導管管理システム開発の進め方/やり方/流れや方法/手法/工程/手順

導管管理システム開発は、業務とデータを洗い出し、要件を決めたうえで、PoC(試行的な検証)、移行とテスト、段階的な導入の順に進めます。

この順で進めると、現場に定着しやすくなります。主な機能や費用の目安も、あわせて整理しておきます。

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導管管理システムの全体像

GISエンジンを中心に、導管管理システムの5つの機能がつながるハブ図。
地図と台帳を軸に、現場や保安などの業務機能が広がります。

導管管理システムは、都市ガス・LPガスの導管網やバルブ、ガバナ、メーターなどを、地図と台帳で一元管理する仕組みです。設備の位置情報には、管種や口径、埋設年などを紐付けます。図面や写真、点検記録、契約や顧客情報も扱います。

保安点検、工事調整、災害対応を支えるため、台帳やGIS、工事照会から更新計画までを一つの仕組みでつなぎます。

大阪ガスの事例では、GISを共通基盤として、他工事管理や見積回答などの業務アプリケーションと連動させています。このように業務をGISでつなぐには、既存の台帳・地図・保安業務のどれを正とするかを、発注前に決めておく必要があります。

台帳・GIS・工事照会など8つの機能による構成

主な機能は、業務範囲に合わせて組み合わせます。

  • 導管・付属設備の台帳管理、GIS・WebGIS:管種や施工履歴、住所や設備番号から管路を検索できます。
  • 工事・他工事照会管理:道路工事の申請と埋設物の照会を扱う機能。
  • 保安・点検・漏えい検査:巡視、定期漏えい検査、ガバナ圧力、メーター・開閉栓の記録。
  • 設備更新・投資計画:埋設年や故障履歴から、更新の優先順位を決めます。
  • 現場・IoT・災害:タブレットでの図面・作業指示の確認、スマートメーターや圧力計データの収集、地震・浸水時の供給停止エリアの把握に使います。

構成の中心となるGISエンジンと業務データベース

構成を決めるときは、主要な要素ごとに、データの管理責任も合わせて確認します。

  • GISエンジンとデータベース:設備・顧客・工事の情報を扱います。
  • 業務Webアプリと現場モバイル:各業務の画面と、現場での利用を担う部分。
  • IoT通信基盤:遠隔監視の機器データを連携させる基盤。
  • 認証・監査ログ:利用者と操作履歴を管理します。
  • 既存システム連携API:料金・顧客・会計・CAD・保安とつなぎます。

設備台帳と地図データのどちらを正とするか、更新を誰が担うかは、開発の前に決めておきます。決定が遅れると、データの整合性が崩れやすくなります。

経済産業省の資料では、ガス事業法がガス工作物を技術基準に適合するよう維持する義務を事業者に課すと説明されています(出典:経済産業省「ガス工作物に関する規制について」)。そのため、システムには巡視・点検・検査の記録を漏れなく残せる設計が必要です。

ポイント

機能は業務範囲に合わせて選び、既存の台帳・地図・保安業務のどれを正とするかは、開発の前に決めておくのが判断の目安です。

導管管理システム開発の進め方

要件定義・企画から設計・開発、テスト・リリースへ進む3段階の図。
現状調査から段階リリースまで、検討内容を段階ごとに整理できます。

画面や機能の一覧から開発に入ると、導管管理システムは失敗しやすくなります。まず業務と設備データを洗い出し、そこから順に進めます。

サンプル地区でPoCを行い、データモデルとRFPを固めます。そのうえで受入テストと段階リリースへ進むと、現場の信頼を得ながら、導入範囲を少しずつ広げられます。

要件定義・企画フェーズ

要件定義では、対象の業務と設備データを整理し、導入範囲を絞り込みます。

  • 業務範囲:地図表示に加え、工事・点検・更新計画まで統合するかを決めます。
  • 設備情報:設備ID、座標精度、管路の接続関係を定めます。
  • 履歴と現場利用:点検・修繕履歴の扱いと、オフライン対応の決定。
  • 運用条件:権限設計と、災害時に必要な可用性。
  • 移行対象:紙図面、Excel、古いGISの扱いを書き出します。

