EC/通販業界のシステム開発の進め方/やり方/流れや方法/手法/工程/手順

EC・通販業界のシステム開発は、ECサイトを作るだけではなく、受注・在庫・物流・決済・顧客情報を一つの業務の流れとしてつなぎ、売り越しや出荷作業の負担を減らす取り組みです。

本記事では、EC/通販業界のシステムの全体像、年商規模別の投資ロードマップ、要件定義からリリースまでの進め方、2026年時点の費用相場、見積もりの確認ポイントを解説します。店舗とECの在庫統合、サブスク物流、返品・返金、3Dセキュア、不正対策、CRM連携まで整理するため、これから新規構築する企業にも、既存システムを刷新する企業にも活用できます。

EC・通販業界のシステムの全体像とは何ですか?

EC通販システムの全体像

EC・通販業界のシステムとは、顧客が商品を見つけて注文し、決済を完了し、商品が届き、購入後のフォローを受けるまでの一連の業務を支える仕組みです。特定のECカートやWMSだけを導入しても、店舗・倉庫・会計・顧客管理との接続が不十分なら、手作業が別の場所に移るだけになります。

主要な構成要素はOMS・WMS・カート・POS・CRMです

フロント側にはShopifyなどのSaaS型カート、自社EC、楽天やAmazonなどのモールがあります。注文を集約して在庫引当や出荷指示を管理するのがOMS(受注・販売管理)で、倉庫内の入荷、棚卸、ピッキング、梱包、出荷を管理するのがWMSです。実店舗を持つ企業では、POSの売上・店舗在庫とECの在庫を連携し、会員ID、ポイント、価格、購買履歴をCRMへ集約します。

決済代行、配送会社、会計・ERP、MA、問い合わせ管理も重要な接続先です。決済では、クレジットカード、コンビニ、代引き、PayPayなどの手段に加えて、継続課金、返金、チャージバックを設計します。カード決済は3Dセキュア2.0や不正検知を要件に含める必要があり、後から追加すると購入率と運用の両方に影響します。Stripeの公式ドキュメントでも、日本の業界ガイドラインによりオンライン事業者は2025年3月末までの3Dセキュア対応が求められたと説明されています(出典:Stripe「Japan 3DS mandate exemptions」)。

年商1億円・10億円・30〜100億円で投資の優先順位が変わります

年商1億円前後までは、SaaS型カートと受注管理、最低限の在庫連携から始める方法が現実的です。注文数が増えてきたら、LOGILESSのようなOMS・WMS一体型サービスや、出荷件数に応じて課金されるクラウド型物流サービスを比較します。重要なのは、月額の安さだけでなく、倉庫在庫、EC在庫、引当在庫をどのタイミングで同期できるかを確認することです。

年商10億円前後では、モール、自社サイト、店舗、複数の倉庫をまたぐ注文が増えます。この段階ではOMSを中心に据え、基幹システムやPOSとのAPI連携、商品マスタの統制、会員・ポイントの共通化を優先します。年商30〜100億円では、複数ブランド、越境EC、複雑な価格・販促、配送拠点の最適化を見据え、ERPやデータ基盤まで含めた段階的な刷新が必要です。最初から全機能を作るのではなく、売上や粗利に直結する連携から順に投資すると、経営層へ効果を説明しやすくなります。

EC・通販システム開発の進め方と工程を解説します

EC通販システム開発の進め方

進め方は、現状把握、要件定義、基本設計・詳細設計、開発、テスト、移行、リリース、運用改善の順に進めます。ECではキャンペーンや現場の例外処理が多いため、要件を文書に固定する工程と、実際の業務を見ながら小さく検証する工程を組み合わせることが大切です。

要件定義では在庫・価格・例外処理を先に決めます

最初に、注文の入口、商品マスタの正本、在庫の正本、価格の決定者、出荷指示の発行元を決めます。在庫は「ある・ない」の二値では不十分です。店舗在庫、倉庫在庫、EC販売可能在庫、予約在庫、引当済み在庫、不良在庫の6種類に分け、どの在庫を販売可能数として表示するかを定義します。店舗の取り置きや値引き、棚卸中の商品をどう扱うかも、要件定義で確認します。

