畜産業向け飼料管理システム開発の発注/外注/依頼/委託方法について

畜産業向け飼料管理システムの発注は、業務を整理し、要件定義を固め、小規模なPoCで確かめてから段階的に導入する流れで進めると、現場で使える仕組みにつながります。

発注形態から導入手順まで、発注側が決めたいことを順に挙げます。全体像は畜産業向け飼料管理システム開発の完全ガイドもご覧ください。

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・畜産業向け飼料管理システム開発の完全ガイド

畜産業向け飼料管理システムを発注する前に整理すべき全体像

飼料管理の対象を配合・原料、在庫・発注、給餌計画・実績、家畜・経営分析の4領域に分けた図
4領域は一つの製品にまとめず、必要な範囲ごとに整理できます。

発注時に最初に決めたいのは、システムの名称や機能一覧ではなく、飼料のどの判断をデータで支えるかです。たとえば、飼料タンクの残量を把握したいのか、配合計算を標準化したいのか、給餌量と増体・乳量を結び付けたいのかによって、必要な製品と委託先が変わります。

発注前の4つの管理領域の切り分け

飼料管理の4領域は、扱う中身がそれぞれ異なります。

  • 配合・原料:成分、単位、ロット、仕入先、価格の管理。
  • 在庫・発注:サイロやタンクの残量、入荷、払出、棚卸、発注点。
  • 給餌計画・実績:個体・群、畜舎、日齢、体重、泌乳量などをもとにした計画と実績。
  • 家畜・経営分析:飼料費、飼料要求率、増体、乳量、卵量、残飼の確認。

4領域は一つの製品でまかなう必要がないため、既存サービスと個別開発をAPIやCSVで連携させる設計も現実的です。

自社で残す業務と外注する業務の切り分け

飼料の発注判断や配合ルールは、現場責任者や獣医師、栄養担当者の知見が蓄積された重要な業務です。そのため、業務ルールと承認権限は自社が持ち、画面やデータ連携、帳票などの設計と開発を委託する形が適しています。

導入後のマスタ更新や日々の棚卸入力まで委託先任せにすると、担当者が替わったときに運用が止まるため、発注段階で自社の運用責任者を決めておく必要があります。

発注形態の選び方

標準的な牛群管理や記録から始めるなら、SaaSやパッケージを選ぶのが基本です。一方で、独自の配合ルールや設備制御が成果に直結するなら、個別開発が候補になります。判断材料が不足している場合は、短期PoCから始めるのが基本です。

既存設備と現場運用の差が大きいため、製品名だけで決めず、必要な領域とデータ連携の難易度を基準に比較します。

SaaS・パッケージの向く場面

牛群の個体情報、予定、レポートを整えたい場合は、権限管理も含めて既製クラウドを検討します。

  • 個体管理:1〜49頭は月額4,000円、50〜99頭は月額8,000円です(出典:株式会社ファームノート公式料金ページ、2026年8月確認)。
  • 牛群管理:1〜49頭は月額6,500円、250〜299頭は月額39,000円です。300頭は問い合わせです。
  • 機能範囲:給餌履歴、センサー、検定データに対応するプランもあります。不足する部分は連携開発で補うことを検討します。

これらは、牛群管理を始める際の公開価格の参考で、飼料配合やタンクセンサーを含む総額ではありません。

効果と実現性を見極めたい場合のPoC

飼料タンク残量の自動取得、給餌機との接続、採食・反芻データとの突合などは、資料だけでは判断できません。そのため、PoCの範囲は1農場・1棟・1畜種に絞り、飼料も1〜2種類にとどめます。

そのうえで、残量の変化や入荷と払出を、給餌実績や家畜データと同じ期間で確認します。PoCの目的は、高機能な画面を作ることより、センサーの欠測や通信遮断、現場入力の負担、データのずれが許容範囲に収まるかを確かめることです。