必要な機能を自社の規模に合わせて絞っておかないと、過剰な機能を含む提案を受け取る原因になります。

設計・開発フェーズ

設計段階では、業務知識や既存環境との相性を見ながら、方式を比べます。主な選択肢は次の4つです。

  • 業界パッケージ・テンプレート:料金・顧客・保安の知識を組み込んだ仕組み。
  • GISプラットフォーム:ArcGISなどに設定開発を加える方式。
  • クラウドサービス:クラウドを利用してシステムを構成する方法。
  • スクラッチ・段階的モダナイズ:複雑な既存連携を前提にした開発。

データの面では、設備IDや位置座標、管路の接続関係を定義します。履歴の持ち方と写真・図面の保存単位も、同じ段階で決めます。

全域に移行する前に、サンプル地区でデータ品質を検証します。検索速度と現場入力、位置精度の論点も、この段階で確かめられます。オフラインや権限も、早い時期に確認できます。

クラウドを使う場合は、重要データの保管場所と、通信断やサービス停止時の扱い、データ返却を契約で確認します。障害時にどこまでを誰が受け持つか、閉域網や多要素認証の扱いも、契約で確かめておく必要があります。

テスト・リリースフェーズ

テストとリリースは、移行のあとの総合テストと現場受入から始まり、教育を経て段階リリースへ進みます。開発から運用改善までは、下の一覧の順に進みます。

  1. 現状調査・要件定義
  2. データモデル・セキュリティ基本設計
  3. プロトタイプ
  4. 詳細設計・実装
  5. 移行
  6. 総合テスト
  7. 現場受入
  8. 教育
  9. 段階リリース
  10. 運用改善

発注時のRFPには、成果物と受入基準、障害の重大度を明記します。ソースコードとデータの帰属も、同じRFPで決めておく必要があります。再委託先や保守SLA、契約終了時の移行支援は、RFPに含めておきます。

導入時は、ガス主任技術者と保安担当を含めて確認します。情報システムと現場委託先も、同じ場に加えます。

既存の保安規程・保安業務規程と、画面やワークフローの整合を確認します。保存期間や承認履歴も、規程に沿っているかを見ます。最終的には、法務・保安部門による確認が必要です。

経済産業省は2025年の資料で、ガス分野のスマート保安の方向性を示しました(出典:経済産業省「ガス分野におけるスマート保安のアクションプラン」、2025年)。

この方向性には、遠隔での漏えい把握やスマートメーター、AI・衛星・カメラの活用が含まれます。リリース後の拡張計画でも、検討の対象にできます。

ポイント

計画を見直すときは、画面や機能の一覧から始めていないか、移行を最後にまとめていないかが判断の目安になります。PoCから段階的に進んでいるかも見ます。

費用相場とコストの内訳

4つの開発規模ごとに、推定費用と期間の幅を並べたパネル図。
対象範囲が広がるにつれて、予算帯と開発期間も大きくなります。

導管管理システム単体の公開価格は少なく、以下の金額は推定です。2025〜2026年時点の一般的なシステム開発の人月単価と、GIS・台帳・モバイル・外部連携・セキュリティの工数をもとにしています。

ただし、ベンダーの正式な見積もりではありません。金額は、地図データの品質や導管延長、利用者数によって大きく変わります。既存システム連携や機器調達の有無でも、差が出ます。

人件費と工数の目安

開発規模ごとの費用と期間は、次の範囲が目安です。

  • 小規模PoC・既存GIS追加:500万〜1,500万円、期間は3〜6か月。
  • 部門向けクラウドGIS:2,000万〜8,000万円、期間は6〜12か月程度。
  • 事業者向け統合導管管理:8,000万〜3億円、期間は12〜24か月。

