eラーニングシステム開発の進め方/やり方/流れや方法/手法/工程/手順

eラーニングシステム開発は、学習目標の明確化から始まり、要件定義・設計・開発・テスト・コンテンツ移行・運用保守の順に進みます。

初めてシステム開発を検討する方から、既存システムのリプレースを考える方まで、幅広くご参考いただけます。工程ごとに何を決めればよいかに加えて、自社に合う開発手法の選び方も説明します。

本テーマに関する全体ガイドは、eラーニングシステム開発の完全ガイドをご覧ください。

eラーニングシステムの全体像と種類

eラーニングシステムとは、インターネットを通じて学習コンテンツを配信し、受講者の学習進捗・テスト結果・修了状況を管理するシステムの総称です。企業研修(コンプライアンス教育・新人研修・スキルアップ研修)や教育機関のオンライン授業、資格取得支援など、用途は多岐にわたります。

システムの規模も、数十名の社内利用から数万名の受講者を抱える大規模プラットフォームまでさまざまです。自社独自のLMSを構築すると、既製品では実現できない学習体験を提供し、受講データを詳しく分析できます。さらに、自社のブランディングを強化できる点も利点です。

eラーニングシステムの代表的な機能

eラーニングシステムに搭載される主要機能は次のとおりです。コース管理機能では、動画・PDF・スライド・テキストなどのコンテンツをカリキュラム順に配置し、受講者が順序どおりに学習できるよう制御します。受講者管理機能では、ユーザーアカウントを作成し、部署やグループへの割り当てと受講権限の設定を行います。

進捗追跡機能では、各コースの受講率・視聴時間・最終受講日をリアルタイムに記録・表示します。テスト・アセスメント機能では、選択式・記述式・穴埋め式など多様な問題形式に対応し、合格ラインを設定して自動採点できます。

修了証明書発行機能では、コース修了者にPDF形式の修了証を自動で発行します。さらに、SCORM(Sharable Content Object Reference Model)やxAPIへの対応により、外部で作成したコンテンツを取り込み、その学習データを記録することもできます。

LMS・LXP・CMSの違い

LMS(Learning Management System)は学習管理システムの総称で、コース配信・受講管理・進捗追跡・テスト・レポートといった機能を中心に構成されます。企業研修や教育機関で正式なカリキュラムを管理する場面に、多く使われます。

LXP(Learning Experience Platform)は、LMSを進化させた概念です。AIレコメンデーションによる個人に合わせた学習、SNSに近い交流機能、学習者自身がコンテンツを投稿・共有できる双方向性が特徴です。

CMS(Content Management System)は、Webサイトのコンテンツ管理が主な目的で、eラーニングとの直接の関わりは小さめです。ただし、WordPressにeラーニングのプラグインを組み合わせ、簡易的な学習サイトを構築するケースもあります。開発の目的と運用体制に合わせて、どの形態を採用するかを最初に決めておきます。

ポイント

形態は、開発の目的と運用体制に合うかで選ぶと判断しやすくなります。正式なカリキュラム管理が中心ならLMS、受講者同士の交流も重視するならLXPが候補になります。

eラーニングシステム開発の工程と流れ

eラーニングシステムの開発工程を要件定義から運用保守まで順に示した図
コンテンツ移行を経て、リリース後の運用保守へつながります。

eラーニングシステムの開発は、要件定義で決めた内容を設計・開発・テストで形にし、コンテンツを移行してリリースしたのち、運用保守へ渡していくのが一般的です。

  1. 要件定義・基本設計・詳細設計
  2. 開発・テスト
  3. コンテンツ移行
  4. リリース
  5. 運用保守

他のシステム開発と大きく異なるのは、コンテンツ制作(動画撮影・編集・スライド作成)がシステム開発と並行して進む点です。また、開発期間の目安は、小規模なシステムで3〜5ヶ月、中〜大規模では6〜12ヶ月以上が標準的です。

要件定義フェーズの役割と成否

要件定義では、まず「誰に・何を・どのように学ばせるのか」という学習目標を明確にします。ここが曖昧なままだと、後の工程で手戻りが増えやすくなります。

そのうえで、対象受講者(社員・学生・一般ユーザー)と想定受講者数、利用するデバイス(PC・スマートフォン・タブレット)を整理します。さらに、コンテンツの形式(動画・PDF・インタラクティブコンテンツ)やテストの必要性、管理者ダッシュボードで見たいデータも洗い出します。

SCORM/xAPI対応の要否や、外部の人事システム・SSOとの連携の有無も、要件定義の段階で決めておく必要があります。要件定義の品質が開発全体の方向性を決めるので、現場の教育担当者・IT担当者・経営層の三者が合意した要件書をつくることをおすすめします。

設計・開発フェーズのポイント

設計フェーズでは、学習者が直感的に操作できるUI/UXデザインを特に重視します。コース一覧画面・受講画面・テスト画面・マイページ(受講履歴・修了証確認)の導線を丁寧に設計し、プロトタイプを使って早い段階からユーザー検証を行うことがすすめられます。

動画プレイヤーでは、再生速度の変更・字幕表示・章ごとのシーク・視聴位置の保存が、受講者の体験を大きく高めます。

クイズでは、正解したら次のステップへ、不正解なら復習コンテンツへ誘導する分岐ロジックを、開発段階で細かく実装します。SCORMのランタイム通信は技術的な難易度が高いため、経験のある開発者を割り当てることが重要です。

テスト・コンテンツ移行・本番稼働

テストフェーズでは、ブラウザ・デバイス・OSの組み合わせを網羅したクロスブラウザ・クロスデバイステストが必須です。動画再生の途切れ、テスト採点の誤り、進捗データの記録ミスは受講者の信頼を大きく損なうため、UAT(ユーザー受け入れテスト)では実際の学習シナリオに沿った検証を徹底します。

