文書管理システムの選定ポイント/選び方/種類

文書管理システムは、自社の課題を特定し、同じ評価軸で2〜3製品を比べ、実際の文書でPoCを行って選ぶのが基本です。

課題の整理から、製品の種類、比較軸、PoCまでを順に見ていきます。候補を探す担当者が、比較条件をそろえて2〜3製品へ絞り込むための判断材料です。

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文書管理システム選定前に整理すべき自社の課題

最初にすることは、製品カタログを集めることより先に、文書の作成から廃棄までのどこで問題が起きているかを特定することです。特定した課題を一文で説明できるようにしておくと、比較対象に含める製品と不要な機能が見えてきます。

検索の手間と重複管理の実態

ファイルサーバーの深い階層やメールの添付を探す手間が続いているなら、検索が課題です。また、似た名前の文書が複数あり最新版が分からない場合は、メタデータ管理と版管理も確認します。

特定の部署だけの困りごとと決めつけず、営業や法務、経理、設計などに同じ質問を投げかけます。部署によって扱う文書の種類や検索の頻度は異なるため、全社共通の課題と特定業務の課題を分けて考えると、標準機能と個別対応の境界を見極めやすくなります。

保存期間管理と権限設定の切り分け

契約書や国税関係書類の保存期間を記憶に頼っているなら、法定保存への対応が課題です。機密文書を誰でも閲覧できる状態なら、権限管理も見直します。

電子帳簿保存法やe-文書法の対象になる文書を整理しておくと、必要な機能が明確になります。

ポイント

文書の作成から廃棄までのどこで問題が起きているかを、部署をまたいで把握しておくと、比較対象にする製品と不要な機能を分けて考えられます。

文書管理システムの主な種類

文書管理システムをECM専業型、グループウェア内蔵型、業種特化型、個別開発型に分けた図。
分類名を起点に、優先要件を標準機能で満たせるかを見極めます。

文書管理システムには、法定保存や全文検索に強いECM専業型があります。ほかに、グループウェア内蔵型、業種特化型、個別開発型も選択肢になります。

実際の製品は複数の特徴を持つため、分類名よりも、優先要件を標準機能で満たせるかを確認します。

ECM専業型:分類・全文検索・法定保存に強いタイプ

文書の分類体系やメタデータ設計を含め、全文検索や版管理、法定保存年限への対応を専門に扱う製品です。契約書や国税関係書類のように厳密な保存要件がある文書を大量に扱う企業に向いています。

専業型は文書管理以外の機能を持たない分、既存の業務システムとどう連携させるかを別途検討する必要があります。

既存のファイルサーバーやクラウドストレージから、どの文書をどの順番で移すかという計画も、選定の段階で立てておくと、導入後の作業を円滑に進められます。

グループウェア内蔵型・クラウドストレージ型

グループウェアやクラウドストレージに内蔵された型は、共同編集や情報共有と一体で使えます。Word、Excel、PDFを複数人で編集する企業に適しています。

一方で、細かな法定保存の要件や複雑な権限設計には限界があります。そのため、日常の共有と厳密な管理が必要な文書は分けて考えます。

既存の機能で足りるか、専業型と連携させる必要があるかを判断します。その際は、扱う文書の重要度を基準にすると、選びやすくなります。

業種特化型と個別開発型

製造業の図面管理のように、業種特有の成果物に特化した製品もあります。独自の分類や複雑な権限が必要な場合は、個別開発やハイブリッド構成も選択肢になります。

標準機能で対応できる範囲と、自社固有の要件を切り分けておきます。そのうえで、業種特化型が自社の業務フローに合った専用機能を備えているか、汎用機能のラベル変更にとどまっていないかを、デモで操作して見極めます。

製品選定で比較すべき評価軸

製品選定の比較評価軸として、分類と検索、権限と法定保存、他システム連携とTCOを並べた図。
同じ観点を候補製品ごとにそろえると適合度を比べやすくなります。

候補製品は、同じ条件と同じ質問をそろえて比べます。比べる軸は、分類体系の柔軟性と全文検索の精度、権限管理の粒度と法定保存対応、他システム連携とTCOです。この軸で比べると、機能の一覧では見えない業務との合い方まで比べられます。

各社に同じ質問を投げ、回答とデモの結果をそろえておくと、印象ではなく、自社との適合度で判断できます。

  • 分類と検索:必要な分類項目と検索方法を、実際の文書で確かめます。
  • 権限と法定保存:閲覧範囲、操作ログ、保存期間の要件を照らし合わせます。
  • 連携とTCO:連携方法と、初期費用・運用費用の比較。

