宿泊・ホテル業界のシステム開発の発注/外注/依頼/委託方法について

宿泊・ホテル業界のシステム開発は、業務要件を整理して発注先を選び、契約を結んだあと、納品後の管理まで順に進めます。社内に専門人材が不足する場合は、外注先と要件・契約・運用を合意しておきます。発注で確認すべき項目は、次の3つにまとめられます。

  • 要件と体制:現状の課題、機能の優先度、予算と時期を社内で整理しておく。
  • 会社と契約:実績と提案を比べ、契約形態と変更条件を確かめる。
  • 推進と保守:進捗の管理方法と、納品後の保守・運用体制の整備。

本テーマに関する全体ガイドは、以下の記事をご覧ください。

▼全体ガイドの記事
・宿泊・ホテル業界のシステム開発の完全ガイド

発注前の準備と要件整理

業務要件、必須機能、連携システム、予算・稼働時期・担当体制を並べた発注前の確認図。
機能と社内体制をそろえると、相談時に優先度を伝えやすくなります。

業務要件の整理(現状の課題・必要機能・優先度)

発注前にもっとも大切な作業は、現状の業務フローを見える形にして、課題を洗い出すことです。宿泊業では、今使っているシステム(PMS・予約エンジン・OTA連携方式)と、どこに課題があるか(オーバーブッキングや手作業によるミス、外国語対応の遅延など)を確認します。そのうえで、新システムで解決したい問題と期待する効果を書き出します。

必要な機能は、必須機能(Must Have)と、あれば望ましい機能(Nice to Have)に分けて整理することが大切です。宿泊業の必須機能には、リアルタイムOTA在庫同期や予約管理、チェックイン/アウト管理などがあります。日次レポート生成も、その一つです。あれば望ましい機能には、AIレベニューマネジメントやゲストアプリ、スマートロック連携などがあります。

多言語AIチャットボットも、その例です。機能の優先度を決めてから相談すると、予算とスケジュールのバランスを取った提案を受けやすくなります。また、連携が必要な周辺システムには、既存PMSや会計システムに加えて、会員システムやスパ/レストランPOSなどがあります。各システムのAPI仕様書も、可能な範囲で事前に整えておきます。

予算・スケジュール・体制の確認

発注前に社内で合意しておくことは、予算、稼働希望時期、社内の担当体制の3つです。予算は、初期開発費とランニングコストの想定を合わせた上限で考え、稼働希望時期は、繁忙期・閑散期を考慮したスケジュールで決めます。社内の担当体制では、プロジェクトオーナー、現場の業務担当者、IT担当者の役割分担を明確にします。

特に宿泊業では、ゴールデンウィークや夏季、年末年始といった繁忙期の直前に本番稼働すると、大きなリスクになります。そのため、稼働時期には十分な余裕を持たせて設定します。

社内プロジェクトチームには、フロント業務、予約業務、IT管理の各担当者を加えます。こうした顔ぶれで進めると、要件定義の精度が上がります。

ポイント

業務要件を社内で固めてから、発注先に伝えます。宿泊業では、繁忙期を避けた稼働時期と、PMSやOTAなどの連携情報をそろえられるかが目安になります。

発注先の選定方法

宿泊業界での開発実績、連携技術、保守運用、提案の具体性を示す発注先評価図。
4つの観点を並べると、価格以外の確認軸も見渡せます。

複数社への相見積もりとRFP作成

発注先の選定では、必ず複数社(3社以上)への相見積もりを取ることを推奨します。RFP(提案依頼書)を各社に配布すると、提案内容の比較が容易になります。

宿泊・ホテル業界のシステム開発RFPでは、「プロジェクト概要」に施設の規模と現在の課題を書き、システム化の目的と期待する効果も記載します。「機能要件」では、必須機能と希望機能を優先度とともに整理します。「非機能要件」には、処理性能、可用性(年間稼働率99.9%以上など)、セキュリティ要件(PCI DSSなど)を明記します。

「連携システム一覧」には、現在のPMSやOTA、決済・会計システムとの連携仕様を書きます。「スケジュール」には稼働希望時期と主要マイルストーンを、「予算の目安」には大まかな予算感を記載します。こうして明確なRFPを作ると、各社の提案内容と費用を横断して比べられます。

選定基準と評価の観点

発注先の評価では、単純な価格比較だけに頼らず、多面的な評価を行うことが大切です。最も重視すべきは、宿泊業界での開発実績と業務理解の深さです。ホテル・旅館向けの構築実績が豊富な会社は、業界特有の業務フローとよくある課題を熟知しています。そのため、要件定義での抜け漏れが少なく、現場に合ったシステムを構築できます。

次に確認したいのは、OTA連携とPMS連携の技術力です。Booking.com、Expedia、じゃらんなどのOTA APIとPMSの連携実績がある会社は、技術面のリスクを大きく減らせます。また、保守・運用体制も大切です。宿泊業のシステムは24時間365日稼働する業務クリティカルなシステムであるため、障害時の対応速度とサポート時間を事前に確かめておきます。

