EDIシステム開発の進め方/やり方/流れや方法/手法/工程/手順

EDIシステム開発は、要件定義・企画から設計・開発、テスト・リリースまでを順に進めるのが基本です。工程ごとに決めることが多いため、先に全体の流れを押さえておくと、発注側として判断しやすくなります。

  • EDIシステムの全体像と種類
  • EDIシステム開発の進め方
  • EDIシステム開発の費用相場

EDI(Electronic Data Interchange:電子データ交換)システムは、企業間で受発注・請求・出荷情報などのビジネスデータを、標準的な電子フォーマットで自動的にやり取りする仕組みです。

取引先との書類のやり取りをデジタル化すると、入力ミスを減らし、業務効率を大きく改善できるうえ、コストも抑えられます。

近年は流通・製造・物流・金融など幅広い業界で、EDI対応が標準的な取引要件になっています。そのため、「取引先からEDI接続を求められている」「既存のEDI環境を刷新したい」と考える企業が増えています。

しかし、EDIシステムの開発には、通常のWebシステムとは異なる専門知識が必要です。全銀TCP/IP手順やJX手順、EDIINT AS2といった通信プロトコルや、取引先ごとに異なるデータフォーマット、厳格なエラーハンドリング要件など、考慮すべき要素が多岐にわたります。

EDIシステム開発を検討している企業のシステム担当者や情報システム部門の方に向けて、開発の全体像から具体的な進め方、費用相場まで、体系的に解説します。

EDIシステム開発の全体像は、次の完全ガイドでまとめています。

▼全体ガイドの記事
・EDIシステム開発の完全ガイド

EDIシステムの全体像と種類

EDIシステムの全体像と種類

EDIシステムを開発・導入するには、まずEDIの種類と自社の要件を把握しておくことが大切です。EDIには複数の種類があり、通信方式や対応業界、コストがそれぞれ異なります。そのため、種類を適切に選ぶことが、開発コストを抑えることやプロジェクトを成功させることの前提条件になります。

EDIシステムの定義と種類(Web-EDI、直接EDI等)

EDIシステムは、大きく4つの種類に分けられます。それぞれの特徴を理解したうえで、取引規模や取引先数、業界標準に合う方式を選ぶ必要があります。

  • 1. Web-EDI:ブラウザで受発注データを入力・確認でき、取引先は専用ソフトなしで使えます。
  • 2. 直接EDI(専用線・VAN経由):処理の確実性が高く、大量データの自動連携に向く従来型です。
  • 3. インターネットEDI(AS2/SFTP):インターネットを通信基盤とし、データを暗号化して交換します。
  • 4. クラウドEDI・EDIサービス活用型:自社開発なしで多数の取引先に対応できる方式です。

Web-EDIは、取引先がインターネット経由で利用でき、初期コストが低いため中小企業との取引が多い場合に適します。ただし、手入力が残るため大量取引には向かず、業務システムとの自動連携も難しい点がデメリットです。

直接EDIは、VAN(Value Added Network:付加価値通信網)を経由してデータを交換する方式です。全銀TCP/IP手順、JCA手順、JX手順(旧:流通BMS)などを使います。流通・製造業界では今も広く使われており、特に大手小売・メーカーとの取引では必須となるケースがあります。一方で、初期費用・月額費用がかかります。

インターネットEDIは、EDIINT AS2(Applicability Statement 2)やSFTP(SSH File Transfer Protocol)を使います。グローバル企業との取引や、RosettaNet・EDIFACTなどの国際標準フォーマットを使う場合に多く採用されます。VAN費用が不要でコスト効率が高い一方、自社でのセキュリティ管理が求められます。

クラウドEDIは、SaaS型のEDIサービス(TOSS-NET、OB10、TrustStewardなど)を活用する方式で、近年普及しています。API連携によりERPやWMSとも統合しやすく、開発・保守コストを大幅に抑えられます。ただし、月額利用料が発生します。

EDIシステム開発の特徴と難しさ

EDIシステム開発には、通常のWebシステム開発にはない固有の難しさがあります。主な課題として以下の3点が挙げられます。

  • ①取引先ごとのフォーマット・プロトコル対応:取引先ごとの形式と通信方式に合わせた対応が必要です。
  • ②厳格なエラーハンドリングと再送処理:取引の重複や欠落を防ぐ仕組みが欠かせません。
  • ③既存業務システムとの連携設計:データ変換、マッピング、マスタ同期の設計が複雑になりがちです。

データフォーマットには固定長・CSV・XML・EDIFACTなどがあり、通信プロトコルも取引先によって異なります。流通BMS(JX手順)、RosettaNet、全銀フォーマットといった業界標準はあるものの、取引先ごとの独自拡張仕様も多く、対応工数が膨らみやすい傾向があります。取引先マスタ(接続先URL、認証情報、フォーマット設定など)をどう設計するかが、大きな設計課題になります。