独自ルールと複数設備を統合したい場合の個別開発

個別開発に回すかどうかは、農場の運用差や設備連携の広がりで決まります。その判断は、4つの場面に分けて考えられます。

  • 農場固有の運用:複数畜種や、農場ごとに異なる単位・配合ルールを扱う場合。
  • 設備・基幹連携:給餌機、体重計、搾乳機、会計・ERPを業務フローに統合する場合。
  • 既存製品の活用:すべてをスクラッチで作らず、配合計算や牛群管理には既製品を使う方法。
  • 固有機能の開発:発注承認、在庫統合、経営画面に絞ることで、初期費用と保守負担を小さく保てます。

ポイント

標準的な業務から始めるならSaaSやパッケージ、独自の配合ルールや設備制御が成果を左右するなら個別開発が候補です。決めきれないときは、短期PoCで効果と実現性を見てから方式を選ぶと迷いにくくなります。

RFPと要件整理の書く範囲

RFPで確認する現場入力、通信・障害、運用・保護、データ・支援の4項目を並べたチェックリスト
機能要件と合わせて、現場での利用条件も見積前提に含めます。

RFPは、システム会社に要望を伝え、自社の業務認識をそろえるための資料です。業務の前提まで書いてはじめて、各社の見積を同じ条件で比べられます。

対象範囲、現状の手順、データ単位を資料にまとめます。そのほか、設備条件、導入後のKPI、納期と予算の考え方も入れます。畜産では農場ごとの例外処理が多いため、標準運用と例外運用を分けて書きます。

現状業務の作業単位での棚卸し

最初に、飼料の計画から請求照合までの作業を時系列で書き出します。発注や入荷確認、払出、給餌、棚卸など、担当者の手が入る作業は一つずつ分けて並べます。

各作業について、誰が、どの端末で、どの単位を使い、どの帳票やExcelを参照し、どのタイミングで承認するかを記録します。たとえば、発注単位が袋、在庫単位がキログラム、給餌実績がタンク単位になっている場合、単位変換を要件に含めないと原価分析の数字が合いません。

機能要件の領域と優先順位の書き分け

機能要件は、次の領域に分けて整理します。

  • 原料・在庫:マスタや配合レシピ、価格履歴、ロット、タンク残量、発注点、入荷と払出を扱います。
  • 給餌・家畜:計画と実績、個体・群、体重・増体、乳量・卵量。
  • 管理機能:原価、帳票、権限、通知。

各機能は、必須、導入後に追加、今回は対象外の3段階に分けて整理します。

農林水産省の畜産スマート農業技術カタログには、FarmnoteやU-motionのように、生体データや飼養管理を扱う技術が掲載されています(出典: 農林水産省「スマート農業技術カタログ(畜産)」、令和6年7月更新)。ただし、掲載製品がすべて飼料在庫や配合機能を持つとは限らないため、対応領域を機能単位で確認します。

非機能要件とRFPの質問事項

農場では、機能だけでなく利用環境の条件が成否を左右します。RFPでは、現場入力から通信・障害、運用・保護、データ・支援まで、4つの側面の条件を確かめておきます。

  • 現場入力:スマートフォンやタブレットで片手入力できるか。
  • 通信・障害:不安定な場所でオフライン入力と後同期ができるか、停電・センサー故障時に手入力へ切り替えられるか。
  • 運用・保護:バックアップ、復旧時間、アクセス権限、操作ログ、API・CSV仕様。
  • データ・支援:個人情報と家畜データの保管場所、出力形式、サポート時間、障害時の連絡方法。

ポイント

RFPには、対象範囲や現状の手順だけでなく、現場での利用条件と例外処理も書きます。見積の前提がそろうと、各社の金額を比べやすくなります。

契約形態と請負・準委任・SaaS利用契約の使い分け

契約形態は、要件が固まっているか、成果物を明確に定義できるか、導入後も改善を続けるかによって選びます。

企画・PoC、要件定義、開発、保守・運用の段階ごとに契約を分ける方法もあります。契約書の名称より中身が大切で、成果物と検収基準、変更手続きを明確にします。責任分界やデータの扱いも、契約書で決めておきます。