さらに大きな規模として、複数拠点や大量の設備を扱う大規模刷新、IoT・スマートメーター連携までを含む場合は、3億〜10億円超、期間は24〜48か月が目安です。

小規模PoCは、限定したエリアで地図表示や設備検索、点検フォームなどを試す規模です。既存GISへの追加も、この範囲に入ります。

部門向けクラウドGISは、台帳や工事・点検のワークフロー、権限管理までを含みます。写真連携やAPI連携も含まれます。

事業者向けの統合には、全域のGISやCADの移行、保安・工事・更新計画が含まれます。顧客・料金連携や災害対応も、対象に入ります。

一般的なシステム開発の人月単価は、PMが約70万〜130万円、シニアエンジニアが約80万〜120万円です。中堅エンジニアは約50万〜70万円です。これらを積み上げ、GIS・データ移行・セキュリティの工数を加えると、上記の範囲に近づきます。

初期費用以外のランニングコスト

初期費用だけでなく、年間の運用費も見積もります。

  • システム利用:クラウド利用料とGISライセンス。
  • 運用基盤:通信費、監視、バックアップ。
  • 安全性の維持:脆弱性診断と保守。
  • 継続利用:データ更新と教育。

上記の費目を含む年間運用費は、初期費用の15〜25%程度を仮置きして予算化し、提案の段階で精査することをおすすめします。

スマートメーターや圧力監視の機器、通信回線、現場端末は、別費用になりやすい項目です。地図データの購入・測量や紙図面の電子化も、初期費用に含まれない場合があります。

ポイント

費用は対象範囲の広さで大きく変わります。初期費用に加えて、年間運用費を仮置きで予算に入れているかが判断の目安です。

見積もりを取る際のポイント

見積書では、金額だけでなく対象業務の範囲を確認します。同じ名称の提案でも、地図表示だけの提案と、工事照会・保安点検まで含む提案では、金額の差が数倍になることがあります。

要件明確化と仕様書の準備

見積比較では、次の区分ごとに金額を出してもらうと、抜け漏れを見つけやすくなります。

  • (1)要件定義、(2)GIS・データモデル設計
  • (3)図面・台帳移行
  • (4)画面・API開発、(5)機器・通信
  • (6)セキュリティ、(7)テスト・教育
  • (8)保守

単価を下げようとして移行やテストの工数を削ると、導入後に現場で使えず、追加改修費がかさみます。どの区分を削って価格を下げているのかは、見積もり先に必ず尋ねておきます。

複数社比較と発注先の選び方

比較を公平にするには、各社に同じサンプルデータと要件を渡します。ただし、提案の違いは各社の得意分野によっても左右されます。

  • 業界パッケージ提供会社:ガス業務の料金・保安知識が強み。
  • GISプラットフォーム会社:GISの実装力が持ち味。
  • クラウド運用会社:クラウドの運用に強み。
  • SIer:既存基幹との複雑な連携を得意とします。

自社が導管の空間台帳、顧客・料金・保安、工事照会・AI検知のどれを主軸にするかは、比較の前に決めておきます。そうすると、各社の提案を自社の優先事項に沿って比べられます。

注意すべきリスクと対策

見積もりの段階では、設備・顧客・位置情報の機密性を確認するとともに、供給・保安業務の可用性と改ざん防止も確かめます。

  • ネットワークと権限:業務系・制御系を分離し、多要素認証と最小権限を使います。
  • データと端末:通信・保存データを暗号化し、端末紛失に備えます。
  • 記録と保守:操作・変更・遠隔指示のログ、診断、パッチ方針を定めます。
  • 委託先と復旧:サプライチェーン管理、復旧テスト、手動運用手順を含む対策。

上記の対策をRFPに含めておくと、見積もりの段階で、リスクの高い提案を見抜けます。

スマートメーターの遠隔更新やIoT機器を接続する場合は、鍵管理と機器のライフサイクルを確認します。通信断やなりすまし、誤指示が起きた際のフェイルセーフも、試験項目に加えます。

ポイント

見積もりは金額の大小より、どの区分を削って安くしているかで比べると判断しやすくなります。同じ要件で各社を比べられているかも目安になります。

導管管理システム開発のよくある質問

導管管理システム開発で多い疑問は、対象範囲、費用、期間、既存GISとの関係です。企画段階で寄せられる質問に、順に答えます。

どこまでを最初のリリース範囲にすべきですか?