EDIは企業間の重要な取引を扱うため、データ消失や重複送信を防ぐ厳格な設計が求められます。冪等性の担保やメッセージIDによる重複排除、エラー時の自動再送と上限管理といった仕組みが必要です。さらに、異常検知とアラート通知も含め、設計・実装に相応の工数がかかります。

EDIシステムは、ERP・WMS・会計・受注管理システムなどの既存の基幹システムと連携して動くことが前提です。複数のシステムにまたがるデータの整合性を保つ仕組みが、開発の難易度を高めます。

ポイント

取引規模や取引先数、業界標準に合う方式かどうかが判断の目安です。4つの方式は、通信方式とコストの違いで比べるとわかりやすくなります。

EDIシステム開発の進め方

EDIシステム開発の進め方

EDIシステム開発は、要件定義・企画から設計・開発、テスト・リリースまでを順序立てて進めることが成功の鍵です。各フェーズで押さえるべきポイントを、順に見ていきます。

標準的な開発期間は規模によって異なりますが、小規模なWeb-EDI構築で3〜6ヶ月、中規模の直接EDI開発で6〜12ヶ月、大規模な多取引先対応システムで12〜18ヶ月が目安です。

要件定義・企画フェーズ

要件定義は、EDIシステム開発で特に大切なフェーズです。ここでの設計漏れや認識のずれが、後工程での大きな手戻りにつながります。期間は通常4〜8週間が目安で、取引先の調査から既存システムとの連携方針までを、この段階で固めます。

  • 接続先取引先の調査・整理:EDI接続が必要な取引先を全て洗い出します。
  • 業務フローの整理とAs-Is/To-Be定義:現在の受発注フローと請求フローを整理します。
  • 非機能要件の定義:性能、可用性、セキュリティの条件を定めます。
  • 既存システムとの連携方針:連携の範囲と、データの扱いを決めます。

取引先の通信プロトコル(JX手順、AS2、SFTP等)とデータフォーマット(XML、CSV、固定長等)、帳票の種類(発注書、納品書、請求書等)も調べます。送受信の頻度とタイミングも確認し、取引先が多い場合は優先順位をつけて、フェーズ分けを検討します。

そのうえで、EDI化により何をどこまで自動化するかを明確にします。「どのデータをEDIで受け取り、どのシステムに何の形式で渡すか」をデータフロー図にすると、後工程の設計が進めやすくなります。

EDIシステムでは非機能要件も欠かせません。処理件数(件/日)やレスポンスタイム、可用性(99.9%以上のSLAが必要か)を決め、通信暗号化や認証方式、ログ保管期間などのセキュリティ要件も定めます。障害時の業務継続手順も明確にします。

ERPや受注管理システムとの連携方式(API・ファイル連携・DB直接連携等)と、マスタの管理場所・同期方針を決めます。また、コード体系や文字コード、日付フォーマットなどのデータ変換ルールも定めます。

設計・開発フェーズ

要件定義で整理した内容をもとに、システムの設計と実装を行います。このフェーズは開発規模によって3〜9ヶ月程度かかります。

  • 基本設計(外部設計):インフラの選定と、全体の構成を決めます。
  • 詳細設計(内部設計):処理の中身を、モジュールや手順の単位まで設計します。
  • 実装・単体テスト:送受信ライブラリや管理画面を作ります。

インフラは、クラウド(AWS・Azure・GCP)かオンプレミスかを選びます。そのうえで、メッセージキュー(Amazon SQS、RabbitMQ等)による非同期処理と、取引先マスタのデータモデル(接続先情報、フォーマット設定、スケジュール情報など)を設計します。管理者向けの送受信ログ画面、エラー管理・再送処理画面、取引先マスタ管理画面も、UI/UXを含めて設計します。

各取引先との通信処理モジュール、データ変換・マッピングロジック、エラーハンドリングフロー(リトライロジック、エスカレーション手順)、バッチ処理のスケジュールを設計します。特にデータ変換ロジックは取引先ごとの差が大きいため、設計書の粒度を細かくすることが後工程の品質につながります。

通信プロトコルごとの送受信ライブラリや、フォーマット変換ロジック、エラー処理、管理画面を実装します。単体テストでは、各フォーマットのデータが正しく変換されるか、エラーケースで適切に処理されるかを網羅的に確認します。

テスト・リリースフェーズ

EDIシステムのテストは、取引先との結合テストが必要になるため、通常のWebシステムより調整工数が多くかかります。期間は1〜3ヶ月程度を見込みます。

  • 結合テスト・総合テスト:取引先と実際のデータフォーマットで送受信を行い、接続を確かめます。
  • 受入テスト(UAT)とリリース準備:業務フローに沿った受入の確認と、リリースの準備を行います。
  • 段階的リリースと移行:取引量の少ない取引先から順次切り替えるのが推奨です。