分類体系の柔軟性と全文検索の精度

まず、自社に必要な分類項目やメタデータを、標準機能でどこまで設定できるかを確認します。次に、本文検索とOCR検索に対応しているかも確かめます。

表記ゆれや略語を使っても目的の文書に行き着けるかは、実際の文書で試します。加えて、分類項目はベンダーに任せきりにせず、現場の担当者と検索の場面を想定して決めます。

権限管理の粒度と法定保存対応

部門、役職、プロジェクト単位で閲覧・編集・承認・ダウンロードの権限を分けられるか、操作ログを記録できるかを確認します。

あわせて、電子帳簿保存法やe-文書法が求める改ざん防止の措置や保存期間の管理に対応しているかを、自社で保存すべき文書の種類に照らして確認します。「法対応済み」という説明だけで判断せず、どの要件をどう満たしているのかを具体的に質問します。

権限設定は、初期構築のときだけでなく、組織変更や人事異動のたびに見直すことになります。そのため、設定変更のしやすさや変更履歴が残るかどうかも、運用の負担に直結します。

他システム連携とTCO

会計や契約管理などの既存システムと、APIまたはCSVで連携する場合は、ワークフローやERPも含めて、対象データ、同期の方向、頻度を確認します。料金は、保存容量、ユーザー数、文書数のどれに課金されるかで変わります。

初期費用と月額料金に加えて、移行や運用の工数も含めたTCOで比べます。大容量の紙文書を電子化する場合は、容量の増加に伴う追加費用が発生しやすくなります。

ポイント

分類と検索、権限と法定保存、連携と費用を、同じ条件でそろえて比べます。費用は初期と月額だけでなく、移行や運用の工数も含めて見ます。

クラウド型・パッケージ型・個別開発の選び分け

標準的な文書管理と、法改正への継続的な対応を重視するなら、クラウド型が第一候補になります。

自社独自のセキュリティ基準や複雑な基幹連携が事業上重要なら、パッケージ型や個別開発が適しています。標準業務と独自業務を分けられるなら、ハイブリッド構成が向いています。

クラウド型とパッケージ型の判断基準

クラウド型は、サーバーを調達せずに短期間で始められ、法改正への対応を任せられる点が特徴です。一方で、パッケージ型は、自社サーバーで独自の基準や閉域網に対応できる場合があります。

パッケージ型では、監視やバックアップなどを自社で担う範囲が広がるため、改修を続ける体制と費用も合わせて判断します。

法改正への対応は続くため、誰がいつ設定を見直すかという保守体制も、あらかじめ検討しておきます。

個別開発が必要になるケース

独自の分類体系や複雑な権限、基幹システムとの連携が重要なら、個別開発を検討します。その場合は、要件定義からテスト、保守、法改正への対応までを自社で担うことになります。

判断は、機能の自由度よりも、その独自性に投資する理由があるかどうかで行います。

ポイント

基幹連携や独自のセキュリティ基準が事業上重要かで、パッケージ型や個別開発に進むかを判断します。標準業務と独自業務を分けられるかも、大きな分かれ目です。

RFP・比較表の作り方

比較表やRFPでは、機能の有無だけでなく、実際の文書と合格条件を示すことが大切です。各社への質問を統一しておくと、営業説明の分かりやすさに評価が引っ張られにくくなります。

RFPに記載すべき業務シナリオと非機能要件

RFPには、対象部署と文書の数や種類、保管場所を記載し、解決したい課題も書き添えます。そのうえで、契約書や図面など実在する文書の分類と検索の要件も示します。

非機能要件には、権限や操作ログに加えて、バックアップや障害時の対応なども含めます。要件は「必須」「望ましい」「将来」の3段階に分けておくと、候補を取りこぼしにくくなります。

組織変更や文書量の増加を見据えて、拡張時の追加費用や設定変更のしかたも、各社に確認しておきます。

比較表の確認方法のそろえ方

「全文検索に対応」という回答では、本文検索なのか、OCRの文字も対象なのか、表記ゆれに対応するのかが分かりません。

「デモで確認」「仕様書で確認」「契約条項で確認」のように、確認の根拠を残します。未確認の事項は点数を付けず、保留にしておきます。そうしておくと、選定後の認識違いも減らせます。

ポイント

RFPには実在する文書と合格条件を書き、各社への質問を統一します。回答の根拠を残しておくと、選定後の認識違いも減らせます。

PoCで確認すべき項目

文書管理システムのPoCで、検索到達、表記ゆれ、権限、大量文書投入時の性能を確認するチェック項目の図。
実文書と現場の担当者を交えて、検索から性能までを確かめます。

