンターシステム)の必要機能や標準機能の一覧について

CTIの機能は、着信時に顧客情報を表示する以外にも広がり、大きく四つの分野に分かれます。

どの機能が自社の電話業務のどこに効くかを押さえると、必要な機能と過剰な機能を見分けられます。全体像をまだ把握していない方は、まずCTI(コールセンターシステム)の完全ガイドをご覧ください。

  • 着信制御:IVRやACDで、電話を適切な担当者へつなぐ機能
  • AI・音声認識:応答や文字起こしを自動化し、対応を支援する機能
  • CRM連携・分析:顧客情報と応対データをまとめて管理する機能
  • 品質管理・運用:録音や監視で対応品質と安全性を保つ機能

▼全体ガイドの記事
・CTI(コールセンターシステム)の完全ガイド

着信制御とルーティングの基本機能

着信制御を中心に、IVR、ACD、スキルベースルーティング、コールバック予約を放射状に配置した図。
受付から振り分けまで、役割の異なる機能が連携します。

着信制御は、かかってきた電話をどう受け、誰につなぐかを決める機能群で、CTIの基本となる部分です。ここが弱いと、せっかく入電があってもオペレーターに適切に振り分けられず、あふれ呼や対応品質のばらつきにつながります。

一方で、ここを押さえれば、限られた人員で応答率を最大化できます。基本機能の意味を正しく理解することが、CTI選定の出発点になります。

IVR(自動音声応答)と一次受付の機能

IVR(自動音声応答)は、「ご用件が○○の方は1を、△△の方は2を押してください」という音声ガイダンスで用件を振り分ける機能です。一次受付をIVRに任せると、オペレーターは自分の担当領域の電話だけを受けられ、無駄な転送が減ります。

近年は、番号入力に加えて音声認識を組み合わせ、「ご用件をお話しください」と自然言語で受け付けるボイスボット型のIVRも普及しています。特に、定型的な照会であればIVRだけで完結し、有人対応の件数そのものを減らせます。

IVRは分岐を複雑にしすぎないことが大切で、階層が深すぎると、顧客が目的の選択肢にたどり着く前に離脱します。リサーチでも、シナリオが複雑化して現場が混乱した失敗事例が指摘されており、「2〜3階層で主要な用件をカバーする」シンプルさが定着の条件です。機能として何ができるかと同時に、顧客が迷わない設計ができるかが、IVR活用の分かれ目になります。

ACD(着信呼自動分配)とスキルベースルーティング

ACD(着信呼自動分配)は、入電を待機中のオペレーターへ自動的に振り分ける機能です。用件の種類に応じて「この用件はこのスキルを持つオペレーターへ」と振り分けるスキルベースルーティングは、対応品質を左右します。たとえば、技術的な問い合わせは専門スタッフへ、解約に関する相談は引き止め対応に慣れたスタッフへと、最適な人につなぐことで、一次解決率が高まります。

ACDは応答率(つながった割合)にも直結します。あふれ呼が発生したときは、コールバック予約を受け付けたり、待ち時間をアナウンスしたりする機能と組み合わせることで、放棄呼(顧客が待ちきれず切ってしまう電話)を減らせます。

神戸市の調達仕様では、年7.5万件の受電のうち流入70%・解決率60%を想定して約2.5万件の対応を見込むなど、具体的な設計が示されています。こうした目標を満たすには、ACDによる効率的な分配が欠かせません。機能の有無に加えて、自社の入電パターンに合った振り分けロジックを組めるかも確認すべきです。

ポイント

IVRでは分岐が深くなりすぎていないか、ACDでは自社の入電パターンに合った振り分けを組めるかを見ると、製品の差を判断しやすくなります。

AI・音声認識による自動化機能

中央のボイスボットに、音声認識、テキスト化、意図を理解、音声で回答の注釈を付けた図。
発話をテキストに変え、意図に沿った音声応答につなぎます。

近年のCTIで差別化の中心になっているのが、AI・音声認識による自動化機能です。従来は人が行っていた応答・記録・分析の一部を、AIが肩代わりするようになりました。

生成AI(LLM)やRAG(検索拡張生成)の登場で、自動化できる範囲は大きく広がっています。これらの機能は、オペレーターの削減だけでなく、対応品質の標準化や、これまで取れなかったデータの活用も可能にします。

ボイスボット・RAG検索による自動応答機能

ボイスボットは、顧客の発話を音声認識でテキスト化し、AIが意図を理解して音声で回答する機能です。生成AIとRAGを組み合わせれば、FAQやマニュアルといった社内文書を根拠に、自然な言葉で回答できます。RAGは、あらかじめ用意した正しい情報の中から回答を探すため、事実と異なる回答を作るハルシネーション(もっともらしい誤答)を抑えやすいのが利点です。

