行政手続きオンライン化システムの開発は、対象手続きを整理し、要件に合うサービスや開発会社を選び、先行手続きから段階的に導入する順に進みます。全体は6つのフェーズに分かれ、最初に要件整理と選定を行います。続いて設計・開発とテストに進み、稼働と定着で締めくくります。
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行政手続きオンライン化システムの全体像

行政手続きオンライン化システムは、住民や事業者がパソコンやスマートフォンから申請する仕組みです。一方で、行政側は受付から処理完了までを電子的に管理します。
デジタル庁は、スマートフォンなどで手続きが完結する状態を目指しており、マイナンバーカードの利用を含むオンライン化も進めています(出典: デジタル庁「行政手続のオンライン化」、2026年6月更新)。
フォームと受付後の業務を含む範囲
住民向けには、手続き検索と条件分岐フォームを用意し、添付や下書き保存にも対応する必要があります。さらに、状況照会、補正依頼、メールやSMS通知も必要です。
- 受付・審査:申請一覧、担当者への振り分け、審査・差し戻し・承認のワークフロー
- 決裁・交付:電子決裁と交付文書の作成への対応
- 記録・監査:操作履歴と監査ログの保存
受付後の処理を紙で回覧すると、職員の転記や保管の作業が残ります。そのため、申請から処分通知、交付、保管までを一つの業務フローとして描いておく必要があります。
申請者・職員・既存システムをつなぐ構成
全体の構成は、複数の要素に分けて整理できます。
- 構成要素:利用者画面、認証・本人確認、申請管理、職員ポータルを含みます。さらに、データ保管、通知・決済、既存連携、監視・バックアップも要素に入ります。
- フォーム:子育て申請者の情報を入力フォームに反映する仕組み
- 受付後:担当課への振り分け、審査結果の通知、必要に応じた住民情報や福祉システムへの連携
- 要件表:誰がどの情報をいつどのシステムへ渡すかを記した表
- 連携方式:APIかファイルか、リアルタイムか日次かの決定
連携の方式と頻度を先に定めておくと、後工程で追加費用が膨らむのを抑えやすくなります。
行政手続きオンライン化システムの進め方

開発は、現行業務の整理から始めます。法令や様式、本人確認、添付は手続きごとに異なり、審査や決裁、交付方法にも違いがあります。
そのため、全庁共通の機能と個別対応の境界を先に決めておきます。6つのフェーズごとに進行条件を合意しておくと、導入後に業務が残りにくくなります。
フェーズ1:要件整理による対象手続きと現行業務の洗い出し
対象を選ぶ前に、手続きごとの現状とオンライン化の効果を、四つの面から整理します。
- 現状:年間件数、繁忙期、申請者、手数料、添付書類の記録
- 処理:本人確認、審査・決裁ルート、交付物、保存年限、処理時間の記録
- 効果:来庁回数や郵送・転記を減らせるか、処理件数が多いか、制度変更が少ないかという観点
- 実施条件:オンライン完結、添付省略、窓口併用、障害時の代替手段の確認
MUSTとWANTを分けたうえで、先行稼働は1〜2手続きに絞ります。そうすると、複雑な全庁展開による遅延を防ぎやすくなります。
フェーズ2:要件とデモによるサービス・開発会社の選定
サービスの選定では、導入自治体数に加え、対象手続きと同じ本人確認レベルや、審査・補正・決裁・交付までの対応範囲を確認します。
SaaSなどの方式は、同じ要件表で比べます。そのうえで、実際の職員と住民にデモを操作してもらいます。
- 候補方式:SaaS・パッケージ、ローコード、既存基盤への追加開発、フルスクラッチの比較
- 接続・データ:LGWANやガバメントクラウドとの接続、API・ファイル連携、データの所有権と持ち出しの確認
- 運用・契約:ログ保存、脆弱性対応、障害時に誰がどこまで受け持つか、フォーム追加単価、制度改正対応費、他社への移行条件の確認
画面が優れていても、審査後に別システムへ手入力する形では目的を満たせません。
フェーズ3:設計・開発での業務フローとデータ連携の確定
画面の仕様より先に業務フローを決めておき、申請開始から保管までの状態を定義します。受付と交付の間には、振り分け、審査、補正、再申請、決裁、手数料確定があります。
- 権限:各状態で誰が何を操作できるかを示す権限表
- 入力仕様:必須・任意、条件分岐、形式、エラー表示、添付容量、保存期間の決定
- 認証:マイナンバーカード、公的個人認証、ID・パスワード、多要素認証の検討