PoCでは、実際に業務で使っている文書を用いて、検索、権限、他システム連携を一通り検証します。デモを見るだけで終わらせず、自社にある文書と例外処理を使って確かめます。

検索到達時間と表記ゆれへの対応の検証

実際の社内文書を登録したうえで、複数の担当者に同じキーワードで検索してもらい、目的の文書に到達するまでの時間とクリック数を記録します。

略語や表記ゆれ、曖昧な質問でも必要な文書に到達できるかを確かめておくと、導入後の検索の満足度を予測しやすくなります。

特定の担当者だけがうまく検索できる状態では定着しません。そのため、システムに慣れていない担当者にも同じ検証に加わってもらうことが重要です。

権限テストと大量文書投入時の性能の確認

部門や役職ごとの権限が意図どおりに機能するかを確かめます。あわせて、権限外の文書が検索結果に出ないことも確認します。

想定する文書数に近いデータを投入して、検索の速さやアップロードの処理を測ります。そのうえで、処理時間と項目の欠落を合格条件として記録します。

実際に文書を扱う担当者にも操作してもらいます。画面上では問題がなくても、現場で使いにくい食い違いを早い段階で見つけられます。

ポイント

PoCでは、自社の実文書と例外処理を使って、検索や権限、連携を一通り検証します。現場の担当者も加わって試すと、導入後の定着を見通しやすくなります。

文書管理システム導入前に確認しておきたいポイント

候補を絞ったあとは、対象の文書量だけでなく、セキュリティや例外処理、実際の文書での検索性まで確認します。

比較表の機能欄に出にくい条件を、事前に検証しておきます。そうすることで、導入後に運用が止まるリスクを抑えられます。

少人数の企業における導入効果

文書量が少なくても、同じ文書を複数の担当者が別々の場所で管理していたり、契約書や図面の最新版を探すのに時間がかかっていたりする場合は、検討する価値があります。

単純な文書管理であれば、既存のクラウドストレージを整理する運用で足りることもあります。

クラウドストレージとの役割分担の決め方

日常的な共同編集にはクラウドストレージを使い、法定保存が必要な文書や機密性の高い文書だけを文書管理システムへ移す構成が考えられます。

どちらで正本を管理するかを、あらかじめ決めておくことが、二重管理を防ぐうえで欠かせません。

PoCに必要な期間の目安

PoCの期間は、文書量や関係部署の数によって変わります。検索や権限、連携を一通り試すなら、数週間程度を見込みます。ただし、期間を短くしすぎると、表記ゆれや例外処理の検証が不足しがちです。

そのため、必要な検証項目から期間を逆算します。課題が製品側で解消できるのか、運用ルールで対応するのかを切り分けておくと、PoC後の判断がぶれにくくなります。

候補製品を確認したい場合は、文書管理システムのパッケージ・クラウド製品一覧が参考になります。共通の軸で比べやすくなります。

まとめ

文書管理システムの選定では、検索や重複、保存期間、権限の課題を特定します。次に、ECM専業型、グループウェア内蔵型、業種特化型・個別開発型のなかから方向性を選びます。

分類体系や全文検索、権限管理や法定保存、連携やTCOといった観点で候補を比べます。最後に、実文書のPoCで検索性と例外処理を確かめます。

課題診断から2〜3製品への絞り込み

検索性や法定保存対応、他システム連携のうちから、最優先の課題を一つ決めます。そのうえで、分類体系や権限管理、TCOを同じ質問で比べれば、機能数の多さに左右されず候補を絞れます。

優先課題が複数ある場合も、まず一つに絞って比較の軸を固めます。そのあとで残りの課題を満たせるかを追加で確認すると、比較が発散しにくくなります。

実際の文書を使ったPoCでの確認

見るべきは、資料上の機能数よりも、自社の文書を検索から保存期間管理まで一気通貫で扱えるかです。また、既製品の標準機能と自社の運用ルールとのあいだに、どのようなギャップが残るかを早い段階で洗い出しておくことが、導入後の手戻りを防ぐことにつながります。

既製のクラウド製品で独自の分類体系や基幹システム連携を吸収できない場合は、個別開発やハイブリッド構成も検討対象になります。

ripla はフルスクラッチ開発の立場から、製品選定で明らかになった不足機能の整理や、自社業務に合わせたシステム構築を支援しています。

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会社紹介

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。