また、KARAKURIのように正答率95%を保証するプランを設けるサービスもあり、精度を機能として担保する流れが進んでいます。ただし、ボイスボットの回答精度は、RAGが参照するデータの整理具合に大きく左右され、FAQが古かったり表記が揺れていたりすると、AIは正しく回答できません。そのため、自動応答機能は、精度・運用・コストを三点セットで評価する必要があります。

機能としてRAGを使えることと、運用で精度を維持できることは別問題で、データの構造化やチューニングが継続的に必要です。月10万リクエストで試算すると、LLMのトークンコストはGemini 2.0 Flashが約3,750円、GPT-4o miniが約5,600円、Claude Sonnet 4が約135,000円と、大きく差が出ます。

文字起こし・感情解析・有人切替の支援機能

AI機能は、完全自動化に限らず、オペレーターを支援する形でも価値を発揮します。たとえば、通話のリアルタイム文字起こしは、オペレーターが手で記録する負担を減らし、対応後の後処理時間(ACW)を短縮します。また、感情解析は、顧客の声のトーンから不満の高まりを検知し、スーパーバイザーにアラートを出すことで、クレームの早期エスカレーションを可能にします。

これらは、人を置き換えるのではなく、人の対応を底上げする機能です。特に大切なのは、AIが行き詰まったときにスムーズに有人へ切り替える機能です。ボイスボットだけですべてを解決しようとすると、複雑な相談で顧客がイライラし、離脱や苦情につながります。

そこで、会話の文脈を保持したまま人につなぎ、オペレーターが「ここまでのやり取り」を即座に把握できる設計が、顧客体験を守ります。リサーチでも、AIと人間の業務分担や、会話文脈を引き継ぐオムニチャネル設計が競合の手薄な領域と指摘されており、有人切替を作り込むことが差別化につながります。

ポイント

AI機能は、精度・運用・コストの三点で評価し、行き詰まったときに有人へ切り替える設計が入っているかを見て選ぶのが目安です。

CRM連携と分析・レポーティング機能

着信ポップアップ、顧客情報、対応履歴、CRMを循環する順に配置した図。
対応履歴が次の着信時の顧客理解を助けます。

CTIの真価は、電話とデータをつなぐところにあります。着信を受けてつなぐだけでなく、顧客情報を表示し、対応履歴を記録し、そのデータを分析して改善に活かします。

このデータの循環を支えるのが、CRM連携と分析・レポーティングの機能群です。ここが充実しているほど、コールセンターは「コストセンター」から、顧客データを活かせる拠点へと位置づけが変わります。

CTIの代表的な機能は、着信時に発信者の電話番号から顧客情報を特定し、画面に自動表示する「着信ポップアップ」です。そのため、オペレーターは電話を取った瞬間に、相手が誰で、過去にどんな問い合わせをしたかを把握でき、「最初から状況を聞き直す」手間がなくなります。

これは、対応時間の短縮だけでなく、「以前話したことをまた説明させられる」という顧客の不満を防ぐ効果も大きい機能です。この機能を生かすには、CRMやFAQシステムとの連携が前提になります。連携によって、対応履歴を自動でCRMに記録し、次回の着信時にも参照できる循環が生まれます。

ただし、CRMや予約システムとのAPI連携は1件30万〜100万円かかることもあり、見積もりに含まれていないと想定外の費用になります。どのシステムと、どこまで双方向に連携するかを要件段階で固めることが、ポップアップ機能を真に役立てる条件です。

稼働分析・レポーティングと多言語対応機能

分析・レポーティング機能は、コールセンターの改善サイクルを回す中核です。応答率、放棄呼率、平均応答時間、平均処理時間、一次解決率といった指標をリアルタイムで見られるようにし、時間帯ごとの入電の集中を把握できれば、人員配置を最適に組めます。

たとえば、神戸市の調達仕様のように回答率を導入月50%→2ヶ月後60%→最終70%以上と段階的に引き上げる運用も、こうしたレポートで進捗を測れてこそ実現します。数字で示す機能は、感覚的だった運用を根拠ある改善へ変えます。加えて、グローバル化やインバウンド需要を受け、多言語対応機能の重要性も高まっています。