要件定義の準委任と確定開発の請負

現場ヒアリングや業務整理には、準委任契約が向いています。作業時間や体制に対価を支払うため、要件を探りながら進められます。

画面、API、帳票、移行データ、テスト項目などを成果物として定義できる工程は、請負契約が候補です。

センサーや既存設備の仕様が未確認のまま請負にすると、前提の違いから追加費用や遅延が生じがちです。そのため、未知の部分は先にPoCや準委任で切り分けます。

契約前に決める検収基準と仕様変更の扱い

検収では、実際の業務の流れを確かめ、追加要望の扱いも決めておきます。

  • 在庫反映:入荷した飼料が在庫に反映されるか。
  • 原価・権限:払出・給餌実績が原価に集計され、権限外の承認を防げるか。
  • 通信復旧:通信断から復旧した後に、重複登録が起きないか。
  • 受入テスト:実データに近いサンプルを使い、担当者・期限・判定基準を決めます。
  • 仕様変更:追加要望を無償修正、追加見積、次期対応に分け、影響範囲と承認者を明記します。

データの利用権限と返却条件

飼料の配合や発注履歴、原料価格、家畜の個体・群データは、経営上のノウハウにつながります。

農林水産省の「農業分野におけるAI・データに関する契約ガイドライン」は、農業データの契約上の確認事項を示しています(出典:農林水産省「農業分野におけるAI・データに関する契約ガイドライン」、2026年8月確認)。

  • 利用範囲:データの利用目的と第三者提供の条件。
  • 返却条件:終了時にCSVなどで返却できるか。
  • 派生データ:学習データや派生データの利用者。

補助事業を利用する場合は、対象のシステムサービス契約がガイドラインに準拠しているかも確認します。法的な判断は専門家に相談し、そのうえで自社のデータ資産を守る条項を定めます。

ポイント

未確定の部分は準委任やPoCで切り分け、成果物を定義できる工程だけを請負にします。検収基準と仕様変更の扱いも、契約前に決めておきます。

畜産業向け飼料管理システムの費用相場

費用は、既製クラウドの月額利用から複数設備を統合する個別開発まで幅があります。特に、飼料管理専用のスクラッチ開発は、公開見積が限られています。そのため、公開料金、一次産業向け業務システムの一般目安、類似するIoT・データ基盤案件の推定を分けて示します。

実際の金額は、頭数や農場数、設備台数で変わるほか、連携方式やデータ移行、保守範囲によっても変わります。各レンジは、予算検討の起点として使えます。

既製クラウドの月額数千円から数万円の公開例

Farmnote Cloudの牛群管理は、頭数に応じて月額6,500円から39,000円の料金が公開されています。

  • 公開料金:月額4,000円から39,000円で、300頭は問い合わせです。
  • 対象範囲:牛群の記録・分析が中心で、飼料関連機能は含まれない場合があります。
  • 追加費用:権限設定、マスタ登録、Excel移行、教育、API連携で発生する場合があります。

そのため、配合設計やタンクセンサー、給餌機連携の費用、複数農場の統合費用は、この金額に含まれるとは限りません。見積では利用料だけでなく、導入初年度と2年目以降の総額を分けて確認します。

パッケージ導入とPoCの範囲の絞り方

配合設計・在庫・発注を標準機能で導入する場合は、初期100万〜500万円程度が一つの推定レンジです。その金額には、原料マスタやレシピの移行、帳票設定、教育、保守を含めて見ます。

センサーでタンク残量や給餌実績を試すPoCは、設置台数と通信環境によって変わりますが、50万〜300万円程度の一般目安を起点にします。

いずれも、リサーチノートに整理した一次産業向けシステムの目安をもとにした推定で、飼料管理専用の公開相場ではありません。PoCで何を測り、どの条件で本番化するかを見積書に書ける委託先を選びます。

個別開発の300万〜2,000万円程度の推定幅

独自の配合計算や複数農場、設備連携を含む案件は、範囲を分けて見積もります。承認や監査ログを含む場合も、この考え方で分けます。

  • 個別開発:初期費用は300万〜2,000万円程度の推定幅です。
  • データ基盤:200万〜1,500万円程度が目安で、連携数によっては2,000万円を超える可能性もあります。
  • 開発期間:単純なパッケージ設定は1〜4か月、設備連携を含む個別開発は4〜12か月、全社展開を含む場合は13〜36か月程度の計画になることがあります。