価格も通常価格、セール価格、会員価格、店舗限定価格、クーポン適用後価格の優先順位を決めます。決済では、注文確定、与信、売上確定、キャンセル、部分返金、全額返金、継続課金失敗を状態として定義します。返品では、問い合わせ受付、返送、検品、在庫戻し、返金、再出荷までを一つの業務フローにします。ここを省くと、表向きの注文処理は動いても、CS担当者が表計算ソフトで補正する状態になります。

設計・開発では連携方式とデータ責任を決めます

設計では、API連携、CSV連携、バッチ連携のどれを採用するかを決めます。SaaS型カートと新しいOMSはAPIで接続しやすい一方、古い基幹システムやPOSはCSVや夜間バッチしか使えないことがあります。その場合は、リアルタイム性が必要な在庫と、日次でよい売上集計を分け、すべてをリアルタイム化しない判断も有効です。モールの仕様変更に追従する担当者、障害時の再送、重複注文を防ぐID設計も開発対象に含めます。

サブスク通販では、顧客ごとの配送周期、スキップ、同梱するサンプルやチラシ、お礼状を設定できるようにします。MA連携では、カゴ落ち、初回購入後、休眠、解約予兆などのイベントを定義し、メールやLINEへ連携します。越境ECを行うなら、多言語、多通貨、関税、海外配送、現地の返品方法も早期に確認します。

テスト・移行・運用で現場のリアルを検証します

テストは正常系だけでなく、同じ商品を店舗とECで同時に購入した場合、在庫が1個しかない場合、決済だけ成功して出荷連携に失敗した場合、注文後にキャンセルした場合を試します。セール開始直後のアクセス、注文集中、配送会社の休業日、返品で在庫が戻るケースも確認します。本部が望む厳密な商品マスタと、店舗が行う値引き・取り置きなどのイレギュラー運用を同じシナリオに入れることが重要です。

本番移行では、商品、会員、ポイント、在庫、未出荷注文、定期購入契約を移行対象に分け、事前に件数照合を行います。リリース直後は、旧システムを参照専用で残し、注文・在庫・決済の監視画面と問い合わせ窓口を用意します。IPAはECサイトについて、管理画面へのアクセス制限、ログやバックアップの保護などを含む構築・運用時の対策を示しています(出典:IPA「ECサイト構築・運用セキュリティガイドライン」)。

EC・通販システム開発の費用相場とコストの内訳

EC通販システム開発の費用相場

2026年時点の予算計画では、EC連携、POS連携、基本的なポイント管理を含む中規模開発は700万〜1,800万円程度、大規模なモール統合、複数倉庫、複雑な販促ロジックまで含む場合は1,800万〜4,000万円以上を見込むと現実的です。これは機能数だけで決まる金額ではなく、既存データの品質、連携先の数、例外処理、移行と運用設計を含めた概算です。

開発費は人件費・連携数・業務ルールで決まります

中堅エンジニアの単価は月額60万〜80万円、上流設計やプロジェクトマネジメントを担う人材は月額80万円以上が一つの目安です。開発費の40〜60%程度を上流・管理を含む人件費が占めることが多く、画面数よりも、在庫引当、価格優先順位、返品、決済状態、連携エラーの再処理といった業務ロジックが工数を押し上げます。

たとえば、カート1つと倉庫1拠点を連携する場合と、楽天・Amazon・自社サイト、店舗POS、複数倉庫を連携する場合では、受注の重複防止、在庫の競合制御、障害時の再送、マスタ同期の設計が増えます。キャンペーンの価格ルール、会員ランク、予約販売、定期購入を追加すると、テストケースも増加します。見積書では、連携先ごとの工数と、共通機能として計上された工数を分けて確認します。