多言語対応機能は、音声認識と機械翻訳を組み合わせ、外国語の問い合わせをリアルタイムで通訳したり、多言語のボイスボットで一次対応したりする機能です。観光・EC・製造などで海外顧客が一定数いる場合は、要件として検討する価値があります。ただし、すべてのセンターに必須ではないため、優先順位は自社の顧客層と入電内容から逆算して決めるべきです。

ポイント

CRM連携と分析は、連携先と見る指標を要件段階で決め、多言語対応は海外顧客が一定数いるかどうかで必要性を判断するのが目安です。

通話録音・品質管理と運用支援機能

AI機能は目立ちやすいものの、コールセンターの基本を支えているのが、通話録音・品質管理・運用を担保する機能群です。目立ちにくくても、これらはトラブル対応やコンプライアンス、オペレーターの育成に直結する必須機能です。

CTIを選ぶ際、AI機能の有無ばかりに目を奪われ、この基本部分の作り込みを見落とすと、導入後の運用で苦労します。

通話録音・モニタリングと教育支援機能

通話録音は、コールセンターのあらゆる場面で必要になる基本機能です。「言った・言わない」のトラブル防止やクレーム対応の証跡に使えるほか、応対品質の評価や新人教育の教材にもなり、用途は多岐にわたります。

録音した通話をAIで文字起こし・分析すれば、頻出する問い合わせの傾向や、優良な応対のパターンを抽出でき、品質改善のPDCAを回せます。録音は、改善のための一次データを生み出す源泉でもあります。スーパーバイザー向けのモニタリング機能も、あわせて押さえておきたいところです。

たとえば、リアルタイムで通話を聞き、小声でアドバイスする(ウィスパリング)、通話に割り込む(バージイン)といった機能は、新人が困ったときの即時サポートを可能にします。リサーチでも、現場オペレーターのチェンジマネジメントやオンボーディング構築が競合の手薄な領域とされており、こうした教育支援機能の充実が、AI時代でも人の対応品質を担保するうえで欠かせません。

稼働率・セキュリティを支える運用機能

コールセンターは、止まると業務が完全に停止するため、可用性を支える機能が欠かせません。多くの調達で稼働率99.9%以上が選定基準とされ、神戸市の調達でも年間稼働率99.9%が目標に掲げられています。この水準を支えるのが、冗長構成や障害時のフェイルオーバー、メンテナンス時の代替経路といった運用機能です。

クラウド型かオンプレ型かで実現方法は異なりますが、いずれにせよ「止まらない」ための設計が機能要件の一部です。セキュリティ機能も、顧客の個人情報を大量に扱うコールセンターでは必須です。通話録音や顧客データへのアクセス権限管理、通信の暗号化、操作ログの取得といった機能が、情報漏えいを防ぎます。

さらに、生成AIを使う場合は、入力した情報が外部のAIの学習に使われないか、個人情報が外部送信されないかといった点も確認が必要です。情報漏えいの対応には500万円以上かかるという一次データもあり、セキュリティ機能はリスク回避の投資として捉えるべきです。riplaは、フルスクラッチ受託の立場から、こうした機能を自社の運用とコンプライアンス要件に合わせて作り込むことを重視しています。

ポイント

通話録音やモニタリング、稼働率、セキュリティは、AI機能の有無に関係なく基本要件として押さえ、情報漏えいへの備えはリスク回避の投資として考えるのが目安です。

まとめ

CTI(コールセンターシステム)の機能は、大きく四つの分野に分けられます。着信制御では、IVR、ACD、スキルベースルーティングが電話を振り分けます。AI・音声認識では、ボイスボットとRAG検索が自動応答を担い、文字起こし、感情解析、有人切替がオペレーターを支えます。そのほか、CRM連携と分析・レポーティングは、電話のデータを活かす機能です。

通話録音・品質管理と稼働率・セキュリティが、それらを下支えします。

生成AIの登場で自動化の範囲は広がりましたが、トークンコストやハルシネーション対策、有人切替の作り込みなど、機能を生かす運用設計が伴ってこそ効果が出ます。機能を選ぶときは、流行のAI機能をすべて入れるより、自社の入電内容と課題から逆算して必要な機能を取捨選択することが大切です。

たとえば、定型コールが多いならIVR・ボイスボットを、対応品質にばらつきがあるならCRM連携とモニタリングを優先してください。riplaは、フルスクラッチ受託と運用伴走を組み合わせ、必要な機能の見極めから、現場に定着する作り込みまでを一貫して支援しています。全体像の確認には、あらためて完全ガイドをご活用ください。

会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

もし、システム開発やプロダクト開発に関するご要望がございましたら、お気軽にお問い合わせください。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。