EC更改の事例/成功事例について

長年運用してきたECサイトを「そろそろ作り替えたい」と感じている事業者は、業種を問わず増えています。利用しているECパッケージやカートシステムのサポート終了が近づいた、保守ベンダーとの契約満了が迫っている、あるいは決済規格の更新やセキュリティ要件の厳格化に既存システムが追従できなくなった、といったきっかけで「EC更改(既存ECサイトの更新・移行)」を検討し始めるケースが典型です。新しく一から作る新規構築とは異なり、すでに売上を生んでいるサイトを止めずに作り替える必要があるため、進め方の難易度は格段に高くなります。

とはいえ、いざEC更改に踏み出そうとすると、「移行で本当に成果が出るのか」「どんな進め方なら失敗しないのか」が見えず、判断に迷う経営者・EC担当者が多いのが実情です。本記事では、EC更改の事例・成功事例について、サポート終了や契約満了を契機にカート・ECパッケージを刷新した取り組みを軸に、「どんな課題に対してどの判断を下し、どれだけの定量・定性効果を得たか」を具体的に掘り下げて解説します。あわせて、更改の手法選定から費用感までを体系的に整理したEC更改の完全ガイドもご覧いただくと、本記事の事例を全体像の中で位置づけやすくなります。本記事では、その完全ガイドでは触れきれない「移行の現場で実際に何が起きたか」を、できるだけ具体的な数字とともにご紹介します。

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・EC更改の完全ガイド

なぜ今EC更改の事例から学ぶことが重要なのか

なぜ今EC更改の事例から学ぶことが重要なのか

EC更改は、何もないところから新しいサイトを作る新規構築とは性質が大きく異なります。すでに注文が入り、決済が走り、在庫が動いている現行サイトを止めずに作り替える必要があり、しかも長年の運用でカスタマイズが積み重なっていたり、当初の設計意図が失われていたりするケースが少なくありません。そのため、計画段階で参考にできる「先行事例」の価値が、他のIT施策に比べて格段に高い領域だといえます。

他社がどんなきっかけで更改に踏み切り、どの手法を選び、どこに意思決定の分岐点があり、どんな成果を出したのかを知ることは、自社の更改計画の精度を大きく左右します。事例は単なる成功談として読むものではなく、「自社の状況に置き換えると、どの判断が再現でき、どのリスクに備えるべきか」を読み取るための教材です。本章では、なぜ今このタイミングでEC更改の事例から学ぶ意義が高まっているのかを整理します。

更改を迫る3つの典型的なきっかけ

EC更改が動き出すきっかけは、多くの場合「自社の都合」ではなく「外部からの期限」です。第一に、利用しているECパッケージやカートシステムのサポート終了(EOL)があります。バージョンのサポートが切れるとセキュリティパッチが提供されなくなり、脆弱性を抱えたまま個人情報やクレジットカード情報を扱うことになるため、放置できないリスクとなります。

第二に、保守ベンダーや構築会社との契約満了です。長年保守を委託してきたベンダーが事業を縮小したり、保守費の値上げを通告してきたりすると、同じシステムを使い続ける合理性が薄れます。第三に、決済規格やセキュリティ基準の更新です。クレジットカード情報の取り扱いに関する国際的なセキュリティ基準(PCI DSS)の改訂や、本人認証の強化などに既存システムが対応しきれない場合、更改が事実上の必須事項になります。

これらのきっかけに共通するのは、「期限が決まっている」という点です。新規構築は社内の意思決定次第でスケジュールを調整できますが、更改はサポート終了日や契約満了日といった動かせない期限に向かって逆算で計画を立てる必要があります。先行事例を学ぶ意義のひとつは、限られた期間の中でどう優先順位をつけ、どこに集中したかという「時間との戦い方」を知ることにあります。

事例から読み取るべき3つの視点

EC更改の事例を「売上が伸びた話」として消費するだけでは、自社の計画には活かせません。成功事例を読むときには、少なくとも3つの視点を意識すると学びの質が大きく変わります。第一に「更改の出発点となった課題ときっかけ」、第二に「その課題に対してどの移行手法・進め方を選んだかという意思決定」、第三に「結果として得られた定量・定性の効果」です。

とくに見落とされがちなのが2つめの意思決定の部分です。同じ「サポートが切れる」という課題でも、同等機能の新しいパッケージへ載せ替えるのか、クラウド型のサービスへ移行するのか、この機会に業務プロセスごと見直すのかで、必要な期間・費用・リスクは大きく変わります。成功した事業者は、自社の制約と目的に照らして「今回はやらないこと」を明確に決めていました。

第三の効果については、「表示速度が何秒改善した」「保守費が何割減った」「カート離脱率が何ポイント下がった」といった定量データと、「運用担当の負担が軽くなった」「新しい販促施策に着手しやすくなった」といった定性効果の両面を見ることが重要です。本記事で取り上げる事例も、この3つの視点に沿って読み解いていきます。