認証の強さは、手続きのなりすましリスクや法的要件に合わせて決めます。低リスクの申込に強い認証を一律に当てはめると、離脱が増えます。
一方で、高リスクの申請に簡易認証を使うと、審査や監査の負担が増えます。そのため、リスク評価を認証選択の基準にします。
フェーズ4:申請者と職員の異常系のテスト
正常に申請できるかを確かめるだけでなく、利用者と職員の例外操作も、場面ごとに再現します。
- 申請中:通信切断、大容量添付、同じ申請の二重送信
- 処理中:補正期限の超過、決済失敗、担当者の交代
- 交付後:訂正が必要になった場合の処理
住民向けには、スマートフォンの複数機種、文字サイズ変更、キーボード操作、読み上げ、やさしい表現を確かめます。また、職員向けには、検索や一覧、一括処理、権限分離、監査ログの動きを見ます。
受入条件は、申請完了率、エラー復旧、処理時間、通知到達、帳票内容などで定めます。さらに、数値か判定文にし、担当課が再現できる形にしておきます。
フェーズ5:先行手続きと並行運用による稼働開始
紙の窓口はすぐになくさず、対象を絞ってオンラインと従来の方法を並行運用します。稼働の前には、体制と基準を決めておきます。
- 担当体制:担当者、問い合わせ窓口、障害時の連絡先
- 緊急対応:個人情報の誤送信時の対応と、紙に戻す基準
稼働初週は、申請件数、途中離脱、補正率、問い合わせ、審査時間、オンライン比率を毎日確認します。利用率が低い場合は、その原因を導線ごとに分けて考えます。たとえば、手続きにたどり着けない、本人確認が難しい、添付を準備できない、完了メールが届かないといった問題があれば、改善につなげます。
フェーズ6:フォーム追加と業務改善の運用への組み込み
稼働をゴールにせず、フォーム追加と業務改善の効果を確かめるため、月次または四半期ごとにKPIを見直します。
- 利用状況:オンライン申請率、申請完了率、補正率
- 業務負担:処理時間、来庁・郵送、問い合わせ、職員の転記時間
- 利用者評価:住民満足度の確認
フォーム担当者には、命名規則、本人確認、個人情報、アクセシビリティ、テスト手順を含む運用ガイドを渡します。制度改正費と脆弱性対応は、運用計画の中で見込んでおきます。
バックアップの復元訓練、監査ログの確認、ベンダー交代時のデータ出力は、契約と運用計画の両方で扱います。
トラストバンクの公表事例では、松阪市がLoGoフォームを約1,500フォームまで広げました(出典: 株式会社トラストバンク、2023年)。また、フォームの導入をきっかけに業務そのものを見直す動きにもつながったとされています。
行政手続きオンライン化システムの費用相場とコストの内訳
費用は、手続き数に加えて、認証の強さや審査・決裁の複雑さで変わります。さらに、既存の住民情報、税務、福祉システムとの連携も金額に影響します。そのため、LGWAN・ガバメントクラウド対応、データ移行、研修、保守の範囲も確かめておきます。
費用の幅は、公表された自治体契約と業務システム一般の工数目安を組み合わせた推定です。一律の定価はないため、初期費用と年額費用を分け、見積額に何が含まれるかを確かめます。
部分導入の費用目安は300万〜1,500万円程度
数手続きのフォーム、通知、簡易な受付管理を既存のSaaSで始める場合、初期費用は300万〜1,500万円程度が一つの目安です。
初期費用の内訳は、どこまでが標準の作業で、どこから費用が上乗せになるかで見ます。
- 初期作業:手続きの洗い出し、フォーム設計、権限設定、初期設定、操作研修
- 別料金になりやすい項目:本人確認、決済、独自帳票、既存連携、手続き追加
規模が小さくても、受付後に担当課が手作業で転記するなら、ワークフローやCSV出力が必要です。先行手続きの処理時間をどこまで削れるかで判断します。
複数部署や基幹連携を含む場合の1,500万〜4,000万円程度
複数部署への展開を含む場合は、1,500万〜4,000万円程度で見積もられることがあります。審査・補正・決裁・電子交付まで含めると、同じ幅に入ることがあります。認証・決済や、住民情報・福祉などとの連携を加えた場合も、同様に見積もられることがあります。
一般的な工数配分の目安は、要件定義が全体の約10%、設計が約10〜20%、開発が約40〜60%、テストが約10〜20%です。
行政案件では、調達支援やセキュリティ審査、移行、研修、並行運用も加わります。熊本市の2025年度公表契約には、3つの費目がありました。
- ガイド利用料:くらしの手続きガイドのクラウド利用料で171万6,000円
- 窓口支援:導入と運用保守で4,735万3,350円
- 福祉連携:連携対応で2,691万1,280円
