EC・通販システム開発は、まず現状を把握し、要件定義、設計・開発、テスト・移行を経て、運用改善へ進みます。この流れに沿って進めると、受注から購入後までの業務を途切れずにつなげられます。
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EC・通販システムの全体像

EC・通販システムは、商品検索から注文、決済、配送、購入後のフォローまでを支える仕組みです。ECカートやWMSを導入しても、店舗・倉庫・会計・顧客管理との接続が不十分なままだと、手作業が別の場所に移るだけです。
主要な構成要素:OMS・WMS・カート・POS・CRMの役割
ECの注文と在庫を扱う主なシステムは、役割ごとに分かれています。
- カート・モール:ShopifyなどのSaaS型や自社EC、楽天・Amazonのモールが該当します。
- OMS:注文を一か所に集め、在庫の引当てと出荷指示を担います。
- WMS:入荷から出荷までの倉庫作業を、棚卸やピッキングを含めて管理します。
- POS・CRM:店舗の売上と在庫をつなぎ、会員情報や購買履歴を一つにまとめる役割です。
実店舗を持つ企業は、会員ID・ポイント・価格・購買履歴をCRMに集約します。接続先には、決済代行、配送会社、会計・ERPなどに加えて、MAや問い合わせ管理も含まれます。
決済では、クレジットカード・コンビニ・代引き・PayPayなどの手段を扱います。加えて、継続課金・返金・チャージバックの扱いも設計に含めます。
カード決済では、3Dセキュア2.0や不正検知を最初から要件に含めておきます。後から追加すると購入率と運用に影響するためです。なお、Stripeの公式ドキュメントでは、日本の業界ガイドラインにより、オンライン事業者は2025年3月末までの3Dセキュア対応が求められたと説明されています(出典:Stripe「Japan 3DS mandate exemptions」)。
年商1億円・10億円・30〜100億円で変わる投資の優先順位
年商規模によって、優先する連携やシステムの範囲は変わります。
- 年商1億円前後:SaaS型カート、受注管理、最低限の在庫連携が中心です。
- 年商10億円前後:OMSを中心に、基幹システムやPOSとの連携を優先します。
- 年商30〜100億円:ERPやデータ基盤を含む、段階的な刷新が候補になります。
注文数が増えたら、LOGILESSのようなOMS・WMS一体型や、出荷件数で課金されるクラウド物流サービスと比べます。その際は、月額だけでなく、倉庫・EC・引当在庫の同期時期も確認します。
年商10億円前後では、商品マスタを統制することや、会員・ポイントを共通化することも優先します。年商30〜100億円では、複数ブランドや越境ECに加え、価格・販促、配送拠点の最適化も視野に入れます。
売上や粗利に直結する連携から投資していくと、効果を経営層に説明しやすくなります。全機能を一度に作る必要はありません。
EC・通販システム開発の進め方と工程

開発は現状把握から始まり、要件定義と設計を経て、開発、テスト、移行へと進みます。その後、リリースを経て運用改善に入ります。
ECではキャンペーンや現場の例外処理が多いため、要件は文書で固めたうえで、実際の業務を見ながら小さく検証します。
要件定義で先に決める在庫・価格・例外処理
要件定義では、販売と出荷の基準になる担当やデータを決めます。
- 注文:注文の入口と出荷指示の発行元を決めます。
- 商品・在庫:商品マスタと在庫の正本を決めます。
- 価格:価格の決定者と、価格の優先順位。
在庫は「ある・ない」だけでは不十分なため、店舗・倉庫・EC販売可能・予約・引当済み・不良の6種類に分けて管理します。そのうえで、販売可能数に含める在庫を決め、取り置き、値引き、棚卸中も確認します。
価格は、通常・セール・会員・店舗限定・クーポン適用後の優先順位を決めます。決済では、注文確定・与信・売上確定の各段階に加え、キャンセル・部分返金・全額返金・継続課金の失敗を状態として定義します。