提案書では、課題への理解度や提案内容の具体性、リスクへの言及を重点的に見ます。加えて、開発体制と担当者のスキル、アフターサポートの内容も確認します。

ポイント

迷ったときは、宿泊業界での開発実績を最優先に、OTA・PMSの連携実績と障害時のサポート時間を比べます。価格は、同じRFPへの提案を並べて見ます。

契約・発注時の注意点

契約形態(請負 vs 準委任)の選択

システム開発の契約形態には、「請負契約」と「準委任契約(SES含む)」があります。請負契約は、成果物(完成したシステム)に対して報酬を支払う形態です。費用が固定されやすく予算を管理しやすい一方で、仕様変更が起きると追加費用が生じやすいという特徴があります。

準委任契約は、工数(人月)に対して費用を支払う形態で、要件変更に柔軟に対応できる反面、費用の上限を管理しにくい面もあります。宿泊・ホテル業界のシステム開発では、OTA側のAPI仕様変更や業務要件の変化、インバウンド対応の追加などで、開発途中の仕様変更が起きやすいです。

そのため、柔軟性の点では準委任契約(タイム&マテリアル方式)が優れている場面があります。実務では、要件定義を準委任で進め、設計・開発を請負とするフェーズ分割の進め方も有効です。

仕様変更・追加費用への対応

契約を結ぶ前に、「仕様変更が発生した場合の対応フロー」を決めておく必要があります。たとえば、仕様変更のたびに都度見積もりを取る流れ、変更管理票の運用ルール、追加費用の承認プロセスを、契約書または プロジェクト管理ルールとして文書化します。

宿泊業のシステムでは、OTA側のAPI仕様変更が起きることがあります。そのため、変更時の対応コストを発注者側と受注者側のどちらが負担するかを、事前に取り決めておくと、後のトラブルを防げます。また、知的財産権(ソースコードの著作権・成果物の帰属)も、契約書で明確にしておきます。

ポイント

契約形態は、仕様変更がどの程度起きそうかで選び分けます。変更への対応コストを誰が負担するかは、契約前に決めておきます。

開発中・納品後の管理

要件定義から受入テスト完了まで、開発進行の5つの節目を並べた図。
各段階の完了を順に確認し、テストの合格後に本番稼働へ進みます。

プロジェクト管理と進捗確認

発注後のプロジェクト管理では、定期的なコミュニケーションとマイルストーン管理が成功の鍵です。週次の進捗報告会議を設け、開発の遅延、課題、リスクを早期に発見する仕組みを作ります。

節目は、要件定義、基本設計、詳細設計の各完了です。そのあと、開発完了、OTA連携テスト完了、受入テスト完了を経て、本番稼働を迎えます。宿泊業特有の注意点として、OTA各社のサンドボックス環境でのAPI連携テストには十分な期間を確保し、各フェーズでは成果物のレビューと承認を行います。

既存PMSからのデータ移行(予約データ、顧客データ、マスタデータ)は、移行リハーサルを繰り返し、データの整合性を確かめてから本番移行に臨みます。さらに、発注者側も積極的にプロジェクトへ参加し、現場業務の知識を提供して意思決定を迅速に行うことが、プロジェクト成功の大きな要因になります。

保守・運用体制の整備

本番稼働後の保守・運用体制の整備は、システムの安定稼働と継続的な改善に欠かせません。宿泊業のシステムは24時間365日稼働する業務クリティカルなシステムであるため、障害発生時の対応フロー、連絡体制、SLA(サービスレベル合意)を、開発会社と明確に取り決めておく必要があります。

保守契約には、定期的なセキュリティパッチ適用とバックアップ管理を含めるのが一般的です。月次レポートの提供や問い合わせ対応なども、保守の対象として挙げられます。OTA連携システムは、OTA側のAPI仕様変更への追随対応が継続的に必要です。そのため、保守契約にAPI仕様変更への対応が含まれているかを確認しておきます。

また、本番稼働後のスタッフへの操作研修とマニュアル整備も、定着率を上げるために大切です。長期的には、利用データの分析に基づく機能改善や新機能の追加開発を計画的に進めます。それによって、システムの価値を継続的に高められます。

ポイント

開発中は、週次の進捗会議で遅延やリスクを早く見つけ、節目ごとに成果物を承認します。納品後は、保守契約にAPI仕様変更への対応が含まれているかが判断の目安になります。

まとめ

宿泊・ホテル業界のシステム開発の外注・発注は、準備の質がプロジェクト成功を大きく左右します。業務要件の整理とRFP作成という発注前の準備を丁寧に行い、宿泊業務の知識と技術力を備えた信頼できるパートナーを選ぶことが大切です。

株式会社riplaでは、コンサルティングから開発・保守まで一貫して支援しています。ご相談はお気軽にお問い合わせください。

▼全体ガイドの記事
・宿泊・ホテル業界のシステム開発の完全ガイド

会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

もし、システム開発やプロダクト開発に関するご要望がございましたら、お気軽にお問い合わせください。

・サービス概要資料のURLはこちら >>>
・お問合せページのURLはこちら >>>
・お役立ち資料のURLはこちら >>>

執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。