これらは、類似案件をもとにした推定で、公開見積ではありません。特定の金額を断定するものでもありません。

本体価格以外の費用の内訳

見積書では、本体価格以外の費用も項目別に分けます。

  • 開発・導入:要件定義、画面・API、データ移行、センサー、ゲートウェイ、設置工事。
  • 運用:通信回線、クラウドや端末、教育、試験、保守、問い合わせ対応の費用。
  • 継続・終了:機器交換、バックアップ、サービス終了時のデータ返却。

センサーは機器価格だけでなく、電池交換や校正、通信圏の調査まで考慮します。さらに、設置変更や欠測データの補完も見ておきます。

KPIには、飼料費の削減に加えて、発注や棚卸の作業時間、欠品による緊急配送を含めます。残飼・廃棄や入力ミスの削減も指標にします。KPIを決めておくと、投資判断の前提がそろいます。

ポイント

公開価格、一般目安、類似案件からの推定を分けて読み、頭数や連携範囲、保守の範囲で金額が変わる前提を見積に書いてもらうと、予算検討の起点として使えます。

委託先の選び方と見積比較のポイント

委託先は、実績件数だけでなく、畜産の業務知識や設備連携で比べます。加えて、データ移行や導入後の現場支援も見ます。

自社製品ベンダー、パッケージ導入会社、受託SI会社では得意領域が異なります。「開発会社か」より、どの領域を得意とするかで比べます。

LCx FeedPlanは線形計画法で栄養要求量を満たし、原料コストを抑える配合設計を掲げています。一方で、日本システム開発のMDSS-Feedは、飼料・肥料の配合現場向けにデータ管理を提供しています。そのため、候補製品が農場の在庫や給餌実績まで扱うかは、別途確認します。

畜種と業務範囲が近い実績

実績は、「畜産向け」という表記だけでなく、次の3点で確認します。

  • 畜種:酪農、肉牛、養豚、養鶏のどこで導入したか。
  • 規模:導入した頭数、棟数、拠点数。
  • 業務範囲:配合設計に加え、在庫、発注、給餌実績、原価分析を扱ったか。

農林水産省のカタログでは、Farmnoteは牛群情報の管理・記録・分析を扱います。一方で、U-motionは採食・反芻などの行動データを扱う技術として紹介されています。また、導入事例では、飼料投入量と生産結果を結ぶ単位や、現場が毎日使う画面について質問します。

連携方式とオフライン対応の現場検証

APIの有無だけでなく、必要な項目を実際に読み書きできるかを確認します。

  • 在庫データ:タンク残量、入荷量、払出量、飼料ロット。
  • 家畜データ:個体ID、群ID、給餌量、体重、乳量・卵量。
  • 価格データ:原料単価と連携頻度。

通信が不安定な農場では、一時保存と後同期、二重登録の防止、通信断中のデータ確認をPoCで試します。

機器会社とシステム会社で窓口が分かれる場合は、一次窓口と責任分界を見積書・契約書に記載します。

同じ前提と内訳による見積の比較

3〜5社へRFPを渡す場合は、対象農場数や頭数、センサー台数をそろえます。連携対象や利用者数に加えて、移行データの期間、テスト期間、保守年数も各社で共通にします。

比較表では、初期費用だけでなく、要件定義、標準機能と追加開発の境界、未確定項目を並べます。前提条件や除外項目、納期、支払条件も含めます。さらに、保守時間や障害対応、データ返却も比べます。