コンテンツ移行では、既存のPPTやPDF、旧システムの動画ファイルを新システムの形式に変換してアップロードします。SCORMパッケージの変換や動画のエンコード処理は工数がかかります。そのため、移行スケジュールは早めに立てておく必要があります。

本番稼働後は、受講者へのログイン案内と操作マニュアルの配布、ヘルプデスクの設置を行い、円滑なスタートを切ります。

ポイント

迷ったときは、要件定義で決めた内容を工程の全体で共有し続けているかを確かめます。コンテンツ制作との並行も含めて計画すると、手戻りを抑えやすくなります。

eラーニングシステム開発の重要ポイント

同時接続数の増加に備える配信分散、クラウド構成、負荷テスト、スケールアウトを示した図
配信の分散から将来の拡張まで、負荷対策の幅が見渡せます。

eラーニングシステムの開発で成否を分けるポイントは、技術面だけでなく、運用や体験の設計にも及びます。機能が豊富でも、受講者が使いにくければ学習効果は上がりにくくなります。

マルチデバイス対応とアクセシビリティ

eラーニングはスキマ時間に学ばれることが多いため、スマートフォン・タブレット・PCのどれからでも快適に受講できるレスポンシブデザインが必須です。

動画コンテンツは、モバイル回線での視聴を考慮して画質を自動調整するアダプティブビットレートストリーミング(HLS/DASH)の採用も選択肢になります。

アクセシビリティの観点では、字幕や音声読み上げへの対応、色覚バリアフリーなカラー設計が、障害のある受講者や多様な学習環境への配慮になります。特に官公庁や教育機関では、JIS X 8341-3(Webアクセシビリティ規格)への準拠が求められるケースがあります。

スケーラビリティと同時接続数対応

全社研修や試験のように、受講者が特定の時間帯に集中する場合は、同時接続数への対応が重要な設計課題になります。動画ストリーミングは特にサーバー負荷が高いため、CDN(コンテンツデリバリーネットワーク)で配信を分散し、オートスケーリング対応のクラウド構成にすると効果的です。

本番稼働の前には、負荷テスト(想定ピーク時の同時接続数を模擬したテスト)を必ず実施します。そのうえで、ボトルネックを事前に特定して解消しておくことが、安定稼働につながります。将来の受講者数の増加(数百名→数千名→数万名)に備えて、追加コストを抑えながらスケールアウトできる設計も求められます。

ポイント

運用と体験の両面で、受講者が迷わず使えるか、同時接続が集中しても止まらないかを基準に設計を確かめます。学習効果を左右するのは、機能の多さより使いやすさです。

開発手法の選び方

開発手法を選ぶ際の予算、スケジュール、独自要件の複雑さを並べた図
3つの観点をそろえて、手法ごとの向き不向きを整理できます。

開発手法は、予算・スケジュール・独自要件の複雑さを比べて選びます。

  • スクラッチ開発:独自のUI・機能・業務ロジックを一から実装する形
  • パッケージ活用:Moodle等を基盤にカスタマイズする進め方
  • SaaS型:標準機能をそのまま使い、短期間で導入する方法

スクラッチ開発 vs パッケージ(Moodle等)活用

スクラッチ開発は、自社独自のUI・機能・ビジネスロジックを完全に実装できるため、競合サービスとの差別化や特殊な業務フローへの対応に優れます。ただし、開発期間と費用はともに大きくなる傾向があり、費用は300万〜数千万円、期間は6ヶ月〜1年以上が目安です。

一方、MoodleはオープンソースのLMSとして世界で最も広く使われており、SCORM対応・多言語・豊富なプラグインが標準で使えます。Moodleをベースにしたカスタマイズ開発は、スクラッチと比べて開発コストを30〜50%削減できるケースが多く、教育機関や中規模企業に特に向いています。

Moodleには注意点もあります。内部構造に精通した開発者が必要で、大幅なUI刷新や特殊な機能追加には限界がある点も押さえておく必要があります。

SaaS型eラーニングとの比較

SaaS型eラーニング(Udemy Business・TalentLMS・LearnWorlds・SuccessFactors Learning等)は、料金・導入・制限の面で特徴があります。

  • 初期費用:月額・年額のサブスクリプション料金を払うことで、すぐに利用を始められ、初期開発費用はゼロです。
  • 導入スピード:最も速く(数日〜数週間)、システム管理の手間も少なく済みます。
  • 提供と連携の制限:自社ブランドでの提供に制限がある場合や、独自の採点ロジック・人事システムとの深い連携が難しいケースがあります。
  • 費用の増え方:受講者数や使用するコンテンツ数によっては、月額費用が高額になることもあります。
  • 段階的な移行:「まずは低コストで試したい」「標準機能で十分」ならSaaSを選び、独自要件が増えたらスクラッチ開発やMoodle活用に移ります。

eラーニングシステムの開発は、学習目標の明確化から始まり、開発手法の選定、要件定義・設計・テストを経て初めて成功につながります。コンテンツ制作とシステム開発を並行して進めるため、プロジェクト管理は複雑になりがちです。

そこで、eラーニングシステムの開発実績が豊富な開発会社と連携することが、プロジェクトを成功に導く最も確実な方法です。開発の進め方に不明な点があれば、早い段階でプロの開発会社に相談することをお勧めします。

ポイント

開発手法は、予算・スケジュール・独自要件の複雑さで選ぶと迷いにくくなります。標準機能で足りればSaaS型、独自の業務ロジックが多ければスクラッチ開発、カスタマイズ前提ならMoodle活用が候補です。

会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

もし、システム開発やプロダクト開発に関するご要望がございましたら、お気軽にお問い合わせください。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。