返品は、問い合わせの受付から再出荷までを、返送・検品・在庫戻し・返金を含めた一つの業務フローにします。この工程を省くと、CS担当者が表計算ソフトで補正する状態になり得ます。
設計・開発での連携方式とデータ責任
設計では、システムごとに連携方式を決め、運用上の担当も決めておきます。
- API連携:SaaS型カートや新しいOMSで採用しやすい方式です。
- CSV・夜間バッチ:古い基幹システムやPOSでは、必要になる場合があります。
- データ責任:仕様変更への追従、障害時の再送、重複防止のID設計を決めます。
在庫はリアルタイム性が必要な一方、売上集計は日次でよいため、両者を分けて扱う方法もあります。
サブスク通販では、顧客ごとの配送周期やスキップを設定します。さらに、同梱するサンプル・チラシ・お礼状も、設定の対象に含めます。
MA連携では、カゴ落ち・初回購入後・休眠・解約予兆などのイベントを定義し、そのイベントをメールやLINEへ連携します。越境ECでは、多言語・多通貨・関税・海外配送・現地返品も、早い段階で確認します。
テスト・移行・運用での現場業務の検証
テストでは、通常時の動作に加えて、連携失敗や注文変更などの例外を検証します。
- 在庫競合:店舗とECで同時に購入し、在庫が1個の場合を試します。
- 決済・出荷:決済成功後の出荷連携失敗と、注文キャンセルを試します。
- 繁忙・返品:セール直後のアクセス・注文集中・配送会社の休業日・返品後の在庫戻し。
本部の厳密な商品マスタと、店舗の値引きや取り置きなどの運用を、同じシナリオで確認します。
移行対象は、商品・会員・ポイント・在庫・未出荷注文・定期購入契約に分け、事前に件数を照合します。リリース直後は、旧システムを参照専用で残しておき、注文・在庫・決済の監視画面と問い合わせ窓口を用意します。
また、IPAは、ECサイトの構築・運用に向けた対策として、管理画面のアクセス制限やログ・バックアップの保護などを示しています(出典:IPA「ECサイト構築・運用セキュリティガイドライン」)。
EC・通販システム開発の費用相場とコストの内訳
2026年時点では、EC・POS連携と基本的なポイント管理を含む中規模開発が700万〜1,800万円程度です。一方、モール統合、複数倉庫、複雑な販促ロジックを含む大規模開発は、1,800万〜4,000万円以上が目安です。
金額は、機能数に加えて、既存データの品質・連携先数・例外処理・移行・運用設計も踏まえた概算です。
人件費・連携数・業務ルールで決まる開発費
見積もりでは、人件費と業務ロジックの複雑さが開発費を左右します。
- 中堅エンジニア:単価の目安は、月額60万〜80万円です。
- 上流・管理人材:月額80万円以上が、一つの目安になります。
- 人件費の割合:上流・管理の人材を含めると、開発費の40〜60%程度を占めることがあります。
工数を押し上げるのは、画面数よりも在庫引当・価格優先順位・返品・決済状態・連携エラーの再処理などの業務ロジックです。キャンペーン価格・会員ランク・予約販売・定期購入を追加すると、テストケースも増えます。
カート1つと倉庫1拠点の連携に比べると、楽天・Amazon・自社サイト・店舗POS・複数倉庫まで連携する場合は、設計が増えます。具体的には、受注の重複防止・在庫競合制御・障害時の再送・マスタ同期の設計が必要になります。
見積書では、連携先ごとの工数と、共通機能の工数を分けて確認します。
月額費用と従量課金
継続費用は、サービス料金と自社開発の運用費に分けて見積もります。
- SaaS型:初期費用・月額基本料・出荷従量課金・API利用料を確認します。
- 利用条件:ユーザー数や保守費用も含めて確認します。
- 自社開発:クラウド・監視・バックアップ・更新・障害対応にかかる費用を含めます。