月額費用と従量課金を初期費用と分けて考えます

SaaS型のOMS・WMSを選ぶ場合は、初期費用、月額基本料、出荷件数の従量課金、API利用料、ユーザー数、保守費用を確認します。たとえば、リサーチノートで確認したサービスには、月額15,000円で100件まで無料のもの、月額20,000円で月300件まで対応するもの、初期費用35,000円からでハンディ端末を月額6,500円でレンタルできるものがあります。料金体系が異なるため、現在の月間出荷数だけでなく、繁忙期の最大件数で5年間の総額を比較します。

自社開発では、クラウド利用料、監視、バックアップ、脆弱性対応、OSやミドルウェア更新、障害対応、モール仕様変更への追従費用が発生します。デジタル化・AI導入補助金2026は、通常枠やセキュリティ対策推進枠などの公募要領が公開されていますが、対象ツール、申請枠、補助対象経費、締切は変わるため、発注前に公式情報と登録IT導入支援事業者へ確認します(出典:中小企業庁「補助金公募情報」)。補助金を前提に要件を膨らませず、採択されない場合でも成立する投資計画を作ります。

EC・通販システムの見積もりを取る際のポイント

EC通販システムの見積もりポイント

見積もりは総額の安さではなく、何を前提にした金額かを比較します。現行業務、将来の注文数、連携先、在庫の持ち方、例外処理、移行対象、保守範囲を同じ資料で渡すと、会社ごとの差を判断しやすくなります。RFPには、機能要件だけでなく、障害時に誰が再処理するか、何分以内に在庫を反映するか、どの操作をログに残すかも記載します。

現状業務と将来要件を一枚の業務フローにします

発注前には、注文受付から出荷、請求、返品、問い合わせまでを担当者と一緒に書き出します。特に、店舗で売れた商品をECの販売可能数から減らすタイミング、予約分をいつ引き当てるか、欠品時に代替商品を提案するかを明文化します。本部だけで要件を作ると、店舗の取り置き、値引き、個別配送、手書き伝票などの現実が抜けます。

将来要件は、現在必要な機能と、売上規模が上がったときに必要な機能を分けます。年商1億円の段階で海外税計算や複数ブランド基盤まで作り込む必要はありません。一方、会員IDや商品コードを後から統合するのは難しいため、将来のOMS・ERP連携を妨げないデータ設計を先に行います。

SaaS・パッケージとフルスクラッチを使い分けます

標準的な受注、在庫、出荷を早く安定させたい企業は、SaaS型OMS・WMSを軸にする方法が向いています。注文数の増減に合わせて利用料を払え、物流機能のアップデートを自社で開発しなくてよい点がメリットです。ただし、独自の同梱ルール、複雑な価格優先順位、古い基幹との接続、特殊な返品業務は追加開発や運用変更で対応できるか確認します。

フルスクラッチは、事業モデルそのものが独自で、標準機能に業務を合わせることで競争力を失う場合に検討します。初期費用だけでなく、保守人材、セキュリティ、モール仕様変更、障害対応の責任を自社が持つ点が判断材料です。実際には、ECフロントやWMSはSaaS、独自性の高い商品・価格・会員ロジックは自社開発するハイブリッドが、費用と柔軟性のバランスを取りやすいケースもあります。

契約形態と開発パートナーの実務理解を確認します

要件が固まっており成果物を合意しやすい部分は請負契約、施策や業務の変更が多く、優先順位を相談しながら進める部分は準委任契約が適しています。EC向けシステムでは運用開始後の変更が多いため、仕様固定の請負はリスク分が上乗せされ、準委任と比べて1.3〜1.5倍程度になる場合があります。契約形態だけでなく、変更管理、検収条件、障害対応、追加費用の発生条件を確認します。

パートナー選定では、ECサイトの制作実績だけでなく、店舗と倉庫を含む在庫統合、物流現場のヒアリング、モールの仕様変更への追従、決済と返品の設計経験を確認します。提案時に、売り越し、二重出荷、決済成功後の連携失敗、返品商品の在庫戻しなどのケースを質問し、具体的な回答ができるかを見ます。riplaのようにコンサルティングから開発、定着支援まで一気通貫で伴走できる会社は、業務とシステムの間にあるズレを整理しやすい選択肢です。

よくある質問(FAQ)

EC通販システムに関するよくある質問

EC・通販システムの導入では、費用だけでなく、いつ着手するか、どこまで作るか、既存業務をどう変えるかが疑問になりやすいです。ここでは、発注前に特に多い質問へ直接回答します。

EC・通販システム開発は最低いくらかかりますか?