取引先との接続テストは、テスト用の接続環境を借りて行います。正常系(通常の発注・受注・請求の流れ)、異常系(通信エラー時の再送、不正フォーマット受信時のエラー処理)、性能(大量トランザクション時の処理時間とエラー率)の3つの観点で検証します。既存のERPやWMSとの連携も、このフェーズで実データを使って確認します。

業務担当者が実際の業務フローに沿って操作し、期待どおりに動くことを確認します。リリース準備では、移行計画(既存EDIシステムからの切替手順)、運用手順書、障害対応手順書を作成し、監視設定(アラート閾値・通知先設定)も済ませます。

本番リリースでは、全取引先を一度に切り替えず、既存システムとの並行稼働期間(通常1〜2ヶ月)を設けます。これにより、切替のリスクを抑えられます。

ポイント

要件定義で取引先や連携方式を固めておくと、後工程の手戻りを防ぎやすくなります。結合テストは取引先との調整が要るため、期間に余裕を持たせることが判断の目安です。

EDIシステム開発の費用相場

EDIシステム開発の費用相場

EDIシステムの開発費用は、対応する取引先数、プロトコル数、連携先システム数によって大きく変わります。予算を立てる前に、規模別の費用目安とコスト削減のポイントを押さえておきましょう。

規模別の費用目安

規模ごとの費用の目安は次のとおりです。区分は、取引先数と通信方式、対応範囲で分けています。

  • 小規模(Web-EDI構築、取引先10社以下):500万〜1,500万円
    開発期間の目安は3〜5ヶ月程度。
  • 中規模(直接EDI、取引先10〜50社):1,500万〜5,000万円
    開発期間の目安は6〜12ヶ月程度。
  • 大規模(多プロトコル・多取引先対応、50社以上):5,000万〜1億5,000万円以上
    開発期間の目安は12〜24ヶ月。

小規模は、ブラウザベースの受発注画面、基本的な帳票管理機能、メール通知機能を含む構成です。取引先への個別対応が少なく、標準フォーマットで完結する場合に当てはまります。

中規模は、JX手順やAS2などの複数の通信プロトコルへの対応、複数フォーマットのデータ変換、ERPとの連携、管理画面構築を含む構成です。既存基幹システムとの連携設計が複雑になるほど、費用は増加します。

大規模は、グローバル対応(AS2・EDIFACT等)や多数の取引先への個別対応を含みます。さらに、高可用性インフラ設計と複数基幹システムとの連携も対象になります。金融・大手流通・製造業での導入事例が該当します。

なお、ランニングコストとして、VAN費用(月額5万〜50万円)、クラウドインフラ費用(月額10万〜100万円)、保守・運用費用(初期開発費の15〜20%/年)が別途発生します。

コスト削減のポイント

EDIシステム開発のコストを抑えるポイントを3点紹介します。
①クラウドEDIサービスとのハイブリッド活用
全取引先を個別開発せず、汎用的な取引先はSaaS型EDIサービス(月額数万円〜)を使います。独自フォーマットが必要な主要取引先だけを個別に開発するこの組み合わせは、費用対効果に優れています。

②段階的開発による初期投資の分散
全取引先・全機能を一度に開発せず、優先度の高い取引先や機能から順にリリースします。初期投資を抑えながら早く効果を得られ、最初のフェーズは500万〜1,000万円から始めるのが推奨です。運用を見ながら、対象を少しずつ広げていきます。

③既存EDIパッケージの活用
既存のEDIミドルウェア・パッケージ(OpenText TrustedLink、HULFT-EDI等)を活用すると、開発工数を30〜50%削減できる場合があります。ただし、カスタマイズに制限がある場合もあるため、要件との適合性を事前に確かめておく必要があります。

ポイント

費用は取引先数やプロトコル数などで大きく変わるため、まず規模を決めてから予算を組むのが基本です。VAN費用や保守費用は別途かかるので、初期費用だけで判断しないことが大切です。

まとめ

EDIシステム開発を成功させるためのポイントを、改めて整理します。

まず、自社の取引先数、業界標準のプロトコル、対応する帳票の種類を正確に把握します。そのうえで、Web-EDI・直接EDI・インターネットEDI・クラウドEDIから適切な方式を選ぶことが出発点です。

次に、要件定義で取引先調査・業務フロー整理・非機能要件の定義をしっかり行い、設計・実装・テストを順序立てて進めます。特に、取引先との結合テストには十分な期間と調整工数を確保することが大切です。

費用は、小規模で500万〜1,500万円、中規模で1,500万〜5,000万円、大規模で5,000万円以上が目安です。また、クラウドEDIサービスの活用や段階的開発によるコスト削減も検討してください。

EDI開発の専門知識を持つ開発会社へ外注する場合は、EDI領域の実績、対応プロトコルの幅、アフターサポート体制を確認したうえでパートナーを選ぶことが、成功への近道です。

EDIシステム開発のパートナー選びや費用の詳細は、次の関連記事もご覧ください。

▼全体ガイドの記事
・EDIシステム開発の完全ガイド

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。