主なサービスを調べると、月額15,000円で100件まで無料のものもあります。月額20,000円で月300件まで対応するものもあれば、初期費用35,000円からのものもあります。初期費用35,000円からのサービスには、ハンディ端末を月額6,500円でレンタルできるものもあります。
料金体系を踏まえて、現在の月間出荷数だけでなく、繁忙期の最大件数で5年間の総額を比べます。自社開発では、モールの仕様変更への追従費用や脆弱性対応も発生します。さらに、OSやミドルウェアの更新も必要になります。
デジタル化・AI導入補助金2026は、通常枠やセキュリティ対策推進枠などの公募要領が公開されています(出典:中小企業庁「補助金公募情報」)。
対象ツール・申請枠・補助対象経費・締切は変わるため、発注前に公式情報と登録IT導入支援事業者へ確認します。そのうえで、補助金が採択されなくても成立する投資計画を作り、補助金を前提に要件を膨らませないようにします。
EC・通販システムの見積もりを取る際のポイント

見積もりは総額だけでなく、各社が置いた前提をそろえて比べます。そこで、現行業務・将来の注文数・連携先を一つの資料にまとめ、各社に渡します。在庫と例外処理、移行対象と保守範囲も、その資料に書いておきます。RFPには、機能要件に加えて、障害時の再処理担当・在庫反映までの時間・操作ログの範囲も記載します。
現状業務と将来要件の業務フロー
発注前には、注文受付から、出荷・請求・返品・問い合わせまでの流れを、担当者ごとに書き出します。
- 在庫同期:店舗で売れた分をEC販売可能数から減らすタイミングを決めます。
- 予約・欠品:予約分をいつ引き当てるか、欠品時にどう代替提案するかを文書にします。
- 現場運用:取り置き・値引き・個別配送・手書き伝票の扱いも確認します。
本部だけで要件をまとめると、店舗の実務が抜け落ちることがあります。将来要件は、今すぐ必要な機能と、売上規模が上がった段階で必要になる機能に分けます。たとえば、年商1億円の段階では、海外税計算や複数ブランド基盤まで作り込む必要はありません。
会員IDや商品コードは、後から統合しようとすると難しくなります。そのため、将来のOMS・ERP連携を妨げないデータ設計を先に行います。
SaaS・パッケージとフルスクラッチの使い分け
方式を選ぶ際は、標準業務と独自業務の割合を見ます。
- SaaS・パッケージ:標準的な受注・在庫・出荷に向き、注文数に応じた利用料で、物流機能の更新も自社開発が不要です。
- フルスクラッチ:独自業務を標準機能に合わせると競争力を失う場合に検討します。
- ハイブリッド:ECやWMSはSaaS、独自の商品・価格・会員の部分は自社開発します。費用と柔軟性のバランスを取りやすい方式です。
SaaSでは、独自の同梱・価格優先順位・古い基幹との接続・特殊な返品に、追加開発や運用変更で対応できるかを確認します。フルスクラッチでは、初期費用に加えて、保守人材・セキュリティ・仕様変更・障害対応の責任も判断材料になります。
契約形態と開発パートナーの実務理解
契約は、要件の確定度や変更の多さに応じて選びます。
- 請負契約:成果物を合意しやすく、要件が固まった部分に適しています。
- 準委任契約:変更が多く、優先順位を相談しながら進める部分向けです。
運用開始後の変更が多いECでは、仕様を固定した請負の費用が準委任の1.3〜1.5倍程度になる場合があります。そのため、変更管理・検収条件・障害対応・追加費用の発生条件も確認します。
パートナーには、在庫統合・現場ヒアリング・モール変更・決済と返品の経験を確認します。そのうえで、売り越し・二重出荷・決済後の失敗・返品在庫について質問し、具体的な回答を見ます。riplaのように、コンサルティングから開発、定着支援まで伴走する会社は、業務とシステムのズレを整理しやすい選択肢です。
よくある質問(FAQ)
導入では、費用・着手時期・開発範囲・既存業務の変え方が疑問になりやすいため、発注前によくある質問に答えます。
EC・通販システム開発は最低いくらかかりますか?