なお、極端に安い見積では、移行や教育、設置が除外されていないか確認します。試験や保守、現場訪問の扱いも、あわせて確かめます。

発注から導入までの5段階の進め方

発注後の現状確認、要件定義、PoC・設計、開発・試験、本番化・横展開を順につないだ図
各段階の終了条件を決めると、変更を次工程へ送る判断がしやすくなります。

発注後は、業務を一度に変えるのではなく、次の5段階で進めます。現状確認と要件定義から始め、PoC・設計、開発・試験を経て、本番化・横展開へ進みます。

各段階の終了条件を決めておくと、現場の要望が増えたときに、今の工程で扱う変更と次工程へ送る変更を分けられます。

第1段階の課題とKPIの設定

最初に追うKPIは、飼料費(1頭・1群あたり)や発注回数、欠品件数、残飼・廃棄量などから選びます。作業面では棚卸時間や給餌作業時間、家畜面では飼料要求率や増体、乳量、卵量なども候補になります。

指標を増やしすぎると入力だけが増えるため、最初は経営課題と直接つながる2〜4個に絞ります。現状値を1〜3か月分把握し、導入後に同じ定義で比較できるようにします。

第2段階の小規模PoCでのデータ連携の検証

PoCでは、タンクセンサーの値と実際の棚卸、納品伝票と入荷登録を突き合わせます。給餌機の実績と飼料の払出、個体・群データと体重や生産量も、突合します。

確認は、システム会社のデモ画面ではなく、実環境で行います。砂ぼこりや温度差、振動、夜間作業、通信遮断がある現場が対象です。

成功条件は、データが取れたことに加えて、現場担当者が定めた時間内に入力できて、異常時に紙や手入力へ切り替えられ、管理者がKPIを判断できることです。

第3段階の標準機能と追加開発の確定

PoCの結果をもとに、既製サービスと設定、API・CSV連携、個別開発の範囲を切り分けます。

配合設計にはLCx FeedPlanのような専用ソフト、牛群データにはFarmnoteやU-motionのようなサービスを組み合わせられます。

また、飼料の発注や社内承認を個別画面にする方法もあります。製品を統一するより、データの正しさと現場の使いやすさを優先します。

第4段階の並行運用と現場教育

本番移行の直後に紙やExcelをすべて廃止すると、入力漏れや数値の差異に気づきにくくなります。そのため、一定期間は既存運用と新システムを並行させ、入荷、払出、給餌、棚卸の数字を照合します。

教育では機能説明より、朝の給餌前、飼料の受入時、発注承認時、通信障害時など、実際の作業場面を使います。農場責任者、入力担当者、購買担当者、経営管理者ごとに必要な画面と権限を分けます。

第5段階のKPI確認後の横展開

1農場や1棟で、入力率やデータ欠測、棚卸差異を確認します。さらに、発注リードタイムや給餌作業時間、飼料費も見ます。

目標に届かない場合は、システムの機能不足なのか、マスタや単位の不統一なのか、現場手順の問題なのかを切り分けます。

効果と課題を整理してから他の農場へ広げることで、農場ごとの違いを無理に標準化しなくても、共通機能と個別設定を管理できます。

ポイント

各段階の終了条件を先に決め、現場の要望を今の工程で扱うか次工程へ送るかを分けて判断します。最初の検証は、1農場・1棟の小規模な範囲から始めるのが目安です。

発注・外注で起きやすい失敗と対策

導入が失敗する原因は、機能が少ないことより、前提条件がそろっていないことにあります。現場の入力負担や単位、既存設備をRFPとPoCで確認します。通信やデータ契約も確かめたうえで、契約で責任範囲を定めます。

紙・Excel・頭の中のルールの整理

原料名の表記や飼料の単位、ロット番号、個体IDが担当者ごとに違うと、システムは入力を受け付けても、分析結果を信用できません。群IDや畜舎名、給餌時刻も、表記がそろわないと同じ問題が起きます。

発注前には、マスタの重複と欠損を洗い出し、正規の単位やコード、更新責任者、変更履歴を定めます。

AIによる異常通知や需要予測も、学習データの欠測や偏りが残ったままでは誤判定につながるため、まず記録の標準化を優先します。

設備・通信の不確実性と先行する実地検証

タンクの形状や設置場所によってセンサーの精度が変わります。さらに、給餌機はメーカーや年代によって、取得できるデータも異なります。通信の電波が届かない場所では、クラウドへ送れない時間帯が生じます。