これらは同一システムの開発費ではありません。ただし、案内、受付、窓口、基幹連携を別々の契約や費目で予算化した実例として参考になります(出典: 熊本市「令和7年(2025年)5月随意契約」)。
全庁型やスクラッチ開発の3,000万〜8,000万円超
案件の条件や契約範囲で費用は変わるため、項目ごとに分けて確かめます。
- 全庁型の費用:複雑な審査、住民情報・税・福祉・窓口連携、標準化・複数年移行を含む案件では、3,000万〜8,000万円超になる場合があります。
- 別の基盤費:熊本市の公表契約にあるガバメントクラウド利用権(5,325万5,000円)
- 費用の比較:基盤費や既存システム運用費を開発費に含めた比較では、サービスの優劣を誤るおそれ
- 保守運用費:初期開発費の年5〜15%程度とする一般的な置き方
- 契約で変わる費用:SaaS利用料、申請件数課金、セキュリティ監視、フォーム追加、制度改正対応。実額は契約ごとに異なるため、幅を持って予算化します。
ランニングコストの内訳(利用料・連携・改修)
年額費用は、性質の違う費用に分けて見ると、契約条件を比べやすくなります。
- 固定費:サービス利用料、クラウド・ネットワーク、監視、バックアップ、ヘルプデスク
- 運用・改修費:脆弱性対応、フォーム追加、制度改正対応
- 従量課金:本人確認や決済の利用料、申請・交付数に応じた費用
たとえば、熊本市の契約では、電子文書交付と汎用メールの追加が各1,000通あたり月額11,000円でした。同じ契約のオンライン決済は、納付額の3.5%が発注見込額でした(出典: 熊本市、2025年)。そのうえで、年間件数を3パターン程度に置き、利用の増加を含む5年総額を見積書で確かめます。
行政手続きオンライン化システムの見積もりを取る際のポイント

見積もりは、合計金額だけで比べると判断を誤ります。「初期設定」「開発」「導入支援」「保守」「連携」の含め方は、ベンダーごとに異なります。安く見える提案でも、後から追加費用が生じる場合があります。
そこで、対象手続き、利用者数、年間申請件数、データ連携、セキュリティを、各社に同じ条件で示してもらいます。移行、研修、運用の責任範囲もそろえ、金額と前提条件を一対一で比べます。
要件定義書に記す手続き・データ・運用の条件
見積もり依頼書には、手続きごとの条件を具体的に記します。連携先は名称だけでなく、データや接続の条件まで書き込みます。
- 手続き条件:年間件数、ピーク同時利用、申請者属性、本人確認、添付、決済
- 処理条件:審査・決裁者、通知・交付、保存年限の記載
- 連携条件:方式、項目、文字コード、接続時間、テスト環境、改修負担
- 運用・安全:アクセシビリティ、接続環境、バックアップ、ログ、診断、復旧目標
さらに、個人情報の委託先管理も要求事項に含めます。「必要に応じて対応」といった書き方は避け、何を、誰が、いつまでに、何件行うかを明確にします。
複数社比較での同一シナリオのデモ評価
候補は、行政向けSaaS、ノーコード・ローコード、自治体基幹に強いSI、独自開発会社などです。そのうえで、同じ手続きシナリオでデモを依頼します。
住民がスマートフォンで申請し、本人確認と添付を経て送信する流れを見ます。また、職員が審査・補正・決裁し、通知と交付まで進める様子も確認します。加えて、画面上では三つの観点から評価します。
- フォーム運用:職員が追加でき、入力ミスを防げるか
- 審査・連携:補正履歴と連携失敗の確認
- 監査・移行:監査ログの活用、データの取り出し
「標準機能で可能」という回答は、デモか仕様書で確かめます。また、将来開発の予定を根拠に評価することは避けます。
契約前に確かめるリスクと追加費用の条件
制度改正への対応費や追加作業の単価は、契約前に明らかにしておきます。
- 改修・利用:審査ロジックの変更、手続きの追加、申請・添付・通知の従量課金
- 外部費用:決済、本人確認、連携先改修、データ移行、追加研修
- 終了時:返却形式、保存期間、削除証明、移行支援条件
障害時の一次受付会社、復旧目標、データ欠損の確認、再送・再審査の手順も、合意しておきます。なお、次期オンライン申請サービスでは、再入力の削減や補正連絡が重視されています。
オンライン通知や手続きの完結も重視されるため、将来の連携余地を閉じない設計にします(出典: デジタル庁「行政手続のオンライン化」、2026年6月更新)。
よくある質問(FAQ)
オンライン化では、費用、完結範囲、本人確認、既存チャネルの扱いがよく問われます。導入前に多い疑問に答えます。
行政手続きオンライン化システムは何から始めればよいですか?
