総務システムのランニングコストは、導入形態、マスタ更新の工数、組織変更への対応範囲で変わります。SaaS型は月額利用料が中心で、フルスクラッチ型は初期費用の年間10〜20%程度が保守費用の目安です。
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ランニングコストが重くなりやすい理由

総務システムは、オフィス備品や消耗品の発注、会議室やフリーアドレス席の予約、契約書への押印申請などをまとめて扱います。総務ヘルプデスクや防災用備蓄も対象に含まれ、名刺発注や郵便物の管理も扱います。
人事管理システムが人のマスタ、資産管理システムが固定資産台帳を管理するのに対し、総務システムは社員が働く環境と体験そのものを運用します。全社員が日常的に使うため、開発時の初期費用より稼働後の費用が効きやすく、問い合わせ対応やサポートの負荷も高くなります。
備品カタログや会議室、承認ルートは、運用しながら更新する情報です。そのため、マスタ的な情報のメンテナンスに継続的な工数がかかります。
さらに、組織改編やオフィス移転のたびに設定変更が発生します。レイアウト変更や法改正のときも、設定を見直す必要があります。
総務システムは「何でも屋」であるため、変化に追随し続ける必要があります。したがって、費用は作ったあとも使い続ける総コストで捉えます。
TCOで捉える初期費用とランニングコスト
総務システムの費用は、TCO(Total Cost of Ownership=総保有コスト)で判断します。TCOは、初期費用と一定期間の保守・運用費用を合算した総コストです。
- 初期費用:開発と導入にかかる費用
- 継続費用:保守・運用・インフラ・ライセンスの費用
- 運用工数:マスタ更新や問い合わせ対応にかかる人件費
一般的には、5年程度使い続ける前提で総額を比較します。初期費用が安く見えても、運用工数や設定変更が積み重なると、総額では高くなる場合があります。
反対に、自動化や連携に初期費用をかけると、TCOで有利になることもあります。そのため、総務システムは初期費用の大小ではなく、5年間の総額で比較するのが基本です。
ランニングコストの負担先——総務と情シスの分担
ランニングコストは、金額だけでなく、誰が作業を担うかでも変わります。
- 総務部門:業務を理解したうえで、日常のマスタを更新する役割
- 情報システム部門:システム設定や技術面の支援
- ベンダー:自社で対応できない変更や保守
会議室、備品カタログ、承認ルートは、総務が自分で更新できる状態が理想です。
総務担当者が設定に不慣れだと、変更のたびに情シスやベンダーへ依頼することになります。その都度、作業費や社内工数が積み上がり、見えにくい費用になります。
導入時に、総務が変更できる範囲と依頼する範囲を決めておくことが大切です。また、総務担当者でも扱える管理画面を用意すると、ランニングコストを抑えやすくなります。分担を曖昧にすると、社内工数という形でコストが膨らみ続けます。
導入形態別のコスト構造——SaaS型とフルスクラッチ型

ランニングコストは、SaaS型かフルスクラッチ・オンプレミス型かで大きく異なります。費用が発生する仕組みを比べると、自社に合う導入形態を判断しやすくなります。
SaaS型:月額利用料に保守を含む構造
SaaS型では、ランニングコストの中心が月額利用料になります。
- ユーザー課金:1ユーザーあたりの月額料金
- 施設課金:会議室数や拠点数に応じた料金
- モジュール課金:利用する機能の数に応じた料金
料金体系はサービスによって異なります。一方で、バージョンアップやセキュリティ対応、インフラ保守は月額料金に含まれるため、自社で保守要員を抱える必要がありません。
全社員が使うため、ユーザー数課金では従業員数に比例して月額が膨らみます。その半面、保守をベンダーに任せられ、常に最新機能を使える点は利点です。
マスタ更新の多くは管理画面から行えるため、運用を自社で担えます。
標準的な庶務業務が中心で、独自要件が少ない企業と相性がよい形態です。
フルスクラッチ・オンプレミス型:年間保守は初期費用の10〜20%が目安
フルスクラッチ型やオンプレミス型では、費用が複数の項目に分かれます。
- 保守契約:初期開発費用の年間10〜20%程度が目安
- インフラ費用:サーバーやクラウドの利用にかかる費用
- 追加開発:機能追加や大きな改修で別途かかる費用
たとえば、初期費用が1,000万円なら、年間保守費用は100万〜200万円が目安です。保守契約には、障害対応、軽微な修正、問い合わせ対応が含まれるのが一般的です。
セキュリティパッチの適用が含まれる場合もあります。ただし、その範囲は事前に確認が必要です。このほか、セキュリティ対策や監査にも費用がかかります。
自社の要件に合わせて作り込める一方、保守の負担は自社で背負うことになります。
TCOで見ると、フルスクラッチ型のほうがSaaS型より高くなるケースもあります。そのため、独自のワークフローや外部との統合が本当に必要かを見極めてから選ぶことが重要です。
総務システム特有のランニングコスト項目