見積の前に現地調査を行い、設置候補や電源、通信方式を確かめます。そのうえで、ゲートウェイやデータ取得頻度、欠測時の扱いを確認します。

農林水産省の技術カタログに掲載される製品であっても、自社の畜舎や設備で同じ性能が出るとは限りません。そのため、導入事例の条件を自社と照合します。

AIや自動制御における人の承認と停止手段

AIが発注量や給餌量を提案する場合、採用前に担当者が確認できる画面と承認ログを設けます。

センサー故障、異常値、通信断、急な飼料価格変動時には、自動発注や給餌機の制御を止め、手動手順へ戻せるようにします。

農業分野におけるAI・データに関する契約ガイドラインを参照し、自社データをモデル学習に使うかを確認します。派生データの利用者と、サービス終了時のデータ返却範囲も、契約で確かめます。

よくある質問(FAQ)

発注前によくある質問を、費用、導入範囲、委託先選定の観点から回答します。自社の頭数や設備に置き換えると、RFPに追加すべき質問が見えてきます。

畜産業向け飼料管理システムの開発費用はどのくらいですか?

導入方式ごとの費用幅を、クラウドの月額利用から設備連携を含む個別開発まで並べます。

  • 既製クラウド:月額数千円から数万円の公開例があります。
  • パッケージ:初期100万〜500万円程度が目安です。
  • センサー付きPoC:50万〜300万円程度が目安です。
  • 設備連携の個別開発:300万〜2,000万円程度が推定レンジです。

飼料管理専用の公的な一律相場ではありません。公開価格と類似する一次産業システムの目安を、分けて示しています。

そのため、頭数や農場数、連携設備を同じ条件にそろえて見積を依頼します。データ移行や教育、保守の範囲も伝えておきます。

パッケージとスクラッチ開発はどちらがよいですか?

標準的な個体・群管理や帳票から始めるなら、導入が早く費用を見通しやすいパッケージやSaaSが適します。一方で、独自の配合ルール、設備制御、複数システム統合が競争力に直結するなら、個別開発が候補になります。

最初から全機能を作るより、標準製品を残しながら自社固有の差分を開発するハイブリッド型も有効です。

委託先には何社くらい見積を依頼すればよいですか?

要件がある程度整理できている場合は、得意領域の異なる3〜5社へ同じRFPを渡します。配合設計や牛群・生体データ、設備連携に強い各社を、候補に含めます。

価格だけでなく、実績や現地調査、PoC提案を評価します。保守やデータ返却、責任分界の扱いも評価の対象です。候補が多い場合は実績と対応範囲で絞り、最終的に2〜3社の詳細見積と提案を比べます。

まとめ

畜産業向け飼料管理システムの発注では、まず、配合、在庫・発注、給餌実績、家畜・経営分析のうち、どこを改善するかを決めます。

次に、農場数や頭数、畜種、原料単位をRFPに整理します。既存設備や通信環境、現場の入力方法もRFPに含めます。そのうえで、SaaS、パッケージ、PoC、個別開発を組み合わせます。

費用は、公開価格と推定レンジを分けて比べます。初期費用だけでなく、センサーや通信、移行の費用まで含めて見ます。教育や保守、データ返却も、比較の対象にします。

最初の一歩となる1農場・1棟での現場PoC

全農場をいきなり統合するより、1農場・1棟・1畜種で始める方が現実的です。飼料の入荷から給餌、棚卸まで、家畜データや原価確認とつなげて試します。データの欠測や現場負担を確かめ、KPIと契約条件を見直してから横展開します。

発注先には、機能一覧だけでなく、実地検証の計画と導入後の運用体制も提案してもらうと、長く使えるシステムにつながります。

業務とデータの整理から始める委託先選定

飼料費や在庫の課題が明確でも、必要な機能と運用責任が決まっていなければ、見積は比較できません。

現場担当者、購買担当者、経営管理者、設備担当者を交えて要件を整理し、標準化する業務と自社に残す判断を分けたうえで、適切な委託先へ相談します。

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会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。