サポート終了・契約満了を契機にしたEC更改の成功事例

サポート終了・契約満了を契機にしたEC更改の成功事例

ここからは、実際にEC更改で明確な成果を出した取り組みを、きっかけ別に具体的に見ていきます。いずれも「課題ときっかけ」「アプローチ」「効果」という3つの視点で整理しているので、自社に置き換えながら読み進めてください。数字の裏側にある判断にこそ、再現可能なヒントが詰まっています。

パッケージのサポート終了をクラウド移行の好機に変えた小売事例

まず取り上げるのは、自社構築型のECパッケージを長年運用してきた小売事業者の事例です。この企業では、利用しているパッケージのメジャーバージョンがサポート終了を迎えることになり、放置すればセキュリティパッチが提供されなくなる状況に直面していました。同時に、オンプレミスのサーバーで運用していたため、繁忙期のアクセス集中時に表示が重くなり、機会損失が生じている課題も抱えていました。

この事業者が選んだアプローチの起点は、いきなり後継バージョンへ載せ替えることではなく「現行サイトの棚卸し」でした。長年の運用で追加してきたカスタマイズ機能のうち、実際にどれが使われ、どれが形骸化しているかを丁寧に洗い出したうえで、クラウド型の基盤へ移行する判断を下しています。棚卸しを起点に置いたことで、不要になったカスタマイズを削ぎ落とし、本当に必要な機能だけを新基盤に載せ替えられた点が成功の鍵でした。

その結果、サポート終了という「守り」のきっかけを、表示速度の改善とインフラ運用負荷の軽減という「攻め」の成果へ転換できました。アクセス集中時にも安定して表示できるようになったことで繁忙期の機会損失が減り、サーバーの保守・運用にかかっていた負担も大きく軽減されています。更改を単なる延命ではなく、サイトの体験そのものを底上げする機会と捉えた好例といえます。

保守契約満了を機に運用負荷を下げた専門通販事例

次に紹介するのは、専門商材を扱う通販事業者の事例です。この企業では、構築を委託したベンダーとの保守契約が満了を迎えるタイミングで、保守費の値上げを通告されていました。既存システムは度重なる改修でブラックボックス化しており、軽微な変更にも見積もりと時間がかかる状態に陥っていたため、同じベンダーで保守を続けるか、この機会に作り替えるかの判断を迫られていました。

この事業者は、目先の保守費だけで判断するのではなく、「今後3〜5年で発生する改修ニーズ」と「運用にかかる総コスト」を可視化したうえで意思決定を行いました。試算の結果、ブラックボックス化したシステムを使い続けると改修のたびにコストが膨らむと判明し、標準機能が充実したサービス型のECプラットフォームへ移行する決断に至っています。移行にあたっては、全機能を一度に切り替えるのではなく、影響の小さい範囲から段階的に置き換える進め方を採りました。

その結果、保守費の値上げを受け入れる代わりに更改へ踏み切ったことで、日常的な更新作業を運用担当者が自分たちで行えるようになり、ベンダーへの依頼待ちで止まっていた施策のスピードが大きく改善しました。契約満了という「期限」を、属人化・ブラックボックス化から脱却する転機に変えた事例です。保守費という目に見えるコストだけでなく、「変更にかかる時間」という隠れたコストに着目した点が、判断の質を高めていました。

決済規格の更新を契機に決済まわりを刷新した事例

3つめは、クレジットカード決済の規格更新をきっかけにEC更改へ踏み切った事例です。クレジットカード情報の取り扱いには国際的なセキュリティ基準が定められており、その改訂や本人認証の強化に既存システムが追従できなくなることがあります。この事業者も、決済代行サービスや認証方式の要件変更に既存のカートが対応しきれず、更改が事実上の必須事項となっていました。

この企業のアプローチで特徴的だったのは、決済まわりだけを対症療法的に直すのではなく、「カード情報を自社で保持しない構成(非保持化)」へ全体を設計し直した点です。決済代行サービスのトークン決済を活用し、自社のシステムが直接カード情報に触れない構成にすることで、セキュリティ基準への対応負荷を構造的に軽くしました。規格が今後さらに改訂されても、自社側の改修を最小限に抑えられる設計を選んだのです。

その結果、目先の規格改訂に対応できただけでなく、将来の改訂にも追従しやすい体制を手に入れられました。決済まわりの更改は「やらされ仕事」になりがちですが、この事業者は構造を見直すことで、セキュリティと将来の保守性を同時に高めています。期限に追われた更改であっても、設計の方針次第で長期的な価値を生み出せることを示す事例です。

事例から見えるEC更改成功の共通パターン

事例から見えるEC更改成功の共通パターン

サポート終了・契約満了・決済規格更新という異なるきっかけの事例を並べてみると、成功した更改にはいくつかの共通したパターンが浮かび上がってきます。きっかけや扱う商材が違っても、成功と失敗を分ける判断軸は驚くほど似ています。本章では、事例から抽出できる再現性の高いパターンを整理します。