いきなり全域を対象にせず、1エリアか1業務でPoCを行うことをおすすめします。試す業務の候補は台帳・GIS・工事照会・保安点検で、そのなかから検証する対象を定めます。現場がいちばん困っている業務から始めると、社内の理解も得やすくなります。

検索速度や現場入力、位置精度を小さく検証し、オフライン対応や権限設計も確かめてから対象を広げると、大きな手戻りを避けられます。

既存のGISや紙図面が残っていても導入できますか?

既存GISや紙図面が残っていても、導入できる可能性は十分にあります。ただし、紙図面の電子化や古いGISからの移行には、時間がかかりやすいです。

設備ID、位置座標、接続関係は、新しいデータモデルに合わせて整える必要があります。移行を開発の最後にまとめると、テストが遅れたり、稼働直前に不整合が見つかったりします。そのため、設計の初期から移行担当を加えておきます。

開発期間はどのくらいかかりますか?

PoCから全域刷新まで、規模ごとの期間を比べると、計画の目安を立てられます。

  • 小規模PoC・既存GIS追加:3〜6か月。
  • 部門向けクラウドGIS:6〜12か月。
  • 事業者向け統合導管管理:12〜24か月。
  • 大規模刷新・IoT連携:24〜48か月。

地図データの品質や図面の電子化の状況によっては、期間が延びることがあります。そのため、現状調査の結果をもとに計画を立てます。

クラウドを使う場合の保安面のリスクをどう考えればよいですか?

クラウドを使う場合は、具体的な安全策が講じられているかを確認します。リスクは、クラウドを使うこと自体よりも、こうした安全策で左右されます。

  • ネットワーク:業務系と制御系の分離。
  • データ:通信・保存データの暗号化。
  • 認証と記録:多要素認証と監査ログ。
  • 委託先:サプライチェーン管理の確認。

経済産業省は2026年3月、サイバーインフラ事業者に求められる役割等に関するガイドラインを公表しました(出典:経済産業省、2026年)。ガス保安に関わるデータを扱う場合は、こうした指針を踏まえて要件を定めます。

ポイント

判断の目安は、最初のリリース範囲を小さく絞れているかと、移行の担当を設計の初期から置いているかです。PoCで検証しながら広げているかも見ます。

まとめ

導管管理システムは、GIS・台帳・工事照会を中心に、保安点検や更新計画、災害BCPなどを組み合わせる領域です。まず統合範囲を決め、現状の業務と設備データを洗い出すことが、失敗を避ける第一歩になります。

要件定義の後は、パッケージやGISプラットフォーム、クラウド、スクラッチの方式を比べます。そのうえでPoCを行い、データモデルとセキュリティを設計し、移行とテストへ進みます。その後は、現場受入と教育を経て段階リリースする流れが基本です。

推定費用は、小規模PoCで500万〜1,500万円、部門向けクラウドGISで2,000万〜8,000万円です。事業者向け統合は8,000万〜3億円、大規模刷新・IoT連携は3億〜10億円超です。見積もりは区分ごとに分けたうえで、複数社から取得します。

最初は、紙図面やExcel、古いGISを洗い出し、1エリアか1業務に絞ったPoCを企画します。法規制や保安規程との整合については、法務・保安部門の確認が欠かせません。開発会社については、ガス業務の知識やGISの実装力、データ移行の実績を確認します。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。