既存のSaaSを利用し、初期設定と少数の連携に絞るなら、数十万〜数百万円台から始められる場合があります。EC連携、POS連携、ポイント管理を含む中規模開発は700万〜1,800万円程度、大規模統合は1,800万〜4,000万円以上が目安です。正確な金額は、連携先、在庫ルール、移行範囲、テストと保守の条件をそろえて見積もる必要があります。

システム開発はどのタイミングで始めるべきですか?

売り越し、出荷遅延、手作業による残業、店舗とECの価格不一致が繰り返されているなら、繁忙期を避けて要件整理を始めます。年商規模だけを基準にせず、月間注文数、SKU数、店舗数、倉庫数、返品率、定期購入の有無で判断します。問題が深刻化してから全面刷新するより、在庫同期や出荷自動化から段階導入するほうがリスクを抑えやすいです。

フルスクラッチとSaaSはどちらが良いですか?

標準的な受注・出荷を早く安定させるならSaaS、独自の価格、物流、会員、商品体験が競争力ならフルスクラッチまたはハイブリッドが向いています。判断では初期費用だけでなく、5年間の月額、仕様変更への追従、自社の保守体制、事業の成長速度を比較します。標準機能で対応できる業務まで作り込まないことが、費用と納期を守るポイントです。

補助金を使ってECシステムを導入できますか?

対象となるITツールや事業者、申請枠に該当すれば、デジタル化・AI導入補助金などを活用できる可能性があります。ただし、補助金の対象範囲、申請時期、採択後の実績報告は公募要領によって異なります。交付決定前に契約や発注をすると対象外になる場合があるため、公式情報を確認し、補助金がなくても実行できる予算計画を並行して作ります。

まとめ

EC通販システム開発のまとめ

EC・通販業界のシステム開発では、ECサイトの見た目よりも、在庫、受注、物流、決済、返品、顧客データを正しくつなぐ設計が成果を左右します。まずは年商や注文数に応じて投資の段階を決め、在庫6粒度と価格ルール、例外処理を整理します。

小さく始めて、成長に合わせて連携範囲を広げます

年商1億円前後では受注・出荷の自動化、10億円前後ではOMSを中心とした店舗・EC・倉庫の統合、30〜100億円ではERP、複数ブランド、越境EC、データ活用を視野に入れます。SaaS・パッケージ・自社開発を適切に組み合わせ、月額や従量課金を含む総保有コストで判断します。

最初の一歩は業務フローと見積条件の整理です

発注前に、現場を含めた業務フロー、連携先、データの正本、繁忙期の注文数、返品・返金の流れを整理し、複数社へ同じ条件で相談します。提案内容だけでなく、モール仕様変更、障害時の再処理、セキュリティ、保守、契約変更まで説明できるパートナーを選ぶことで、導入後に使われ続けるECシステムへ近づけられます。

参考ソース

EC通販システムの参考情報

・経済産業省「令和6年度電子商取引に関する市場調査の結果」:2024年の国内BtoC-EC市場規模26.1兆円、EC化率9.8%、越境ECの調査結果を確認できます。
https://www.meti.go.jp/press/2025/08/20250826005/20250826005.html

・独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「ECサイト構築・運用セキュリティガイドライン」:管理画面、ログ、バックアップなど、ECサイトの構築・運用時に必要な対策を確認できます。
https://www.ipa.go.jp/security/guide/vuln/guideforecsite.html

・中小企業庁「補助金公募情報」:デジタル化・AI導入補助金2026の公募情報、申請枠、締切を確認できます。
https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/hojyokin/kobo.html

・Stripe「Japan 3DS mandate exemptions」「3Dセキュアを使用して認証する」:日本のオンラインカード決済における3Dセキュア対応と認証フローを確認できます。
https://docs.stripe.com/payments/3d-secure/japan-exemptions

会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。