既存SaaSを使い、初期設定と少数の連携に絞れば、数十万〜数百万円台から始められる場合があります。一方、中規模開発は700万〜1,800万円程度、大規模統合は1,800万〜4,000万円以上が目安です。
正確な金額は、連携先・在庫ルール・移行範囲・テストと保守の条件をそろえたうえで見積もります。
システム開発はどのタイミングで始めるべきですか?
売り越し・出荷遅延・手作業の残業・店舗とECの価格不一致が続くなら、繁忙期を避けて要件整理を始めます。時期を判断する材料は、年商よりも、月間注文数・SKU数・店舗と倉庫の数・返品率・定期購入の有無です。
全面刷新よりも、在庫同期や出荷自動化から段階的に導入するほうが、問題が深刻になる前にリスクを抑えやすいです。
フルスクラッチとSaaSはどちらが良いですか?
標準的な受注・出荷を早く安定させるならSaaSが適しており、独自の価格・物流・会員・商品体験が競争力ならフルスクラッチやハイブリッドを検討します。
初期費用に加えて、5年間の月額・仕様変更・自社の保守体制・事業の成長速度を比べます。標準機能で足りる業務は作り込まずに使うことが、費用と納期を守る手がかりになります。
補助金を使ってECシステムを導入できますか?
対象ツールや事業者、申請枠に該当すれば、デジタル化・AI導入補助金などを活用できる可能性があります。
対象範囲や申請時期、採択後の実績報告は公募要領によって異なります。交付決定前の契約・発注は対象外となる場合もあるため、公式情報を確認しておきます。そのうえで、補助金がなくても実行できる予算計画を作ります。
まとめ
EC・通販システムでは、在庫・受注・物流・決済・返品・顧客データをつなぐ設計が成果を左右します。年商や注文数に応じて投資の段階を決めたうえで、在庫6種類・価格ルール・例外処理を整理します。
成長に合わせた段階的な連携範囲の拡大
年商1億円前後では受注と出荷の自動化、10億円前後ではOMSを中心とした統合を進めます。30〜100億円では、ERP・複数ブランド・越境EC・データ活用を視野に入れます。
SaaS・パッケージ・自社開発を組み合わせる場合も、月額や従量課金を含む総保有コストで判断します。
最初の一歩となる業務フローと見積条件の整理
発注前には、現場業務を整理してから、その内容をもとに複数社へ相談します。
- 業務フロー:連携先・データの正本・繁忙期の注文数・返品と返金を整理します。
- 比較条件:各社に同じ情報を渡して、回答を比べます。
- パートナー:モール変更・障害時の再処理・セキュリティ・保守・契約変更を説明できる相手を選びます。
提案内容だけでなく、導入後の運用まで見通せるかを確かめると、長く使われるECシステムに近づけられます。
参考ソース
経済産業省「令和6年度電子商取引に関する市場調査の結果」は、2024年の国内BtoC-EC市場規模26.1兆円とEC化率9.8%を示します。越境ECの調査結果も掲載されています。
https://www.meti.go.jp/press/2025/08/20250826005/20250826005.html のページで確認できます。
独立行政法人情報処理推進機構(IPA)の「ECサイト構築・運用セキュリティガイドライン」では、管理画面やログの対策を示しています。バックアップなどの対策も掲載されています。
https://www.ipa.go.jp/security/guide/vuln/guideforecsite.html のページで確認できます。
中小企業庁「補助金公募情報」では、デジタル化・AI導入補助金2026の公募情報を確認できます。申請枠や締切も掲載されています。
https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/hojyokin/kobo.html のページで確認できます。
Stripeの「Japan 3DS mandate exemptions」は、日本のオンラインカード決済の3Dセキュア対応を扱います。「3Dセキュアを使用して認証する」では認証フローを確認できます。
https://docs.stripe.com/payments/3d-secure/japan-exemptions のページで確認できます。
会社紹介
株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。