全手続きの一覧を作り、年間件数、処理時間、本人確認を洗い出します。添付、審査・決裁、交付方法も、同じ一覧に加えます。そのうえで、住民と職員への効果が高く、例外処理が比較的少ない1〜2手続きを選びます。さらに、先行導入のKPIと成功条件も決めておきます。
本人確認はすべてマイナンバーカードにすべきですか?
認証方法は、手続きごとに検討します。全手続きを同じ認証の強さに揃える必要はありません。
- 判断基準:影響、なりすまし被害、法令要件、利用者負担の評価
- 低リスク:問い合わせや予約での簡易認証の検討
- 高リスク:給付・証明・届出でのマイナンバーカードの電子署名や多要素認証の検討
- 代替手段:認証できない住民に向けた、窓口・郵送と問い合わせ対応の維持
SaaSとスクラッチ開発はどちらを選ぶべきですか?
短期間で複数手続きを始めたい場合や、制度改正対応を任せたい場合は、SaaSやパッケージが選択肢になります。
独自の審査、複雑な基幹連携、全庁業務の一体変更が必要なら、追加開発やスクラッチを検討します。そのうえで、保守、改修、依存、移行を含む5年総額で比べます。
標準機能はSaaSで使い、必要な連携部分だけを追加開発する構成も現実的です。
行政手続きオンライン化システムの開発期間はどれくらいですか?
標準機能を使うSaaS導入は、1〜3か月が目安です。一方、手続きの洗い出しと複数部署への展開を含む導入は、3〜6か月です。
基幹連携や独自開発を含む案件は、6〜12か月以上かかります。本人確認や決済、データ移行、並行運用、調達が加わると、期間はさらに延びます。
稼働希望日から逆算して、要件整理、受入テスト、職員研修の期間を先に確保します。
まとめ
発注前の6フェーズの判断条件の一覧
発注前に、6フェーズの判断条件を確かめておきます。まだ決まっていない項目は見積もりの前提として記録し、決定の時期と担当者を残します。
- 要件整理・選定:対象手続きとKPIの決定、同じシナリオでの比較
- 設計・テスト:認証、権限、連携、ログの定義、異常系の確認
- 稼働・定着:代替チャネル、障害対応、追加改修、運用担当の決定
小さく始めて利用率と業務効果を見ながら広げる進め方
全庁一斉に変えるより、効果を測りやすい手続きで成功例を作るほうが進めやすいです。職員がフォームを改善できる運用を整えてから、対象を広げます。
申請完了率、処理時間、補正率、問い合わせ、窓口・郵送件数を、定期的に確認します。そして、利用者の声と職員の実績をもとに、業務も更新します。
行政手続きオンライン化は、要件整理から定着までの6つのフェーズで進みます。
- 要件整理
- 選定
- 設計開発
- テスト
- 稼働
- 定着
設計には、申請後の審査、補正、決裁、通知、交付、保管までを含めます。
費用の推定レンジは、部分導入で300万〜1,500万円程度です。複数部署や基幹連携を含む場合は1,500万〜4,000万円程度、全庁型やスクラッチでは3,000万〜8,000万円超になることもあります。
これらは、公表契約や一般的な業務システム相場をもとにした目安です。認証、決済、連携、保守、制度改正の範囲で変わるため、固定費と従量課金を分けて比べます。
まず手続きを洗い出し、住民の利便性と職員の負担を同時に改善できる対象を選びます。先行稼働の数値や利用者の声をもとに、継続的に見直します。
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会社紹介
株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。