「守りのきっかけ」を「攻めの成果」に転換する

成功事例に共通する第一のパターンは、更改のきっかけが「守り」であっても、成果を「攻め」に広げている点です。サポート終了や契約満了は、放置できないからやむを得ず対応するという受け身のきっかけです。しかし成功した事業者は、そこで最低限の延命にとどめず、表示速度の改善や運用負荷の軽減、決済構造の見直しといった前向きな成果へ更改の範囲を広げていました。

ここで重要なのは、闇雲に範囲を広げないことです。期限が決まっている更改で欲張りすぎると、納期に間に合わなくなるリスクが高まります。成功事例では、「サポート終了への対応」という必須要件を確実に満たしたうえで、限られたリソースの中で最も効果の高い改善を一つか二つに絞って同時に実現していました。守りと攻めのバランスを見極める判断こそが、更改の価値を決めます。

現行サイトの棚卸しを起点に手法を選ぶ

第二のパターンは、「いきなり作り始めない」ことです。クラウド移行の事例では使われていないカスタマイズの洗い出しが、専門通販の事例では運用コストの可視化が、それぞれ更改の起点になっていました。いずれも「まず現行サイトを正確に把握し、それから手法を選ぶ」という順序を守っています。長年の運用で積み重なった機能をそのまま新基盤へ移そうとすると、移行範囲が膨らみ、費用も期間も大きく超過します。

手法そのものに唯一の正解はありません。後継パッケージへの載せ替えが適する場合もあれば、クラウド型サービスへの移行や、業務プロセスごとの見直しが最適な場合もあります。重要なのは、自社の課題と制約に照らして「どの手法を選ぶか」を意思決定すること、そしてその判断材料を棚卸しによって揃えることです。手法ありきで進めた更改は、たいてい途中で目的を見失います。

一気に切り替えず、段階的に移行する

第三のパターンは、移行を段階的に進めていることです。専門通販の事例では、影響の小さい範囲から順に新システムへ置き換える進め方を採っていました。すでに売上を生んでいるECサイトを一度に全面切り替えすると、トラブル時の影響範囲が極めて大きくなり、最悪の場合は注文や決済が止まって事業そのものに直結します。

段階的な移行は時間がかかるように見えますが、各段階で問題を検証し、必要なら切り戻せる安心感があります。とくにEC更改では、商品マスタや会員データ、過去の注文履歴といった移行対象が多く、データの不整合が顧客対応のトラブルに直結します。データ移行を含めて段階を区切り、各段階で検証する進め方が、結果として最短かつ最も安全な更改につながっていました。急ぎつつも一気にやらないという舵取りが、成功事業者に共通する姿勢です。

まとめ

EC更改事例のまとめ

本記事では、EC更改の事例・成功事例について、サポート終了・契約満了・決済規格更新という3つの典型的なきっかけ別に解説してきました。パッケージのサポート終了をクラウド移行の好機に変えた小売事業者は、現行サイトの棚卸しを起点に不要なカスタマイズを削ぎ落とし、表示速度の改善と運用負荷の軽減を同時に実現しました。保守契約満了を機に更改へ踏み切った専門通販事業者は、運用にかかる総コストを可視化し、ブラックボックス化からの脱却と施策スピードの改善につなげています。決済規格の更新を契機にした事業者は、カード情報の非保持化という構造的な見直しで、将来の規格改訂にも追従しやすい体制を手に入れました。

これらの事例から読み取れる成功のパターンは、(1)守りのきっかけを攻めの成果に転換する、(2)現行サイトの棚卸しを起点に手法を選ぶ、(3)一気に切り替えず段階的に移行する、という3点に集約できます。EC更改は期限が決まっている点で新規構築と大きく異なり、限られた時間の中で必須要件を確実に満たしつつ、効果の高い改善に絞って取り組む姿勢が成否を分けます。成功と失敗を分けるのは、手法の派手さではなく進め方の丁寧さです。

自社のEC更改を検討する際は、まず本記事の事例を「自社の状況に置き換えるとどうか」という視点で読み返すことをおすすめします。そのうえで、手法の全体像や費用感、進め方の選択肢を体系的に整理したい場合は、完全ガイドもあわせて活用してください。事例から学んだ判断軸を自社の計画に落とし込むことが、更改を成功へ導く確かな一歩になります。

株式会社riplaでは、IT事業会社出身のプロフェッショナルが「Impact-Driven型支援」を通じて、プロダクトやシステムの納品・提供を目的とせず、お客様と同じ目線で、事業成果の達成をゴールとして、高品質なDX/開発支援をいたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。IT事業会社出身のプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、「Impact-Driven型支援」を掲げ、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の実現に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。