総務システムには、「何でも屋」という業務特性から生じる費用があります。稼働後の負担を予算に組み込めるよう、代表的な項目を確認しておきます。
マスタ的な情報のメンテナンス工数
総務システムには、運用しながら更新するマスタ的な情報が多くあります。
- 備品情報:備品カタログや消耗品の発注点の更新
- 施設情報:会議室や座席のレイアウトの更新
- 申請情報:サプライヤ、承認ルート、FAQの更新
新しい備品の追加やサプライヤの変更があれば登録内容を見直し、規程が改定されたときは総務ヘルプデスクのFAQも書き直します。
人事管理システムの社員マスタや資産台帳とは違い、対象が多岐にわたるため、担当者の負荷が高くなりがちです。
工数を見込んでおかないと、情報が古くなってシステムが形骸化します。管理画面を使いやすくするとともに、運用担当者と更新頻度を先に決めておくことが大切です。
備品カタログは、新製品の追加や単価変更のたびに更新します。また、四半期に一度はまとめて見直します。
会議室や座席は、フロア変更やフリーアドレス範囲の見直しに応じて更新します。一方、FAQは規程改定や問い合わせ傾向の変化を受けて、月次で更新します。
対象ごとに更新のきっかけと頻度を決めておくと、工数が特定の時期に偏りにくくなります。
CSVでの一括登録・更新や、権限を絞った編集画面も有効です。総務担当者が更新を自分で完結できれば、都度の外注費を減らせます。
そのため、総務システムのTCOは、日常の更新を内製で軽く回せるかで変わります。
組織改編・オフィス移転・レイアウト変更への追随
組織やオフィスの変化に追随する費用は、総務システム特有の変動費です。
- 組織改編:承認ルートや権限設定の見直し
- オフィス移転:会議室や座席のマスタの作り直し
- レイアウト変更:座席予約の設定変更
企業では毎年のように部署の統廃合や人事異動が行われ、そのたびに設定の見直しが求められます。フリーアドレスの導入や変更も、設定変更の理由になります。
変更は不定期に起きるため、年間の保守予算に余裕を持たせておく必要があります。
SaaS型は管理画面から自社で対応できる範囲が広い傾向にあります。一方、フルスクラッチ型は、改修のたびにベンダーへの依頼が必要になりやすい点が違いです。
過去の改編や移転の頻度から、年間の発生回数と規模を見積もります。その結果を初期計画に含めておくと、突発的な追加費用に慌てずに済みます。
成長企業や拠点の統廃合が多い企業では追随コストが大きくなるため、初期予算の段階からこの費用を織り込んでおくことが大切です。
周辺システム連携・法改正への維持コスト
周辺サービスとの連携や制度変更への対応にも、継続費用が発生します。
- 連携先の変更:外部サービスの仕様変更への追随
- 法制度の変更:契約や帳票まわりの機能の見直し
- 業務ルールの変更:備蓄や株主総会関連の手続きの更新
入退室管理や電子契約、会計システムなどと連携する場合、相手先がAPI仕様を変えたりバージョンアップしたりすると、改修が必要です。
押印・契約書管理は、電子帳簿保存法や電子契約の法改正の影響を受けます。また、防災備蓄では消費期限のルール変更への対応が必要になる場合があり、株主総会運営では会社法や関連手続きの変更が影響します。
外部要因による費用は予測しにくいため、保守契約の範囲を事前に確認しておく必要があります。特に、法改正への対応がどこまで含まれるかを明確にしておくと、後のトラブルを防げます。
見落としがちな隠れコストとその対策
ランニングコストには、契約書に明記されない「隠れコスト」もあります。事前に把握して対策を講じておくと、予算超過を防ぎやすくなります。
隠れコスト:全社員向けサポートと繁忙期のスポット対応
最大の隠れコストは、全社員から寄せられる問い合わせへの対応負荷です。
- 日常の問い合わせ:予約や申請の使い方の案内
- 繁忙期の集中:問い合わせや対応が一時的に増える
- 自己解決の促進:FAQやマニュアルによる問い合わせの削減
会議室予約や備品申請、押印依頼は全従業員が使う業務のため、「使い方が分からない」「エラーが出た」という問い合わせが日常的に寄せられます。その一次対応の工数は保守費用に表れませんが、総務担当者の時間を奪います。
新入社員が大量に入る年度替わりには問い合わせが集中します。株主総会や年末調整などの繁忙期も、スポット対応の負荷が一気に高まります。
FAQやヘルプを充実させると、利用者の自己解決を促せます。総務ヘルプデスク機能で問い合わせをまとめて管理し、回答をナレッジとして蓄積する方法もあります。
導入時の説明会とマニュアルで、「分からない」という状態を減らすことも有効です。さらに、総務ヘルプデスクを効率化すると、総務システムのサポートコストも下げられます。
対策:保守契約範囲の明確化とモジュール膨張の抑制
隠れコストを抑えるには、契約範囲と追加機能の扱いを先に決めておく必要があります。
- 契約範囲:月額や年額に含まれる作業の明確化
- 別途費用:機能追加や大きな更新の扱いの確認
- 追加機能:削減工数と保守費用の比較
たとえば、障害対応は含まれていても、機能追加は別料金になることがあります。軽微な設定変更は含まれる一方で、マスタの大量更新は別になる場合もあります。線引きを曖昧にすると、想定外の請求につながります。
総務システムは「あの業務も乗せよう」と考えるうちに、モジュールが増えやすい性質があります。追加した機能は保守対象になり、ランニングコストを押し上げます。
そのため、費用対効果が見合う機能だけを追加する規律が必要です。SaaS型とフルスクラッチ型のTCO比較も、定期的に見直すことが大切です。業務の成長に合わせて導入形態を選び直すと、長期的な費用を抑えられます。
まとめ
総務システムは、備品発注や会議室予約などを効率化する「何でも屋」です。全社員が使い、業務も変わり続けるため、稼働後の費用が重くなりがちです。
費用は初期費用だけでなく、TCO(総保有コスト)で捉えることが重要です。
- SaaS型:月額利用料に保守が含まれる形態
- フルスクラッチ型:年間保守は初期費用の10〜20%が目安
- 特有の費用:マスタ更新や変更対応の工数
- 隠れコスト:全社員向けサポートへの対応負荷
費用を抑えるには、総務が扱える管理画面と明確な保守契約が欠かせません。また、モジュールは費用対効果で選び、5年間のTCOを見据えて比較します。
導入を検討する場合は、複数の開発会社やサービスを比べることをお勧めします。
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株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。
